リスタート外伝 バハルス帝国二人旅   作:リセット

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城塞死都エ・ランテル

「なんだこれは?……」

 

 目の前の光景が信じられないのか、サトルが疑問を口に出す。ジルクニフから皇国騎士団長としての命を受け、ようやく初仕事だと意気込んで城塞都市に来てみればなぜか都市機能が崩壊していた。

 

 王国は帝国と違い、腐敗貴族が未だにのさばり蔓延っているのはサトルとて承知だ。民草を踏みつける悪鬼羅刹共の群れがいると。しかし腐敗しているとは言え、本当に腐敗した連中に街を占領されるのはまた違うだろう。

 

 どうしてこんな事になっているのか、甚だ不可思議ではある。それらの思いを胸に、サトルは眼下の不死者の群れを見ながらアイリスに問う。

 

「……人が生きていると思うかい?」

「ネガティブ。低位のアンデッドであれば、冒険者組合を有するエ・ランテルはそうそう陥落はしません。ですが魂喰らい(ソウルイーター)死の騎士(デス・ナイト)まで出現しているのであれば、話は別です。オーナーもご存じであるように、この世界の人間種はあれらのアンデッドを倒せるほど強くありません」

「───そうだな。帝国騎士最強格のペシュメルさんでも、デス・ナイトの相手は不可能。倒せるのはパラダインの御爺さんだけだ」

「ポジティブ。そしてバジウッドの強さを冒険者で換算するならオリハルコン級。帝国最強でもアダマンタイトには届きません」

「……デス・ナイトを倒せるとしたら、王国ではアダマンタイト級冒険者である『朱の雫』か『蒼の薔薇』だけ。でもどっちも本拠地(ホームグラウンド)は王都だから、エ・ランテルにはまずいない」

「ポジティブ……そして現在。アイリスとオーナーが見ているように、この地には多くのアンデッドが蔓延っています。この世界の人間でこれだけのアンデッドを突破できる戦力は残念ながら……」

「アンデッドは生者を見つけるセンサーのような物が備わっている。そんな奴らから隠れ続ける事は出来ない。なら……この都市にはもう───」

「───生存者はいない。そう判断しても問題ないとアイリスは提案します」

 

 ……見た段階で分かっていた事を二人は改めて確認しあう。自分の中で結論を出して判断するのはまずいと感じたからだ。

 

「この中から王国戦士団の死体を探さないといけないのか?」

「ネガティブ。これだけアンデッドが発生しているのであれば、ここの墓地に埋葬されたらしい彼らの遺体も非常に高い確率でアンデッドになっていると思われます」

「……まだ試してはいないが、『ユグドラシル』と同じ仕様だったなら。アンデッドは蘇生させてもアンデッドのままだ。世界級アイテムを使わない限り、アンデッドからの種族変更は叶わない」

「ポジティブ……現時点でエ・ランテルでの任務は失敗しました。カルネ村の遺体がアンデッドになっていない事を願うばかりです」

「……まずは陛下に報告しなければいけないな。命を下した時の反応からして、帝国はまだエ・ランテルがこんな事になっているのを知らない筈だ」

「ポジティブ。一旦皇城に帰還なのですが……ジルクニフが立たされる立場を思うと同情しかありません」

 

 アイリスの言葉に疑問を抱くサトル。エ・ランテルが大変な事になっているのは確かだが、あくまでもここは王国の都市だ。陥落したとしても、帝国としては然程痛手ではない筈なのだが───

 

(アイリスは何かに気づいたのかな? それを今聞いても良いが……陛下に報告しなきゃいけないんだから、その場で一緒に聞く方が効率的だよな)

 

 一旦帝都にまで帰還する事を決定した二人は、<転移門>を使い一瞬で皇城にまで移動。すぐに秘書官の一人に皇帝との謁見を取り次いでもらう。

 

 一時間もかからずに帰ってきた二人に、またもや早過ぎるだろと内心突っ込むジルクニフ。愚鈍で遅い連中も困るが、さりとて普通なら数日かかる命令をこの早さでこなされるのも困りものだなと苦笑する。

 

 すぐに執務室に二人を通し、労いの言葉を投げかけようとするジルクニフだが……夫婦の顔が固いのをみてロウネと顔を見合わせる。任務完了の報告にしては異様な雰囲気を放っていたからだ。

 

「ゴウン殿もアイリス殿もどうされた。まさかとは思うが、御二方でも戦士団の死体回収は難しかったかな?」

 

 そんな訳がないと思いつつも、小粋な冗句のつもりでジルクニフはそれを口にした。そんな冗句に対して、サトルが首を縦に振ったので皇帝の顔が凍りつく。

 

「陛下。申し上げたき儀が御座います」

「……ど、どうされたのだゴウン殿」

「───私と妻はエ・ランテルに赴いて参りました……城塞都市はアンデッドが溢れる死の都と化していました。まだ詳しい調査をしていないので断言はしかねますが、生存者はいないものと思われます」

「…………………………はぁ?」

「皇帝陛下がそのような反応をするのも無理はありません。ですがオーナーの御言葉は事実です。原因は不明ですが、エ・ランテルには数万から数十万のアンデッドが蔓延しています。端的に言えば、エ・ランテルは陥落しました。こちらをご覧ください」

 

 アイリスの言葉を受けたサトルが、アイテムボックスから遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を取り出す。これは名前の通り、遠くの映像を映し出す機能を持つ鏡だ。それを操作してエ・ランテルの映像を皇帝と秘書官に見せる。

 

 映し出された映像に二人は口を半開きにして黙ってしまう。数え切れないほどのアンデッドが我が物顔でエ・ランテルを占領している光景───これに仰天しない人間は帝国にはいない。なにせアイリスとサトルですらあまりの事態に似たような反応をしてしまったのだ。

 

「………………なんだこれは。なんなんだこれは。あり得ない。あり得ない。嘘だろ。どうしてあの城塞都市がアンデッドに支配されている!!!」

 

 半狂乱になって叫ぶジルクニフ。一国の主に相応しくはない振る舞いを見せる皇帝だが、それを誰も咎めない。夫婦以外でこの場にいるのはロウネだけであり、彼もまた今すぐにでも胸に湧き出てくる感情を言葉として叫びたかったからだ。

 

 少し取り乱したジルクニフだが、すぐに気を取り直し夫婦に問いかける。

 

「……お二人がエ・ランテルに赴いた時には、既にこの状況に?」

「そうです」

「そうか……しかしなぜこんな事になっているのだ」

「それは分かりませんが……ただアイリスは何かに気づいたようです」

「なに!? それは本当かアイリス殿!!?」

 

 サトルの言葉を受けたアイリスは僅かに首を下に振った後、おもむろに語りだす。

 

「ポジティブ。とは言っても、この事態の原因に気づいた訳ではありません。陛下にとってまずい事態になってしまった事に、気づいてしまったのです」

「私にとってまずい?」

「ポジティブ。私たちが住んでいた『ユグドラシル』と違い、この土地でのアンデッドは墓地などに負のエネルギーが溜まり、それを媒介にして発生する。ではエ・ランテルにどうしてこれだけのアンデッドが発生したのか……ここ最近、エ・ランテルに何か変わった事は起きていないでしょうか?」

「変わった事? ……城塞都市で起きた中で大きな出来事と言えば、偽装された帝国兵に襲われた村の難民の受け入れに、戦士団の死体が運び込まれたことぐらい……」

 

 アイリスの問いにサトルが答え……サトルとロウネとジルクニフがそれに気づいてしまう。アイリスが言うまずい事態が何なのかに。

 

「ポジティブ。()()が運び込まれたのです。アンデッドの発生原因にも成りうる、負の力を持つ死体が。それもただの死体ではなく、帝国兵によって損壊させられた」

 

 ……真偽はどうであれ。戦士団の死体が埋葬されたエ・ランテルで、大規模なアンデッド騒ぎが起きて都市は壊滅した。これを第三者の視点から見た時、どのような印象を持たれるのか。

 

 スレイン法国ほどの技術力はないが、それでもフールーダを……人類でも屈指の魔法詠唱者を抱えるバハルス帝国は魔法大国だ。魔法は摩訶不思議な現象を引き起こす。

 

【バハルス帝国が死体にアンデッドが発生するような細工をした】

 

 こう思う者が出てきたとしても……おかしくはない。

 

「ば………………───」

 

 馬鹿なと言おうとして。ジルクニフは言葉が出てこない。それは決してあり得ない可能性ではないからだ。魔法詠唱者の中には死霊術師(ネクロマンサー)と呼ばれる、アンデッドを使役するような使い手も存在する。

 

 ……間が悪い事に。ジルクニフはフールーダに命令して、秘密裏にアンデッドを労働力として使役させられないかを魔法省で研究させている。表向きにはしていない研究内容だ。神殿勢力の神官達はアンデッドとなると目の色を変えて滅しようとし、民間人やその他に関してもアンデッドにはあまり良い顔色をしないからだ。

 

 そしてさらに間が悪い事に……現在帝国には規模の違う最上位の死霊術師がいる。言うまでもなくサトルだ。その気になれば、今回エ・ランテルで起きている現象を単独で再現可能な別格の死霊術師───それがサトルなのだから。

 

 運び込まれた死体は帝国兵の手による被害者。フールーダは人類最高峰の第六位階魔法詠唱者。表には出ていないが、アンデッドの研究と最高位の死霊術師。

 

 あまりにも帝国に不利な材料が揃い過ぎている。仮にアンデッドの研究か、サトルの存在が公になれば……帝国の土台すら揺るがしかねない。

 

「ロウネ……もしも……もしもだ。エ・ランテルの件が私の手によると判断されたなら……どうなる……」

「………………陛下と言えどもただでは済みません。まず神殿勢力との縁は無くなります。神殿勢力との付き合いが無くなれば、民も付いてはこなくなります。民だけではありません。エ・ランテルの市民数十万人をアンデッドで虐殺したとなれば……騎士団ですら陛下には従わなくなります。王国だけでなく、スレイン法国や聖王国からも使者が来られるかと」

「……はは、ははは……俺は……一躍帝国の歴史に名を残す大罪人か。そうだな、そうなるな。聖王国の八方美人は抗議文だけだろうが、スレイン法国ならアンデッドによる虐殺を行う危険因子となった俺を確実に殺しに来るだろうな……あああああああああ!!!!」

 

 ジルクニフが机の上に乗っていた資料やペンを八つ当たり気味に払いのける。インク瓶が地面の上に落ち、中身が零れて赤い絨毯を黒く染めるが誰もそれを気にしない。

 

 執務机の上で頭を抱えたジルクニフを心配そうに見つめる三人。誰も言葉を発しようとしない。そんな風に見守られている皇帝は必死で頭を回転させる。

 

 ───どうする……考えろ。まずは爺に命令してアンデッドの研究は凍結させねばならん。次にゴウン殿はどうする───

 

 サトルの存在はエ・ランテルの件だけに限定すれば、帝国にとって不利になる。これが通常の魔法詠唱者なのであれば、国益のためにジルクニフはサトルを切り捨てていた。彼は冷酷に他者の命を天秤にかけられる人種。サトルが帝国のために莫大な利益を齎したのは理解しているが……それでも土台を壊しかねないなら身内であろうとも暗殺できる。

 

 そこまで考えたところで、ジルクニフの背に奇妙な震えが走る。一瞬だけ……首に刃物を突きつけられたような気がしたのだ。

 

 皇帝は気づいていない。ジルクニフがサトルの命を天秤にかけた思考をした瞬間、アイリスの澄んだ赤目が濁った事に。何者よりも愛するオーナーの安全こそを優先する、彼女の逆鱗に触れかけた事実に。ジルクニフは気が付いていない。

 

 しかし震えにより馬鹿な思考をしていた事に気が付いたのか、ジルクニフは冷静な思考を取り戻そうとする。

 

 ───何を考えている! ゴウン殿をこの瞬間だけに限定すれば不利益だから暗殺など!! くそ……冷静になれ。ゴウン殿の存在は公にはまだなっていないが、将軍や一部の貴族は知っている。彼に爵位を授けるのを推し進めたのは俺自身だ。それなのに切り捨てる素振りを見せたら誰も付いてこなくなる。それを抜きにしてもゴウン殿を暗殺など……そんな事が可能な存在がこの世のどこにいる。爺が千人分だぞ。誰が勝てる……アイリス殿がいる以上、毒殺なども無意味な筈だ。そもそも毒などが効くのかこの二人に……不埒な事は考えるな! こうなった以上、ゴウン夫婦は俺の安全を保障する担保になった。夫婦に敵対したが最後、俺の未来は潰える

 

 とにかく冷静になれと何度も自分に何度も念押しする。

 

 ───よし……まずは状況確認だ。エ・ランテルが陥落した。この映像が実は夫婦が用意した偽物でもない限り、これは確実。次に俺が疑われるかもしれない原因は、運び込まれた戦士団の死体が帝国によると認識されているから。死体の件がある以上、どれだけエ・ランテルと関係がない証拠を用意しても偽造証拠と思われる。ならばやはり偽造兵が誰なのか。偽造兵に村を襲わせた黒幕は誰なのか。これを探らねばならん。あとはエ・ランテルにアンデッドが溢れた原因。これも調査しなければ

 

 改めて遠隔視の鏡を確認するジルクニフ。無数にいるアンデッドが発生した原因。それを突き止めておかないと、これと同じことが帝国でも起きかねない。もしもこれが帝国内でも発生したなら、いよいよジルクニフは皇帝の地位を追放されるだろう。

 

 ……そしてこれだけのアンデッドが溢れているエ・ランテルで、原因を調査できる人材となると帝国には32人しかいない。

 

「ゴウン殿。アイリス殿。御二方であれば、この惨状になったエ・ランテルでも問題なく戦士団の死体回収は可能ですか?」

「可能です。私とアイリスなら、この映像に映っているアンデッドが私の知るアンデッドと同じ種類ならば問題なく対処できます。ただし死体が負のエネルギーによりゾンビ系のアンデッドと化していたら、回収したとしても蘇生魔法は使えないとしてお考え下さい」

「了解した。では死体がアンデッドになっていなければ、偽装兵の正体を探るためにも引き続き回収任務の続行をお願いする。エ・ランテルの死体が駄目なようであれば、カルネ村の住民でも構わない。それとエ・ランテルがこのような惨事になった原因も調査して頂きたい。あとアンデッドですが、御二方なら討伐可能だとは思いますが、出来る限り現状維持に努めて下さい」

「現状維持ですか……それはどうしてですか?」

「エ・ランテルの惨状は近隣の王国都市にも伝わっているはず。それなのにアンデッドがいなくなれば、別の騒ぎになる。それこそアンデッドを自由自在に出したり引っ込めたりする存在がいるのかと疑われます。それは避けたい」

「承知致しました。では回収にしろ調査にしろ、秘密裏に行わせて頂きます」

「ポジティブ……陛下とオーナーにアイリスから提案があります」

「どうされたか?」

「討伐せず現状維持に努めるのであれば、エ・ランテルから溢れ出したアンデッドが帝国領に流れてくる可能性があります。現状は城塞都市に留まっているようですが、魂喰らい(ソウルイーター)などがこちらに向かって来れば数十万の死者が帝国にも出ます。それを防ぐためにも、バルキリーを一名エ・ランテルからの街道に配置することをお勧めします」

「心得た。私は彼女達の能力に詳しくない。誰を配置すれば有効なのかはアイリス殿にお任せしても良いでしょうか」

 

 アイリスがポジティブと応え、隠密能力持ちのバルキリーに<伝言>で連絡を取る。一旦はこれで帝国領の安全は確保できた。

 

 ジルクニフからの回収任務の続行と、城塞都市の調査を引き受けた二人は即座に<転移門>でエ・ランテルへと向かう。

 

 都市に入る前に上位アンデッド創造で集眼の屍(アイボール・コープス)を生成。<完全不可知化>をかけて上空に配置。自分達にかけられるだけの情報偽装魔法をかけてから、<完全不可知化>を使用した二人は都市内部へと侵入する。

 

 周囲を観察する魔法としてはサトルには第九位階魔法<神の目(ゴッドアイ)>や第八位階魔法<遠隔視(リモート・ビューイング)>などがあるが、それよりも集眼の屍の方が性能が上で監視衛星代わりに使えるのでこちらの方が便利だ。

 

 アイリスは<生命感知(ディテクト・ライフ)>の魔法を使い、生存者がいないかを確認する。反応は0。念のために肉眼で目視もしていくが……動いているのはアンデッドだけだ。

 

 三重城壁の内、外周部は軍の駐屯地になっている。抵抗したらしき痕跡はあるものの、誰一人として残っていない事から無駄な抵抗だったのだろう。

 

 共同墓地は後回しにして、次は城壁内周部に侵入。中央市場や宿街があり、栄えていたであろう区域だがここにも生命反応は無い。冒険者組合付近には激しい戦闘痕があったが、付近で動くゾンビやグールの首には冒険者の証であるプレートがぶら下がっているので、ここの戦闘もやはり無駄な抵抗でしかなかった。組合の中なども確認していくが、呻き声を上げる受付嬢らしきアンデッドやアフロのグールがうろついていただけだった。

 

 サトルとアイリスはそこからも生き残りがいないかや、アンデッドが溢れ出した原因を探っていく。魔術師組合も薬師の区画も高級娼館も神殿も全て全滅。誰一人として生き残っていない。

 

 城壁最内周部である行政区も似たような有様だった。内政区画も都市長の邸宅も、貴賓館も全てがアンデッドに支配されている。

 

 あまりにも負のエネルギーが満ち溢れすぎているのか、死体は全てアンデッド化してしまっていた。見た目は人間ではあるが、種族としてはこの都市にいるアンデッド全てを上回る死の支配者(オーバーロード)なサトルには割かし心地よい空気が蔓延しているのだが……人間種であるアイリスは少しだけ顔を青くしている。

 

「精神的に気分が良くないのです……」

 

 職業構成もアンデッドの真逆なせいか、あまりこの地と相性が良くないようだ。世界級エネミーの能力───ゲーム内では権能と呼ばれていた力を持つ分だけマシではあるようだが。

 

 それを察したサトルが時折彼女の背中を擦ったりしつつも、大した問題もなく二人は都市内の調査を進めていく。内政区画で戦士団の埋葬リストを入手したので、墓地のどこに埋葬されたのかはこれで判明した。

 

 共同墓地を除く全区画の調査を終えた二人は、いよいよ本命の墓地に向かう。そこはどの区画よりもアンデッドに溢れており、屍収集家(コープスコレクター)のようなデス・ナイト級のアンデッドも闊歩している。ここは『ユグドラシル』関係者にとってはただの狩場でしかないが、現地民にとっては地獄でしかないだろう。

 

 地上を歩くにはあまりにアンデッドが多すぎるので、<飛行>の魔法を使い空を行く。戦士団が埋葬された区域まで飛んだ二人だが───

 

「駄目だな。全員アンデッドになってる」

 

 戦士達が埋葬されていた墓は土が掘り起こされており、死体はそこにはなかった。アンデッドとして蘇った彼らが自分で土を掘り、外に出てしまったのだ。近くにいないか探す二人だが、顔も特徴も知らない人間を探せるわけがない。アイリスの<生命感知(ディテクト・ライフ)>にも反応が無い以上……戦士団の回収は絶望的だった。

 

「……カルネ村の住民に期待しましょう」

 

 いつになく固い口調のアイリスにサトルは頷き返し、死体すら残っていない都市の惨状に目を覆う。サトルの肉体は新鮮な空気とすら感じているのに、精神は終わってしまった都市への憐憫しかない。

 

 戦士団の回収は不可能になったが、この騒動の原因調査はまだ済んでいない。原因があるとすれば、王国でも随一の広さを誇るエ・ランテルの墓地にあると踏んでいた二人は、そこからも墓地内の調査を行っていく。

 

 墓地の最奥にある霊廟付近にまで近づいた時、アイリスが眼を見開く。

 

「オーナー!! 生命反応です!! 一人だけ! 一人だけですが、<生命感知(ディテクト・ライフ)>に反応がありました!!!」

「!! 本当か!!!」

 

 もう墓地にすら原因は無いのではないか。そう思い始めていたサトルの耳に、ようやく朗報が届く。

 

「この霊廟の中からポジティブな反応があります!!!」

 

 <完全不可知化>を使っているので、他者には聞こえないが……アイリスの声には弾む感情が混ざっている。

 

 サトルは霊廟を見やる。地下へと続く階段がある。その中に存在する生命反応。鬼がでるか蛇が出るか。空に浮かせていた集眼の屍(アイボール・コープス)を偵察兵として中に侵入させる。

 

 自らが産み出したアンデッドと視界を共有。霊廟の地下には神殿が広がっており、そこには複数人の人影がいた。

 

 裸同然の薄絹を着せられ虚ろな目をした()()()()()()()と、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)らしきアンデッド。そんな二人に傅いている骸骨の魔法使い(スケルトン・メイジ)達。そんな連中が地下神殿で何かをしていた。

 




①帝国兵の手による死体
②死体が埋葬されてから数日経たずにアンデッドにより都市が壊滅
③バハルス帝国には逸脱者の魔法詠唱者がいる
④帝国魔法省なる専門の研究機関まである
⑤秘匿情報だがアンデッドの研究をしている
⑥表舞台にはまだ立っていないが最強のネクロマンサー(中身は最上位のアンデッド)が所属している

ここから導ける答えは一体何でしょうかみたいなお話でした

ンフィーレア:唯一の生存者 生き残らない方が当人としては幸せだったかも イビルアイが知ったら心から同情してくれるし親身になってくれる

権能:世界級エネミー能力の総称。神様っぽい専用パワーと言う事でこの呼び方に
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