PSYRENのアニメ化は連載が完結して15年が経ってようやくだから……まさか、ね…?
非常にまずい状況になった。結城は焦りと恐怖で愕然とする。レベル2の幻妖が複数体いる中で更にレベル3の幻妖が現れた。
レベル3の幻妖は人を喰らい続けることで変化しより凶暴になる。その凶暴さにより討伐難度は跳ね上がっており、討伐できる者は限られている。
「にゃーん、さっきからジロジロ見て……ニャーのことが珍しいのかにゃ?」
鉤爪についた血を舐めきった猫趙はギョロリとした目で結城達を睨む。結城達が異様に感じたのは猫趙の姿だ。本来、レベル3の幻妖は人を喰らうことで顔が人らしくなる。だが目の前にいる猫趙は人の顔や姿ではなく獣の類の姿であった。そうなると考えらるのはひとつ。
「あんた別の神有地から来た幻妖ね……?」
神有地またはその付近に出現する幻妖は神有地の影響か本来の幻妖とは別の姿に変異することがある。変異した幻妖は普段の幻妖と異なる力を有し、『怪異』を起こす。
「まああながち間違っちゃないにゃ。しかしこの辺りはザルだから余裕で侵入できると聞いたが、見張りがちゃんといるじゃないか」
猫趙の言葉に愛蓮はぴくりと反応する。猫趙は『聞いた』と言った、何者かが猫趙をこの神有地へ手引きした可能性がある。愛蓮は切られて今も出血しついる横腹を抑えながら立ち上がり裁ち鋏の盡器の切っ先を向ける。
「あんたが誰から聞いてどうやって来たか、ぶちのめしながら聞き出そうかしら…」
愛蓮の闘志に猫趙は鋭い歯を見せて大口をあけて嘲笑う。
「いかにも弱っちそうなお前らがニャーをぶちのめす?餌風情がニャーに勝てると思ってんのかにゃぁ?」
「さ、鮫島さん!い、今は逃げないと…!」
自分達の実力ではレベル3の幻妖に勝てるはずがない。
「結城殿!鮫島殿っ!助太刀を――」
彩葉が急ぎ愛蓮達のもとへ駆け、猫趙の背後へ迫ろうとするが
レベル2の幻妖が立ちはだかり大きな手で叩きつけてきた。
「うわっ!」
彩葉は後方に跳んで回避したが、彼女を取り囲むように他の幻妖の群れが襲い掛かる。
「くっ…邪魔をするな!」
結城達を助けたくても幻妖の群れが行く手を阻む。その様を猫趙はしらけた表情で見ていた。
「あれは力尽きて無残にも食い殺されるだろうにゃぁ。ま、どうでもいいにゃ」
猫趙は欠伸をしながら長い腕を伸ばし背伸びをする。相手は余裕綽々なのだろう。愛蓮はチラリと結城の方へ目を向ける。
「結城、あたし達ができるだけ時間を稼ぐ……その間にあんたは逃げて助けを呼んで」
「そんな…!ダメだよ鮫島さん!怪我をしてるし…僕達の力じゃレベル3の幻妖を討伐できるはずが…!」
焦り止めようとする結城に愛蓮は舌打ちして足蹴した。
「できるできないじゃない、やるのよ!生き抜くことを専念しなさいよね!」
「――誰が生き抜くってかにゃ?」
愛蓮の目の前まで猫趙が迫っていた。愛蓮はすかさず振り下ろされた鉤爪を裁ち鋏の盡器で弾き返す。
「お前らは死ぬにゃ!死んで刻まれてニャーの餌となれ!」
「冗談、誰が猫の餌になるかっての!」
愛蓮は臆することなく猫趙に向けて刃を振るう。振りかかる鉤爪を火花を散らせながら刃で弾き返えしていく。激しい攻防を繰り広げているが、動くたびに血がにじみ出し愛蓮は苦痛の表情を浮かべた。
「にゃははは!どうした、動きが遅くなってるぞぉ?」
嘲笑いながら鉤爪で襲い掛かる猫趙に愛蓮は苛立ちながら攻撃を弾き、避し、一歩下がってから盡器の柄を力いっぱい握りしめた。
「いちいち……うっさいっ!!」
令力を込めて力強く薙ぎ払った。しかし猫趙は焦ることなく長い体を仰け反らせ愛蓮の渾身の一撃は空を切る。体を起こした猫趙はギザギザの歯を見せてニヤリと笑う。
「――猫殺」
鋭い鉤爪が更に大きくなり横へと薙ぐ。勢いよく振りかかる凶刃を愛蓮は咄嗟に盡器で防ぐ。鉤爪は止めることができたが衝撃は受け止めきれず横腹からぷしっと血が吹き出す。
「っ…!」
激痛が走った体は持ちこたえきれずふっ飛ばされた。地面に打ち付け体がバウンドしつつも愛蓮は受け身を取って起き上がる。顔を上げた瞬間、猫趙の鉤爪が目の前に迫っていた。愛蓮はすかさず盡器の持ち手を変えて下から上へと斬り上げた。彼女の反撃に猫趙は攻め手を止めて体を反らして躱す。その隙に愛蓮は後ろに下がって間合いをとった。
「ん、しぶといにゃぁ……」
思うように刻めない猫趙はブスッとした顔で睨むが愛蓮は臆することなく構える。しかし横腹から血は尚も流れ、息が荒れ始め、額には汗がにじんでいた。
「痛みと恐怖が段々とのしかかってきているにゃ。お前、もうすぐ死ぬにゃ」
「誰が死ぬもんか……あたしは簡単に死なないっての」
愛蓮は息が荒くなりながらも好戦的に笑って猫趙へと迫る。
「さ、鮫島さん……」
結城は愛蓮から逃げろと言われたが恐怖と焦りで動けないでいた。
初めて遭遇するレベル3の幻妖に対して負傷しても尚折れることなく戦う愛蓮、幻妖に囲まれ攻められボロボロになりながらも奮闘する彩葉。自分は戦う彼女達を置いて逃げていいのか、結城は立ち尽くしていた。
(僕は……僕はどうしたら……!)
「あぐっ…!」
その時愛蓮の悲鳴が聞こえた瞬間、愛蓮が結城の近くまでふっ飛ばされた。
「鮫島さんっ!」
ボロボロになっている愛蓮へ駆けつけようとしたが愛蓮が起き上がりながら結城を睨んだ。
「結城…さっさと逃げなさいよ…!」
「にゃははは、何もできない役立たずを逃してなーんになるんにゎ?お前ら殺して逃げる役立たずもすぐに殺してやるにゃ」
猫趙は大口で嘲笑いながらゆっくりと結城達へと近づいていく。そんな猫趙に愛蓮は睨み返す。
「役立たずな奴なんていない…!」
「…!」
その言葉に結城は思わず愛蓮の方へ目を向けた。
「どっかのバカの話の盗み聞きしたんだけど……あのバカ、バカのくせにいい事言うじゃんか」
結城は七輝の言葉を思い出した。役立たずな奴なんていない、誰だって誰かのために役に立つ、大事な役目がある。
―――ユッキー、その役目を見逃すなよ?
ニッと笑ってくれた七輝の言葉を思い出す。彼の優しさに勇気をもらったこと。足の震えは治まり、結城は愛蓮の前に立った。
「結城、何を……」
結城は懐から小さな札と救難用の信号弾を取り出して愛蓮に渡した。
「鮫島さん、絆創膏低度の治療用の呪符を使って。少しでも回復できるはず」
「いや結城、だからあんた何を」
「ぼ、僕ができるだけ時間を稼ぐから……!」
結城の話に猫趙は大きな声で笑いだした。
「にゃはははは!!さっきまでの腰抜けがニャーに勝とうと?面白すぎ冗談だにゃ!」
猫趙の嘲笑に結城は揺らぐことなく、持っていた鞄から小さなカプセルを取り出した。
「僕は戦闘向きの盡器を持ってないし、お前に勝てると思ってない……でも、仲間を護ることはできる。それが僕の役目――!」
結城は令力を込めてカプセルを放り投げた。宙を舞うカプセルは光を発し、中から大きな角がある力士のような鬼の姿をした木製の大きな人形が現れた。
「
絡繰汎具。江戸時代後期から一層に絡繰人形の技術が進んだことにより、陰陽師の1人が汎具として利用できないか開発したことからできた汎具である。操り人形のように外から操作する型と絡繰人形内部に入り操作する型と様々あったがいずれも操作が難しく、扱える人間は少なかったと言われる。
結城は指から糸状の盡器を出して汎具に繋げ、魅鞍洲を動かす。
(――七輝くん、僕に勇気を……!)
「にゃーん、何かと思えばいかにも壊れそうな玩具だにゃ。こんなガラクタ、一瞬でバラバラにしてやるゃ!」
猫趙は鼻で笑いながら魅鞍洲に迫ると鋭い鉤爪を振り下ろした。魅鞍洲の体を裂こうとした鉤爪はガキンッと鈍い音を上げて魅鞍洲の胴にぶつかった。
「は?堅っ…!?」
驚くも束の間、魅鞍洲の振り上げた拳が猫趙に迫った。猫趙は後ろへ跳んで躱し、魅鞍洲の拳は地面に強い衝撃をぶつけた。
「にゃ……!」
直ぐ様魅鞍洲に迫り、長い体を動かして操作する結城目がけて鉤爪で切裂こうとしたざ魅鞍洲の腕に受け止められた。
猫趙は指と繋がる糸の盡器で操作する結城を睨んだ。魅鞍洲のボディは堅いが動きは鈍い。うまく回り込めば狙えるが彼の操作で動く絡繰人形に阻まれる。どうやって獲物を仕留めるか、目をギョロリと動かし画策する。
「にゃふ、頑丈で力はあるが動きは鈍い……」
結城が指で操作するも魅鞍洲はぎこちない動きで猫趙へと近づき拳を振るうが一撃は当たることなく猫趙に躱され鋭い鉤爪がボディに刻まれる。
「にゃはっ!遅い!遅い!遅すぎるにゃぁっ!」
鉤爪による攻撃が何度も直撃し硬い金属音が響き渡る。結城は魅鞍洲を後退させる事なく猫趙の攻撃を受け止めて持ち堪えさせた。結城は必死の形相で前進して操作するが突然鼻血が流れだした。
「結城!あんた大丈夫なの…!?」
「ご、ごめん……絡繰汎具は結構令力を消費する上に僕の令力は低いから……が、頑張っても3分が限界……!」
結城の令力が弱まっているからか指先から出している糸がひとつ、またひとつと千切れていき、魅鞍洲の動きが遅くなっていった。
「ほれほれ!死が近づいてきてるぞぉ!」
猫趙が嘲笑いながら魅鞍洲の体に鉤爪による斬撃を刻んでいく。だが結城は鼻血が止まることなく流れても、令力を激しく消耗して朦朧しかけても、彼の目に恐怖はなかった。
「まだだ……まだ、動けるんだ……!」
残りの糸に自分の中に残っている令力をありったけ流しこみ指を動かして魅鞍洲を動かし、渾身の拳を猫趙へと放った。
しかし猫趙はひらりと躱し魅鞍洲の拳は空振りに終わった。繋がっている糸が切れ、魅鞍洲の動きが止まったと同時に結城はガクリと膝をついた。その瞬間を猫趙は見逃さず、ギザギザの歯を見せて嘲笑い結城へと迫った。
「にゃはっ!まずは1人!」
「結城っ!」
愛蓮が駆けつけようとしても猫趙が速く、間に合わない。結城は迫りくる鉤爪に避けることも動くこともできずただ目を瞑って死を待つことしかできなかった。
(――みんな……ごめん…!)
目を瞑っていても未だに痛みが来ない。何が起きたのか結城は恐る恐る目を開けた。
「わるいユッキー!遅くなっちまった!」
目の前には猫趙の攻撃を受け止め、ニッと結城に向けて笑う七輝の姿があった。
「な、七輝くん…!」
七輝が駆けつけてきたことで結城の緊張の糸が解れブワッと涙が流れた。
「うわ、ちょ、悪かったって!ガチ泣きすんなって!」
「にゃんだこいつ……?」
横から割り込んで攻撃を受け止めた七輝に猫趙は訝しつつも後ろへ下がった。突然現れた変な奴、応援に来た輩だが結城達と同じ若い。しかし本能が感じた異様な気配に猫趙は警戒する。
(――なんだか違和感を感じるが、ガキと変わりないかにゃ?)
「真田!来んの遅い!」
「さ、真田殿!救援助かるでござるっ!」
愛蓮はグワッと七輝に悪態をつき、彩葉は幻妖の攻撃を躱しながら手を振る。
「仕方ねぇだろ、ずうっとユッキーに電話かけてんのに一向に出ねぇし、必死に走り回ったんだぞ?」
七輝は手に持っている携帯を結城達に見せた。すると携帯がスッパリと切れた。
「え」
「は?」
「あっ」
「あ゛ああああああああっ!?」
見事三つに切れて壊れた携帯を見て七輝は絶叫した。七輝は携帯を持ったまま猫趙の鉤爪を受け止めた。その斬撃は七輝に届かなかったが携帯に届いていたようだ。
「俺の携帯が……七咲先輩との唯一の連絡手段が……!!」
七輝はわなわなと震え、拳を強く握りしめるとギロリと猫趙を睨見つけた。
「てめぇ……絶対に許さねぇ!!俺を怒らせたこと後悔させてやる!!」
「あのー……助けに来てくれたことは嬉しいけど、ふつう僕達が傷つけられたことに怒るとこなんだけどなぁ……」
「結城、諦めて。あれはバカだから」
憤慨する七輝に対して猫趙はふんと鼻で笑って嘲笑う。
「ふん……助っ人気取りのようだが、ただのガキと変わりないにゃ。お前もニャーの餌に――」
猫趙が言い切る前に七輝は猫趙の目の前まで迫ってきていた。
「は?速っ――」
「――赤陽っ!」
七輝は赤熱化した拳で猫趙のボディを思い切りぶん殴った。強い衝撃と灼熱を受けた猫趙に苦悶の表情が浮かびふっ飛ばされた。
「ごにゃふっ!?」
体が宙を舞うが長い体を捻らせて着地をし、赤い拳の跡がついた腹をさすりながら七輝を睨む。怒れる七輝はぽきぽきと拳を鳴らして猫趙を睨み返した。
「てめえは絶対にぶちのめす……覚悟しやがれ」
「この餌風情が……!!」
魅鞍洲……モデルはウルトラマンセブンより、カプセル怪獣ミクラス
こう見た目はごっつくパワーはあるけどセブン本編ではあまり活躍せず……メビウスとかデッカーとか後の作品では活躍しててよかった