中立から内側へ 健全版 作:シオリスキー
『なるほどね……』
(アキラの中では手を出す以上、責任を持って付き合うのは当たり前って事のようね)
そして口付け自体は気持ち良かったけど、シオリ自身を好きかは解らないし。
騙している負い目があるから付き合えない。
(こっちの方が比率としては大きいのかしら?)
自分との契約を優先したから断ったのではなく――
シオリに誠実にあろうとした結果として、自分との契約を選んだとするなら。
『それが理由なら返事をする段階になったら覚悟しておくのね』
その意志を尊重し強化した方が依頼遂行には都合が良いと、アルファは判断した。
『か、覚悟?』
『ええ、そうよ。私の依頼が終わる頃には、シオリが求めているくらいの戦闘力や索敵能力なら私のサポートなしでも十分以上に期待に応えられるくらいになるわ。その時は、そんな言い訳なんかで誤魔化せないわよ』
『言い訳、か……』
その時に力があったって、騙して好きになってもらった事に変わりない。
そんな言葉が一瞬アキラの頭を過るが――
アルファに強く言われたのもあり、確かにそれは言い訳を並べて、シオリの気持ちと向き合うのから逃げようとしているだけに思えた。
『ええ、言い訳ね。待たせておいてそれじゃあ、シオリが浮かばれないわよ?』
『ああ。確かに。アルファの言うとおりだ』
騙しておいて資格がないと本気で思うなら、何を言われても付き合えないと断るべきだったのだ。
待たせてしまった時点で、シオリの気持ちを真っ向から受け止め、その上で答えを出す。
それ以外の道は不誠実なのだと、アキラは改めて思い知る。
――実際のところは断ろうとしてたのにシオリが無理やり止めたので、別に不誠実という程でもないのだが、アキラは気付かない。
『だからそれまでには、しっかり決めておきなさい。覚悟と意志はアキラの担当でしょ?』
勿論、アルファは気付いていて指摘せずに話を進めていく。
その方がアルファには都合が良さそうだからだ。
『ああ、そうするよ』
アキラは改めて自覚する。
アルファの依頼を終えれば、シオリの告白に答えなければならない。
その時までにはシオリの性格や人柄だけで見れるように。
性欲なんかを抜きにして、シオリの事を考えて答えられるようになっておこうと心に決めた。
『受けるにせよ、断るにせよ。どちらにしても待たせるだけ答え難くなるわ。だからこれからは、今まで以上にハンター稼業に力を入れていこうと思うのだけど、いいかしら?』
『い、今まで以上か……』
『ええ。私だって早く依頼は達成してほしいし、アキラやシオリだってその方が助かるでしょ? アキラがシオリへの答えを先延ばしにしたいって言うなら構わないけど……』
アルファはあえて、自分にも利益がある事を口にする。
下手に隠すより、その方がアキラに信用されると今までの観察で予測出来ていたからだ。
『いや、そうだな。確かにあんまり待たせても悪いもんな』
アルファの予測通り。
アキラは疑う事無くアルファの言葉に頷いて、これからは一層ハンター稼業に励むと決意を新たにする。
(色々心配してたけど、最良の結果と言っていいんじゃないかしら?)
これでアキラは自分への恩を返し契約を果たす為。
そして、シオリを待たせてしまっているという負い目から、今まで以上にハンター稼業に精を出してくれる事だろう。
(それにアキラの性格から考えて、まだ付き合っている訳でもないのにシオリに義理立てするのは、ほぼ間違いない……)
おまけにこれでシェリルやユミナ、エレナ達を必要以上に贔屓しようとしても、浮気になるんじゃないかと勝手に悩んで距離を取り始めてくれる可能性が極めて高い。
(下手に色々動かない方が良かったかもしれないけど……)
シオリがアキラの事を本心から好きだなんて言っている事くらい、アルファには最初から解っていたし、どこで嘘を吐いてどこを誤魔化したかも同様。
全て解った上でシオリの信用をあえて失わせる為に嘘や誤魔化しがあったとしか伝えなかったし、逆に自分の言葉を疑われない為に、わざわざサポート対象外だなんて言って乗り気でない振りをした。
そしてシオリの信用を失わせるのが無理と判断した為――
自分の事を話した時にわざわざ姿を見せたり、恋人になりたいと一度も意識してなかった時に怒ったように見せたりして自分の事を意識させる方向へと動いたのだ。
(思ってた以上に、アキラにとって恩や借りってモノの存在は大きいようね)
けれど、そんな事をしてなかったとしても、アキラは自分との契約を優先したのではないだろうかとアルファは思う。
採算を度外視してエレナ達を助けようとする事が多く、アルファの予測を外れる行動を取ろうとする他のケースもユミナに関わる事が多かった為――
色恋沙汰こそ自分の依頼を破棄する大きな障害となると判断していたアルファであったが、今回の件で、その認識を大きく変化させていた。
(終わってみれば最良の結果だったんじゃないかしら?)
シオリは恩を返し終えるまで待つと自ら宣言した。
それでも普通なら忘れられないよう、あるいは他の女に目移りされないよう付き纏いそうなものだが――
言葉通り、本当にアキラを信じて待ち続けるだけの道を選んだ。
それはアルファにとって、非常に都合がよかった。
(焦って始末しなくて正解だったわ)
アルファとしては出来得る限りシオリを始末する方法は取りたくない。
もしバレればアキラに不信感や憎悪を抱かれ、契約破棄される可能性が非常に高いし、バレなかったとしてもサポート能力を疑われ、やはり契約破棄に繋がる可能性がある。
そんな危険性が高い方法をわざわざ取らずに済んで安堵する。
(これからは、シオリの事も少し気に掛けた方がいいわね)
アルファは今回の結果に満足しつつ――
今シオリに死なれでもしたら、あの時誘いを受けていれば守れたかもしれないなんて言い出して、依頼遂行が滞るかもしれない。
その可能性を考慮し、余裕がある時はシオリの動向にも気を配ろうと今後の方針を固めたのであった。
この中で六章に何か言いたい事があれば
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解像度が高い
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展開が上手い
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いきなりの告白に驚いた
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この作品でガッツリ恋愛やるとは度胸あるな