α月β日
今日は気色悪い女に目ぇ付けられた。
いや、目ぇ付けられたのは俺じゃなくシディなんだが。
事の発端は、シディが知らない女からおにぎりを貰ったとこから始まる。
俺は知らない人から物を貰うなと小学生の様に注意するが、どうやら一度会ってるから知らない人ではないと思ったらしく、またおにぎり貰い、そのせいで体調を崩した。
いわんこっちゃない。
するとその女がカレコレ屋にやって来た。
身体は太く、腹が出てて、髪がボサつき、汗やら脂やらが浮き出ている、おそらく30代くらいの女性がシディに会いに来たようだ。
こいつか。シディにおにぎりを渡した奴は。
シディの体調の悪さから見て、何か入れたのは確実だろう。
この女はシディが俺達と夕食を食べると聞いて、場所を特定して来たようだ。
ヒサメがシディとはどういう関係かと聞くと「妻」と答えた。
それに驚くヒサメ。
そんなんで驚くなよ。どうせこの女の妄言だろ。
女は少し訂正して「未来の」と付け加え、シディの妻として俺等と仲良くするのは当然。
だから俺等に料理を振る舞いたいらしい。
間に合ってまぁ~す。
俺はその女を追い出そうとするがシディが止め、彼女の好意を受けようとした。
ふざけるなよ。お前の体調が悪いのはこの女のおにぎり食ったからだろうが。
お前の性格の良さはメリットでもありデメリットでもあるんだよ。
少しは人を疑え。
女はシディ様を責めないでくださいと言うが、そもそもの原因はテメェだろうが。
シディに渡したおにぎりに何入れた?と言うと、シディに美味しく召し上がるために自分の汗を入れたそうだ。
あ、やべぇ。この女の顔面をぶん殴りたくなった。
んな衛生的にクソ悪い物を食いもんに入れてんじゃねぇーよ。
ヒサメですら、まだまともな具材で料理するぞ。
そう言ったらヒサメに頬引っ張られた。
本人はシディに対する愛情だと言うが、そんな薄汚ねぇ愛情はただの害だわ。
俺が怒ってる事に本人は分かってないようだ。
こんな事もわからないと来たら、もうこの女は色々と手遅れかもしれない。
シディは俺を止める。
この期に及んでまだこの女に甘くするつもりか?
ここまでくるとこいつの優しすぎる性格は考え物だな。
彼女には悪気があったわけじゃないと言うが、悪気が無かったら尚更質が悪い。
「悪気が無かった。」で全て許されたら警察も弁護士もいらねぇんだよ。
それでもシディは彼女を庇い、彼女は正しいやり方を知らなかったと言う。
もう、こいつに何言っても聞かないな。
俺はもう投げやりで好きにしろと言い、ソファに座った。
女はシディに泣きながら謝罪。
シディは彼女に優しく、次は気を付けろと言う。
ヒサメはシディの言う通りかもしれないと言うが甘いな。
お前らは今までのカレコレ屋の依頼で何を見てきた?
一度犯した事を反省してくれる奴もいるだろう。
だが、俺はあの女がアレで反省するとは思わない。
これはあくまで俺の勘であり憶測だ。
これで本当に反省すればいいんだがな。
α月β日
俺の勘が当たってしまった。
またカレコレ屋にて、自称シディの妻と名乗る女がやって来た。
正直俺はこの女の話なんて聞く気は無いのでスマホをいじってた。
ヒサメは「失礼だよ。」っと俺の服を摘まむが、ヒサメには申し訳ないが知った事ではない。
女は前回の事の謝罪と最後にシディと写真撮りたいそうだ。
全然懲りてねーなコイツ。
一枚写真撮ればもう二度とここには来ないと言う。
シディはそれに了承。
ヒサメが女のスマホで写真撮るが、変なアプリが起動し、ルーレットが出たそうだ。
また何か変なこと企んでたな。
女が言うには、このアプリで2ショットを撮った2人は強制的にルーレットで決められた行動をとる事になるそうだ。
あ~りゃりゃ。シディは罠にはまったわけか。
解除方法は女が知ってるパスを使うしかないそうだ。
シディは解除してくれと頼むが女は断る。
シディが好きになるまで絶対に解除しないそうだ。
ヒサメはハッキングで解除しようかと提案するが、シディはちゃんと諦めるようにしたいと未だに甘い事言う。
俺はそんなシディの甘すぎる性格にほとほと呆れ、好きにすればいいさとスマホをいじっていた。
「シディが心配じゃないの!?」とヒサメは俺に怒るが、少しシディには痛い目見た方が良いと思った。
人間は理性の枷を外してしまったら欲望のまま動く。
あの女は絶対に満足なんてしない。
するとしたら、シディと結婚生活を送る事だ。
シディは1日だけ付き合おうと言い、それで自分の事はもう諦めてほしいと言う。
そこから二人の1日だけの交際が始まる。
スマホのルーレットをタップする事で、止まった項目の指示に従う。
最初は昼食
シディがボタンを押すと、「サンドイッチ」と書かれた項目に止まる。
俺はサンドイッチを作って二人に渡した。
シディはどこか俺に悲しそうに見るが、俺は知らんぷりする。
2人はサンドイッチを食べ終わり、次のルーレットを開始する。
決まったのは「テレビを見る」。
女は調子に乗り、シディの腕を組みくっ付いて一緒にテレビを見る。
次のルーレットで決まったのは、「散歩」。
2人が散歩しに行ってる間、ヒサメは俺に「どうしてシディを見捨てる様な事するの?」っと悲しい表情して言ってきた。
んなの、知ってほしいからさ。あーいう考えの人間も居る事を。
例えば、ヒサメはあの女の男バージョンに変なルーレットで命令通りにされたらどうする?
シディみたいに満足するまで付き合うのか?
俺は真剣な目で言ったら、ヒサメは言葉を詰まらせた。
シディは男だからまだ耐えられるがヒサメは女だ。何するか分かったもんじゃない。
俺等が話し合ってるとシディ達が帰ってきた。
シディ本人はグッタリしている。
帰って来て早々、ルーレットを回そうとした女。
ルーレット項目には、「風呂」、「キス」、「脱ぐ」、「舐める」と過激なのが書かれていた。
ルーレットボタンを押そうとすると女は苦しみ出した。
そりゃあそうだ。俺が作ったサンドイッチにウイルスを仕込んでおいたからだ。
あの女とやってることは同じで良くないことだとわかってるが、こいつは調子に乗りすぎた。
とっとと解除してもらおうか?
俺がそう言うがかたくなに言おうとしない女に更に強めに能力を高める。
するとさらに苦しむ女。
早く言わないと、死んじゃうかもな?
俺は仲間に害する奴が居るなら悪にでもなるぜ?
俺はシディやヒサメの様に甘くはない。
俺がそう言うと怖くなったのか、パスを言い出す。
どうやらシディへの愛より自分の命が大切のようだ。
ありがとうな。危うくカレコレ屋が殺人現場になってしまう所だった。
じゃあとっとと消え失せろ。二度とその汚ねぇ面見せるな。
俺が怒気を強めると女は逃げて行った。
シディは俺に頭を下げて謝ってきた。
俺はその頭を乱暴に撫で、俺も悪かったと謝った。
俺の考えを分かって欲しいなどと都合の良いことは言わない。
だが、知ってほしかった。
世の中には無自覚でどうしようもない悪がいることを。
今日ので少しでも教訓になればいいのだがな。
「まるでカゲチヨは父親みたいだな。」っとシディが言う。
誰が父親だ。こんなデカいイケメンを育てた覚えないぞ。
ヒサメもこっち見てニヤつきながらお父さんとか言ってんじゃないよ。
ゲンコツ食らわすぞ。