母親を死喰い人に殺されたセルウィン家最後の生き残りは、カロー家の養女になる。   作:蕩けたバター

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クディッチシーズンにも関わらず、エスメラルダはクディッチには興味がありません。そして今回はそんな彼女がクディッチシーズンを終えてクリスマス休暇に入り、実母の生家へ訪問するお話となっています。この話は前編と後編に別れており、生家に関する新たな情報を知り、不思議なセルウィン家に疑問を持つようになるお話です。


クリスマス休暇/セルウィン家(前編)

ハロウィンの余韻は消え、クディッチシーズンが到来した。

ハロウィンとは違った意味で生徒達は浮き足立っていた。

 

 

ハロウィンの夜から古代ルーン文字の勉強を始めた私は、簡単な文であれば読む事が出来るようになっていた。

人魚の秘薬について書かれたページを読んでいると、そこには驚くべき事が書かれていた。

 

 

「…へぇ、人魚の秘薬は若返りの薬とも呼ばれているのね。」

 

 

人魚の秘薬とは、有名な惚れ薬の一つだ。

人間の王子様に恋をした人魚姫が、彼を自分のものにする為に作り出した最強の惚れ薬。

そう世間に広まったものは全て勘違いで、実際は若返りの薬だったようだ。

それも、ただ若返るだけでなく魔力量の最も多い全盛期の姿へと変わるらしい。

作り方によっては、外見や魔力だけに特化したものも生み出せるようだ。

そして寿命さえも若返った歳から死ぬまでの時間まで伸びるらしい。

 

 

「賢者の石とは違うけど、これも寿命を伸ばす効果があるって事だよね。」

 

 

賢者の石は命の水を生み出す事が出来る。

その水を飲めば寿命は伸びる。

それを証明した人間がニコラス・フラメルだ。

 

 

「エスメラルダ!早く行きましょう!」

 

 

女子寮の廊下からミリセントの声が聞こえる。

今日はスリザリン対グリフィンドールのクディッチの試合だ。

マルフォイやパンジーは試合を楽しみにしていたが、生憎私はインドア派なので、クディッチの試合には一切興味が無い。

 

 

「ねぇ、ミリセント。本当に行かなきゃダメなの?せっかくのお休みなのに…」

 

 

私がそう言うと、ミリセントが腰に手を当てて頬を膨らます。

 

 

「ダメよ!スリザリンの試合なんだから、貴方もスリザリン生として見に行かなければならないわ。」

 

 

「…分かったよ。」

 

 

私は、渋々ミリセントといっしょにクディッチの試合会場へ向かった。

クディッチの試合が始まると、ポッターに向けて容赦ない攻撃が仕掛けられる。

途中ポッターの箒が暴れ出したりしたが、魔法界に来てまもないポッターの魔力が暴走でもしたんだろう。

スリザリン有利な試合展開だったが、魔力暴走から抜け出したポッターがスニッチを取り、グリフィンドールが勝利した。

 

 

「クソッ、ポッターめ!」

 

 

マルフォイが怒り出し、会場を飛び出して行った。

その後をビンセントとゴイル、パンジーが追い掛けていく。

 

 

「負けちゃったわね。初心者のポッターがスニッチをとるなんて、想定外だわ。」

 

 

グリーングラスが憎々しげににポッターを睨みつける。

他のスリザリン生もイラつきを隠しもせず、ポッターやグリフィンドールを罵る。

そんな中、私は早く寮に戻って錬金術に関する本を読みたくて仕方が無かった。

 

 

「…フローラ、ヘスティア、寮へ戻ろう。ここに居ても時間の無駄だよ。」

 

 

「そうね。早く戻ってケーキでも食べましょう。」

 

 

「ケーキ?」

 

 

私が不思議そうな顔でフローラを見ると、彼女はパンと手を叩いてから話し始めた。

 

 

「忘れてたわ。実はね、パンジーの家から今朝ケーキが送られてきたの。クディッチの前祝いって事で。エスメが大広間に来る前に梟便が来たから、貴方は知らないわよね。」

 

 

「へぇ?それは楽しみね。」

 

 

私達はスイーツに関する話をしながら寮へ戻った。

寮に戻ると、マルフォイが悔しそうな顔をしながら、パンジーの実家から届けられたケーキを食べていた。

ビンセントとゴイルも口の周りにたっぷりクリームを付けて、ケーキを頬張っていた。

 

 

「フローラ達もケーキ食べるでしょう?早くいらっしゃい。」

 

 

「ええ、有難くいただくわ。」

 

 

私達はパンジーの元へ向かい、ケーキを受け取ってからソファに座る。

甘い苺のショートケーキだ。

 

 

「次は、絶対にスリザリンが勝つ。いや、僕が勝たせてみせるぞ!」

 

 

マルフォイのやる気に満ちた宣言にパンジーはキャーキャーと騒いでいた。

 

 

「来年からはマルフォイも選手になれるのよね?」

 

 

「ああ、そうだ。必ず僕がシーカーになって、あのポッターの鼻を明かしてやる。覚悟していろ、ポッター!」

 

 

それから数週間後、ホグワーツはクリスマス休暇に入った。

私達はホグワーツ特急に乗って、帰省する。

駅に着くと、多くの生徒が家族と再会のハグをしていた。

 

 

「あ、お母様だわ。それじゃあまたね、ヘスティア、フローラ、エスメラルダ。」

 

 

パンジーが母の元へ歩きながら、私達3人に手を振る。

 

 

「またね、パンジー。」

 

 

「クリスマスにはプレゼントを贈るわ。」

 

 

「ホグワーツで会いましょう、パンジー。」

 

 

私達も彼女に手を振り別れを告げ、家族を探す事にした。

 

 

ホームの中を歩いていると、母と父が私達を探していた。

 

 

「お母様!お父様!」

 

 

私が声を掛けると、2人は振り返って私達を強く抱き締めた。

 

 

「おかえり!フローラ、ヘスティア、エスメ!」

 

 

「ああ、おかえりなさい!愛する我が子達。」

 

 

母と父の頬にキスをし、再会を喜び合う。

私とフローラは母と手を繋ぎ、ヘスティアは父と手を繋ぐ。

そして次の瞬間、懐かしい自宅が目の前に現れた。

いや、両親乗姿現しで駅から自宅へ移動したのだ。

家に入ると、屋敷下僕が出迎えた。

屋敷下僕は私達の荷物とコートを受け取り、片付けを始めた。

 

 

手を洗い、服を着替えてから広間へ向かうとテーブルの上には大きなチキンやケーキ、パスタやビーフストロガノフ、生ハムのサラダと様々な豪華な料理が並べられている。

 

 

「わぁ、とっても美味しそう。」

 

 

思わず心の声が漏れてしまう。

私の呟きを聞いた母が嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「今日の料理は腕によりをかけて作ったから、きっと美味しいわ。」

 

 

その後、家族が全員揃ったので晩餐会を始めた。

 

 

「わあ、このパスタ美味しい!」

 

 

「彼女の料理はいつも美味しい。」

 

 

「ホグワーツでもお母様の手料理が食べられたらいいのに。」

 

 

私達は母の料理を誉め、ホグワーツに居る時よりも食べる量が増えていた。

 

 

「そういえば、休暇中にセルウィン家を訪問するって話はどうなったの?お父様。」

 

 

ヘスティアが父に尋ねると、父ハッとして今その話を思い出したようだ。

 

 

「ああ、忘れていたね。3日後、セルウィン邸へ訪問する事になっているよ。食事を終えたら、少しエスメラルダに話があるから、書斎に来てくれ。」

 

 

「分かりました。」

 

 

その後、話題はホグワーツに関するものに移る。

純血名家のマルフォイやノットと親しくしているか、クディッチの結果はどうなったか、新しく出来た友達とは上手くやれているか。

トロールが現れた事を話した時、父は突然怒り出し今すぐホグワーツに向かいそうになったが、母の一声で落ち着きを取り戻した。

後日、ホグワーツにクレームを入れておくと話していた。

私達は様々な事を話したが、3階にケルベロスがいる事は黙っていた。

トロールの事を話してこれでは、ケルベロスが居たなんて言えば魔法省に文句を言いに行くはず。

流石に今大事にはしたくない。

 

 

「ああ、聞き忘れていた。ホグワーツでの勉強はどうだい?」

 

 

父が優しい声音、優しい表情で私達に問いかける。

 

 

「問題無いわ。カロー家の人間として無様な成績は残さないから安心して。」

 

 

「ええ、私も大丈夫よ!」

 

 

フローラとヘスティアは自信満々に話す。

彼女達に続いて私も口を開いた。

 

 

「私も特に難しいとは思っていないかな。でも、マグル生まれのハーマイオニー・グレンジャーって生徒が、凄い賢いの。だから、もしかしたら今年度は純血の生徒が一番になるのは難しいかも。」

 

 

成績優秀なマグル生まれのグレンジャーについて説明すると、父も母も顔を顰めた。

 

 

「マグル生まれが…そうか。まあ、一番になれとは言わない。自分のペースで頑張りなさい。」

 

 

そう言いつつも、父の表情は曇っていた。

我が家は純血主義であり、過激ではないとはいえ、マグル生まれが純血の生徒に優っていると聞けば良い気はしないだろう。

そんな2人の様子を見て、私はもう少し勉強を頑張ってみようかなと思った。

フローラとヘスティアも、両親の気持ちに気付いたからか、勉強を頑張ると両親に言い、休暇中も皆で勉強をする事になった。

 

 

その後、夕食を食べ終えて私は父のいる書斎へ向かった。

扉を2回ノックすると中から返事が返ってきた。

扉を開けて中に入ると、父が書類を整理していた。

 

 

「ああ、そこに座って。紅茶で良いかな?」

 

 

「あ、ミルクもお願いします。」

 

 

「分かってるよ。」

 

 

ミルクを先にカップに注ぎ、そのうえから紅茶を注いでいく。

 

 

「さあ、出来たよ。」

 

 

紅茶に口をつけるとミルクの甘い香りがふわりと口の中に拡がった。

 

 

「お話とは、私の生まれに関する事でしょうか?」

 

 

「ああ。ハロウィンの頃だったかな、お前達3人にトランクを送っただろう?君のトランクの中には、相続に関する書類とセルウィン家の当主を継ぐ為の書類を入れて置いた。」

 

 

「一つだけ、教えて下さい。私は戸籍上カロー家の娘になっていると思っていました。しかし、ホグワーツの先生方は私の姓はセルウィンだと仰っています。私は、カロー家が後見人として面倒を見ているセルウィン家の人間、という事なのでしょうか?」

 

 

今の私の立場を明確にしなければならない。

私が戸籍上、どちらの家門の人間となっているのか、それを知るのは父と母のみだ。

 

 

「君は、カロー家の養女だ。戸籍上、カロー家の娘となっているが、血縁上は君のセルウィンの人間でもある。だから、ホグワーツ入学前二セルウィンという姓で登録しておいたんだ。」

 

 

「そう、だったのですか。」

 

 

父も母も私を大切にしてくれた。

だから私は家族を心の底から愛していた。

きっと、父も私の事を愛してくれている。

だとしても、私にとってセルウィン家はどうでも良い存在だ。

その家の娘としてホグワーツの人間に認識される事は望んでいない。

 

 

「私は、どうしてもセルウィン家の人間として生きなければならないのですか?名も知らぬ母親の娘として、生きなければならないのですか?お父様、私は貴方の娘だと名乗る事すら許されないのですか?」

 

 

父は穏やかな表情で私の頭をそっと撫でた。

 

 

「エスメラルダ、君は私達の娘だ。君がそう名乗ってくれたら、とても嬉しい。しかしね、君の実の母であるレディ・セルウィンも君の家族なんだ。今すぐ受け入れなくても良い、君が私達の娘として、カローの人間として生きても構わない。だけどね、覚えていてくれ。レディ・セルウィンは君を心から愛していた。」

 

 

彼は懐かしそうな表情で母について話し続けた。

例え母の事を知らなくても、血の繋がった家族なのだと、何度も私に訴えかけた。

私にレディ・セルウィンが実母であるという事実を忘れさせないように、何度も彼は話した。

 

 

「セルウィン邸や財産の相続については、こちらで既にやってある。しかし、君には父親が遺した遺産を相続する権利がある。だが、今の魔法界ではあまりよく思われていないんだ。だから、君がもう少し成長してから父親については改めて話したいと思っているよ。彼も、君の誕生を心から祝福していた。」

 

 

「…分かりました。」

 

 

名も知らぬ両親が気にならないと言えば嘘になる。

だが、私にとって大切なのは共に過ごしてきた家族だけ。

やはり、血の繋がりがあるだけの両親を好きになれるとは思えない。

 

 

その後、グリンゴッツのセルウィン家の金庫の番号を伝えられ、そこに入っている財産は全て私のものだと父は言った。

セルウィン家は聖28一族だからか、かなりのお金持ちらしい。

 

 

それから3日後、私達は父と母に連れられてセルウィン家を訪問した。

 

 

「ここがセルウィン邸?」

 

 

屋敷を囲うフェンスは錆びついており、庭は雑草で埋め尽くされている。

中に入ると、久しぶりに新しい空気が加わったからか、埃が舞い上がり、私はむせてしまった。

 

 

「コホッコホッ…すごい埃の量だわ。」

 

 

私が咳をした瞬間、母が優しく私の背中をさする。

 

 

「まあ、大丈夫?エスメラルダ。今綺麗にするからね…スコージファイ!」

 

 

母が呪文を唱えた事で埃が消え、カーペットの染みもなくなり、色褪せた壁も床も新品同然の清潔な状態に戻った。

 

 

「こんなに綺麗な屋敷だったので。随分放置されているようだけど、屋敷下僕はいないのかしら?」

 

 

フローラが不思議そうに辺りを見回しながらそう言うと、父が口を開いた。

 

 

「エスメラルダが生まれた日、屋敷下僕は寿命で亡くなってしまったんだ。だから、この家には今屋敷下僕はいないんだ。後で、魔法省に行って屋敷下僕と契約を結ばないといけないね。」

 

 

その後、私達は長い廊下を進んで大広間に到着した。

大広間には、大きな肖像画が飾られていた。

絵画の中には厳格そうな男性と穏やかな笑みを浮かべる女性、私より少し年上の聡明そうな少女と私と同い年程の可憐な少女が笑い合っていた。

 

 

「これは?」

 

 

ヘスティアが肖像画を見ながら呟くと、母が「まぁ」と嬉しそうに絵に向かって一礼した。

そんな母を微笑ましそうに見ながら、父はこの絵について語り始めた。

 

 

「左上の男性は前セルウィン家当主、隣の椅子に座る女性は当主夫人。夫人の下に立つのは、セルウィン夫妻の長女。彼女の左で花冠を編んでいるのが、次女…エスメラルダの実の母、レディ・セルウィンだ。」

 

 

「…私の実の母親。」

 

 

夢で見た事がある、青い瞳にブロンドの髪がよく似合う美しい女性だった。

特に青い瞳は硝子のような透明感を持っており、まるで本物の宝石を見ているような気分になる。

 

 

「サファイア・アンバー・セルウィン。それがエスメラルダの母の名だ。」

 

 

「サファイア・アンバー・セルウィン…」

 

 

宝石のような美しい人。

私によく似たブロンドの髪を持つ美しい人。

 

 

「凄く綺麗な女性ね。」

 

 

「ええ。特に瞳がサファイアみたいだわ。」

 

 

ヘスティアとフローラが瞳を輝かせながら肖像画に夢中になっている。

確かに、この絵の中の女性はとても美しい瞳を持っている。

 

 

「彼女はね、私達の後輩なの。とっても美しい女性だったわ。まるで生きる宝石のような人だった。」

 

 

「…生きる宝石?」

 

 

フローラが不思議そうに呟くと、父と母は懐かしそうに話し始める。

 

 

「セルウィン家の人間は、皆宝石のように美しい瞳を持つとされている。そして、瞳の色は遺伝に関係なく、皆バラバラだ。理由は不明だが、セルウィン家の人間は誰もが例外なくこの瞳を持つとされている。」

 

 

「でも、エスメラルダはグレーの瞳よ?」

 

 

「それは、魔力によってエスメラルダの元の容姿を変えているんだ。エスメ、君のトランクの中には指輪が入っていただろう?もし自分の容姿が気になるのであれば、その指輪を着けて鏡の前に立ってみなさい。君の本来の姿が見られるだろう。」

 

 

「へぇ、とっても気になるわ。ホグワーツに戻ったら、指輪をつけてみたら?エスメ!」

 

 

フローラが興味深そうにそう言うと、ヘスティアも賛同した。

しかし、私はまだセルウィン家を、母を受け入れる事が出来ていない。

だから2人の頼みは丁寧に断った。

 

 

「私達は屋敷内の清掃をするから、貴方達は屋敷を見て回りなさい。」

 

 

「分かりましたわ、お母様。」

 

 

母にそう言われ、私達3人は屋敷内を探索する事にした。

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