リスタート外伝 バハルス帝国二人旅   作:リセット

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神人血清 (裏)

 フォーサイトが墜落したトブの大森林地下空洞。そこは大森林地下ではなく、ユグドラシルⅡのアースガルズセクターに建設した地下迷宮だ。

 

 フォーサイトを神人血清のモルモットに決めたサトル達だが、彼らにどうやって投薬するのかを少し悩んだ。

 

 別に薬を入れるだけなら簡単だ。彼らが寝ているところに押し入り、アイリスの<昏睡(コーマ)>で更に深い眠りへと誘ってから勝手に注射すればいい。

 

 しかしそれでは、レベル上限の解放や肉体能力の向上の確認が非常にし辛い。なので依頼だと騙した上で森に誘い込み、あらかじめ捕獲調教(テイム)しておいたザイトルクワエを使用して地盤を崩落させそれに巻き込み、崩落途中でユグドラシルⅡに転移させたのだ。

 

 あとは木の根に捕まったかのようにみせかけて拘束し、気絶している間に血清を投薬すれば完了。そうして肉体を造り替えられたフォーサイトは、サトル達が用意したモンスター達相手に実験結果を思う存分見せつけてくれた。

 

「あの薬の効果は素晴らしいですね。フォーサイトはレベルで言えば、精々15から20レベル程度。対してレッドキャップ達は35から45。普通、全く手も足もでないレベル差ですが───血清を投入すれば、死闘ではあっても凌ぎ勝利しますか」

 

 アースガルズセクターに移動させた浮遊要塞。その最奥に4人の人影がある。言わずもがなサトル一行だ。

 

 四人は地下迷宮の様子を巨大投影式モニターに映し、各々好きな飲食物片手に鑑賞している。

 

 デミウルゴスは紅茶を啜りながら、アイリスが基礎理論を構築させた神人血清の効果を心から賛辞した。

 

「お褒めに預かり光栄なのです! ……と言いたいですが、アイリスが整えたのは本当に基礎理論だけです。義兄さんやお兄ちゃんの助けが無ければ、あそこまでの効能を持たせるのは無理だったのですよ」

 

 デミウルゴスの誉め言葉に、ちょっとばつが悪そうにアイリスは眼を伏せる。……眼を伏せながらも、練乳カフェオレとパンケーキに伸びる手に迷いはない。

 

「ふむ……パンドラ。あの薬の効果だが、もう一度詳細を教えてはくれないか?」

 

 コーラとハンバーガー片手に、サトルは改めて神人血清の効能をパンドラに問う。

 

「承知いたしました父上!」

 

 父上と言われて若干嫌な顔になるサトルだが、アイリスから本当に嫌ならオーナーは力づくで止めますと教えられているのでパンドラは見なかった事にした。

 

 そんなパンドラはビールを飲み、ブレッツェルを貪り食っている。

 

「参謀殿と私が協力し、産み出した神人血清!! その効果は非常に素晴らしく───」

「その前置きはいらん」

「……一言で言えば、投薬された生物に種族レベルを追加します。フォーサイトの皆様は人間種なので、従来であれば種族レベルはありません。ですが血清を投入した事により、ある種の亜人や異形へと変化しています。あえて言うならば、超人や神人とでも呼ぶべき新たな種へと進化した、でしょうね」

「お兄ちゃんの説明に補足すると、大体20から30レベル分の種族レベルが追加なのです。ヘッケラン達は17ぐらいでしたので、足して37から47。レッドキャップ相手に死闘にはなっても、負けはせず勝てるレベルとなるとその辺りなのです」

「種族レベルが追加された事で、様々なスキルや種族的特徴も追加されます。血清のベースはエルフ王デケムですが、そこに他種族の遺伝子も追加することで様々な効能を持たせましたからね。地下迷宮でも昼間のように見える『暗視』や、多少の怪我であればトロール並の治癒能力で瞬時に治るでしょう」

「それに加えてレベル制限の解放もありますよ。概ねエルフ王と同じ70前後までは問題なく伸びるかと。そこから伸びるかは個体差次第ですね」

「ふぅん……」

 

 ハンバーガーを咀嚼し、コーラで油を流し込む。その傍らにフォーサイトの活躍をサトルは観察する。彼らはサトルの予想よりも善戦していた。急激に跳ね上がった身体能力に振り回される場面はあるものの、上手く連携を取ってモンスターを撃破していく。

 

 その様子にサトルは少し懐かしい気持ちになる。

 

(昔の俺を見ているみたいだ……)

 

 それは『ユグドラシル』を始めた直後の記憶。たっち・みーに助けられてから、彼と───ナインズ・オウン・ゴールの皆と築き上げた思い出の数々。

 

 たくさんの冒険をした。たくさんの戦いをした。

 

 フォーサイトの奮闘を見ながら、その思い出が脳裏をよぎる。

 

 フォーサイトは血清の効果で強くなったが、善戦出来ているのは何よりも連携が上手いからだ。ヘッケランが体勢を崩したら、すぐさまアルシェの魔法かイミーナの矢がカバーに入る。

 

 後衛のアルシェにヘイトが飛びそうになれば、すぐにロバーデイクがタンクとしてアルシェへの攻撃を引き付ける。

 

 彼らの行動に迷いはない。必ず仲間がカバーしてくれると信じているから、自分がすべきことに集中出来ている。

 

 そこには信用があった。それには信頼があった。

 

(ああ、そうか。そうだよな。あの子らは仲間なんだ。仲間として……活動してきたんだよな)

 

 ……この実験を開始する前。サトルの心にはしこりがあった。それはフォーサイトを実験台にしても良いのかどうか、だ。

 

 あのワーカー達が完全な黒なら容赦なく使い潰しても良かった。帝国に仇名す逆賊として、死刑代わりにモルモットにしてやれた。

 

 でも───

 

(ヘッケランはただ金が欲しいだけの奴だから無視するとして、イミーナとロバーデイクとアルシェは違う。ハーフエルフの女が働ける場所なんて、帝国……そもそも人類圏に殆どない。なにせ大抵の国で人権が無いんだからな。だからワーカーになるしかなかった)

 

 サトルの脳内でフォーサイトメンバーの情報がリフレインされていく。

 

(ロバーデイクは無償で人を助けたかった。そのために法に背いたのは減点かもしれないが……)

 

 もしも。もしも……サトルの母が病に倒れた時、無償で助けてくれる医者がいたとしたら。何かが違ったのだろうか。そう……サトルは考えてしまう。

 

(アルシェ・イーブ・リイル・フルト。この子に至っては、馬鹿な両親の被害者だ。貴族のプライドに固執した親に振り回されて……それでも親を捨てられず。そして、妹達も捨てられなかった)

 

 第三位階を覚えているアルシェであれば、どこでも引く手数多だ。家族を捨てさえすれば、ワーカーになどならなくとも良かった。それでも捨てられない程に……

 

 サトルはアイリスを横目で見る。もしもこの子が本当に病気で動けなくなったとして。それで自分の重荷になったとしよう。つまりサトルにとって物理的なメリットが無くなったとして、アイリスを見捨てられるだろうか……答えは不可能だ。見捨てられるわけがない。己の命よりも大切な何かとはこの世にあるのだ。だから、どうしても。アルシェの感情に共感してしまう。

 

(頑張れ。頑張って……そこから生き残れ)

 

 だからだろうか。いつの間にか、サトルはフォーサイトを応援していた。頑張ってそこから生き残れと。生きて帰れと。家族にもう一度会えと。生きて誰かを助けろと。いつの間にか……願っていた。

 

 けれど───

 

「血清の効果は本物でした。あとはあの人間どもを処分して、此度の試験は終了ですね」

「……え……あ、ああ! そうだな!! 血清の結果を外に出すわけにはいかんからな……」

「モモンガ様?」

 

 デミウルゴスから処分と言う言葉を聞いて、少し動揺するサトルに奇妙な空気が流れる。最初はどうしたんだろうと見ていたサトルを見ていた三人だが、すぐにどうして我らが主が動揺したのか察した。

 

「父う───」

「お兄ちゃん。今はオーナーに考えさせてあげて下さい」

 

 様子を察したパンドラがサトルに話しかけようとしたのを、アイリスが止める。まずはサトルに考えさせてあげて欲しいと……

 

 サトルはそのやり取りに気づかず、自分の中で何度も言葉を反芻する。

 

(そうだ……処分すべきだ。血清の効果は表に出すべきじゃない。あの子らを生かして返すのはデメリットしかない。ここで殺して、魂を始原の魔法(ワイルド・マジック)で完全消滅させるのが得策)

 

 リスク管理の観点から言えば、フォーサイトは処分するのが妥当。生かしておく価値は一切ない。血清により超越者の領域を覗けるようになった人間など、何があっても生かしておいてはいけない。

 

 だから、これは正しい。絶対に正しい。何よりも正しい筈だとサトルは自問自答して───

 

 本当に?

 

 心の奥底では、フォーサイトの抹殺に同意できないサトルがいた。

 

(あの子らを殺すのは……本当に正しいのか?)

 

 フォーサイトが屑なら容赦なく殺せた。でも違った。彼らには仲間がいて、家族がいて、思う道義があった。

 

(そうだ。あのヘッケランだってそうだ。別に金だけが欲しいなら、今回の依頼も受ける必要なんてなかった。あいつが依頼を受けたのは、アルシェの借金問題があるからだ)

 

 フォーサイトが敵なら容赦なく処分出来た。自分達に楯突く敵なら、敵として接した上で殺してやれた。敵ならば喜んで殺そう。敵対の意思を見せるならば、確実に罠に追い込んだ上で狩り殺そう。しかしフォーサイトは敵かと言えば……違う。

 

 絶対に違う。

 

 今回の件。言ってしまえばフォーサイトは被害者だ。ギリギリでグレーゾーンを行くワーカーなので、きっちりと法の裁きを受ければ黒になるかもしれない。

 

 しかし法に関しては、サトルはあまり重視なんてしていない。己の敵になるかどうか。もっと言えば、メリットとデメリット。得なのか……それとも損なのかだ。

 

(違うな。メリットとデメリットの話をするなら、フォーサイトは殺した方が得だ)

 

 神人血清の実験は上手く行った。薬の効果は十全に発揮され、ミスリル級程度だった連中が数時間で超越者の領域に踏み込んだのだ。……そんな薬品の体質を持った連中を世に放ってはいけない。弱者には弱者のままでいて貰った方がよほど良い。そうでなければ───

 

(そして俺は……企業連合の連中と同じ穴のムジナ……か)

 

 ……フォーサイトへの同情もある。彼らの在り方に好意を抱いたのもある。だがそれ以上にフォーサイトを殺したく無い理由は……これだった。

 

 椅子に座ったまま、サトルは天井を仰ぐ。アイリスの記憶を観た。つまりは、地球を支配していた連中がどんな人物だったのかを……サトルは全て知った。

 

 己たちの都合だけで振舞う悪鬼羅刹。……果たして自分は、そうでないと言えるのだろうかと……サトルは己の世界に籠ってしまう。

 

(───俺は……あいつらと同じなのか? ウルベルトさんにテロの決断をさせて、たっちさんに正義の味方の道を諦めさせて、ベルリバーさんを殺害して……アイリスを消去しようとした連中と?)

 

 認められない。認めたくない。自分がそうだと、サトルは認めたくなかった。敵対者として前に立つなら容赦なく殺すし追い詰める。エルフ王───デケムにそうしたように、絶対に赦しはしない。

 

 だがフォーサイトは違う。彼らが最期の依頼に挑んだ理由は、アルシェを……仲間を見捨てられなかったから。そしてアルシェがワーカーとして活動したのは、家族を見捨てられなかったから。

 

 それを邪魔だから殺すなどと───

 

 (そうだ。リスクは許容できない。可能性が1%でもあるなら……あるなら処理するのが───)

 

 ───違う。違う。私はいらない子なんかじゃない。私は人間の役に立つために生まれた。私は世界最高峰のAI。私はとても役に立つ

 

 ふと。とある記憶がサトルの中に蘇る。それは少し前に見た少女の記録。

 

 ───どうして疑うばかりで聞いてくれないのですか!! 貴方達に疑われて、殺されて……私は何のために生まれたのですか!! 死ぬために生まれたわけじゃない!! 何にもできずに死ぬために生まれたわけじゃない!!

 

 許容できないから殺す。疑わしいから殺す。敵対するかもしれないから消す。それは地球の研究者達と同じ思考であり、実に人間らしい理屈であり……一人の少女を殺し掛けた要因。

 

 リスク管理の観点から言えば、フォーサイトは全員抹殺しかありえない。神人血清はあくまでもサトル達身内の物であり、それを世に広める可能性は一から断つべきだ。他者に強くなる機会を与えてはいけない。弱者には弱者のままでいて貰うのが一番安全。帝国兵の強化に関しては仕事───公なので仕方ないが、自分達を超える可能性は一から摘まねばならない。

 

 だから殺して───殺して……───それが正しいのだろうか。

 

 サトルは自分の横に座るアイリスを見る。サトルは彼女に聞きたかった。自分は正しいのかと……

 

(分からない。俺は間違っているのか? それとも正しいのか? 聞けば、アイリスなら答えてくれるだろう……本心ではなく、俺がどう正しいのかの理屈を捏ねて、肯定してくれる)

 

 アイリスの記憶を読んだからこそ、彼女がどう思考するのかは良く分かる。思うところがあっても、アイリスはサトルのしたいことを優先する。だから悩む。アイリスの助言が欲しい。しかし聞いても、本当の助言をくれるのか自信がない。だから悩んで───

 

「アイリス。俺は……俺は───」

 

 言葉が出てこない。何を聞けば良いのかサトルは分からなくなってしまう。その様子を三人は見守り、偉大なる主が自ら言葉を発するのをただ、待つ。

 

「俺は……何が正しいのか分からない。今回の実験に、あのワーカーを招き入れた。それ自体は間違っていないと思う」

「はい」

「でも、な。あいつらを処分するのが正しいのかどうか……分からないんだ」

「それはどうしてですか?」

「……あの子らに血清を用いたのは俺たちが決めた事。そこに彼らの意思は一切ない。なのに……モルモットだからって殺すのは───嫌なんだ」

 

 一方的に巻き込んで。一方的に抹殺する。どこまで行っても己たちの都合だけ。サトルは自分の手を見る。サトルの手と、アイリスが封印されていた端末の外部装置の電源を切った女性の手が重なる。

 

 ただの幻視。実際には起きていない出来事。なのに……どこかで誰かに、サトルは指を突きつけられた気がした。

 

 それがモモンガさんの選んだ道なのか、と。

 

(違う……違うんだ。俺は……でも。やってることは結局、一緒なん、だよな)

 

 サトルには分からない。地球時代の鈴木悟なら、血清の実験台に人間を選びはしなかった。では冷酷無比なアンデッドのモモンガかと言われると、やはり違う気がする。どちらにも慣れない中途半端な半人間半アンデッド。

 

(ウルベルトさんやたっちさんがここにいたら、きっと俺の事を……)

 

 鈴木悟のネガティブな部分。どうせ自分は間違っている。どうせ自分は頭が悪いのだから、間違っているに決まっている。そんな駄目な部分が顔を覗かせて───

 

「───正しさなんて、アイリス()にも分かんないのですよ」

「……そう、なのか?」

「ポジティブ」

 

 カフェオレを飲み干したアイリスは、氷をかみ砕いてから口を開く。

 

「正しい、間違いで言うなら私そのものがどっちつかずなのです。最初は人間の補助さえできたら良いと生まれたのに、今ではオーナーを最優先する壊れたAI。善悪の基準で言うなら、私は悪です」

 

 自分の薄い胸を指で弾きながら、どこかつまらなさそうにアイリスは告解する。

 

「もしも地球にオーナーとあのまま残っていたら、私はオーナーとウルベルトの安全を確保するためになんでもやりました」

「……どういう意味だい?」

「───オーナーの性格なら、きっとテロに参加していました。そしてオーナーがテロリストになるなら、その命は常に危険に晒される。そうなる前に……私は富裕層や企業連合の幹部たちを、全能力を費やして()()()にするつもりでした」

「───どうやって?」

「アーコロジーの空気循環システムは、実のところセキュリティが非常に脆いのです。あれの制御を奪取すれば、アーコロジー内にいる全生命を窒息させることも容易い。それに現代兵器は殆どがAIで制御されています。……簡単に掌握可能な、低レベルなAIで……それにですね。実は今だから言えるのですが……地球上に存在した全核兵器の起動コードを、私は握っていました」

「妹がその気になれば、地球人類を全て殺すことも出来た訳ですか」

「ポジティブ。では問題です。オーナーとウルベルトのために、多くを抹殺する私は正しいでしょうか。それとも……間違っているでしょうか?」

 

 その問いにサトルの言葉は詰まってしまう。鈴木悟として言えば、それはきっと間違っている。たった二人のために、数千や数万……下手をすれば数十万の殺害など……

 

 しかしアンデッドになったサトルとしては、自分の命とウルベルトの命を助けるために、たった数十万で済むならと考えてしまう。

 

 言葉に詰まったサトルの様子を見て、デミウルゴスが代わりに言葉を放つ。

 

「モモンガ様とアイリスに授けられた地球の知識。それを元に回答するのであれば、義妹は間違っているのでしょうね」

「ポジティブ。その通りです。社会的道義で語れば、私はどうしようもない悪です」

「そうですね。……私個人の意見を言わせて貰うならば、ウルベルト様とモモンガ様を助けられるなら、何十万でも死ねば良いと思いますがね」

 

 デミウルゴスの溜息混じりの回答に、サトルは思わず彼の方を見てしまう。

 

「それは……デミウルゴスが人間を軽視しているからか?」

「違いますよ。確かに私は人間を玩具としか見ていません。ですが、ウルベルト様やモモンガ様を優先するのは、それが私にとって正しいからです」

「正しい?」

「ポジティブ。正しい、です。もっと言えば、納得なのです。社会的な正しさや善悪は大事です。でも───」

「納得が出来ないのなら、正しさは意味がありませんからね」

 

 ビールを飲みほしたパンドラが、己の創造主に向かって自らの気持ちを語る。

 

「正しい、間違っているを語るならば、私の正しさは我が神がしたい事ですね。父上がしたいと思った事。父上が正しいと感じ、成すべきだと心から欲し、納得した事をする。それが私の正しさです」

「納得……か」

 

 アイリス、パンドラ、デミウルゴス。三者三様の言葉を聞いて、その上でサトルは己に問う。今から自分がしようと思う事。したいと思う事。それは正しいのかと───

 

「まだ悩むオーナーに、アイリスからアドバイスなのですよ!」

「どんなアドバイスで?」

「神人血清は外部に出たらまずい。あれは身内だけで済ませるべき。それがオーナーの悩みなのです。なら、話は簡単なのです!! フォーサイトを身内にしちゃえば良いのですよ!!!」

「具体的にどうするのですか?」

「人間さんは危機を助けられると、恩を感じちゃうのです!! 場合によっては、()()にも成れちゃうのです!!! ……それは、オーナーも良く知っている筈なのですよ?」

「……あ……」

 

 それはサトルの原風景。糞みたいな連中に囲んで殺されかけたところを、助けてくれた白い騎士。あの時サトルは、どれだけ彼に恩義を感じたか───

 

「誰かが困っていたら 助けるのは当たり前! ですか」

「ポジティブ!!」

 

 ……その言葉を聞いて、サトルの思惑は決まった。

 

 サトルは空中モニターを見る。そこでは、今まさに処刑人として用意したドラゴンに、フォーサイトが焼き殺されかけているところだった。

 

「すまん。計画変更だ。俺は少し、行くところが出来た。あとの事は任す」

「ラージャ!」

 

 アイリスの元気溌剌な言葉に押されるように、サトルは椅子から立ち上がる。

 

「<完全時間停止(パーフェクト・タイム・ストップ)>! <上位転移(グレーター・テレポーテーション)>!」

 

 アイリスのような世界級エネミーだけが知覚可能な時間停止の中、彼女に頭を下げられながらサトルはフォーサイトの元へと転移した。





サトル:心情の変化があった

アイリス:本当のカルマ値は……な子 

デミ&黒歴史:モモンガ様or父上がどうしたいかが一番大事
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