※注意!※
長いです。
「よし、その調子、その調子――」
姿勢を崩さないよう、しっかりと操縦桿を握りながら前を向く。
バーニアよし、ウイングよし、GNドライヴよし…
「――今!!」
しっかりと空気の流れを読み、勢いをつけて一気に飛ぶと、ぶわっ、と大きな風に乗るようにして、ダブルオースカイが天空に舞い上がる。
続いて二基のGNドライヴからGN粒子が大量に振り撒かれ、やがて収束し巨大な翼を構成する。
開いた翼は空気の塊を正確にとらえ、機体を安定させた。
「よし、できた…!」
すっかり成功したことを確認し、コックピットの中のリクは大きく息をつく。
ダブルオースカイはその姿勢を一切崩すことなく、半年前と同じように悠々と飛んでいる。
実に何十回と行われた試行の末にようやく、彼は再び空を飛ぶことに成功したのだった。
『おつかれさま、ミカミくん!』
その時、通信システムからメビウスの声が聞こえた。
見れば、ダブルオースカイのすぐ横には、こちらも青空を感じさせるような爽やかな色合いのガンプラが並んでいる。
どうやらその機体は、メビウスのものらしかった。
「はい、本当にありがとうございます!」
陽光を美しく反射するその姿に一瞬目を奪われつつも、リクはすぐに感謝の意を伝える。
リクが再び飛べるようになったのには、彼の助力も大きく起因していた。
翼の開き方や風の読み方、空気の塊のとらえ方、そして何よりも「ガンプラとの身の合わせ方」。
リクは失敗するたびに彼のもとに行き、メビウスはその都度感じたことからアドバイスを教える。そしてリクはそれを実践する。
何度失敗してもそれをまた同じ回数繰り返すことで、少し、また少しと目標に近づいて行っていたのだった。
『うん、もう問題ないみたいだね
きみが飛べるようになって本当によかったよ』
コックピットの中でメビウスはまたにっこりと微笑み、カメラ越しからダブルオースカイを眺める。
ぱちぱち、きらきら。
そんなガンプラの織り成す“声”が、彼の目と耳には感じられた。
『このあとは、どうするんだい?
行きたいところがあるなら、ぼくはここでお別れしようと思うのだけれど』
そう言うとリクはええ、と半ば残念そうな声を上げる。
今はカメラ通信をオフにしているので彼の顔は見えないが、きっと不満そうにしているに違いない。
『…いや、しばらくついて行こうかな』
メビウスがそう言うと、リクは待ってましたといわんばかりに声を弾ませる。
「じゃっ、じゃあじゃあ!オレたちのフォースに来てください!
飛べるようになった記念で戻りたいし、あなたのこともみんなに教えたいんです!」
フォース・BUILD DIVERS。
リクが所属しているフォースであり、そのメンバーはほとんどが中学生や高校生。
しかし一人ひとり個性的ながらも確かな実力の持ち主であり、保護者的なポジションにある人物がプロ級のモデラーであることもあって、今やこのGBNでもトップを争うほどの強豪フォースとなっている。
リクはどうやら、この機会にメビウスを仲間たちに紹介したかったようだった。
『そうだね…じゃあ、お呼ばれしようかな』
「やったぁ!」
メビウスの返事にリクが歓声を上げると、二基のガンプラはあの崖からすぐ北にある孤島へと向かった。
☆ ☆ ☆
「――む?
むむむむむむ?」
「どうしたんだい?モモくん」
場所は変わってリクたちが向かおうとしている孤島、その浜辺にちょこんと設置された船のようなオブジェ。
BUILD DIVERSのネスト、つまりは基地とも言うべきその船体の窓辺で、モモと呼ばれたネコミミのダイバー――カワイイ担当――はその両目をぱちくりさせていた。
彼女から少し離れた台所では、エプロン姿のエルフのダイバー…参謀兼保護者のコーイチが何やら料理をしている。
「うーん、むこうの空にさ
なんかガンプラ?っぽい影が見えるんだよねぇ」
「どれどれ…ん、ほんとだ
なんだろう…あとで見に行こうかな」
はいおやつ、とモモの傍らに先程作ったゼリーを置きつつ、コーイチもモモの視線の先を見つめる。
怪しい影は、だんだんこちらに近づいているようにも見えた。
「…ん!」
ネコゆえに感覚の強化されたモモの瞳が、影のうち一つの姿を正確にとらえる。
なぜなら、友だちでありフォースの仲間でもある少年の機体だったから。
「コーイチさん外行こう!あれりっくんのダブルオースカイだよ!
もう一つはわかんないけど、絶対そう!!」
「え、えぇ?僕よく見えないんだけど…」
モモほどには見えていないらしいコーイチを半ば強引に外に連れ出し、モモは浜辺の向こう、うっそうとした森の奥に向かう。
彼女が森にたどり着くのと、影が地面に降りるのはほぼ同時だった。
「ほらやっぱり!りっくーーん!!
…と誰!?」
「ほんとにリクくんだ…
それとあの子は…」
膝をついたガンプラから降りた二人――リクとメビウスの姿を見とめると、モモはブンブンとその両手を振る。
一方コーイチは、リクの隣にたたずむ少年に何か興味を持ったような顔をする。
「モモっち!それにコーイチさん!えっとこの人は…」
「その前にミカミ…いやリクくん
長い間、留守にしてたんだろ?」
ちゃんと謝らなきゃ、とメビウスに促され、リクは悩み故に仲間たちのもとを飛び出したことを思い出す。
メビウスがなぜそれを知っているのかまでは頭が回らなかったが、とにかく謝ろうと頭を下げる。
「ごめんモモっち、コーイチさん
オレ、ちょっとスランプに入ってて、修行しなおそうと思って…
急にどっか行ったりして、ごめんなさい!」
「まぁまぁ、スランプに入ってたんなら仕方ないよ
頭なんて下げなくていいから、また一緒にガンプラやろうね」
「というか、私たちよりもユッキーの方が…」
リクの謝罪に、コーイチとモモは何ともなさそうに答えてくれた。
しかし、その“ユッキー”と言うのは…?
二人の言葉に重なるように、フォースネストから叫び声が聞こえてきた。
「あ゛ーーーーーーーっっ!!」
全員が顔を向けると、キャスケットを深々とかぶり、ダボっとした作業服風のスキンに身を包むメガネの少年がこちらめがけて走ってきている。
彼はユッキー、BUILD DIVERSの後方・中距離支援担当のダイバーだ。
ビルダーとしての腕もさることながら戦闘技術もかなり高く、参謀としても一役買っている。
真面目そうな見た目に違わず好奇心旺盛で、一旦知識欲が刺激されると止まらなくなるのだが…。
「ごめんユッキー…」
「ごめんじゃないよ、急にどっか行ったりして!!
僕たちめちゃくちゃ心配したんだよ!?」
先のふたりとは違い彼は相当腹を立てているようで、リクのもとに駆け寄るなりほとんど鼻を突き合わせるような距離で彼を糾弾…
「…誰!?」
…しようとしたのだが、すんでのところでメビウスによって阻まれた。と言うかメビウスが二人のあいだに割り込んだ。
誰ですか誰ですか、ともがくユッキーを何とか引きはがしつつ、メビウスは落ち着いた様子で場をおさめる。
「落ち着いてね、ユッキーくん
自己紹介が遅くなって申し訳ない、そちらのエルフの方はもう察しがついてるかなとは思うけど…
改めて自己紹介を、ぼくはメビウス
ELダイバーの、メビウスです」
☆ ☆ ☆
「…それで、フィールド探索中にリクくんを発見したと?」
「うん、なかなか面白い子だと思ってね
何か悩みがあったようだから、声をかけたんだ」
「なるほど…」
場所は移って、BUILD DIVERSのフォースネスト。
リクが連れてきた、ということもあってかメビウスは歓迎され、テーブルを囲みながら事の成り行きを話してもらうことになっていた。
隠密行動担当のアヤメはログインしておらず、メビウスと同じELダイバーのサラはどこかに行っているようだが、とりあえずは今いるメンバーで、ということらしい。
「ところで君はELダイバーみたいだけど、僕たち君と会ったことあったっけ?」
コーイチが訝しげに首を傾げる。
僕たち、と言うのはELダイバーの育成所であるELバースセンターのことで、彼とその友人であるアンシュが主な担当となっている。
ELダイバーであるのなら彼らと面識があるはずだが…?
「あぁ、ELダイバーと言ってもぼくは特殊でね
運営側で独自に保護されたタイプなんだ
バックアップは運営側にあるから、あとでコピーを渡そう」
「運営?」
「うん、GBNに宿る“ダイバー”と“ガンプラ”の感情のデータの保存…
それからバグの修正などを行っているよ」
どうやら彼は運営側の人間、それもかなり重要な職に就いているらしく、ELダイバーが特殊に得ることのできる「ガンプラの気持ち」を保存するために動いているらしい。
想い返してみれば、彼の発言には「感情」を思わせるものがあった。
「なるほど…まあリクくんが連れて来たって言うなら、僕たちも安心だ
歓迎するよ、メビウスくん」
「ありがとう、よろしくお願いします
…ところで、ぼくからあなた方に頼みがあるんだ」
「頼み?」
少し声音の変わったメビウスの言葉に、一同の顔がこわばる。
メビウスは一呼吸おいて、自分の頼みを述べた。
「運営からの要請で協力者を探していてね
GBNのバグ修正を手伝ってもらいたいんだ」
〔あとがき〕
長くなっちゃってごめんなさい、どうもしゃけまぐろです。
今回は無印ダイバーズメンバー初登場だったのでどうしても楽しくなりすぎて、いつもの4倍くらいになってしまいました。
なので若干、ほんと若干読みにくいかなって思ってます。
本当に申し訳ない!!