今からめくられる1ページは、忘れ去られた物語。
知られざる物語、思い出してはいけない物語。
その日あったことを、誰にも話していない。
いや、話せないのだ。
みんなは優しいから、余計な心配をかけてしまう。
これは、オレの問題だから。
これは、狭間の物語。
白と黒が入れ替わる、語られなかった物語―――――。
☆ ☆ ☆
GBN(ガンプラバトル・ネクサス・オンライン)。
誰でも簡単にガンプラでバトルができる、夢のシステム。
その広大なディメンションの一つで、轟音が鳴り響いた。
砂埃が晴れ、そこに現れたのは、
両肩の二基のGNドライヴ。
背中に背負った、二種の武装。
そして何より、胸に刻まれた一筋の傷跡。
そう、この機体こそ超人気ダイバー、リクの“ガンダムダブルオースカイ”――
しかし、その機体は以前の“ダブルオースカイ”とは似ても似つかなかった。
青と白の機体は赤と黒に塗り替えられ、武装もかなり凶悪なものになっている。
そこに、かつての英雄としての姿はなかった。
“ダブルオースカイ”が降り立ったあたり、砂漠ステージに、不正ダイバーの絶叫が走った。
「嫌だっ、助けてくれ!!まさか、まさかあんたが来るとは思わなかったんだああぁああぁ!!!」
“ジム”によく似た姿を持つ、“ネモ”が逃げ惑う。
その時、「VOICE ONLY」と表記されたディスプレイから、あまりにも冷たい声が聞こえてきた。
「オレじゃなければ誰でもよかったの?」
「うわぁ…!」
その荒々しい戦闘スタイルと違いすぎる冷えた声音に、不正ダイバーは身を縮ませる。
リクはさらに“ネモ”を追い詰める。
「誰でもいいわけないよね、だって君、弱いから」
“ダブルオースカイ”のツインアイがぎらりと輝き、腰からビームサーベルを抜き放つ。
その瞳に、少しの侮蔑を宿して、リクは言う。
「弱すぎる…」
「ひっ…」
赤い燐光が“ネモ”の腹部を貫き、スパークが一瞬走る。
そして、“ネモ”は静かになった。
まるで彼の恐怖を代弁するかのように…。
一仕事終えた“ダブルオースカイ”が、青いノイズとなって消える。
青いノイズの海の、その下の部分に、一人のダイバーが現れる。
GBNを長くやっている者でも、一瞬見ただけでは気づけない、変わり果てた姿。
ダイバー・リク。
GBNを救った英雄。
皆のあこがれ。
だが、その顔にいつもの快活な笑みはない。
おさなげな顔立ちには似つかわしくない、黒々とした目の下のクマ。
その首元には、以前は無かったチョーカー。
彼の目は今、何の感情も宿していない。
バトルへの感想も、
不正ダイバーへの憤りも、
自分の機体の反省点も、
何もない。
ただただ、砂漠のディメンションを見つめるのみ。
そして、独り言ちる。
「やっぱり、いないか…」
その時。
感情などみじんもない、冷え切った瞳に、悲しみの色がさした。
あの時のような、希望に満ち溢れた瞳ではない。
何かを、求めている。
そう感じさせる気色だった。
彼の真意は、誰も知らぬまま、
ただ、時間だけが無情にも、
過ぎてゆく。
第二次有志連合戦からはや1年半。
この世界を救った英雄は、ある日突然、自らのフォースを去った。
仲間に何も告げぬまま。
彼の詳しい所在は、誰も知らない。
それどころか、彼が失踪したことさえも。
砂漠を見つめるリクに、一件の通知が届く。
「通知」と表記されたコンソールを開くと、「差出人:ユッキー」とある。
それを見たリクは、通知画面を閉じた。
まるで、「内容はわかってる」とでも言いたげな表情で。
コンソールがあったあたりをしばしの間見つめた彼は、砂漠に背を向け、“ダブルオースカイ”を召喚する。
すると、先ほど“ネモ”を撃破した黒い機体が現れる。
数秒もしないうちに彼は“ダブルオースカイ”に乗り込み、操縦グリップを握った。
青いGN粒子が大気を揺らし、“空”の名を冠する黒い翼が、今、飛び立つ。
その胸に宿る悲しみは、今も、晴れないまま。
〔あとがき〕
ども。しゃけまぐろです。
今回の二次創作、ちょっと不穏なとこが多いのでいろいろ楽しんでくださいね。
あとリク君を闇堕ちさせた理由はずばり、かわいいからです。
以上、終わり。
どうぞご笑読下さい。