虹の陰陽師   作:サバ缶みそ味

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少しグダグダになったかも……まあいいか!!(やっつけ


8話 『ニジカガチ』 後編

「化け物?幻妖じゃなくて……?」

 

 訝しげに首を傾げる七輝に伏見が咳払いをする。

 

「『ニジカガチ』は幻妖より遥か昔、およそ四千年前から存在していたと伝わっていました」

 

 

 いつの間に用意していたのか、伏見がスクリーンにかなり年季が入った古文書らしきモノと蛇の絵が描かれた壁画の画像を映して説明を始めた。

 

 

「各地で伝承が残っており、『虹の蛇』、『虹蛇神』、『蛇神様』と名称がありますが主に『ニジカガチ』と呼ばれています」

 

 次々と古いめかしい絵巻物やらなんて書いているのか分からない文章やら画像を見せて説明するが七輝はちんぷんかんぷんでとりあえず理解しているフリをしていた。

 

「『ニジカガチ』は天候や自然現象を操り大地を豊かにする豊穣神とry」

「伏見ぃ!!長ったらしいぞ!!」

 

 プールの後の歴史の授業のような退屈さに痺れを切らしたのか鶤狩はイライラしながら伏見の説明を遮った。

 

 

「いいか?俺達が『ニジカガチ』を危険視してるのはそいつの力だ。そいつは遥か昔の話だが数多の文明を滅ぼした」

 

 鶤狩は七輝をギロリと睨みつける。

 

「封印対象である強力な幻妖、『鏖(ひょう)』は6体で日本の人口の3分の2を灰にした。だが、『ニジカガチ』はたった1体だ。たった1体で世界の3分の1を滅ぼしたと言われている」

 

 

 ニジカガチが3分の1なら3分の2を灰にした6体の鏖の方がすごいのでは、と七輝は回らない頭で考えた。

 

 

「世界の片隅で封印されてりゃいいものを……面倒なことに日本で封印され、比土羅村で二度と解かれないように厳重に封印されていた。だが、その封印をてめえが解き更にはニジカガチと契約したときた」

 

 額に青筋を浮かべた鶤狩は七輝の胸ぐらを掴む。

 

「ただでさえ『鏖』の封印が解けそうでこっちは忙しいってのによぉ……幻妖とは違う厄介な存在を解きやがって。てめえ、世界を滅ぼすつもりか?」

 

「………俺の中にいるこいつって、かなりすごい奴だったんだなぁー」

 

 おまえ話を聞いていたのか、と聞くよりも前に無言で殴ろうとする鶤狩を伏見が必死に止めた。

 

「鶤狩隊長!!ほ、ほんとうにすみませんすみませんすみません!!まだ理解してないんですっ!」

 

「ふっっっっざけんじゃねぇぞ!!!!状況理解してねぇじゃねぇか!!いいか、契約してしかもこいつの中にいるってことはいつ身体を乗っ取られるか分からないってことだぞ!!」

 

「そうだよねー、身体を乗っ取られ依代にして顕現したら間違いなく日本だけじゃなくて世界が滅びちゃうかもね」

 

 怒れる鶤狩とは反対に菅はにこやかに語る。しかしそれでも七輝は不思議そうに首を傾げる。

 

「うーん……それはないと思うぜ?」

 

「……あ゛?」

 

 いきなり何を言い出すのか、七輝の発言に鶤狩は額に青筋を浮かべ再び七輝の胸ぐらを掴んで今すぐに殺してやろうかと言わんばかりの殺気を放ちながら睨見つける。

 

「おもしれーこと言うじゃねぇか……その根拠はなんだ?巫山戯ていたらぶっっっころすぞ?」

 

 異常に殺気を放つ鶤狩に恐れることなく七輝はドヤ顔をみせた。

 

「こいつも今を楽しんでいるからな!」

 

「……お前、ニジカガチと会話ができるのか?」

 

 ずっと沈黙して様子を見ていた皇が口を開いた。彼の問いに七輝はニッと笑って頷く。

 

「おうさ!ま、喋らないけど何を言ってるのかは分かるぜ!」

「ほお……」

 

 ニジカガチと契約を交わしたのならば対話は可能に違いないと予想はしていたが七輝の楽しそうな様子からして服従でも主従関係でもなく親しい仲に近いものか、と皇は読んだ。

 

「それほど肩入れするなら……ニジカガチに何を差し出し何を言われた?」

 

 殺気は緩やかになってきたが七輝を睨む鶤狩の視線は未だに鋭いままだった。

 

「………」

「嘘偽りなく話せ。内容次第じゃ今すぐに殺す」

 

 物騒な事言うめんどくさい奴だなぁ、と七輝は思いながら経緯を思い出そうとした。

 

 村から抜け出そうと逃げ回って、祠に辿り着いて、お腹が空いたから供えてあったものをつまみ食いして……その最中でニジカガチに出会った。

 

 

「……うーん……」

 

「いやそこ悩むことか!?そいつと話して契約を交わして仲良くなったのだから何かあるだろ!?」

 

 最初は驚いたが、ニジカガチはずっと退屈そうに眠っていた。狭く暗い空間の中で身体を丸くして長く眠っていた。

 

「………退屈そうにしてたから。ずっと閉じ込められた中で退屈そうにしてたから、一緒に自由を謳歌し自由気ままに生きようって誘った」

 

 悩み悩んだ末、最初に交わした約束のことを話した。

 

「………まじか」

 

 七輝の答えにどう反応していいか鶤狩は対応に困り果てる。胸ぐらを掴む手が次第に緩み、鶤狩はなんて返そうか皇や菅に助け舟を求めた。

 

「ふむ、具体的には?」

 

「うーん……爺ちゃんの所にいた時に色々話し合った。美味しいもの食べたいとか、温泉行きたいとか、可愛い子といちゃいちゃしたいとか……あ、一番は青春学園バトル漫画みたいに青春とやら謳歌したいってことだな!」

 

 子供っぽい答えに皇は吹き、菅はなるほどと頷き、鶤狩は項垂れる。皇が笑い堪えながら七輝に最終確認をした。

 

「じゃあニジカガチはお前を乗っ取るつもりはないってことか?」

 

「当たり前だろ?綺麗さっぱり無くなっちまったら楽しめないじゃねぇか」

 

 七輝の答えに皇はニッと笑い頷く。

 

「おもしれー奴だ……こいつは最大戦力になるな」

 

「はあ!?オジキ、マジで言ってんのか!?」

 

 鶤狩は皇が出した答えにギョッとする。最大戦力、つまりは『ニジカガチ』を宿した七輝を陰陽師にするつもりだと。

 

「僕も賛成だね。強大な力を持つ『ニジカガチ』、それと対等な関係を築いた彼、調伏しているのなら『鏖』に対抗できる貴重な戦力だ」

 

 菅までもが賛成していることに鶤狩は頭を抱えた。ここにいない残りの隊長も七輝の話を聞いたらもしかしたら賛成するだろう。

 

「確かに……『ニジカガチ』が味方になるならば俺も賛成だ。だが今のままじゃダメだ」

 

 鶤狩は外の方へ視線を向ける。その先には七輝が壊しに壊した学校の惨状が見える。

 

 

「下手くそな戦い方だな。あれじゃただ力任せに暴れだけだ。化け物と何も変わらねぇ」

 

 鶤狩は七輝に圧を与えるような睨みと笑みを見せた。

 

「自由を得たいなら俺達を納得させるほどの力を見せてみろ。化け物じゃなく、お前ららしい力だ。それができたなら認めてやるよ……おい伏見ぃ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

 急に呼ばれてビクリとする伏見の胸ぐらを掴んでニタリと笑う。その笑みは戦闘狂のような好戦的な笑みだった。

 

「こいつに陰陽師のイロハを学ばせろ。できなかったらこいつだけじゃなくてめえもぶっコロだからな?」

 

「わ、わかりましたっ!」

 

 鶤狩はびくびくする伏見をほっといて七輝に向けて不敵に笑う。

 

「せいぜい躓かねぇように頑張れよ?」

 

「……なあ伏見のおっさん、このガキンチョ強いのか?」

 

「な、七輝くんっ!!隊長だから!!この方隊長だからっ!!!」

 

 

 伏見はブチギレて殴りかかろうとする鶤狩を必死に止めた。七輝の度胸に皇は吹き、菅は面白そうだからと観察していたので落ち着くまで1時間程かかった。

 

_____

 

 

「ええっ!?真田、別の学校に行っちゃうの!?」

 

 何時間かして戻って来たと思ったらいきなり別の学校へ行くことに決まったことに七咲は驚愕した。

 

「いえ、北高の修理工事が終わり入学式が始まるまでの間七輝くんは別の学校で陰陽師の修行をしてもらいます」

 

「転校ってわけじゃないんで大丈夫っす。」

 

「そっかー、確かにまだ正式に入学してないし、正式に陰陽師にもなってないもんねぇ……」

 

 

 七輝が北高に来ないというわけではないということに安堵するがこんな賑やか後輩がいなくなるのは何処か寂しさを感じた。

 

「ふーん、ちょっと寂しくなるねー」

「そうっすよ。先輩のいない学校生活とかトロのないネギトロと一緒だぜ」

 

 どういう例えなんだと七咲は苦笑いする。深くしょげる七輝を見てふと閃いた。

 

 

「そうだ……!七輝にこれあげる」

 

 

 鞄をさぐり、七輝にスマートフォンを渡した。どういうことかとキョトンとする彼にニッコリと笑う。

 

「私の解約したスマホ。真田は持ってないみたいだから、これがあれば何時だって連絡とれるからね!」

 

 七咲は七輝の肩をポンっと叩き、楽しそうに微笑んだ。

 

 

「修行頑張るんだぞ、後輩!」

 

 

 

「…………天使や」

 

 

 七輝は感動した。こんな自分にこんなに気をかけてくれる素敵な先輩が存在していたとは。惚れてまうやろと心の中で叫ぶ。

 

 

「伏見……俺、ここの学校に居座る」

 

「ダメです。隊長から言われたじゃないですか入学式が始まるまでは別の学……ああっ勝手に逃げ出さないでくださいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




七咲先輩は天使。

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