艦これ 黄色の撃墜王    作:蒼海 輪斗

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菅野直は暴れん坊で喧嘩っ早いが、根はいい性格をしている他に外見も良いため意外と好意を寄せられやすい。あとは意外と健康マニア。
(一部は独自設定です。)
そして新たな人物が現れる…。


〜新たな出会い編〜

屋久島鎮守府 近海

 

 ある日、屋久島近海の上空を一機の紫電改が飛行している。その周りには小さな九九艦爆が編隊を組んで飛行している。

 紫電改の操縦席には大戦から転生し、屋久島鎮守府の提督として着任した日本海軍で黄色の撃墜王の異名を持つ紫電改のパイロット、”菅野直”が操縦桿を握っていた。

 

 「艦爆と編隊を組むなんてな…。なかなかおもしろいな。」

 

 菅野は風防越しに九九艦爆隊を一目見ると、無線機を使って艦爆隊と連絡を取る。

 

 「こちら菅野。これより急降下を開始する。我に続け。」

 

 菅野はそう言うと翼を振って、急降下に続け、との合図をだす。九九艦爆隊も翼を振って返事を返す。

 

 「よし、いくか!」

 

 菅野は操縦桿を引き、機体を海面に向けて傾ける。紫電改が急降下を開始すると、九九艦爆隊もそれに続いて急降下する。

 

 「よし、ついてきてるな…」

 

 紫電改は風を切りながら海面に向けて降下していく。艦爆隊も菅野の紫電改にしっかりついていってる。

 海面がだんだんと近づき、艦爆隊の攻撃目標である標的が見えた。菅野が紫電改に装備した爆弾の投下レバーを握る。

 

 そして、

 

 「投下っ!!」

 

 菅野直の紫電改と九九艦爆隊が、ほぼ同時に爆弾を切り離し投下した。投下された爆弾は標的に向けて雨のように落ちていく。

 

 次々と爆弾が標的に命中していき、遅れて爆発音が響く。標的郡は瞬く間に粉々に砕け散っていった。

 

 

 「全弾命中か…。なかなかやるな。」

 

 菅野は炎をあげながら沈んでいく標的郡を眺めながら、艦爆隊を率いて飛行場に向けて飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

屋久島飛行場

 

 「提督さん!どうだった?どんな感じどんな感じ?」

 

 菅野が飛行場に着き、紫電改を降りると待っていた瑞鶴が声をかけてきた。そうだ。先程の艦爆隊は瑞鶴の放った艦爆隊であり、菅野は瑞鶴の演習を手伝っていたのだ。

 

 「ああ、そうだな。全体的に見たら爆撃の精度は良かったが、急降下時に編隊が少し崩れてたな。そこを直せばもっといいと思うぜ。」

 

 「そう。分かったわ。これからも頑張るから次の演習もお願いね!」

 

 「ああ、任せておけ!」

 

 菅野は瑞鶴に力強い返事を返した。艦娘たちを強くするためだったら何でもする。菅野はそう心に決めていた。

 

 「(強くなることは自分の命だけでなく仲間の命を守ることにも繋がる。)」

 

 菅野は艦娘たちを強くするため、そして日本を守るために今日も戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

屋久島鎮守府 屋外運動場

 

 「よーし!あと100回だ。頑張れよ!」

 

 菅野は白い練習着を着て、瑞鶴と大淀と鉄棒に掴まりながら懸垂をしていた。菅野はらくらく上がり下がりしているが、瑞鶴は歯を食いしばっており、大淀にいたっては汗まみれでへばたりそうになっている。

 

 「かっ、菅野さん…。はぁ、はぁ…、こ、これに何の意味が…、あるんですか…?」

 

 鉄棒に掴まりながら、大淀が息も絶えだえに菅野に問いかける。

 

 「なぁ〜んだ、もう疲れたのか?ま、しょうがねぇな。一旦休憩だ。」

 

 菅野は鉄棒から飛び降り、死にそうになっている大淀と瑞鶴を鉄棒から下ろす。降ろされた二人は地面に大の字になって寝転ぶ。

 

 「ほらよ、しっかり水分とれよ。」

 

 菅野は荒い息を続けている二人に水を手渡す。

 

 「あ、ありがとうございます…。」

 

 「あぁ〜、水が美味しい…」

 

 二人はごくごくと水を飲む。しばらく休んでから菅野は大淀の問いに答えた。

 

 「懸垂は腕の筋肉を鍛える。お前たち艦娘は艤装を手に持って使うだろ?主砲は重量があるし反動も大きい。弓だって腕力が無いと強く引けない。そうだろ?」

 

 大淀と瑞鶴は菅野の話を聞いて理解した。大淀も戦闘に出ることは考えられるため腕力を鍛えておかなければならない。瑞鶴も空母であるため、弓を引くための腕力が必要だ。

 

 「菅野さん、私達のためによく考えましたね…。」

 

 「さっすが提督さん!」

 

 二人は強くなるために必要なことを考えてくれた菅野に素直に感謝している。すると

 

 「そうか。よし!それじゃあ再開するか!」

 

 「「え?」」

 

 この後菅野による地獄の懸垂練習は1時間続いた。

 

 

 

 

 

屋久島鎮守府 学習寮

 

 「駆逐艦は雷撃が基本だ。それに敵はたいてい動き回ってるし魚雷の弾数も限られているから無駄撃ちはできない。正確に狙いを定めて相手の動きを見越して発射する必要がある。」

 

 懸垂を終えた菅野は今度は電たち駆逐艦に対して授業を始めた。菅野は指揮棒で黒板を指し、詳しく分かりやすく解説している。

 

 

 「………」

 

 「暁?聞いてるか?」

 

 「ふぇっ!?と、当然よ!レディは授業中に居眠りなんてしないんだから!」

 

 「(思いっきり寝落ちしてたね。)」

 

 「(寝てたのです。)」

 

 響と電は確実に寝落ちしていたことを見ていた。菅野は首を傾げたが、そのまま授業を続けた。

 

 「〜さらに魚雷は汎用性が高い。駆逐艦、潜水艦はもちろん、一部の戦艦や巡洋艦、さらには俺の乗っている航空機にまで搭載できる。敵艦と対峙した際は不意の雷撃にも注意が必要だ。ここは絶対に覚えておけよ。」

 

 菅野の授業は2時間続いた。

 

 

 

 

その日の夜

 

 「8月後半となれば流石に夜も暑いな…。」

 

 菅野は執務室で扇風機をフル回転させて本日の日記をつけていた。しかしやはり暑い。昼間に訓練をしていたときは気にしていなかった暑さが今になって襲いかかってくる。

 

 「あっつ〜…。飲み物でも飲むか…。」

 

 菅野は立ち上がり、冷蔵庫からサイダーを取り出す。そしてキャップを開けるとごくごくとサイダーを飲む。

 

 「はぁ…!少し暑さは和らいだな。窓は開けておくか。」

 

 菅野は風通しを良くするために窓を開けた。

 

 「あいつらに熱中症になられたら困るしな。」

 

 そう言いながら菅野直は寝室に向かい、布団に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 相変わらず暑い朝が訪れたが、昨日よりはマシになっている。菅野はいつも通り準備を済ますと食堂へ向かった。

 

 

 「おはよう皆。」

 

 菅野はすでに集まっていた大淀たちに挨拶をする。大淀たちの挨拶を返した。菅野も席につくと大淀に今日の予定を話す。

 

 「大淀。今日はこの海域に出撃しようと思う。昨日偵察に行ったら駆逐艦がごちゃごちゃいたからな。」

 

 「そうですね。ですがこの海域は島が少なめな他にここから距離がありますね…。」

 

 「紫電改の航続距離じゃ足りねぇかもな…。」

 

 その海域は屋久島鎮守府からは数千キロほど離れており、ほとんどフィリピン近海だ。艦娘なら距離の問題はないが、紫電改での航続距離では往復することはできない。

 

 そこで、

 

 「そうだ!分かった。少し飛行場に行ってくる。」

 

 そう言い残し、菅野は飛行場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 数時間後、出撃準備をしていた瑞鶴たちの元へ菅野が戻ってきた。

 

 「おう悪い。遅くなった。」

 

 「提督さんやっと戻ってきた。これから出撃だけど提督さんはどうする?」

 

 瑞鶴の問いかけに菅野は即答する。

 

 「もちろん行く。」

 

 「えっ…?でも航続距離が足りないんじゃあ…」

 

 瑞鶴は空母であるため、紫電改の航続距離が長くないことはわかる。所詮局地戦闘機であるからだ。しかし菅野は、

 

 「それなら大丈夫だ。整備長から紫電改にフロート(浮舟)を取り付けてもらった。これなら洋上で着水もできる。」

 

 「えええぇ!!?」

 

 瑞鶴は驚愕する。まさかそこまでするとは思わなかった。確かにフロートを取り付ければ着水も発進も可能になる。さらに洋上での補給もできる。

 

 「けどまだ整備中だからしばらくしたら俺も出撃する。お前たちは先に南方方面に出撃しててくれ。」

 

 「わ、分かったわ…。」

 

 瑞鶴が「相変わらずすごい提督だなぁ」と思いつつも、電たちを連れて出撃ドックへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「菅野さん。本当に行くんですか?」

 

 「あぁ。こいつの性能も試してみたいしな。」

 

 菅野は改装された紫電改の操縦席で準備をしている。そこへ大淀が覗き込みながら声をかけている。

 

 「あそこは強力な深海棲艦がいると思うので十分気をつけてくださいね。…あなたにいなくなってほしくないので…。」

 

 「分かってる。俺だってお前たちにいなくなってほしくない。だからこうして守れるものを守ってるんだ。」

 

 そう言い残し、菅野は紫電改のエンジンをフル回転させる。そのまま海面を進んでいき離水、そのまま大空へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 菅野が出撃してからしばらく経った時、大淀が司令室で瑞鶴たちと無線連絡を行っていた時だった。司令室の黒電話が鳴った。大淀が通信を終了させて黒電話を取る。

 

 「こちら屋久島鎮守府です。」

 

 大淀が電話にでる。電話の主は屋久島飛行場の整備員だった。

 

 「すみません。たった今紫電改が飛行場に着陸したんですが…。」

 

 「?菅野さんじゃないんですか?」

 

 大淀が疑問に思って質問する。

 

 「はい。なんか混乱しているようでそのまま倒れてしまい…」

 

 「倒れた!?今すぐいきます!」

 

 言うが早いか大淀は黒電話を置くと、そのまま屋久島飛行場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、大淀が飛行場に着くと確かに飛行場に駐められている紫電改を見つけた。しかし菅野の紫電改と違い、機体胴体の黄色い線が無い。

 

 「大淀さんすみません急に…」

 

 電話をかけた整備員が大淀に謝罪する。仕事中なのを分かっていて仕方なく電話をしたのだろう。

 

 「いいえ別にいいです。それよりその倒れた人ってのは…。」

 

 「あっ、その人なら担架で運んで救護テントの中です。そろそろ起きていると思いますよ。熱中症ですかね。この通り暑いですから…。」

 

 整備員が手で汗を拭う。大淀も確かにこの暑さでは倒れてもおかしくないと思いながら、救護テントへと入った。

 

 

 そこには菅野と同じ旧海軍の飛行服を着た青年が上半身を起こしてコップに手を伸ばしていた。

 

 「あのー、すみません。」

 

 大淀が声をかけると、青年はびっくりしたようだ。手に持ったコップを落としそうになった。

 

 「!?」

 

 「あっ、驚かせてしまい申し訳ありません。」

 

 「…いや、僕こそすみません。なにがなんだか分からなくて…。」

 

 青年はオドオドしながらも大淀に謝罪する。どうやら自分の置かれた状況が理解できていないようだ。大淀はコップを持っている様子から、

 

 「水ならお入れしますよ。」

 

 と言った。すると青年は「あっ、お願いします…。」と大淀にコップを手渡した。

 

 

 

 

 大淀に水をもらい、飲んでから少し落ち着いたようだ。青年はゆっくりと口を開いた。

 

 「自己紹介が遅れました。僕は海軍上等飛行兵曹の”笠井智一”と申します。」

 

 青年、”笠井智一”はそう言った。彼の説明によると、敵戦闘機の迎撃に向かったところ列機とはぐれ、濃い雲の中を抜けた先がこの屋久島飛行場だったと言うのだ。

 

 「それは大変でしたね…。今菅野さんは出撃していて留守なんです。」

 

 大淀のその説明を受けて、笠井は目の色を変えて大淀に問いかける。

 

 「菅野さん!?それって菅野直隊長ですか!?」

 

 「えっ…。はい、そうですけど…。」

 

 笠井の勢いに大淀は思わず後ずさる。それに対して笠井は距離を詰めて畳み掛けて質問する。顔が本気だ。

 

 「死んだと思ってました!!今どこにいますか!?」

 

 「えっと、先程南西諸島方面へ出撃していきましたけど…。」

 

 「早く向かわないと…!紫電改の準備をしn」

 

 そこまで言い、笠井はパタリと倒れた。大淀が驚いて顔を覗いた。すると

 

 「…寝てる?」

 

 疲れが溜まっていたのだろうか。そのまま爆睡していたのだ。

 

 「なんか菅野さんが来たときと同じみたいですね…」

 

 大淀は苦笑しながら整備員数人に頼み、笠井を鎮守府の医務室まで運んでいった。

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 菅野が瑞鶴たちを連れて帰投した。瑞鶴は小破していたが、暁、響、電の三人は無傷であった。菅野が重巡リ級を機銃で撃ち沈めたからだ。

 

 「おう大淀。今帰ったぞ。」

 

 執務室に入ると大淀が勢いよく菅野の手をつかんだ。

 

 「!?どうした?」

 

 「ちょっと来てください!菅野さんのことを知っている紫電改に乗ったパイロットが先程ここに来たんです。」

 

 「…パイロット?俺のことを知ってる?」

 

 菅野は誰なのか考える。そのまま菅野は手を引っ張られながら医務室についた。

 

 「入りますよ。」

 

 大淀が声をかけて医務室へと入っていく。菅野も大淀に続いて医務室へと入っていく。するとベットの上に見慣れた人物が座っていた。

 

 「笠井…!?」

 

 三四三空でよく一緒に訓練をしたり、松山を基地として推薦してくれた隊員、笠井の姿があった。

 

 「菅野隊長!!やっぱり生きてたんですね!!」

 

 笠井がベットから離れ、菅野に駆け寄る。

 

 「お前どうしてここにいるんだ?」

 

 「それが列機とはぐれて雲の中を抜けたところにここがあったんですよ。着陸したら見たこと無いものがたくさんあって…。ここは日本なんですか?」

 

 笠井はまだ理解できない情報を得るため、菅野に詰め寄る。そこで菅野は大淀に席をはずすように伝え、二人きりの状況で今起きていることを説明した。

 

 ここは2023年の日本で未来であること。戦争は終わって日本が負けたこと。深海棲艦と呼ばれる未知の敵が世界の海の平和を脅かしていること。そして自分が深海棲艦と戦う存在である”艦娘”を指揮するための提督に着任したこと。

 笠井は信じられないような顔をしながらも、菅野の話を聞き漏らさずに聞いていた。話し終わると笠井は口を開いた。

 

 「つまり菅野隊長はこの屋久島鎮守府の提督をしていて、その深海棲艦と呼ばれるものと戦っていると?」

 

 「簡単に言えばそうだな。そんなすぐに信じられることはないよな。でも事実なんだ。信じてもらえるか?」

 

 笠井はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

 

 「もちろんです。そしたら僕のすることも決まっていますね。」

 

 笠井は笑顔で答えた。

 

 「隊長の手助けをすることです!」

 

 屋久島鎮守府に新たな仲間が増えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 朝、食堂で集まっている瑞鶴たちに対して菅野は笠井を連れて行った。皆にも紹介するべきだと考えたからだ。

 

 「それで今日からこいつが屋久島鎮守府で働くことになった。」

 

 「笠井智一です。よろしくお願いします!」

 

 菅野の紹介に皆が拍手をする。笠井はにっこりと微笑んだ。

 

 「笠井さんも司令官さんと同じ飛行兵なのですか?」

 

 電が笠井に質問する。それに笠井は答える。

 

 「はい。紫電改に乗ってます。まだまだ軟弱者ですが…。いつか菅野隊長のような立派な撃墜王になることが夢です!」

 

 笠井は胸を張って答える。よっぽど菅野のことを尊敬しているようだ。

 

 「よし、それじゃあ今日も任務を始めるか。」

 

 菅野が椅子から立ち上がり、執務室に向かおうとする。そこへ笠井が声をかける。

 

 「あの隊長。僕はどうすればいいですか?」

 

 「ああ、そうだな。紫電改の整備を頼んでこい。そしたら訓練だ。ここの技術はすげぇし燃料も弾薬もふんだんにあるから満足に戦えるぞ。」

 

 そう言い残し、菅野は大淀とともに執務室へ向かっていった。

 

 

執務室

 

 「今日は書類が多いな…。最近多くなってきてないか?」

 

 書類をまとめながら菅野が大淀に問いかける。それに大淀は苦笑しながら答えた。

 

 「鎮守府は戦果が多くなるごとに新しい任務が与えられるので、それに関する書類が多いと思います。菅野さん頑張ってますからね…。」

 

 「戦果を上げれば上げた分忙しくなるってことか…。前となんら変わらねぇな。」

 

 ぶつぶつ言いながらも菅野は書類に手を伸ばし書き始める。さらさら無言で書き始める。

 

 「(菅野さん、書類の書くスピードは常人以上なんですけどね…)」

 

 大淀がそう思いながら菅野の執務を補佐する。書類を手渡し、書かれた内容を確認し封筒に入れる。それをずっと繰り返していた。

 

 

 

二時間後

 

 書類仕事が終わり、菅野が読書を始めてしばらく経った頃だった。執務室のドアが開き、笠井が飛び込んできた。

 

 「どうした、笠井?」

 

 「隊長!海軍省から派遣されたと言う艦娘が正面玄関にいるんですがどう対応したら…」

 

 どうやら海軍省から派遣された艦娘がいるようだ。突然で驚いたが、菅野はそれを聞くとすぐに答えた。

 

 「分かった。とりあえず執務室まで案内してくれ。」

 

 「は、はい!分かりました。」

 

 そう言いながら笠井は慌てて執務室を出ていった。その間に菅野は身の回りの整理を始めた。きれいにして出迎えようと思ったからだ。

 

 「確かに戦果を一定上げると艦娘が海軍省から派遣されることもありますね。」

 

 整理をしている菅野に大淀が言う。現に大淀もこの鎮守府ができたときに海軍省から派遣された艦娘の一人なのだ。

 

 「そうなのか?それにしてもいきなり来るもんだなぁ。報告一つも無しに。海軍省は面倒くさがりなのか?」

 

 「それは一理あるかもしれませんね…。」

 

 大淀は菅野の一言に思わず苦笑して言った。最近の海軍省は確かに怠け気味になってきている。

 

 

 

 しばらくすると、廊下を歩く音が近づいてきた。足音からして数人いるようだ。菅野が軍服を着こなし、背筋を伸ばして椅子に座る。

 ドアをノックする音が聞こえる。次に

 

 「隊長、笠井です。派遣艦娘二人をお連れしました。」

 

 笠井の声が聞こえた。菅野は「分かった。入れ。」と返事をする。笠井は

 

 「失礼します。」

 

 と言いながら扉を開く。先に笠井が現れ、その後ろに二人の艦娘が続いていた。一人は小柄な少女で蒼い瞳をしており、髪は銀髪。菅野が見たこと無いような制服を着用していた。

 

 「(ん?日本艦か?)」

 

 菅野が少し顔をしかめた。日本人には銀髪はありえない。艦娘も日本艦の他にもいるのかと思い始めた。

 

 もう一人は背が高く、大人しそうな顔立ちをしており、かなりの美人である。髪は茶髪であり後ろでまとめている。(菅野は後にポニーテールだと教えてもらった)

 

 「(んん〜〜???)」

 

 菅野がさらに顔をしかめる。大淀は菅野の様子がおかしいことに気づき始めたが、しばらく黙っておくことにした。

 

 「そ、それじゃあ自己紹介を頼めるか?」

 

 菅野がいつもより震え声で二人に言う。笠井は菅野の横に立ちながら様子を伺っていた。

 

 「それじゃあ君からお願いします。」

 

 笠井が銀髪の少女に声をかける。少女は「はい。」と答えた。

 

 「私はJ級駆逐艦のネームシップ、Javelin(ジャベリン)よ。覚えておいてね。」

 

 少女、ジャベリンが自己紹介を終えると菅野は机にガン、と頭を打つ。

 

 「(イギリス海軍じゃねぇかぁぁぁ!!!!)」

 

 菅野は心境ではかなり憤慨している。太平洋戦争では菅野はアメリカ、イギリス軍の戦闘機と激しい戦闘を繰り広げていた。失った仲間も多い。なので菅野は連合国をかなり嫌っていた。相手が連合国の中心イギリスとなればなおさらだ。

 

 「(だが俺は艦娘は差別しないと決めた!ここは早く終わらせて逃げるぞ!!)」

 

 菅野が机から顔を上げる。額を痛めていたがそんなことは気にしてられない。

 

 「…あぁ、よろしく…。次、お願いできるか?」

 

 菅野が笠井に顔を向ける。血管がむき出し、常人には分からない殺気を感じ取った笠井は怯えながら、

 

 「じ、じゃあ、お願いします…」

 

 と残った茶髪の少女に言う。少女は菅野と笠井の状況に少し違和感を感じたが、まず自己紹介が先だと口を開いた。

 

 「航空母艦、Saratoga(サラトガ)です。サラとお呼びくださいね。」

 

 菅野はまたもや机に頭を打ちつける。それにジャベリンとサラトガのみならず大淀と笠井も驚く。

 

 「(アメ公じゃねぇかぁぁぁ!!!!)」

 

 アメリカ空母、サラトガの紹介で菅野の視界は真っ暗になる。アメリカだけはだめだ。菅野はイギリス以上にアメリカのことを嫌っている。

 

 そして頭を数回打った拍子に、脳内にはトラウマが蘇った。

 

 

 

 

 

 米爆撃機B-29より落とされる無数の爆弾。焼き払われる日本の本土。逃げ惑う人々。それを容赦なく機銃で撃ち殺していく米戦闘機…。

 

 

 

            …守れなかった故郷の姿が目に映った。

 

 

 

 

 菅野が両手で頭を抱えている。それを大淀が心配そうに見ている。すると笠井が口を開いた。

 

 「すみません。隊長は少し気分が悪いみたいなのでこのあたりで…」

 

 「そうね…。さっきから顔色悪いと思ったらそういうことだったのね。」

 

 笠井の言葉にジャベリンが納得する。それにはサラトガも同情する。

 

 「確かにね。すみません、えっと…」

 

 サラトガは笠井の方を向きながら何かを言おうとしている。笠井は自分の名前を教える。

 

 「僕は笠井智一です。」

 

 「あっ、笠井さん。それじゃあ私たちは部屋に行きますね。」

 

 「それならご案内しますよ。ついてきてください。」

 

 「Oh、thank you。それじゃあお願いします。」

 

 笠井は二人を連れて執務室を出ていった。三人が出ていってしばらく経ってから菅野は椅子から立ち上がる。

 

 「…悪いな大淀。情ねぇとこ見せて。」

 

 「いっ、いいえ!別に大丈夫です!」

 

 菅野の謝罪に大淀は慌てて大丈夫だと伝える。そして大淀は少しためらって菅野に質問する。

 

 「あの、菅野さん…。海外艦の方となにかあったのですか?」

 

 その質問に菅野は大淀に向き合って答える。そして意を決した表情をして静かに話し始める。

 

 「そろそろ本当のことを話すべきだな。大淀。今から言うことは決して口外しないと約束してくれ。」

 

 菅野の真剣な表情に大淀はこくりとうなずく。

 

 「…実は俺は大東亜戦争時の紫電改パイロットである第三四三海軍航空隊の隊長、菅野直なんだ。」

 

 「っ!!?」 

 

 衝撃の告白に大淀は驚愕する。本当にいままで海軍省から派遣された提督だと思っていた人物が、なんと太平洋戦争時の海軍航空隊の隊長だったのだ。困惑している大淀に菅野は付け加える。

 

 「もちろん信じられないよな。今すぐじゃなくていい。少しずつでいいから信じてくれ。」

 

 菅野はそう言いながら頭を下げる。すると大淀が口を開いた。

 

 「…分かりました。これは口外しないと約束します。確かにこれは口外したら大騒ぎになりますね。それを菅野さんは危惧して…」

 

 「あぁ、そうだ。隠していたが、いつか話さないといけないと思っていた。」

 

 「それじゃあサラトガさんたちを見た時のは…」

 

 大淀の一言に菅野はうなずく。

 

 「俺はアメリカ軍機と戦っていた。そして多くの仲間が死んでいった。本土が空襲に遭い、多くの人が死んでいった。」

 

 「……」

 

 大淀は黙って聞いていた。菅野の言葉から当時の痛々しい光景が想像できる。

 

 すると菅野が声を上げた。

 

 「でもよぉ、艦娘には罪はねぇ。悪いのは当時のアメ公共だ。今日本はアメ公と同盟を結んでるらしいしな。」

 

 大淀が顔を上げる。菅野は、笑っていた。

 

 「しょうがねぇ。今は深海の奴らをアメ公だと思って戦ってやるか!」

 

 「菅野さん…」

 

 「心配すんな大淀。昔のことは忘れる。今与えられた責務を全うするのが帝国軍人だ。」

 

 菅野はそう言うと、執務室を出ていった。大淀はしばらくその場でボッーといたが、ハッと我に返る。

 

 「(菅野さん、苦しい思いをしていたんですね…。支えないといけませんね。私達の手で…!)」

 

 菅野の心に寄り添う。そう大淀は決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 菅野の部下、そして米英艦が着任した屋久島鎮守府。果たしてこの先どうなっていくのか…。

 

 

 

 

 

                〜新たな出会い編 完〜




新たな仲間が加わり、大波乱が巻き起こる。菅野は米英艦と打ち解け合えるのか…。サラトガたちの対応は?
次回に期待ください。
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