中立から内側へ 健全版 作:シオリスキー
タオルでは刺激が強く不快感を覚える可能性があるとでも思ったのか。
直接手で洗い始めたシオリに、アキラは僅かに申し訳なさそうな顔を浮かべた。
(エレナ達と違ってシオリの身体には見向きもしない。その違いは一体どこにあるのかしら……)
そんな二人の姿を観察しつつ、アルファは考察を進めていく。
(シオリの裸に何の反応もしなかったのは予想が外れたけれど、今のアキラの態度の理由は推測出来る。シェリルに対するものと同じ――)
シェリルも散々困らされたというか、今でも困らされているが。
アキラは自分が上の立場の人間として動けない。
自分が後ろ盾であろうと、恩人であろうと。
基本的には敵か、そうでないかという考えを基準に行動してしまう為――
敵でない以上、相手を対等以上に扱おうとする傾向があるとアルファは考えていた。
(前にカツヤから庇った態度から考えて、一定以上の好意は抱いている筈。それなのに性の対象にならない理由は、どこにあるのかしら?)
その辺りの参考資料とする為、アルファはアキラを騙す形でシオリとの混浴を促したのだ。
確かにアルファなら施設の正しい使い方や常識に捉われず、より高度で快適な時間を届ける事が可能だが――
別に正しい使い方や常識を、知らないとも調べられないとも言ってない。
アルファの言葉を、アキラが勝手に解釈しただけだ。
(もしかして性欲の対象かどうかは、好意の大きさでなく初期の段階で決まって動かない? でも、それならユミナに対する態度は――)
そもそもアルファとしては、どうにか今回の温泉旅行は回避したかったのだ。
アキラの中でシオリの存在が変化し始めているのは疑いようがなく、その変化はアルファからすれば非常に都合が悪い方向である。
これ以上シオリと接触させたくはなかったし、それがアルファに取っては何の得にもならない温泉旅行となれば尚更だ。
だが、シオリがどうこう以前に。
風呂はアルファが知る限り、唯一と言っていいアキラの趣味や楽しみのようなものだ。
大した理由もなく、お預けや中止になんてしようものなら、どれだけ負の感情を抱かれるか解らない。
どうせ避けられないならば、これを機にシオリを見定める事にしたのだ。
――危険を冒してでも処分しなければならない存在かどうかを。
バレればアキラとの契約を破棄される可能性はある。
だからこそ慎重に見極めなければならないが――
逆に言えば警戒を超え危険水準。
完全に契約破棄の可能性となると判断した時点で、容赦をするつもりは欠片もない。
関与している事を悟られないように細心の注意を払いつつ――
それでも出来るだけ確実にシオリを始末する。
アルファは、その心積もりであった。
(……それにしても本当に難しいわ)
アキラ達の様子を眺めながら、アルファは心底判断に困っていた。
失礼にならないよう配慮しているのだろう。
局部を直接見ないように気を付けつつ、後ろからアキラの身体をシオリは洗っている。
その際、どうしても身長差や体勢的に無理がある為、シオリの身体が色々当たっているというのに――
アキラは反応するどころか、何の感慨も抱いていない。
むしろもうすぐ身体が洗い終えるという事を意識し始め、視線は風呂の方向に釘付け。
今か今かとばかりに期待で目は輝き始めており――
それこそ意識され無さ過ぎるシオリを哀れに思いたい程であった。
(どの程度の危険度と判断すればいいの? アキラの不審を買う事になっても処理しなければならない案件なのかしら?)
シェリルのように後ろ盾という関係があり付き合っていかねばならない訳でもない。
エレナ達のように性的な対象に含まれている訳でもない。
それでも見過ごしていいようにも思えない。
アルファは慎重に、慎重に。
二人の観察を進めていく。