虹の陰陽師   作:サバ缶みそ味

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今週の鵺の陰陽師。

鴉天狗ちゃんくん、かわよ……

鵺さん、それはフラグでは……?


4話 早起きは三文の得というけどそうでもない時もある

「盡器とは、令力によって具現化された武器のこと。人によって盡器は様々な形に具現化するの」

 

「先輩の場合は―――」

 

 武器らしきものは見当たらないが、ブーツの踝の外側に追随している黒いリングらしきものが彼女の盡器だろう。

 

「ふむふむ、なるほどなるほど……」

 

 屈んで彼女のロングブーツをまじまじと見つめる。

 

「もぉ、じっと見すぎだってば。真田の盡器はどうして顕現できてないのかな……?」

 

「もしや……俺自体が盡器、だったりして」

 

「まさか……いや、うーん、体術で幻妖と戦う人もいるし……そうだ、幻妖と戦い続ければ何か変化はあるかも!」

 

「へ…?」

 

「盡器は最初から強いってわけじゃないんだ。幻妖との戦いを重ねることによって盡器の力が解放されるの」

 

 幻妖を倒すことで盡器のレベルが上がり力が解放される。所謂ドラゴンなんちゃらかポケットなんちゃらみたいにレベルを上げて技を覚える仕組みかと納得した。

 

「まあ陰陽師の基礎はこんなもんかな。よし、ここからは真田の盡器を鍛えるために――」

 

 七咲は教室の入口をガラッと勢い良く開ける。すると開いたと同時に数多の幻妖がなだれ込んできた。

 

「実戦といこっか!」

 

「展開がはやい!」

 

 盡器を鍛えるとはいえ、まさかこんな数の幻妖がスタンバっているとは思いもしなかった。

 

「心配しなくても大丈夫!」

 

 踝の外側に追随しているリングが高速に回転し、リングの影が地を這うように伸びると無数の棘が突き出し幻妖達を串刺しにしていく。

 

「相手はレベル1の幻妖だし、私もフォローしてあげるから」

 

 ドヤッとしながらウィンクする七咲の姿に七輝のハートは射貫かれた。

 

「……先輩、マジ天使」

 

 無邪気で可憐な先輩の期待に答えよう、七輝のやる気がフルスロットルした。

 

「いっちょやってやるぜぇぇぇっ!!」

 

 気合と共に勢い良く幻妖の群れに飛びかかる。ふよふよと漂う幻妖には鉄拳をかまし、襲い掛かる幻妖には蹴りを入れ、風船を割るのように次々と倒していった。

 

「さ、真田!令力、令力!」

 

 七咲は怒号の勢いで幻妖達を殴り倒していく七輝にあたふたと慌てて止めた。

 

「令力を込めて倒さないと。今の真田は力任せに殴ってるだけだよ!」

 

「ん゙ー……?」

 

 七輝は己の拳をじっと見ながら不思議そうに首を傾げる。

 

「盡器が無いから難しいかもしれないけど、霊衣を纏ったように盡器に令力を込めるイメージをすれば……」

 

 リングが再び回転したかと思った瞬間、七咲は高速で幻妖に迫り強力な蹴りを入れた。幻妖の身体に穴が空き消滅していく。

 

「こんな感じ!」

 

「先輩速いしかっこよ!!」

 

 華麗に戦う七咲の姿に七輝は目を輝かせる。七咲が蹴りを入れて着地をするところを狙ったのか四方から幻妖が襲い掛かる。

 七咲はこう来ると予測はしており慌てることなく令力を使い棘で返り討ちにしようとした。

 

「おらああああっ‼」

 

 彼女が動くよりも早く七輝が正面から迫ってきていた幻妖を殴り倒した。

 

 

(今の……速い‼)

 

 

 七咲は自分よりも速く動いた七輝に驚いたがすかさず後ろ回し蹴りで残りの幻妖達を倒す。

 

「真田、速いじゃん!その調子!」

 

 

「オラァこの野郎!先輩には指一本も触れさせねぇぞ!」

 

 七輝はシュバババとシャドーボクシングをして幻妖に圧をかける。

 

「あはは……さっきの感覚を忘れずにね!」

 

「オッス‼」

 

 七咲はコツを掴んでくれたかどうか心配しながらも七輝の戦闘力の強さに期待しながら彼の戦いぶりを見守った。

 

_______

 

 

「この学校、幻妖湧きすぎじゃないっすか?」

 

 放課後、空き教室になだれ込んできた幻妖の群れを退治し本日のレッスンを終えて下校していた七輝はふと思った。

 

(じいちゃんと修行してた時並みに湧き出てたな……)

 

 

「うーん……近頃、幻妖の出現頻度が異常に多くなってるみたい」

 

 七咲は難しい顔をして答えた。何故出現頻度が多くなったのか原因は未だにわかっていない。

 

「いまのところレベル1の幻妖ばかりだけど、集まりすぎると強い幻妖に変貌するから危ないんだよねぇ……」

 

 レベル1の微力な幻妖が16体以上合体するとレベル2の殺傷能力を獲得した危険な幻妖に変化する。

 

(16…なんかポ◯モンみたいだな)

 

「上に報告しても一陰陽師のしかも学生の話を聞いてくれるかどうかわからないし……かと言って一人ではさばききれないし……」

 

 どうしたものかと七咲は唸りながら悩むが、悩む姿もいとかわいいと見惚れていた七輝と目が合うと突然閃いた。

 

「そうだ!真田、入学したら一緒にオカルト部を創ろうよ!」

 

「……はいぃ?」

 

 突然の閃きに七輝はキョトンとする。

 

「オカルト部っていっても実際は幻妖を退治しつつ校内の調査ってところかな。それに真田の修行に付き合えるしね」

 

「つきあっ……!?ゲフンゲフン!!教えてくれるんっすね⁉」

 

「真田はたぶんもっと伸びると思うし……どうかな?」

 

 見つめる七咲に七輝は夕焼け空を見上げる。

 

「……先輩、俺は生まれてから一度も学校に行ったこともなけりゃクラスメイトもいねぇし学校生活というものを知らなかった」

 

 七輝は身体をぷるぷると震わせ、空を見上げていた顔を下ろす。

 

「………ようやく学校というものを知ることができると思った矢先に先輩に出会った。先輩は俺に学校(青春)を教えてくれた」

 

 七輝の目は好奇心に照らされ輝き、顔は満面の笑みに溢れていた。

 

「俺、めっっっっっっっちゃ嬉しかったっす!!先輩、一緒にオカ研やりましょうっ!!」

 

 

 七輝は嬉しさのあまり七咲の手を握る。彼の気迫と喜びに驚くがくすりと苦笑いをこぼす。

 

「あはは…真田、まだ入学してないじゃん」

 

「あ゛っ!そうだった!くそっ、入学式はまだかっ!」

 

「ふふふ、頼りにしてるからね後輩」

 

 七咲は笑って新しく入ってくる頼もしい後輩と握手をかわした。

 

 

「ところで、住む所とか決まってるの?」

 

 

「…………春の入学式当日にマンションに入居できるようじいちゃんが手配してくれてたけど………まだ2月……」

 

「……あちゃー、寮の部屋が空いてるか聞いてみるね」

 

 

 

________

 

 

 

「ふんふふふーん♪」

 

 

 早朝、誰もいない旧校舎2階の廊下を七輝は鼻歌交じりにスキップして進んでいた。

 入学式を迎えるまで寮の空いている部屋を借りることができ、七咲が朝練に付き合ってくれると約束してくれたので七輝は上機嫌であった。

 

「朝練ってわけで先輩よりはやく来てやったぜ!」

 

 彼女が来る前に自主練をして『やる気があってスゴイ!』と褒めてもらおうという算段であった。

 

「しかし……自主練つっても何しようか」

 

 筋トレは兎も角、盡器を鍛えるために只管幻妖と戦うしかない。そのためふよふよと漂う幻妖を探していた。

 

「今日はやけに静かだな……」

 

 昨日みたいにウジャウジャと湧き出てるかと思えば今日は幻妖が見当たらない。

 

 幻妖も寝ているのかと思ったら廊下に幻妖がふよふよと漂っているのを見つけた。

 

「ようやく見つけた!練習台になって――」

 

 すぐさま退治しようとしたその時、幻妖の直ぐ側にある空き教室の窓が割れたと同時に茶色い毛むくじゃらの大きな手が伸び、幻妖を鷲掴みにし引き込んだ。

 

「なんじゃぁありゃ!?」

 

 あれも幻妖かと毛むくじゃらの手が出てきた空き教室へと駆け、教室に入り込む。

 

 そこにはヒグマよりも巨大な腕も脚も顔も茶色い毛に覆われた猿のような怪物が捕まえた幻妖を貪っていた。

 

(………オランウータン?ビッグフット?てかこれも幻妖か?)

 

 見かけは猿だが腕が四本もある。異様な光景だがあれが先輩が言っていたレベル2の幻妖なのだろうかと警戒する。

 

 

む……小僧、儂が見えるのか?

 

 猿の幻妖は嗄れた声で訪ねてきた。いきなり話しかけてきたと

七輝は嫌そうに睨みつける。

 

「見えたら悪いか?このオランウータン野郎」

 

 猿の幻妖は嗄れた声で低い笑い声をあげ、次第に声が鮮明になっていく。

 

「儂の名は猩猩(しょうじょう)。いやはや、丁度良かった――」

 

 

 突然、猿の幻妖『猩猩』が大きく長い手を七輝に向けて叩きつけた。力強く叩きつけた衝撃で煙が舞う。

 

 

「カスばかりで飽き飽きしとった。久しぶりに人間の肉を喰える――」

 

 叩きつけて肉塊になったであろうと手をのける。その刹那、七輝が飛びかかり猩猩を力強く殴った。

 

ぶぬ゛っ!?

 

 殴られた猩猩は壁にぶつかり、その衝撃で教室の壁が崩れた。

 

 

「いやぁ……丁度良った。俺の練習台になってくれや」

 

 

 七輝はニッと笑って挑発する。

 

 

「ほらどうした、かかってこいよ」




猩猩
 腕がかなりあるデカい毛むくじゃらのオランウータンみたいな幻妖。

 声のイメージは茶風林

オランウータンの握力ってかなりヤバイ
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