虹の陰陽師   作:サバ缶みそ味

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今週の鵺の陰陽師……入浴シーン、ありがとうございます!!


7話 『ニジカガチ』 前編

「はあぁっ!?入学式が延期ぃ!?」

 

 グラウンドに急拵えに設置されたプレハブこと陰陽師の緊急待機場所にて、七輝の驚きと怒りが混ざった声が響き渡る。

 今回出現した幻妖について七咲から話を聞き、今後の方針を七輝に話した七咲の顧問である陰陽師の男性はやや困ったように頷く。

 

 

「普段なら我々の力ですぐに修復できるのだけど、学校を覆っていた結界が破壊され、たくさんの市民がこの惨状を目の当たりしちゃったからねぇ…」

 

 陰陽師は破壊された建造物の修復、幻妖を目撃或いは被害に遭った一般人の怪我の治療及び記憶の消去といった証拠隠滅を行っている。

 

 しかし今回は学校の被害は大きく、結界が破壊されたことにより多くの一般人が目撃してしまった。増える野次馬、情報の拡散等とあまりの多さに事後処理が追いつかなくなってしまったのであった。

 

「あっという間に修復してしまったら市民は驚くだろうし、世間にはガス爆発による事故というわけにし時間をかけて校舎を直すことに決まったんだよ」

 

 既に校舎周りには防音用の柵が建てられており、改築工事と見せかけて陰陽師達による修理の準備が始められていた。

 

「それで入学式は修復終了予定の7月にずれるというわけですか……真田、ドンマイ」

 

 入学が夏に持ち越しとなってしまったとしょげる七輝に七咲は苦笑いしながら励ます。

 

「……いや待てよ?それまでの間は先輩と一緒にトレーニングできるってことか!!ィヤッタァァ!!」

 

 どんよりとしていた表情が一転して高揚し大喜びして舞い上がる。そんな七輝を対して顧問の男性は申し訳なさそうに咳払いをした。

 

「それから真田七輝君だったね?君にお話がある人が来ているようだけど……」

 

 顧問の男性が七輝の後ろへ視線を向ける。視線の先へと振り向くと少し離れた所に黒いスーツを着た七三分けの男性がいた。その男性は疲れているのかやつれた表情ながらも七輝に笑みを見せて手を振る。

 

「………やあ七輝君、久しぶ「あんた誰?」いや、ちょ、酷くないかい?」

 

 七輝の即答に男性は苦笑いしているが胃が痛くなったのか腹部を擦っていた。

 

「真田、この人は知り合い?」

「ええまあ、そっすね……幼少期の俺をあちこち連れ回して最終的に養子にしてくれた俺の爺ちゃんに押し付けたおっさん」

 

「それは君が勝手に逃げ回ってたからで………いやまあ、あながち間違っていませんが覚えてくれて何よりです」

 

 男性はため息をついた後に七咲に向けて鋭角に深くお辞儀をする。

 

「申し遅れました。怪異観測捜査本部、捜査官の伏見司と申します」

 

 素早く名刺まで渡してきて七咲は反応に困りながら名刺を受け取る。

 

「は、はあ……怪異観測捜査本部の存在は知っていましたけど、その方がどうしてこの学校に?」

 

「先ほど、真田七輝くんが監視地域を抜け出してこの学校に無許可で滞在していると聞いて……」

「えっ、正雄さんから入学許可を貰っていると聞いたのですけど?」

 

「えっ?」

「えっ?」

 

 

 顧問の男性と伏見はお互いの顔をしばらく見つめ合っていたが深いため息をついて頭を抱えた。

 

「正雄さん……何やってるんですか……」

「ああ……陰陽寮の方達に報告しなければならない事項が増えた……」

 

 伏見は胃が痛くなったのか再び腹部を擦り死んだ魚のような目で遠くを見つめた。

 

「まあ伏見のおっさんが話つけてくれれば問題ないよな!」

 

 七輝はにこやかに笑うが伏見は深いため息をついてやつれた顔で首を横に振った。

 

「大問題です……七輝君、今から私と一緒に来てください。会わなければならない方達がいます」

「え、やだ」

「断らないでください。貴方の行動次第で怪異観測捜査本部が消滅してしまいます」

 

 冗談で言っているかと思ったが死んだ魚のような目で語る伏見を見て本当に消滅しかねないと七咲と顧問の男性は悟った。

 

「真田、伏見さん困ってるから行ってあげたら……?」

 

「先輩ちょっと出掛けてきます。すぐに戻りますんで!」

 

 七咲のお願いに即決行動する七輝を見て伏見は自分との対応の差になんとも言えない顔した。しかしながら一緒に来てくれるというので良しと頷く。

 

「では行きましょうか。あまり長く待たされると私が怒られてしまいますので……」

「あーかったりぃなぁ。先輩とトレーニングしたいから3分で済まほしいぜ」

 

 愚痴をこぼす七輝に伏見は苦笑いしながらやつれた眼差しで見つめて彼を連れて行った。

 

「伏見さん、ちゃんと休めてるのかな……」

「しかし怪捜の人も来るなんてよっぽどの事態が起きたってことか……」

 

 七咲は怪異観測捜査本部が存在しており陰陽寮と連携をとっていることは聞いたことがあったが実際に会ったことはなかった。彼らを見かけるのは顧問の言う通り異常事態が発生した時に現れると聞いたぐらいであった。

 

_____

 

 

「なー、まだ着かねえの?」

 

「七輝くん……旧校舎に移動しただけなんで我慢してください」

 

 プレハブから歩いてすぐ、被害が少なかった旧校舎に移り一階の廊下を歩いていた。旧職員室の前に止まると伏見は扉をノックする。

 

「伏見です。彼を連れてきました」

 

 扉を開けるとだだっ広い職員室に黒いスーツを着た伏見とは違って黒い軍服のような服装をした髪の長い小柄の女性、白髪白髭の老人、爽やかな髪型の男性がいた。

 三人とも七輝に向ける視線は鋭く、重い威圧感を放っており、伏見はゴクリと緊張して生唾を飲む。しかしそんな圧に全く動じていない七輝はキョトンと首を傾げた。

 

「なあ伏見のおっさん、このコスプレ集団は誰だ?」

 

「バッ……ちょ、七輝くん!?す、すみません!!こ、こら七輝くん!!この方達は陰陽寮所属の討伐隊の隊長達ですよ!!」

 

 

 七輝の爆弾発言にあたふたと伏見が討伐隊の方々に頭を下げながら七輝に頭を下げるよう促す。

 

「七輝くん、いいですか?此方は第1支部隊長の皇義哉隊長です」

 

 白髪白髭の老人、皇義哉は七輝をじっと見つめると目を細めた。

 

「……正雄の野郎、おもしれー奴を見つけたな」

 

「あれ、じいさんは俺の爺ちゃん知ってんのか?」

 

「ちょ、七輝くん!?敬語、敬語!!」

 

「構わねえよ。肝が据わってる奴は嫌いじゃねえさ」

 

「す、すみません……続いて第3支部隊長、菅道領隊長」

 

 爽やかな髪型の男性、菅道領はにっこりと笑って頷いた。

 

「君が真田七輝君かー……学校の結界を一人で破壊したんだって?ある意味すごいね」

「はっはー、褒めても何も出ないぜ?」

 

「七輝くん、褒められてません……そ、そして第4支部隊長、鶤狩兵一隊長、です……」

 

 伏見はびくびくしながら七輝をギロリと睨んでいる小柄の女性、鶤狩兵一を紹介する。鶤狩はすぐさま伏見へと睨みつけた。

 

「ふぅぅぅしぃぃぃみぃぃぃ……!!」

「は、はいっ!!」

 

「言いたいことが沢山ある……まずは今回出現した幻妖だ。お前、知ってただろ……?」

 

 鶤狩に睨まれた伏見は蛇に睨まれた蛙のようにびくびくして頷く。

 

「は、はい……恐らく一週間前に荒廃した『神有地』から抜け出した個体かと……」

 

「ふぅぅぅしぃぃぃみぃぃぃ!!」

 

 鶤狩は怒声を上げ、ギロリ睨んで伏見の胸ぐらを掴んだ。

 

「てめえら怪捜はいっつもそうだ!!俺達陰陽師に面倒事を押し付けるくせに報告伝達が遅せえんだよ!!」

「すみませんすみませんすみません!!その『神有地』を観測していた者は被害に遭ってまして……」

「人材育成すらできねぇのか!!育成機関もあるのに人材不足かてめえ!!」

 

「まあまあ、怪捜の人達も大変だったんだよね?」

 

 

 菅がにこやかにしながら怒れる鶤狩を宥める。鶴の一声か鶤狩の怒りが収まり、解放された伏見はほっと胸を撫でおろす。

 

 

「さっきから喧しいガキンチョだなこいつ」

 

 しかし七輝の爆弾発言に火にガソリンがぶち撒けられた。プッツンとキレた鶤狩はギロリと伏見と七輝を睨み、再び伏見の胸ぐらを掴んだ。

 

「ふぅぅぅしぃぃぃみぃぃぃっ!!!!」

 

「すみませんすみませんすみませんすみません!!!!」

 

「てめえ、『ニジカガチ』の封印が解かた上に『ニジカガチ』と契約を結んだ監視対象のクソガキに出し抜かれやがって!!どういう事態になってんのかわかってんのかゴラァ!!」

 

 

 ブチギレた鶤狩に伏見はなす術は無く、ただ只管謝り続けた。そんな中、七輝は納得したように頷く。

 

「へー……こいつの名は『ニジカガチ』っていうのか」

 

 七輝の発言に怒れる鶤狩は目を丸くし、伏見の胸ぐらを掴んでいた両手を離した。

 

「お前、中に宿している奴の名を知らねぇのか…?」

 

「『虹』ってしか聞いてねぇし。今初めて知った」

 

 鶤狩は口をあんぐりと開けて2人の隊長に視線を向ける。菅は苦笑いをし、皇は笑いを堪えて震えていた。

 

「伏見……お前、話してねぇのかよ」

「すみません……教える暇が無いほど逃げ回ってましたので……」

 

 遠くを見つめている伏見に鶤狩は肩をすくめてため息をこぼし、鋭い視線で七輝を見つめた。

 

「いいか?いまてめえの中にいる『虹』……『ニジカガチ』ってのは世界を滅ぼす力を持つ化け物だ」

 

 

 

 




長くなりそうなので後編に続きます

 鶤狩隊長、最初は生意気な男の子かと思ってた。だって胸の膨らみが……おや?誰か来たようだ。
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