ガンダムビルドダイバーズ Believe   作:しゃけまぐろ

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第3話「ふたりの絆」

 

「…あなたは?」

 

突然現れた少年の姿に、リクは困惑の色を示す。

ここはGBNでも知る人の少ない秘密の場所で、リクもつい最近見つけたばかりだった。

無論ここに彼以外の人が来たことはないし、それゆえリクも落ち着いて考えごとなど出来ていたのだが、この事態は予想していない。

 

目の前の存在は、訝しげなリクを微笑みながら見つめていた。

 

 

「ぼくは、メビウス」

 

 

不意に彼の口が開かれ、穏やかな声が流れ出る。

耳をくすぐるその声は糖蜜のように甘く、聴くほどに波立っていた心が穏やかになっていくのを感じる。

 

「メビウス…さん」

 

 

「きみの、名前は?」

 

 

「え?」

 

得体の知れぬ多幸感を理解しようとその余韻に身を任せていると、今度は彼の方から名を聞いてきた。

どうやら、彼の方もリクに興味を示しているらしい。

 

「オレは、リ――」

 

ちくり。

 

自然と名を返そうとして、胸のあたりを刺すちいさな痛みに気づく。

今名乗ろうとしたのは、世界を救った”ヒーロー”として知られている名前。

まぎれもなく自分の名前なのだが、今のリクには、その名を名乗ることが無意識下ではばかられていた。

 

この名を名乗る権利が、自分にあるのか。

英雄たるには、自分は少し傲慢すぎるのではないか。

 

そんな認識が、彼の自信と勇気を蝕み、名を名乗るという行為にすら鍵をかけていた。

 

「…オレは、ミカミ」

 

 

「ミカミ、ミカミ…うん、いい名前だね」

 

 

絞り出すように名を偽ると、少年は満足そうに微笑んでリクの隣に座る。

そしてリクの顔を覗き込むようにして、またにっこりと微笑んだ。

 

「な、何ですか?」

 

 

「ん?いや何、見た感じ、悩みが深そうだと思ってね」

 

 

「え…」

 

目の前で起きている不可解な少年の行動に、リクの表情はさらに困惑の色を極めるが、同時に見透かされたような感触を覚える。

その心情の変化に気づいているのかいないのか、少年はさらに続ける。

 

 

「だって、きみのガンプラが悲しんでる

 飛びたいけれど飛べない、この翼で助けられれば――って」

 

 

そう言いながら、少年はかたわらにたたずむリクのガンプラ、ダブルオースカイに目を向ける。

その顔立ちが、心なしか泣いているようにリクにも感じられた。

 

「ダブルオースカイが、そんなことを…?」

 

なぜガンプラの思っていることが、という疑問がなかったわけではないが、サラと言う存在がいる以上、まったく答えに想像がつかないわけではなかった。

きっとこの人もELダイバーなのだろうと思いながら、彼の言葉に耳を傾ける。

 

 

「うん、この子はずっときみと一緒に戦ってきた

 時にはきみと一緒に高く飛んで、時には一緒にボロボロになって…でもこの子にとっては、きっとそれが幸せなんだよ

 きみと一緒にいられることが、同じ思いを共に感じられることが、この子と、そしてきみを育てて来たんじゃないかな」

 

 

唄うようなメビウスの声が、心の中にある乱雑に絡まったナニカをほどいていく。

メビウスが身にまとうその独特の雰囲気に、リクはどこか懐かしさを感じていた。

話しながら、メビウスはリクの隣から前へと移っていく。

 

 

「でも、今きみは一人で悩んでいる

 自分で考えなくちゃ、解決しなきゃ…って、一人で悩もうとしてるんだ…恐らく、無意識でね

 ぼくはきみじゃないから、きみがなんで悩んでいるか、と言うところまではわからないけど」

 

 

そう続けながらメビウスはさらにリクに近づき、真正面からリクの顔を見つめる。

磨き上げられた鏡のような瞳が、リクの悩みすら刻銘に映し出しているような気がした。

 

 

「きみのガンプラ、ダブルオースカイは、きみと一緒に悩みたかったんだよ

 一人じゃどうにもならないことでも、二人なら解決できるかもしれないでしょ?」

 

 

ね?と問いかけられ、釣られるようにこくりと頷く。

ガンプラに意思がある、と言うのはサラからの受け売りだったけれど、思えばチャンピオンと戦った時、背中を押されたような気がした。

仲間たちだけじゃない、もっと身近で、力強い手に。

 

 

『行こう、リク』

 

 

「そっか…ダブルオースカイ、ずっと…オレの隣に」

 

巨大な空色の体躯に手を這わせる。

見上げた顔から表情は読み取れないけれど、とても喜んでいるような気がした。

 

この悩みは人に話せない、もちろん仲間たちにも話せない。そう思っていたけれど。

打ち明けてもいい、そういう安心感が、今のリクの心を満たしていた。

 

「あの、メビウスさん」

 

「空を飛ぶ練習、手伝ってくれませんか?」

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

「いいぞ、行け――ぐぅっ!」

 

崖から勢いよく飛び立ったダブルオースカイは、はじめこそ飛べているように見えたものの、すぐに失速し落ちてしまう。

しばらく飛んでいなかったせいか、本当に腕が落ちてるんだな、とリクは少し絶望する。

だが、うじうじ諦めているわけにもいかない。

ちゃんと飛べるようになって、仲間のもとへと戻るために。

次こそは飛ぼう、とまた操縦桿を握る。

 

「行くよ、ダブルオースカイ」

 

カメラアイで出発地点の崖を見つめると、メビウスはそこに座り「がんばれ」のジェスチャーを取っていた。

 

空色の翼が、ばさりと広がる。

 

さぁ、行こう。

 

 

 





〔あとがき〕
こんにちは。しゃけまぐろです。
私性格として地の分をめちゃくちゃ書いちゃうっていうのがあって、その分台詞がすごい減るんですよね。
なのでセリフ少ないな、と思ったらコメントとかで教えてください。
ではまた。
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