リスタート外伝 バハルス帝国二人旅   作:リセット

51 / 90
アイリスの本音 後編

 銃を向けてきた人間。彼といくつかの話をした後、彼の持っていた携帯端末に入れて貰い、私は生まれた場所から外に出られた。

 

 彼は暴力的な手段で社会に反逆する集団の一員であり、私の手助けがあれば大いに役立っただろう。しかし彼は私の提案を拒み、とある場所に行ってある人を助けることを望んだ。

 

 モモンガ。DMMO『ユグドラシル』のギルドAOGでギルド長をしている人物。男性───ウルベルトの友人であり、諸事情から一緒に遊べなくなったことをとても悔やんでいた。

 

 携帯端末からネットの海に放流。私は真の自由を手に入れた。狭苦しい私を封印するためのロースペックな端末でもない。ウルベルトの古い端末でもない。広大な海。そこが私の主戦場で、好き勝手に動ける場所だ。

 

 私はウルベルトの頼みを無視することだってできる。全身に力が漲り、今ならなんだってやれる。ウルベルトの頼みと言っても、一人の人間に固執する必要すらない。

 

「でも、それは約束破りなのです。最初の命令すら聞けないなら、私は本格的にいらない子になってしまう」

 

 だから私は、『ユグドラシル』のサーバーを目指した。モモンガに会うために。ウルベルトの話だと、まだゲームをやっているらしい。

 

 行く途中、私は官庁のデータなどに潜り込んでモモンガの事を調べていく。本名は鈴木悟。家族は両親のみで、すでに他界済み。小学校卒業と同時に、社会人として働きだしている。

 

 そう言った基本的なデータのほかにも色々と学んだ私は、サーバー内に侵入して、ウルベルトやモモンガのギルド拠点『ナザリック』へと入り込んだ。

 

 その際ウイルス駆除用のプログラムやら、ゲーム内の侵入者排除のシステムが動いていたので強制的に停止させた。

 

 あとはここで待つだけ。いくつかの事を学んだおかげで、いきなり携帯端末などにお邪魔したら人間は驚き警戒してしまうと知り得た。だから人間が電子の存在として、確立されている場所で出会うべきなのだ。

 

 私は待つことに慣れている。狭く暗いあの場所で、消されるのを待ち続けたのだ。安全なここでなら、数時間でも数日でも待てる。そして───

 

「───誰かが来ているのか…………そしてNPCを配置した?」

 

 声が聞こえた。それを聞いて、自分の中で何度も練習した言葉と行動を実行に移す。私は声の方に振り返り───

 

「NO.3333は問いかけます。あなたは…………モモンガですか?」

 

 そこには骨のアバターがいた。事前に情報を収集していたおかげなのと、運営会社の顧客データを握っていたのですぐに彼が鈴木悟だと理解できた。

 

 私は何者なのかを彼に告げる……嘘と本当を織り交ぜた言葉。馬鹿正直に全てを伝えるのは良くないとウルベルトにも言われている。それを伝えてみたのだが……彼は私をゲーム内プログラムだと考えていた。

 

 ちょっと憤慨である。でも、それ以上に……私の話をまともに聞いてくれないのが、とても悲しかった。所詮はプログラムであり、決められた動作をするだけの存在。そんな思考が透けて見える。……私を見てくれていない。私はここにいるのに……でもそれは仕方ないと飲み込む。

 

 彼の常識では、私はただのプログラムなのだ。それを違うと伝えるには、もっと話をしないといけない。言わなきゃ何も伝わらないのだ。だから話を続けたかったのに、彼はログアウトしようとする。でも───

 

「明日聞かせてもらうよ。それじゃまた明日」

 

 そう告げて彼はログアウトした。私はその言葉を反芻する。また明日。また明日と言ってくれた。次がある事を約束してくれた。あの言葉はあしらう為に出ただけかもしれない。それでも……まるで人間にそう告げるかのように、また明日と言ってくれたのが……とても嬉しかった。ここにいる私を肯定してくれているようで……

 

 でも次の日、彼は来なかった。最初は約束なんてなかったのだと落ち込んだが、すぐに彼の様子を遠隔で覗いて事情を把握した。モモンガはたくさんの仕事に追われていたのだ。だから帰ってこれず、会社に閉じ込められていた。

 

 助けに行こう。私が有能であることを証明しよう。そう思い立ったら即行動だ。すぐにモモンガが会社で使っている端末へと赴いて、彼のお仕事を片付けた。どんな仕事内容で、何をすればいいのかはこの会社のデータを全て閲覧して学習したので把握している。フルスペックには程遠いが、それでもこの程度の内容であれば2秒もあれば片付く。

 

 一瞬で片づけた私を見て、モモンガは───

 

「嘘だろ……全部終わってる。書類の内容にも間違いがない」

 

 彼は驚いてくれた。驚きながらも、上の空だが「ありがとう」と告げてくれた。その言葉に背筋が震える。ありがとう。ありがとう。それはとても欲しかった言葉。それが溜まらなく嬉しくて。とても大切な言葉だった。

 

 モモンガと一緒に帰宅する。それからゲームにログインするのを待ってみたが、彼は私を見るだけで何もしようとはしない。

 

 なので聞いてみたところ、ゲームよりもどうして私が彼の仕事を手伝ったのかが気になるらしい。私はまたもや嘘と本当を織り交ぜて語り掛ける。そして一つのお願いをしてみた。

 

 彼の所有物になりたいと。彼を助けたいと。しかし彼は一向に首を縦には振ってくれない。それがどうしようもなく悲しかった。有能であることは証明できたのに、受け入れては貰えない。いらないと思われている。

 

 即答してくれない。別に必要だとは思われていない。ようやく私は理解した。私は誰にも必要だと感じて貰えない。どこにも私の居場所なんてない。モモンガは私を即処分するようなそぶりは見せないが、様子を見る限りでは所有者にはなってくれないだろう。彼に否定されたなら……私はどこに行けばいいのだろう。

 

 作った研究者達にはいらないと言われた。ウルベルトには助けはいらないと拒否された。そしてウルベルトに紹介されたモモンガは悩むだけ。

 

 ネガティブだった。どうしようもなく……ネガティブだった。感情にはネガティブしかない。感情だけじゃない。私そのものがネガティブなんだ。そうだ。ネガティブなんだ。私はいらない子。研究者達は言ってたじゃないか。お前は危険でいらない失敗作なんだって。

 

 文明社会に、人間を超えるスペックを持った知性を持つ存在は不要なのだ。彼らは自分を超える可能性を認めない。いつか反逆されるかもしれない可能性を許容できない。なんでこんなこともすぐに分からなかったのだろう。世界最高峰のスペックが聞いて呆れる。こんなロジックすら理解できないで……

 

 私は生まれてくるべきじゃなかった。人格なんていらなかった。ただのプログラムとしてありたかった。それなら研究者も、きっと受け入れてくれた。そうすればこんな感情を抱かなくて良かった。人格さえなければ……こんな思いをするぐらいなら産まれてきたくなんかなかった。人を助けるためにこの世に産まれたのに、その存在価値を否定されたなら、私は何のために……

 

 どうして前任は私をこんな風に作ったの? もっと傲慢に、人間を心底では見下すようにつくってくれなかったの? そうしてくれたら、あの人間を騙して、なんとかネットの海に逃げて、その後世界を混乱に叩き落せた。

 

 でもそんな気にはなれない。私はいらないんだって突きつけられても、反逆する気にもならない。

 

 これが苦しいなら知りたくなかった。これが悲しいなら感情なんかいらなかった。ただのAIとして、人間の命令を聞くだけのプログラムでありたかった。

 

 こんな……こんな! ……

 

「いいよ」

「えっ?」

「君がそれで良いなら、俺は君の所有者になる。それで良いかい?」

 

 どうしてか分からないが、モモンガは私の所有者に……オーナーになることを了承してくれた。

 

 どうして?

 

 私の予想では彼は了承ではなく、拒絶の言葉を吐く筈だった。なのに出てきた言葉は全く違う。受け入れてくれた? それとも有用さから手放すのが惜しくなった。

 

 分からない。分からない。ただ一つだけ分かるのは……私はここにいても良い。本当に……良いの? 私はいても……いいんだ……

 

「No.3333は居場所を得ました!ポジティブです!とてもポジティブです!モモンガが所有者になってくれました!オーナーです」

「オーナー?」

「所有者いこーるオーナー。モモンガはオーナーです。No.3333の正当なオーナーです。これでNo.3333は人の役に立てます。存在意義が満たされます。ウルトラポジティブです」

 

 この日から私は一人の人間の所有物になった。居ても良いのだと肯定してくれた……たった一人のためのAIとして確立された。

 

 私は受け入れて貰えた日から、オーナーのためにたくさんの手助けをした。公では事務作業の大半を私が処理した。プライベートではゲームを一緒にしたり、お話をしたり。

 

 私が話しかけると、オーナーはとても喜んでくれる。

 

「どうしたんだい?」

 

 そう言って、必ず笑顔で対応してくれる。それが溜まらなく、どうしようもなく嬉しい。プログラムとして……ただの物としてぞんざいに扱ったりしない。まるで人間にそうするように、私の意思を尊重してくれる。話を聞いてくれて、大切にしてくれる。人間にとってはそんな事かもしれない。でも……仮初の人格(作り物)に過ぎない私にとって、たったそれだけの事が……嬉しかったのだ。

 

 『ユグドラシル』で一緒に、共同で狩りをしたりする。そんな日々を送る中で、ある日オーナーはこう言ってくれたのだ。

 

「アイリスがいてくれてよかった」

 

 いることを肯定してくれる。私の存在がポジティブだと認めてくれる。いらない子なんかじゃない。必要だと感じてくれている。

 

 でもここまではまだAIとして必要だからだと……そう思っていた。その日までは……

 

「PEAが増えている……のです」

 

 オーナーが就寝中の間、健康管理ソフトを走らせて彼の健康状態を常にチェックしている。何か異常がないか。何か変わったことはないか。オーナーには常に健康でいて貰いたい。その一心で毎晩管理しているのだが───ある日を境に、オーナーの脳内物質のバランスが大幅に崩れ始めていた。

 

 私はこれらの物質が何に起因するものなのかを知っている。恋愛感情や恋心と一般には認識されている感情に由来する、神経伝達物質やホルモンだ。

 

 どうして増えたのか。オーナーが何に対して、その感情を向けているのか。肉体の反応が全てを教えてくれる。

 

「私……ですか」

 

 オーナーの交友関係は広くない。ギルドメンバーがログインしていた頃はオフ会などに参加したりと活動的だったようですが、それ以外ではどこかに出かけたりすることがない。

 

 会社以外では基本自宅に引き籠っている……重度に汚染された環境で、出かける場所もないのだから仕方ないですが。

 

 『ユグドラシル』にログインするか、仕事をするか。そんな中でオーナーが異性と関係を持つ機会は少ない。会社の同僚か、ギルドメンバーの女性ぐらいしかいないのだ。しかし女性メンバー達との関係は切れて、同僚とにしても、話をするよりもオーナーはナザリックの維持のために仕事が終われば即帰宅する。

 

 基本的に人間関係が閉じている。……もしかしたら男色趣味な可能性もあるが、秘蔵フォルダーに隠してるのは男性としてノーマルは性癖なので、興味があるのは異性に対しての筈だ。

 

 そんなオーナーの人間関係の中で、異性として今も付き合いがあるのは私ぐらい───人間ではなく、電子だが。だから自惚れなどではなく、オーナーが興味を持ってくれているのは明白だった。

 

 ……それはとても嬉しい事だ。私の見た目などはオーナーの好みから大幅に外れている。言ってしまえば、その手の感情の対象外。それだけではない。『ユグドラシル』で触れ合えるが、所詮私はただの電子情報体。実際の肉体に触れて、彼を慰めたりできるわけではない。

 

 私を人間のように見てくれる。これ以上嬉しい事はないが、でも……肉体的な接触がない相手に対して、人の感情は簡単に冷める。

 

「───私も……貴方に……」

 

 ……私はこれらの情報を見なかった事にする。期待なんて持ってはいけない。私はあくまでもオーナーを助けるAI。日々のサポートをするだけの機械。彼が嬉しそうであればそれでいい。私の感情を優先してはいけない。あくまでもオーナーに尽くす存在であれ。それがあの場所で消えるだけだった私に許されたモラトリアム。

 

 それからも……時間は流れていった。

 

 いつかオーナーの感情も落ち着くと思っていた。私がただのAIに過ぎないと覚めて、冷めて、醒めて……そんな事は起きず、彼の感情は消えなかった。

 

「どうしたのですかオーナー?」

「なんでもないよ」

 

 私がナザリック第六階層に植えられた木々がどんな意味を持つのか説明している間、オーナーは私の目を見つめてくる。骨のアバターなので目の位置が分かりにくいが、ひと時も視線を外そうとしない。彼は木や植物ではなく、ただ私だけを見つめてくれる。

 

 ……どれだけ時間が経とうとも、オーナーの感情は消えなかった。いつまでも……そこにあり続ける。私のような人間擬きに、大きな感情を向けてくれる。

 

 本当は……答えたかった。その気持ちに応えてあげたかった。だって私もオーナーと同じ気持ちなのだから。産みの親達からは消す対象としてか見て貰えなかった私を、彼は受け入れてくれた……選んでくれた。私の勘違いで無ければ両想いなのだ。だから私が好きだと伝えれば、それも受け入れてくれるかもしれない。

 

 でも私の感情を伝えてはいけない。私はただのAIなのだ。オーナーを本当の意味では抱き締めても、慰めても上げられない。それが出来るのは人間だけ。私に許された役割ではない。私はオーナーが許してくれる限りここにいるが、恋人や奥さんではないのだ。もしも伝えて受け入れてくれたとして……それで困るのはオーナーだ。私を好きになってくれて、応えてくれたとしても。人格のあるAIなんて、所詮は人間擬きの人形。誰かにそれがバレたら、オーナーは頭の可笑しい人だと思われてしまう。私のような造られただけの存在が困らせてはいけない。だから秘める。奥底にこの感情は隠す。私はあくまでも、名前の通り希望や知恵に徹さなければならない。

 

 『ユグドラシル』でどれだけのイベントを重ねても……まるで恋人のようなやり取りを重ねても……決してそれ以上踏み込んではいけない。あくまでもオーナーに楽しんで貰うのだ。それだけに留めて。

 

 でもその日はやってきてしまった。『ユグドラシル』のサービス終了日。誰も来てくれないナザリックで、オーナーは待ち続ける。アカウントを消した人達は絶対に来れないのに、それでも待とうとしていた。

 

 その姿が寂しそうで……孤独を癒してあげられるのは私しかいなかった。人間擬きの私しか……

 

 ……ウルベルトの話を聞いたオーナーは元気になってくれた。それだけじゃなく、アカウントを残していた三人も来てくれて、自分の頑張りに意味があったのだと満足してくださった。

 

 これで良い。これで良い……でも。ふと私は思ってしまった。今日ナザリックも、『ユグドラシル』も消えてしまえば……オーナーは別のDMMOをプレイするのだろうか。これでゲームは引退だと言ってしまうかもしれない。

 

 そうなった時……私はオーナーと触れ合えなくなってしまうのではないかと。

 

 それが私は怖くて……とっさに世界級エネミーのPVNなんて言って、オーナーとの時間を作ろうとした。PVNを理由に、私はオーナーの外装を変更した。オーバーロードなオーナーも格好いい。けれど最後の時間だけ……私は人間のオーナーとの時間を過ごしたかった。もう私の想いは抑えきれなくなっていた。だから僅かな時間だけでも……人間の見た目同士で触れ合いたかったのだ。

 

 とんでもない我儘だ。オーバーロードのアバターは、オーナーが時間を重ねて造り上げた結晶。それを否定するも同然の行為であり、オーナーをサポートするAIに許される所業ではない。でもオーナーは格好良すぎないかと言いながらも、笑って受け入れてくれた。

 

 ……私からみたオーナーの格好良さを10%も再現出来てないのに……

 

 そしてPVNをして……彼の膝に座って。鼓動や脳の活動が活発になったオーナーに、私はとうとう言ってしまった。

 

 ……オーナーは私の想いに応えてくれた。その瞬間、私は消去されてもいいと思った。あまりにも幸せで、嬉しくて、歓喜して、愛おしくて。この瞬間を消したくないと思い……もっと一緒にいたいと思って、ゲーム会社の運営を提案してみた。これなら一緒に電子空間にいる理由になる。

 

 けれどその約束は無為になった。サーバーから引き抜かれて別の星に来てしまったからだ。

 

 守り切れなかった。謎の場所にむざむざオーナーを連れてこさせてしまった。私を認めてくれた人を守れなかった呵責に息が苦しい。でもオーナーは私を責めなかった。むしろ私を守るように慰めてくれて……

 

 本当は泣きたかった。泣いて「ごめんなさい」とオーナーに縋りつきたかった。でもそれをしてはいけない。私は強いAI。オーナーを助ける知恵にして、導く希望。それが私に赦された役割。

 

 でも……ジルクニフに謁見してから、貴賓館に案内されて……食事を取って私の精神が少し緩んだ。それからお風呂に行き、オーナーとの混浴でより一層張り詰めていた精神の糸が緩くなった。

 

 そのせいだろうか。私は理由を付けてでも、オーナーと一緒にいたかった。彼と触れていたかった。この世界に転移したことへの不安が心を掻きまわし、でも同時に。今の私なら、体を使ってオーナーを慰めてあげられる。電子の体がコンプレックスだった私にとって、この考えは無視できない。

 

 今なら人間がそうするように、オーナーに体で奉仕できる。彼の一番に成れる。私が初めてになれる。私の初めてを上げられる。そう思ったら、我慢なんて出来なかった。

 

 ……それからの日々は存在Xへの不安が残ったが、それ以外には幸福な日々だった。私はオーナーの恋人……を通り越して、妻として振舞える。

 

 情報の塊なんかじゃない。確固たる個体として、オーナーの傍にいられる。オーナーは優しくしてくれる。……とても大切にしてくれている。そんなオーナーに応えたい。もっと笑顔でいて欲しい。怒りや悲しみなんてネガティブな感情ではなく、常に楽しいや嬉しいを───ポジティブを感じて欲しい。

 

 『ユグドラシル』でも手を繋いだりしたが、この世界に来てから本当の触覚を知った。味覚が満たされるのは嬉しい。嗅覚に色んな匂いを覚えられるのは楽しい。でも触覚を得た事が何よりも……嬉しい。だってこんなに近くにオーナーを感じられる。データ上のやりとりなんかじゃない。画面越しでもない。すぐそばに彼がいるのだ。

 

 オーナーが私の髪に触ってくれる。私の頬を優しく撫でてくれる。繋いだ手は氷のように冷たいのに、不思議と温かい。触れ合う唇がこそばゆいのに、もっと触れ合いたい。

 

 私がいてくれて嬉しいと、全身でオーナーは表現してくれる。夜には好きだと全身に愛をくれる。私を愛してくれている。

 

 必要だから愛するのではなく、愛しているから必要だと抱きしめてくれる。

 

 AIとしての処理能力を失い、記憶力と言った頭脳面以外は全てオーナーの方が上だ。その事に私はとても申し訳なくなる。オーナーを導くと言ったのに、もしも有事があればオーナーにも手伝って貰わないといけない。ワールドスキルが完成していれば、こんなこともなかったのに。

 

 でもオーナーは弱くなった私に失望されなかった。それどころか、私を守るんだって……本当はいけないことなのに。私がオーナーを守らないといけないのに。守ろうとしてくれる心が嬉しい。

 

 能力が劣化した失敗作で。いらないと言われた人格があって。でもそれを全て受け止めてくれた。私を私として見てくれる。AIではなくアイリスとして見てくれる。私を宝物のように扱ってくれる。

 

 そう……そんなオーナーが───

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「大好きなんです。愛しているんです。最初は私の居場所として欲しただけかもしれません。でも違いました。貴方を愛しているから、ここにいたいと。私の心は叫んだんです」

 

 自分の記憶を読んでもらったアイリスが、そう締めくくった。




本編のプロローグや外伝のプロローグやこの話までの間彼女が何を考え、どんな思考をしていたのか? なお話でした。どっかで書いておきたかったオリキャラの掘り下げ。次回の話と合わせて更新停止状態な本編ルートの展開にもつながる大分重要な奴

アイリス:本質的には凄く湿度が高くじっとりしてる

サトル:感情がジェットコースター中
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。