現代の異能(偽)の青春の記録   作:チキ・ヨンハ

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楽園

 

 

 

 

「……。」

 

「これが全ての、無意味な足掻きの終着点……」

 

「私はアズサに警告をしていた。何度も何度も、このような結末になるだろうということを」

 

「それでもアズサは、希望を抱いてしまった。淡い希望を」

 

「……。」

 

「だから言っただろう?」

 

「これが物語の結末。何もかもが虚しく、全てが破局へと至るエンディング。ここから先を見たところで、無意味な苦痛が連なっていくだけだ」

 

「これはつまるところ各位が追い詰められ、結局誰かが誰かを殺める物語。誰かが、人殺しにならざるを得ない話」

 

「不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を顰めたくなるお話だ」

 

「悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような。それでいて、ただただ後味だけが苦いお話……そうは思わないかい」

 

「しかし紛れもなく、真実の物語でもある……」

 

「これが、この物語の正体だ」

 

「……。」

 

「君は以前、五つ目の古則に対してこう言っていたね」

 

「『ただ楽園があると信じるしかない』、と」

 

「然して、信じた結果がこれだ」

 

「元より不可能なことだったのだよ。エデン条約、お互いに『憎み合うのはもうやめよう』という約束」

 

「そんなこと、できるはずが無いというのに……」

 

「その上、条約の名前に『エデン』と来た。ここで楽園の名前だなんて、相変わらず連邦生徒会長の不愉快な冗談は皮肉にもほどがある。下手をすれば悪意すら感じてしまいそうなほどだ」

 

「このプロセスを経て、確認できたものはあるだろう」

 

「それは不信から降り積もった、ゲヘナとトリニティの互いへの恨み。そしてアリウスたちが持つ恨み」

 

「それらを通じてこの条約は、歪な形で完成されてしまった。何より皮肉なことに、どこにも存在しない、証明すらできない……その楽園の名前を携えて」

 

「まさに、楽園から追放された私たちにふさわしい結末かもしれないね」

 

「……分かったよ、セイア。……君も、その後はどうなったか見ていないんだね?」

 

「……?見る必要が、あるのかい?悲しいエンディングの後、そこに続くエピローグを見たところで悲哀が増すだけ。苦しみが連なるだけだ……それで?何が『分かった』と言うんだい?」

 

「……この後のお話を確認するのは、怖かったよね」

 

「何を……」

 

「だから夢の中に隠れて起きられず、ずっと彷徨ってたんだね」

 

「わ、私は……。先生……君は一体、何を……?」

 

「セイアと会えて良かった。少し待ってて」

 

「戻る……?待ちたまえ。私と違って、君の身体はもうすぐ機能を停止する。もし何らかの奇跡が起こって立ち上がれたとしても、数秒が限界だ。そして、君が起きたところで何かが変わるわけでもない。これは私の未来予知で判明している……。いや、『七つの古則』から既に導かれていた、この世界の真実だ……!」

 

「『七つの古則』みたいな言葉遊びは、優先事項じゃなくって。それに、私はまだまだ死なないよ」

 

「……まだ死なない、というのも気になるが、それより……七つの古則を、否定するつもりかい?」

 

「楽園の存否は、全ての人たちにとっての宿題だろう?それの存在を証明できなければ、何も……。……先生。君は未だに、楽園を信じているのかい?証明すらできないまま、ただ盲目的に信じていると?」

 

「『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』……つまりこれは楽園証明の話ではなく、ただそれを信じられるかという話だとでも……?」

 

「……ごめんね、今は生徒たちを助けに行かなきゃ。また後でね、セイア」

 

「……待ちたまえ先生。もう一つ、聞いておきたいことがある。ただ信じたところで、何も変わりはしない。信じたところで、そこには何の意味も無いだろう……!?」

 

「水着じゃなくて下着だと思えば、それは下着だから」

 

「……は?……え、下着?」

 

「い、一体何を……水着、下着……?それはどこの古則の、いやそんなのは聞いたことが……」

 

「待ってて、セイア」

 

 

 

 

 

「私は……私は……」

 

……

…………

………………

 

 

 

「ハッ……!」

 

目を開けると土の中……では無く、簡易的なベッドの上に寝かされていた。……そして、周りを見ると、"彼"が居た

 

「……よ」

 

「よ?」

 

「良かったぁ〜〜〜!」

 

彼は、私が起きたのを確認すると、ヘナヘナと崩れ落ちる様にして笑顔を見せた。しかし、その後にハッとした様に体勢を直すと、真剣な顔をしてこちらに頭を下げてきた

 

「すみませんでした、先生。いくらできるとはいえ、僕はあなたを一度殺してしまった。……本当にすみません」

 

「あー……気にしないで良いよ。生きてるからね。……それより、なんでこんなことを?」

 

「……以前、連邦生徒会長から頼まれた事がありまして。"先生をよろしく"というのと、"ゲマトリアはなるべく潰してくれ"……と。先生も、ゲマトリアという名は聞いた事があるでしょう?」

 

「……そうだね」

 

思い出すのは、アビドスでの一件。彼らの行いを、私は許容することはできないだろう

 

「そして、先日そのゲマトリアと出会いまして……」

 

「本当に!?大丈夫?何かされなかった!?」

 

「ぇ、ええ。僕には何も」

 

「良かったぁ……」

 

思わず安堵の息を吐く

 

「ただ……その時に、先生の殺害を依頼されまして。殺意は本物だったので、僕が断っても別の者にやらせるでしょうし……僕が受けた場合には、先生の治療もできますから。それで引き受けました」

 

「なるほどね……」

 

「僕は、この件でゲマトリアと会う事ができます。その時に、何人かは潰しておきたい。協力してもらえませんか」

 

「……」

 

正直に言ってしまえば、彼らの存在は生徒たちにとって害になり得る。ここで潰せるなら、潰しておきたい。……それに、生徒に人を殺させようとする者を、許す訳にはいかない

 

「……分かった。私はどうすればいい?」

 

「……!ありがとうございます。なら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった。任せて欲しい」

 

「ありがとうございます」

 

「……あ、そういえば」

 

「?」

 

「なんで私を生き返らせる事ができるって確信があったの?」

 

彼は、"できるとはいえ"と言った。普通、死者の蘇生など思いついてもできないだろう

 

「あー……それは、その……自分で試しました」

 

「…………マジ?」

 

「はい……」

 

自分で試した……なるほど、それならできるという確信があっても不思議じゃない……しかし

 

「……あんまり危険なことはしないでね?」

 

「はい……」

 

先生としては、生徒にそういう危険な事はして欲しくないのが本音だ

 

「……あ、そうだ。このタブレット、先生の物ですよね。大事な物みたいなので、一応回収しておきました」

 

「……ありがとう。本当に大事なものなんだ」

 

「……良かったです。調印式襲撃からは、あまり時間は経っていません。今から先生をトリニティまで送ります。そこからは、先程話した通りに」

 

「分かった。でも、一体どうやって私をトリニティまで?」

 

「あ、普通に担いで送ります」

 

「……そこは普通なんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







信じてたぜ乙骨!

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