虹の陰陽師   作:サバ缶みそ味

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 作者のこれがやりたかったシリーズ第二弾……


20話 青春アミーゴ

 俺は人よりも何倍、いや何十倍、いや何百倍、いやそれ以外に負けず嫌いだった。

 

 舐めてきたらぶちのめす。ガキの頃から野獣のように荒くれて喰らいついた。高校生や大学生の売られた喧嘩は倍返し。舐めてきた奴、気に食わない奴は片っ端からぶちのめしてきた。

 

 たとえそれが異形な輩でも、だ。

 

 小学校の帰り道、河原を歩いているとなんだか幽霊みたいな変な奴が複数現れて俺の周りを漂っていた。最初は気のせいかと思っていたが、次第に疲労感や虚無感がのしかかってきた。どうやらこいつのせいらしい。気に食わなかったのでぶちのめしてやった。

 

 

「へー、レベル1とはいえ幻妖相手に素手で勝っちゃう子初めて見た」

 

 長い戦いの末にやっと一体倒した矢先、女性の声がした。声の方へ振り向くとそこにはスラッとしたスタイルの良い赤髪の女性が俺をじっくりと見ていた。

 

「……おねーさん誰?」

 

「おっ?霊衣姿の私が見えてるんだ……ふむふむ、君なかなかサイノーあるよ?」

 

 その女性はハニャっと笑った。というか何故学ランチックな服装を?サイズが小さいのではという服を着てる故か魅力的なスタイルだが、俺が目に焼きついたのは―――

 

「力はある。だけど力任せだけじゃ君は強くならない。君に必要なのは―――」

 

 その女性はいつのか俺の前に立っていた。なんと速いことか、そしてくるりと回って華麗な上段回し蹴りで残りの幽霊みたいな奴を消した。

 

「知恵と速さと技術力!力と共に上手く使いこなすことが大事さ」

 

 そう、俺の目に焼き付いたのはその女性の華麗な御御足とスタイルの良いお尻―――

 

 

「私は風巻弧宮子!少年よ、私と一緒に強くなってみないかい?」

 

 これが俺の陰陽師への道の始まりであった。

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

「いやー……私って天才だと思わないかね?」

 

 校長室にて、武藤校長は自画自賛しながら高笑いしていた。その校長の横で伏見が意見を述べたくても述べられない気まずそうな表情でただ頷くていた。

 

「あの問題児の真田君は力がついてますますサボるようになっちゃってたし?ほんとこの学校舐めてる?てゆうか校長舐めてるでしょって思った矢先、いい考えを閃いちゃった」

 

「……」

 

「そう問題児には問題児をぶつけるんだよ。毒には毒を、怪物には怪物を的な?そう、プライドが高い彼らはきっと反発し合う。そして争い合ったその先には対消滅するのさ」

 

「………」

 

「終わらない戦いに彼らは疲弊し、その隙を狙って私達が割って入って両成敗!それからは真面目に勉学に励むはずだ」

 

「……………」

 

 どう考えても『勝った方が我々の敵になる』流れになるのでは、と伏見は考えたが言えなかった。

 

「しかしながら、南海君の暴動の理由が『推しのライブ配信の視聴の邪魔をされたから』ってのがねぇ……校長おっかなびっくりだよねー」

 

 やれやれとため息をつく校長に伏見は取り敢えず苦笑いした。その時、校長室に教員が慌ただしく入ってきた。

 

「む、武藤校長大変です!真田君と南海君が訓練広場で暴動を!!」

 

「おっ!ついに始まったか!さあ対消滅するがいい!」

 

 武藤校長はウキウキ気分で窓から外を覗く。そんな校長を余所に伏見は内心かなりハラハラしていた。

 

 伏見は知っている。七輝は戦いに熱中しすぎて入学する予定だった北高を半壊したことを。この喧嘩で下手したらここを半壊してしまうおそれがあることを。

 

(お願いですから七輝くん……校舎を破壊するようなことは絶対にしないでくださいね……!)

 

_______

 

 

 七輝と薫は互いに不敵な笑みを見せながら睨み合っていた。

 

「さあ始めようか、真田七輝よ」

 

 上半身をさらしで巻いて学ランを羽織った変わった霊衣を纏う薫は手で煽って挑発する。

 

「言っておくが頂点に立つのは俺だ」

 

 挑発に乗るどころか挑発し返す七輝は拳を鳴らす。そんな対峙する2人の戦いを観戦する野次馬達の中に結城達が彼らを見守っていた。

 

「ま、また無許可で……九条先輩に怒られるよ……」

「どっちも怒られればいいのに。てかなんであたしまで応援しなきゃなんないのよ」

「この戦い……手に汗握る熱い戦いになるでござる!」

 

 彩葉がふんすと張り切って見守るが愛蓮は早く帰りたい気分だった。それでも尚、結城は七輝と薫の喧嘩の行く末を見守る。

 

「「いくぞっ!!」」

 

 この一声が戦いの合図か2人は同時に迫る。最初に薫の拳が七輝の顔面に向けて放たれた。七輝は片手で拳を払い、薫の下顎目がけて拳を振り上げる。

 

「ふっ!」

 

 しかし薫は七輝の動きを読んでいたのか体を反らして躱し、七輝の腕を掴むと背負投げで七輝を放り投げた。七輝は体を翻して着地し顔を上げた瞬間、薫の踵落としが迫っていた。

 

「危なっ!」

 

 薫の動きの速さに七輝は驚き横に転んで躱す。避けた七輝に追い討ちをかけるように薫は拳で薙ぐ。防御が間に合わず七輝はふっ飛ばされた。

 

「っ!」

 

 痛みに顔を歪めるも七輝は怯まず受け身を取り、追い討ちが来る前に速く動くことに専念した。足に令力を込めて黒雲と黒雷を纏わせると同時に一瞬で間合いへと薫に迫った。

 

「ぬっ!?」

 

 一瞬の動きで薫は目を丸くし不意をつかれ、七輝の蹴りが体に直撃し今度は薫がふっ飛ばされる。薫は受け身を取って起き上がると不敵な笑みをみせて拳を構える。

 

「想像以上の速さだ……中々やるな!」

「お前こそ、でけえ図体のくせに速いじゃんか」

 

 七輝は再び足に黒雲を纏わせて薫に迫り蹴りを放つ。しかし今度は薫が片腕で七輝の蹴りを受け止めた。

 

「確かにその速さは俺以上。だが、フィジカルだけでは俺に勝てないぞ」

「っ!?上等だ!」

 

 七輝は驚くも不敵な笑みで笑い返す。その直撃に拳と拳、蹴りと蹴りのぶつかり合いが繰り広げられる。七輝の動きは速いがそれを薫が読んで攻撃を防ぐ。薫の先読みした反撃に七輝が受け止め反撃死返す、どちらも相手をリードさせない攻防であった。

 

「七輝くんの動きも凄いけどそれを読めてる南海くんも凄いね…」

「お互い譲らない戦いでござるよ…!」

 

 2人の激しい攻防に結城と彩葉は息を呑んでいた。その最中ふと結城は疑問に感じた。

 

「そういえば、南海くんの盡器はなんだろう?」

 

 霊衣を纏った薫の手には盡器らしきものが見えない。もしかして自分と同じ戦闘向きではないのだろうかと考えた。

 

「あのバカゴリラの盡器は特殊すぎるのよ…」

 

「鮫島さん?南海くんの盡器を知ってるの?」

 

「まあだいたい……滅多に見せないけど、真田の実力を見定めてるみたいだからそろそろ出すんじゃない?」

 

 それは本当かと結城は薫の方へと視線を向ける。七輝の蹴りを両手で防いだ薫は後ろへ跳んで間合いをとる。

 

「ふっ、度々想像以上の実力で俺を楽しませてくれる……これなら俺も更に本気にならねば貴様にも失礼だな!」

 

「構わねえよ。もっと強い方が数倍楽しいからな!」

 

 七輝は足に黒雲を纏わせ迫る。対して薫は七輝が蹴りを放つ寸前、両手をパンと合わせた。

 相手が何か仕掛けてきたと七輝は反応するもそのまま蹴りを放った。その時、薫の顔に当たるはずの蹴りは何かぐにゃりと柔らかいものに防がれた。

 

「そいつは……!」

 

 自分の蹴りを防いだものに七輝は目を丸くする。薫は両手に指に複雑に絡めた黒い毛糸の輪っか……あやとりで七輝の蹴りを防いだのだった。

 

「――あやとり式『いちだんはしご』」

 

「まじかっ!」

 

 まさかのあやとりに七輝はギョッとし反撃が来る前に後ろへ下がった。その最中に薫はあやとりを巧みにしかも手早く編み、星の形に編んだ。

 

「あやとり式『流れ星』!」

 

 薫が指に絡めた糸を弾くように解いたと同時に星の形をした光弾が七輝目がけて飛んだ。

 

「まじか!?」

 

 光弾も飛ばせるのかと七輝は驚くも体を回転して黒雲と黒雷を纏わた廻し蹴りで星の光弾を弾かせ、弾かれた光弾は訓練棟へと飛んで爆発した。

 

「っ!初手でその反応か…!やるな!」

 

 

 七輝の動きに薫は好戦的な笑みを浮かべた。七輝は着地すると直ぐに薫へと迫った。

 あやとりで何かやる前に制圧する。しかし薫が両手をパンと合わせた時には彼の手にはあやとりは無く、代わりに手に持っていたのは糸に巻かれたベーゴマだった。

 

「『兵独楽(ベーごま)高王様(たかおうさま)』!」

 

 薫は気迫と勢いでベーゴマを投げた。激しく回転して迫るベーゴマに七輝は力いっぱい踏み込み、拳を赤熱化させる。

 

「『赤陽』っ!!」

 

 令力を込めた拳とベーゴマがぶつかり合い火花を散らす。七輝は更に踏み込みベーゴマを弾き返したが薫の手には別のベーゴマが握られていた。

 

「『新角六(しんかくろく)』!」

 

 投げたベーゴマは七輝が弾き返したベーゴマへと飛び、ぶつかった瞬間に2つのベーゴマが七輝の方へと激しく回転し迫った。七輝は一つベーゴマを弾き返したがもう一つのベーゴマが横腹に当たった。

 

「っ!?」

 

 七輝は踏ん張り持ちこたえるがその間にも薫の拳が放たれ殴り飛ばされた。

 

 その戦いを、薫の盡器を見ていた結城は驚愕していた。

 

「な、なんだあれ……!?お、玩具!?」

 

「あれがあいつの盡器、『遊戯皇(ゆうぎおう)』。見た目と名前の通り、あいつの盡器は遊びか隠し芸にしか使えない玩具の盡器よ」

 

「だ、だけどあれって……!」

 

「そうあいつが停学処分で済んだ理由。あいつが発現できる玩具の盡器は数百種類、そしてその戦闘向きじゃない玩具の盡器を戦闘向きにする実力があるのよ」

 

 鮫島の言葉に結城はよりいっそう驚愕する。戦いに使えない盡器を実際に使って戦っている。薫にはその知識と技術が備わっており、使いこなす実力もあるのだ。

 

「七輝くん……!」

 

 結城はただ見守るしかできないがかなりの実力を持つ薫にどう立ち向かうか見届けた。

 

「もう一発っ!!」

 

 薫が追加のベーゴマを投げた。七輝の周りを回るベーゴマの一つに当たると弾かれたベーゴマが七輝に向かって勢いよく飛ぶ。

 

「っ!」

 

 七輝は体を反らして躱すが飛んでいったベーゴマが周りを回るベーゴマに当たると別のベーゴマが弾かれ七輝の背に向かって飛び背を掠めた。

 

 

「ここだぁっ!」

 

 七輝の一瞬の怯みを薫は逃さない。発現させたベーゴマを力強く握りしめアンダースローで放つ。激しく回転させるベーゴマは七輝の腹に直撃した。苦悶の表情を浮かべる七輝に薫は不敵に笑う。

 

「ふっ、一本取ったぞ…」

 

 体術もスピードも拮抗し合っていたが、戦略や技術では此方が長けていると自負していた。相手を翻弄させ、一瞬の隙をも逃さず仕留める。この勝負は自分が一本有利に進んだと確信していた。

 

「……うん?」

 

 だが薫の確信はすぐに違和感に変わる。渾身の一撃をくらった七輝は倒れることも膝をつくこともせず、寧ろ楽しそうな無邪気な笑みを見せたと同時に薫に向けて指を差した。

 

「っ!?」

 

 その刹那、薫は殺気を感じた。『避けなければ死ぬ』、防げねば死ぬ』、彼の本能が言い聞かせる感覚がした。咄嗟にベーゴマを巻く紐を力強く張って迎え撃つ。

 直後に紐が何か斬撃を受け止めたかのように激しく火花を散らせブツッと千切れた。

 

 絶句する薫は七輝を凝視した。また再び七輝が指を差している。令力が放たれた感覚を察知し薫は咄嗟に屈む。その直後に校舎の2階の壁に一文字の傷跡がついた。

 

「不可視の斬撃か…!そんなこともできるのか!」

 

「『黄月』を人に向けて放つのはどうしようか悩んだが……お前相手なら遠慮なく放てるぜ!それに、お前の盡器は壊されたら消えるみてぇだな」

 

 ベーゴマを巻く紐が千切れたと同時に七輝の周りを回っていたベーゴマは消えていた。

 

「その通り、俺の『遊戯皇』は遊びに飽きるか壊されたかで発現した玩具は消える。だが消えるのは玩具のひとつ……」

 

 薫が両手をパンと叩くと彼の手にはあやとりが巻きついていた。

 

「いくらでも別の玩具を取り出すことができる」

「じゃあお前を倒せば遊びは終わりってやつか!」

 

「お前の言う通りだ。だが―――」

 

 

 手であやとりを素早く動かし複雑な形を完成させる。

 

「この俺に勝てばの話だがな!あやとり式『竹やぶ』!」

 

 指に引っ掻けているあやとりをピンと弾いて解くと七輝の足元から複数の竹が一気に生えた。七輝は後ろに跳んで下がるも竹が次々へと生えてくる。

 

「まとめてぶった切る!」

 

 七輝は指を差したまま横へ薙ぐと沢山生えていた竹はバッサリと切断された。斬撃は薫には届かなかったが続け様に七輝は黄月を放つ。

 

「っ!あやとり式『蜘蛛の巣』!」

 

 あやとりを蜘蛛の巣の形に編んで指で弾くと薫の目の前に大きな蜘蛛の巣が発現し七輝の放った斬撃を防ごうとしたが不可視の斬撃は火花を散らして蜘蛛の巣を切断した。蜘蛛の巣が斬られたのを目の当たりにした薫は咄嗟に体を横へ反らすと横腹に斬撃が掠めた。

 

 急ぎ対処せねば次の斬撃がくる。次の手を考えて防がねば、あやとりを編みながら七輝のいる先へと視線を向けるがそこには七輝の姿はなく、既に七輝は薫の真ん前にいた。

 

「っ!!」

 

 次の手よりも早く動いていた七輝に薫は虚を突かれ動けずにいた。その隙を七輝は逃さず、力強く踏み込み渾身の正拳突きを放った。

 

「ぐぬぅっ!?」

 

 今度は薫が苦悶の表情を浮かべふっ飛ばされた。すぐに受け身を取って立ち上がり拳を構える。

 薫の顔には相手への苛立ちや怒りの表情はなく、この戦いを楽しむかのような笑みが浮かんでいた。

 

「度々俺の予想を凌駕していく……なんと楽しいことか!これまでこんな楽しいことはなかったぞ!」

 

 

 同じように七輝もこの戦いを楽しんでいるようで好戦的な笑みを浮かべて笑った。

 

「同感だぜ。お前みたいな強い奴と殴り合えるのは楽しいぜ!」

 

 奇しくも七輝と同じ気持ちだったことに薫は反応し、七輝に尋ねた。

 

「そういえばお前に聞いていなかったな……真田七輝よ、お前はどんな女性が好みなんだ?」

 

「………ん?」

 

 突然の問いに七輝は構えるのを止めて不思議そうに首を傾げた。

 

「どういうことだ?好きなタイプの女性は何かってか?」

「そうだ。お前にもいるだろう?」

「……うーん……」

 

 七輝は考えた。思い浮かんだのは、憧れの先輩である七咲の霊衣を纏った姿。プリッとしたお尻に素敵な太もも……あの先輩の姿は今でも目に焼きついている。

 

「あー………尻と太ももがえっちぃ女性かなぁ。俺の憧れの先輩がまさにそれだ」

 

「―――――!」

 

 七輝の答えを聞いた途端、薫は衝撃を受けた。同じ好みの女性、同じ好きなタイプ、同じ答え。

 

 

 その衝撃のあまり、薫の脳内で()()()()()()()が溢れ出した。

 

 

**************************

 

 

 俺は急いで階段を駆け上がる。俺としたことが迂闊だった。まさか補習を受けることになっちまうとは。

 

 急がないと間に合わねぇ。俺は更に階段を登る速度を上げ、屋上へと辿り着いた。

 

「おせーぞ薫!早くしねぇと始まっちまうぞ!」

 

 屋上では七輝が座って待っていた。あいつめ、チャラいわりには頭がいいからな。補習は免れていたようだ。

 

「わるい、遅くなっちまった。今日のテストむずかったんだからよぉ」

「お前テスト勉強してねぇのがいけねぇんだって。まあ今はこっちの方で楽しもうぜ」

 

 七輝はニッと笑って大きめのタブレットを見せる。そろそろ始まる時間だ。

 

 

『やっほーっ!!信者のみんなぁー!今日のミサの時間だよーっ!』

 

 

 タブレットに映るはお尻と太ももが素敵なシスター系アイドルの安全院みさちゃん。今日はライブ配信でお歌のライブをするのだ。

 

「いやー今日もみさちゃん頑張ってんな!」

「薫、俺みさちゃんの新曲のCDと限定Tシャツ買ったんだぜ!」

「まじか。俺なんか並んでも売り切れで買えなかったんだぞ!」

 

 俺と七輝はみさちゃんの大ファンで毎日動画を見ては話を盛り上げていく。そう、俺達は地元じゃ負け知らずのヤンチャ者で親友なのさ。

 

 動画を見終わった俺達は学校に長居することなくさっさと帰ってゲーセンへ行く。だが今日の俺はある決心をしていた。

 

「七輝……俺、みさちゃんに告るわ」

「はあ!?まじでか!?」

 

 俺の一大決心に七輝は嫌そうな顔をした。

 

「なんで嫌そうな顔するんだ?」

「いや普通に玉砕だろ。お前励ますの嫌だからな?」

 

「……なんでフラれる前提で進む?やってみる価値はあるだろう?」

「いやどう考えてもダメだろ……ったく、しゃあねぇな。みさちゃん呼んでくるから教室で待ってろ」

 

 

 流石は七輝だ。みさちゃんとコネがあるらしいからな……親友が作ってくれたこのチャンス、無駄にはしないぞ!

 

 教室に待機した俺は張り切ってラブレターを書き、セリフも考えた。窓から夕日が差し込む。約束の時間はもう間もなくだ。俺はいつでも準備できている。 

 

 教室のドアが開き、ついに決戦が始まった。

 

 

「お待たせー!信者くん、元気にしてるー?」

 

 

 目の前に俺の推しの安全院みさちゃんが…!喜びのあまり俺の動悸が早くなろうとしてるが必死に抑える。

 

「私に何か伝えたいことがあるって聞いたけど何かな?」

 

 みさちゃんの笑顔に俺は覚悟を決める。さっき書いたラブレターを渡す。

 

「みさちゃん……筋肉モリモリの男は、好きですか?」

 

 男南海薫。一世一代の愛の告白である。俺の想い、受け取ってくれ……!

 

 

「……あー、ごめんね信者くん。私、好きな人がいるんだぁ」

 

 みさちゃんはにっこり笑顔でラブレターを破った。

 

「用件はそれだけかな?じゃ、この後配信があるから帰るねー」

 

 みさちゃんはそのまま笑顔で帰っていった。夕日が差し込む教室に残るは無残に散ったラブレターと落ち込む俺だけ……

 

 俺の一世一代の告白は終わった。

 

 

「だから言ったろ?やめとけって」

 

 ふと顔を上げれば苦笑いする親友の姿が。

 

 

「……好きな人って、もっと筋肉モリモリなのかな……」

 

「んなわけないだろ。ほら、行くぞ」

 

 七輝は落ち込む俺の背中を叩いてニッと笑った。

 

 

「ラーメン奢るからよ、美味いもんくって元気出そうぜ?」

 

 

 そうだ、七輝は俺をいつも励ましてくれる。どん底に落ちた時も、喧嘩に負けた時も、悲しい時も、俺に手を差し伸べてくれた……そうか、この空っぽになった俺の心を満たしてくれる……七輝はかけがえの無い親友で、相棒だ。

 

「ありがとな……相棒」

 

 

**************************

 

「お、おい?大丈夫か?」

 

 

 七輝は突然天を仰いで涙と鼻水を流しだした薫の様子にギョッとしていた。

 

「地元じゃ負け知らず、か………」

 

 薫はそう呟くとガクリと膝をついた。薫のよく分からない行動に七輝は戸惑う。

 

「お、おい!?どうしたんだ!?」

 

 

「どうやら俺は……お前の相棒のようだ」

 

「???」

 

 何を言っているのか七輝は終始頭にハテナを浮かべるが相手が膝をついたのでたぶん勝っているようだと考える。そんなこんなしていると薫はニッと笑って手を差し伸べた。

 

「……俺の負けだ。これからは共に力を合わせて頂点を目指そうぜ、相棒」

 

「よくわかんねぇけど……俺達で最強を目指すってんなら大歓迎だぜ」

 

 とりあえず勝ったということで七輝は笑って薫と力強く握手を交わした。

 

 こうして頂点を目指す男達の決闘は幕を閉じた。

 

 

「………なんだこれ」

 

 七輝と薫、2人のやりとりに愛蓮は呆れていた。結城も何を見せているのだろうと戸惑っていたが、隣では彩葉が感動しついた。

 

 

「これが男の友情っていうことでござるか……素晴らしいでござる!!」

「たぶん違うでしょ。それより、面倒事に巻き込まれる前に帰るわよ」

「ふえ?それってどういう意味でござるか?」

 

「な、七輝くん南海くん!!九条先輩が鬼の形相でそっちに来てるよ!?」

 

 

「無許可での決闘、校舎と訓練棟、建造物の破壊……お前達、覚悟はいいか?」

 

 

 月詠に捕らわれた七輝と薫はこっぴどく叱られ、その後反省文を沢山書かされ、校舎と訓練棟の清掃をさせられたのは後の話しである。

 

 




 
 \存在しない記憶/

 これがやりたかった。はい、すいません



 安全院みささんのモデルはあるVチューバー

 ほんと太ももとお尻がスコティッシュフォールド
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