腹が減った。メシを食おう。   作:Marks_Lee

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チキンのトマト煮込み

朝食兼昼食を食べ終え、腹ごなしと散歩ついでに買い物へ行く。少し大きなナイロン製の袋を手に持ち、駅の方へと歩いていった。

 

約10分ほどで駅前のスーパーに到着する。昔からあると思われるそのスーパーは他の大手のスーパーと比べると、店自体の面積は小さいものの独自の品揃えを誇っており、置いてある食品はどれも新鮮だ。自動ドアが開き、最初に目に見えたのは生鮮野菜のコーナー。まずはどう調理してもアンパイな野菜の代表格、タマネギとこれまた安かったきのこ類をカゴの中に入れる。

 

そのスーパーは生鮮コーナーの隅の方に、見切り品の置き場があった。そこをのぞいてみると、若干熟れかけたトマトが一袋ポツンと置いてある。

 

「そういえば最近トマト食べてなかったな」

 

子供の頃はそんなに好きでもなかった野菜だが、年を重ねるうちに身体が肉より魚、野菜を求めるのをひしひしと感じていた。

 

そのトマトをカゴの中に入れ、次に精肉コーナーに足をすすめた。どうやら今日は鶏肉が安いようだ。トマト、タマネギ、そして鶏肉。頭の中で今自分が何を食べたいかを考える。

 

よし、今日の晩御飯はチキンのトマト煮にしよう。そうすると、鶏肉を選ばなければならない。パッと見て、どのパッケージに入っている肉も状態は変わらない。手前にあった鶏もも肉を選び、カゴの中に入れる。……あとはそうだな。汁物をどうにかするか。

 

生鮮コーナーに戻り、レタスをひと玉。今回は食べ切るために比較的小ぶりなものを選んだ。それをカゴに入れる。

 

支払いを済ませようとレジに向かうとそのレジには、2人店員がいた。1人はよくみるベテランの人。いつも大きな声でレジを打つ見覚えのある人だ。

 

その隣にいるもう1人はベテランの人よりだいぶ若い店員だった。学生、いやどちらかといったら俺より少し年下か同い年くらいだろうか。

 

「いらっしゃいませー」

 

「お願いします」

 

「はい、お預かりしますね」

 

若い方の店員はまだレジ打ちも手慣れていないようで、ぎこちない素振りを見せながら、一つ一つ商品を通していく。ふと合計金額を見ると、桁が二つほど多い。ん?と思っていると、それに気付いたのか若い店員は慌て始めた。

 

「あっえっとこの場合ってえっとー」

 

「内田さん、多分00の所を押しちゃったみたいね。ちょっと貸してちょうだい。これをこうしてっと……はい、これでいいわ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「お礼は後でいいから。今はお客様を待たせちゃダメよ。すいません、お客様。まだ新人なもので慣れていないようで」

 

「いえいえ、他にお客さん並んでないのでそんなに慌てなくていいですよ。それよりも会計をお願いします」

 

「ご、合計956円になります。お支払いは現金でよろしかったでしょうか?」

 

「あ、はい。千円と6円からお願いします」

 

キャッシャーに千円と6円を置き、会計を済ませる。そのレジは、自動でお金を出してくれるタイプではなく、昔からあるボタンを押して現金を取り出すタイプのレジだった。不慣れながらも、千円と6円を受け取り、50円のお釣りを取り出す。

 

その若い店員はキャッシャーに50円を置き、

 

「お釣りの50円になります」

 

と先ほどよりも少しな大きな声で言った。何か忘れていないかな、自分で気づくかなと思い、しばらく様子を見ていると、ベテランの店員が小声で若い店員に伝える。

 

「内田さん、レシート忘れてるわよ」

 

「あ、すいません。こちらレシートになります」

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ!……はっ、すいません」

 

「内田さん、そこはありがとうございました、でいいと思うわよ」

 

「あ、そ、そうですね。失礼しました」

 

そのあと無事レシートを受け取り、買い物袋に買った商品を詰め、店の外に出る。あの新人さん、大丈夫かな?できれば長く続いてくれるといいんだがと思いながら、帰路についた。

 

◇◇◇

 

時刻は夕方。西の空に太陽がじわりじわりと沈んでいくのがわかる。

 

買ってきた鶏肉は常温でしばらく置いておいた。その間に、今日使う分だけ食材を下処理するのもアレなので冷凍庫にストックすることにした。たまねぎは薄切りにして保存袋に入れ、きのこ類も、石付きの部分をカットしてほぐし、大きめの保存袋に入れてこれまた冷凍庫へ。

 

トマトも切っておくが、順番としてはタマネギ→トマト→きのこ類の順番で切った。こっちの方が、衛生的も多少はいい。

 

ふぅ、これでしばらくは大丈夫だろう。きのこ類は冷凍して火を通すと、味が染み込みやすいんだよな……そんなことを昔誰かに聞いた記憶がある。

 

一度、まな板を洗い、常温でしばらく置いた鶏肉を拡げる。大体、一口大に切って、塩コショウをかけ、薄力粉を塗す。そして、少し油を敷いた深めの鍋に投入。しばらく放置して、焼き目がついてきたら、裏返す。両面とも焼き色がついてきたら、タマネギとトマトを入れ、料理酒、醤油、チューブのニンニクを少し入れて、蓋をする。

 

すると、アルコールが飛んでいい感じに蒸し煮の状態になる。

 

その間に、汁物を作ることにする。と言っても、こちらは手間というほどのものでもない。

 

少し小さな鍋に顆粒コンソメと水を入れ、火にかける。しばらく温めておくと、ふつふつと音が聞こえ始める。いい感じの温度になったら、そこに一枚一枚ちぎったレタスを投入していく。

 

残ったレタスは、芯に爪楊枝を刺し、成長点を止めたあと濡れたペーパーで包んだ。これは野菜室に置いておく。

 

これで汁物も出来上がり。トマト煮のほうは……うまくできたようだ。それと同時に炊飯器が米が炊けたと音を鳴らす。

 

よし、あとは各自、器に盛り付け、食卓へ。

 

チキンのトマト煮、レタスのスープ。そして白米。

チキンのトマト煮は、トマトの真っ赤な鮮やかさをそのままに一緒に入れたニンニクと少しの醤油の香りが混ざり合い、食欲をそそる。

 

「いただきます」

 

まずは、メインのトマト煮から。大きく口を開け、咀嚼する。鶏もも肉の旨みとトマトの酸味、少量入れたニンニクと醤油がなんとも言えない味わいを醸し出していた。すかさず、ご飯を口の中に入れる。

 

我ながら上出来だ。美味すぎて、言葉が思いつかない。とりあえず、無言でむしゃむしゃと食を進めていく。

 

汁物であるコンソメスープに入れたレタスは、大当たりだったようで、若干ながらしゃくしゃくとした食感が残り、口の中のトマト煮の油を流してくれる。

 

「ふぅ……ごちそうさまでした」

 

全て食べ切り、満足して横になろうとしてしまうが忘れないうちに洗い場へ食器を持っていく。食器を洗っているとそこから窓越しに見える景色は日が暮れ、真っ暗な空と少し離れた場所にあるビルの明かりだけが眩く光を灯していた。

 

明日も仕事だ。……とりあえず、風呂に入って寝ることにしよう。

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