リセット系迷宮探索ゲームにTS転生したら、子沢山になりました。 作:霜月 聖唯
(どうしてこうなった・・・いや、そんなことを考えている場合ではなさそうだ。さっきの神様、女神様か?の言うことを真に受けるとして。ここは『スワンプランビリスⅣ』の世界で、ここがスタート地点のはず。で、ボクは死んだらしい?よくわからないけれど作ったキャラ=九葉牡丹になっていて。えっと12時間で出産?いやそれはちょっと置いておこう。あ、女神様?の置いていったカードバインダーがある・・・。)
さっきまで成人男性だったはずのボクは、混乱の真っ只中だった。
それでも、このまま何もせずにいるのがマズいことだけは理解していた。
(そうだ、バインダー。最初の武器が選べるはず。)
『スワンプランビリス』シリーズでは最初の流れが、オープニング→カードバインダーと武器を手に入れる→チュートリアル用迷宮に潜る→街に着く、で共通していて、Ⅳもこの流れだろうと予想できた。
(よし、ちゃんと武器のカードがある。)
「ん、んん。“粗鉄の武器”」
ー 武器種を選択してください。
カードを手にすれば使い方がわかった。意思を込めて名前を宣言することで、描かれているものを実体化できるのだ。
『スワンプランビリス』シリーズでは、武器防具やアイテム等はカード化でき、必要に応じて状態を変化させる。
そしてこの“粗鉄の武器”はキャラを作ったときにしか貰えず、失われず、最初に選んだ武器種から変えられないといった特別なカードである。
(システムメッセージが脳内に響くのはなんだかゲーム的だなぁ。ちょっと面白い。っと、選べるのは、剣・槍・斧・弓・杖・ハンマー?重たそうな斧とハンマーは無し、矢をいちいち拾いたくはないから弓もダメ、で、あんまりモンスターに近づきたくはないから・・・)
「槍を。・・よし。“粗鉄の槍”」
選択すればその通りにカード名が“粗鉄の武器”から“粗鉄の槍”に変わったので、宣言して手の中に少しボロボロの槍を実体化させた。
“粗鉄の槍”
武器/槍
攻撃力:1
射程:1ー2
(歩くときは杖がわりにしよう。
そうしてボクは迷宮探索の第一歩を踏み出すのだった。
ー 浅層・廃棄物の山1F
(システムメッセージ。なるほどスクラップの棄て場かな。隠れながら進めそうだけど、逆に隠れているモンスターも居てるんだろうな。で、ゲームならここで進め方の説明とかが入ったりするんだけれど。)
迷宮に入ってすぐの、ここが何なのかのメッセージのあとは無音だった。
(なんもなしかぁ。探索なら地図が要るとは思うんだけれど、バインダーには武器しか入って無かったし。わからないけど進むしかないか。)
周囲を警戒しつつ、足音を立てないように慎重に進んでいく。
(それにしても洞窟の入り口に入ったのに空が見えるのは違和感しかないなぁ。そんなに広くはない単純なマップだろうから、最悪しらみ潰す感じで探索しても大丈夫・・・か?)
まずは入り口から左を向いて壁沿いに歩く。
部屋の角に着いたので右に曲がって直進、少し歩くと見えた脇道に入る。
ぽよん。ぽよん。
そして聞こえてくる、なにかが弾むような音。間違いなくモンスターが居る。複数固まってそうにはないので、エンカウントは避けない。
杖がわりにしていた槍を構えて、摺り足でじわじわと進む。
(さて。まずはひとあて。何が出る?・・・ってタイヤ?)
現れたのは弾む自動車のタイヤ、それもホイールすらないゴムタイヤ部分で。
(いやこれモンスターなのか?上下に動いて面倒くさい・・・気づかれた!?)
気を取られている間にこちらに気づいたらしく、弾むのをやめて転がってきた。そこそこのスピードが出ている。
「ええい!刺さって!」
構えた槍を突き出す。一瞬弾かれかけたものの、タイヤにしっかりと突き刺さり、モンスターは動きを止める。
その隙に槍を引き抜いてもう一度突き刺すと、ゴムタイヤは煙となって消え、あとには一枚のカードが残った。
“ゴム”
素材
(あっぶない危ない。槍にして正解だったなぁ。でも2回で死ぬのがわかったから、不意打ちにさえ気を付ければイケるかな。そしてドロップは普通にゴムだったか。)
“ゴム”を拾い上げ、手もとに現れたバインダーにしまう。
(このカードバインダーも謎仕様だよなぁ。使わないときはどこに行っているかわからないけど、まぁ便利だし気にするところじゃないんだろうなぁ。)
1回戦闘を経験してしまえばあとは大した問題もなく、2Fへの階段も見つかった。
そうして体感1時間もかからないうちに5Fに到達した。
(バリエーション豊かだけれど、ずっとタイヤしか見てない。トラック用っぽい頑丈なタイヤは怖かった。でも結局被弾はないからヨシ。伝統的にこの階でここも終わりだと思うんだよね。さて、暫定最後の階も慎重に行こう。それにしても喉が乾いた。)
いじっていたバインダーから手を離す。
ここまででタイヤから“ゴム”が5枚、“硬質ゴム”が1枚。道中で“鉄”が2枚、“火炎”が1枚の取得となっている。
“硬質ゴム”
素材
“鉄”
素材
“火炎”
魔法/攻撃
攻撃力:3
射程:1ー4
(“火炎”は武器を作るときに使えるはずだから、できるだけ残しておきたい。死にそうになったら使うけれど。)
それから5Fもじわじわと進み、“ゴム”を2枚得た辺りで。
(あ。出口っぽい。ようやく街に行ける!)
階段ではなく迷宮出口らしきものを見つけて躊躇無くくぐった。
ー 上層街
(って言われても間近にある訳じゃないか。あー。少し行ったところに街っぽいものが見えるなぁ。よし、あとひと踏ん張りか。)
迷宮を出た時点で、武器はバインダーに仕舞われている。装備している状態ではあるが、街中で武器を振り回したりはできないようだ。
ぽてぽてと歩く、歩く。お腹は重いが中から蹴られたりとかは一切無い。
(リセットされたからか喉の乾きも無くなってるなぁ。
そういえばリセットされる前のお腹の中身とかどうなったn・・・やめとこう。ていうかこっから12時間でホントに・・・いやこれもやめとこう。)
ぽてぽて。ぽてぽて。ぽてぽて。ぽてぽて。
「ようこそ迷宮都市の上層街へ!って妊婦!?お嬢ちゃん大丈夫かい!?いやそれよりもまずは身分証とかあるのかい?」
「え、あ、はい。これがそうです。今日からお世話になります。宿までの道を教えてください。」
ボクの容姿を見てなんだか混乱している門番にバインダーを見せる。
「っ!これは女神様の!いやしかしそれで妊婦!?いやいい、それよりだ。おい!相棒!交代だ!オレぁこの嬢ちゃんを宿まで案内してやんなきゃならん!!」
すると門番は慌てて詰所から交代要員だと思う人を呼んできて、親切にも宿まで付き添ってくれ、
「おおい!執事、女神様からなんか話聞いてんだろ!?このお嬢ちゃんがそうらしいぞ?」
「ええ、聞いていますとも。いらっしゃいませ、巫女様。これからこちらでおくつろぎください。」
宿の管理者の執事?に引き継ぎをして帰っていった。
「(巫女様?)ありがとうございます、よろしくお願いします。」
そして部屋まで案内されて。
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(それから1ヶ月、か。幸いだったのは
実際に出産の苦しさを味わうわけではなく、自分が仔狐を産み育てる様子を、他人事のように見ているようだった。
(産まれたては狐そのまんまだったなぁ。でも3人も無事に産まれてくれてよかった。で、1ヶ月経てばちゃんと人っぽくもなれるんだ?)
母様母様と寄ってくる見た目5歳くらいの我が子を撫で、
(ボクも3児の母か。実感はないなぁ。でも、ふふ。可愛い。髪の色はボクとおんなじ銀か。あ、名前。名前をつけてあげないと。3人だから雪月花ベースで、初めての子だから。)
「うん、