ガンダムビルドダイバーズ Believe   作:しゃけまぐろ

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第5話「運営のお手伝い」

 

「バグの修正?」

 

突然のメビウスからの要請に、リクたちは首を傾げる。

これまでもGBNの問題解決に何度もかかわってきた彼らだが、さすがに運営側の事情など知る由もない。

 

 

「うん、急なことで申し訳ないんだけれど

 運営はあなた方の実力を高く評価していて、ぜひにとのことなんだ」

 

 

「…詳細は?」

 

淡々と事情を述べるメビウスに対し、神妙な面持ちでコーイチが尋ねる。

ちょうどメビウスもその質問を待っていたようで、懐から端末を取り出し、プロジェクターのようにホログラムを映し出した。

 

 

「詳細…話せば長くなるのだけどね

 

 第二次有志連合戦以降、この世界のバグや不正行為などは落ち着いていて、運営もしばらく問題はないと判断していたんだ

 …ビルドデカールのこともそうだし、何よりブレイクデカールの存在が認知されてから締め付けも厳しくなったしね

 修正パッチも次々とバージョンアップされて、GBNの環境状態は右肩上がりだったんだけど…」

 

 

「…だけど?」

 

 

「うん、“だけど”、だ

 最近GBNの各所でいろんな不具合が見つかり始めた

 公式ページに存在しないガンプラが現れたり、無人機やNPCに異変が起きたり…

 しかも修正パッチに耐性があるみたいで、並の方法じゃ修正できないんだ」

 

 

切り替えられる画面の中には、見るも無惨に破壊されたガンプラの姿や、黒い影を纏って暴れる見たこともないガンプラの姿が映っている。

誰の目にも明らかなその“異常”は、リクたちを総毛出たせた。

 

 

「うん、だから“お願い”なんだ

 運営(ぼくたち)と協力して、一緒に――」

 

 

話の途中で、不意にメビウスが外の方を向く。

彼のまとう穏やかな雰囲気が、急にピりついたものとなる。

 

「…?

 どうかしましたか?」

 

 

「待って…」

 

 

何事か尋ねようとするリクたちを制止しつつ、メビウスは窓の向こう、青空の真ん中を睨む。

その両目に、おぞましい黒い影が映った。

 

 

「ごめん、ちょっとここで待ってて!」

 

 

「え?え?なに?」

 

急いでフォースネストから出ると、メビウスはガンプラ招致用コンソールを広げ、影を迎え撃ちに向かう。

影の方もメビウスの存在に気づいたらしく、何やら怪しく蠢いていた。

 

 

「何か手を出してくる前に、迎え撃たないと…!

 行くよ、ガンダムコバルトストライク!」

 

 

リクとともに空を飛んできた機体、ガンダムコバルトストライクの瞳に光が宿り、空高く舞い上がる。

と同時に、影の蠢きが急速に穏やかになり、一点に収束して――

 

〔―――。〕

 

「あれは、ガンダム――?」

 

地上のリクたちは愕然としたまま空を見上げる。

その姿は往年の名機、初代ガンダムにそっくりだったのだ。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

「…ッ危ない!」

 

 

――光線一条。

 

ガンダムとなった影の持つビーム・ライフルから放たれた光は、コバルトストライクの脇をかすめ、森の一部を焼き尽くす。

息つく間もなく第二射、第三射とビームが空を穿ち、森を、浜辺を焦げ立たせる。

 

 

「前の個体よりも強力…学習とでもいうつもりみたいだね

 

 バグ同士で情報共有…?そんなことが出来るのかな」

 

 

リクたちに接触する以前、メビウスが遭遇した機体はもっと動きが単調だった。

そう思いつつもふり返ると、リクたちが心配そうな面持ちでこちらを見守っている。

 

過度な不安はかけられない。

 

無駄ない動きで、腰からビーム・サーベルを抜き放つ。

 

 

「何にせよ“普通じゃない”…警戒すべきだよね

 …ハァッ!!」

 

 

一閃、目にもとまらぬ速さの光の刃が、影のガンダムの右足を切り裂く。

 

〔――――!!〕

 

影のガンダムのマスクあたりがぐぱりと開き、声にならない悲鳴のようなものを漏れさせる。

体の一部とともに安定感を失った機体が大きくきしみ、真っ白な砂浜に膝をつく。

 

次の瞬間、影のガンダムが顔を上げるころには、コバルトストライクの刃がすぐ目の前にまで迫った。

 

 

「…ッ!再生か!?」

 

 

しかし、紙一重の回避。

刃が辿り着く寸前、並々ならぬ速度で足を再生させた影のガンダムは、同じ土俵で戦うつもりかこちらもビーム・サーベルを抜き放つ。

メビウスの方も、これでとどめと刃を構える。

 

 

「ここで決めなきゃ、だね…」

 

 

ひりついた空気がその場を満たし、唾をのむことすら許さぬ緊張が飽和する。

 

 

「―――ハアァッッ!!」

 

 

〔―――ッ!!!〕

 

閃光が、見るものすべての目を眩ませる。

刃と刃が激しくぶつかり合い、光の鱗粉を蝶のように舞い散らせる。

光がすっかり晴れるころには、決着はついていた。

 

〔――…。〕

 

名残惜しそうに、悔しそうにその手を伸ばしながら影が霧散する。

力比べでは、メビウスの方に分があったようだった。

 

 

「ふぅ――…これで一安心だ」

 

 

落ち着きを取り戻したコックピットの中でメビウスはほっと息をつく。

他にも敵の姿はとあたりを見渡すが、どうやらそのような反応はない。

 

 

「さて、リクくんたちのところへ戻ろうか」

 

 

予期しないパフォーマンスだったかな、と冗談を軽く挟みつつ、コバルトストライクを解除したメビウスは、リクたちのいるフォースネストへと向かった。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

「戻ったよ――っうわっ!!?」

 

 

「メビウスさんあの影何ですか!!?アレがバグってやつですか!!?」

 

「メビウスさんメビウスさん!!あの機体って何ベースなんですか!?

 見たところストライクっぽいですよね!顔立ち似てますもんね!!」

 

「ま、まぁまぁ落ち着いて……」

 

フォースネストへたどり着いた瞬間、興奮に駆り立てられたリクとユッキーがとびかかる。

彼の戦闘を見るのは初めてだったし、何よりあの謎の影の詳細が気になりすぎる。

若いゆえの好奇心に目を輝かせ、メビウスの裾にしがみつく二人をコーイチが何とかなだめようとしていた。

 

 

「うん、あれが今ぼくたちが追っているバグ生命体、通称“UL”…“生命にあらず(UnLive)”だ

 それとユッキーくん、もちろんぼくのガンプラはストライクの改造機だよ」

 

 

「「やっぱり!!」」

 

未だ興奮冷めやらぬ二人に順番に説明しつつ、メビウスはコーイチたちの方へと向き直る。

 

 

「まぁ成り行きになっちゃったけど…あれがぼくの仕事、と言った感じかな

 信用してほしいとかそう言うわけじゃないけど、理解はしてもらえると思う」

 

 

「うん、君の――君たちの目的がよく分かった

 協力するかどうかの判断は、リクくんたちに任せるよ」

 

保護者と言えど僕はあくまで参謀だからね、そう言いつつコーイチはリクたちに目を向ける。

彼らの意見はすでに決まっているようだった。

 

「協力します!」

 

「させてください!」

 

「しないわけがないじゃん!」

 

やる気溢れるリク、好奇心の暴れるユッキー、そしてなぜかドヤ顔のモモ。

リクが一歩前に出て右手を差し出し、三人は威勢よく返事をする。

 

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

それを聞くとメビウスは一際やさしく微笑み、リクの右手を握った。

 

 

「うん、よろしく!」

 

 





場所は移って、GBNの中心に立つ管制塔。
その最奥で、ふたつの影――一方は背が高くもう一方は低い――が何やら話をしている。

「そうか、協力は得られたか
 とりあえずは安心…と言ったところだな」

「そうだね、まずは第一段階達成かな」

「了解した、お前は引き続き回収と保存、解析にあたれ」

「わかった、全力を尽くすよ」

話し終わると、影の一つ、背の高い方は何処かへ向かっていく。
かと思うと振り向き、もう一つの影に話しかけた。

「頼んだぞ…この計画の要は常にお前なのだ
 Type-00」


「任せてよ、お父さん」


陰は、ふたつとも闇の中に消えた。
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