中立から内側へ 健全版 作:シオリスキー
「ここまでかしらね?」
音のないアルファの声が誰に聞かせるでもなく呟かれ消えていく。
アキラがシオリは一人で助けに行くと宣言してしまった為、傍で直接手を貸す事こそしなかったアルファではあるが、裏でアキラを救う為に色々と手を回していた。
(あまりにも予想外の事象が多過ぎたわ……)
二重三重に保険を掛け、誰が死のうともアキラだけは生き残らせる算段だったのだが、その計算は悉く覆されていき――
結果としては誰にとっても最悪に近いものになりつつある。
(上手くいけばシオリ一人死んで終わりの筈だったのに、これ以上無理に助けようとすれば、さすがに遺跡の管理人格を誤魔化し切れない……)
今、モンスターの群れ相手に戦線を保てている理由の一つに、カツヤやエレナが奮戦しているだけでなく、遺跡側のモンスターがシオリを最初に追い詰めた時よりは弱いという点がある。
その理由はアルファが遺跡の管理人格とした二つの交渉にあった。
一つは遺跡側が見付けられなかったシオリを表に連れ出させる代わりに、連れ出したアキラの事を見逃す事。
もう一つは、シオリを始末する為の機会をカツヤに作らせるから、カツヤを見逃せという事であったのだが――
このままでは遺跡側は、交渉は破棄されたと判断するだろう。
(そうなれば、あちらも全力で排除に動き始める……)
遺跡側としても出来るなら無駄に力を使いたくはないのだ。
モンスターだって無から生み出している訳でなく多くの資材が必要だし、強い個体になればなる程、より多くの資材を用いなければならない。
シオリがレイナ達と来た時は人数は三人だけだったし、既に標的を補足している上に自分の庭というべき遺跡内。
強い個体を数体作り仕向けるだけでシオリを仕留められると予測していたが、シオリを見失ってしまい捜索の為に多くのモンスターを生み出さなければならなかった。
その上でカツヤの部隊やサラ達まで本気で排除しようとすれば、どれだけ多くの資材が無駄になるか解らない。
(だからこそ交渉の余地があった訳だけど――)
極端な話、シオリさえ仕留められるなら他の人間なんて遺跡側としてはどうでもいいのだ。
あくまで標的は
だからこそ、邪魔を続けるなら遺跡だってなりふりなんて構って居られない。
シオリを逃がすくらいなら、暫く運営に支障が出る事になろうとも資材を注ぎ込む事を厭わないし、邪魔者は全て排除するべく動き出すだろう。
(助かる可能性は決して低くなかった……)
シオリが事情を聞いて、アキラだけでも生き残ってほしいと自殺してくれていたなら。
アルファの居ないアキラの実力がシオリに守られる程度のものでしかなかったなら。
ユミナがカツヤの邪魔さえしなければ。
どれか一つでも計算通りになってくれていたなら、十分アキラを助けられた筈だったというのに。
(これ以上不測の事態が起きる前に――)
援軍が来る可能性自体はアルファだって考慮しているが――
今更レイナがメイドを引き連れてきたところで焼け石に水の戦力にしかならないどころか、むしろ戦線が入り乱れカツヤを守り切れなくなる可能性が高まるだけ。
他に助けに来る可能性がある人間はキャロルくらいだが、キャロル一人来たところで状況は何も変わらないし、キャロルの知り合いだというハンターランク五十越えの知り合いとやらを何人か連れてくるなら話は変わるが、そこまでして助けに来る可能性は、アルファの計算では限りなく零に近い。
(アキラ諸共シオリを排除するしかない、か)
本当にアルファとしても惜しく、苦渋の決断であった。
というのも旧領域接続者は貴重な存在であり、契約者が死んだからといって簡単に次の相手は見付からない。
それこそ自分達を認識して交流が取れるアキラ級の人材なんてのが現れる可能性は皆無に近く、ほとんど認識すら出来ていないカツヤ級の人材ですら今では見付けるのは困難なのだ。
(幸い、カツヤだけなら確実に助けられる)
だからこそ、カツヤまで失う事態は何としても避けなければならない。
本当ならアイリを突撃させ、アキラとシオリを分断してシオリだけ始末しつつ。
ついでに状況が入り乱れた隙にユミナを始末する予定だったのだが、まるでユミナへの敵意に気付いたようにカツヤは後方へ陣を敷いてしまった。
目論みこそ全て外されてしまったが、カツヤが安全地帯に陣取ってくれた事だけは不幸中の幸い。
管理人格との交渉内容を変更し、カツヤだけは確実に生き残れるよう調整すべく動き出す。
(急がないとマズいわね)
必死で抵抗を続けるサラ達の様子をアルファは確認する。
乗ってきた車は既に大破し瓦礫と化している上に、負傷も目立ってきている。
もはや死ぬのは時間の問題でしかないが、管理人格との交渉が終わる前に死んでしまえば、アキラ達ではなく敵寄せ機を起動したままのカツヤの部隊に向かい兼ねない。
その結果、戦闘が長引いてしまえばカツヤまで遺跡の標的になる可能性さえある。
(最もアキラが生き残れる可能性は――)
だが、サラ達が死んだと同時に敵寄せ機の出力を調整すれば、前線のモンスターは全てアキラとシオリに殺到する。
一目で解る程の絶望的な状況になれば、シオリは自分こそが騒ぎの原因と知っているのだ。
二人とも死ぬくらいなら自分一人犠牲になればアキラだけは助かるかもしれない、と一人で死んでくれるかもしれない。
そんな僅かな可能性に賭けるべく、動き出そうとしたアルファであったが――
「え?」
計算違いだらけの今回の戦場。
更に計算を狂わせるものが急速な勢いで接近している事に気付いたアルファは、全ての動きや思考を一旦停止すると――
再演算の為だけに全ての能力を集中させるのであった。
この中で十六章に何か言いたい事があれば
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解像度が高い
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展開が上手い
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納得が多かった
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面白かった
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カツヤらしい動き
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アイリにもっと美味しい役を
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ユミナ頑張ってるなあ