腹が減った。メシを食おう。   作:Marks_Lee

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ポトフ

今年の夏は暑かった。例年に比べ、夏が長く、秋はとても短い。そうなるとどうなると思う?

 

その答えはスーパーの野菜の値段に反映する。

 

それを嫌でも自覚しまった。

 

◇◇◇

 

「嘘だろ?白菜が4分の1カットで200円超えてるのかよ!?しかもネギも高いな……」

 

いつも買い物に行くスーパーの野菜売り場で英司は頭を抱えていた。ここ数日、めっきり寒くなったので鍋でも突こうと思い、買い物に出かけたらこの値段である。

 

「買えなくはないが、ひと玉で800円の白菜か……かなりきついな」

 

そういえば今年の夏はとても長く、暑かった。例年の異常気象より酷く感じられ、夏の電気料金の引き落としを見た時は二度見したほどだ。その暑さは作物の生育にも影響し、一部のものを除きほぼ全ての値段に反映されていた。

 

(どうしようか……この寒さの中何も買わずに帰ってもいいが冷蔵庫の中身めぼしいものなかったからな……)

 

そんなことを考えていると、すっかり顔馴染みになった内田と言っていた女性店員が品出しを始めていた。その隣で、悩まし目に少ない頭を捻っていると、それを見かねたのか声をかけられた。

 

「……どうしました?」

 

「ん?あー、すいません。野菜の値段に正直ビックリしてしまいまして」

 

「あー……なるほど。野菜高いですよねー。そして寒くなったからお鍋食べたくなった、って感じですかね?」

 

「そうです。ただ、この値段はちょっと躊躇してしまいます」

 

「ですよねー……わたしも鍋食べたいなーとは思うんですが他のスーパー見てみても同じくらいの値段なんですよね」

 

「あ、そうなんですか?」

 

「はい、どこも値段は変わらないみたいです。うちも野菜売り場の担当が嘆いてました」

 

「そうなんですね……どこも大変だ」

 

「これに関してはしかたのないことなのかもしれませんけどね。わたしも食費に頭抱えてますよー」

 

「それはご苦労様です」

 

「いえいえ……」

 

彼女はそう言うと、他の売り場の補充に行くと言い、頭を下げ足早に去っていった。さて、どうしたものやら……今日の献立はまた考え直さなくてはいけない。

 

ふと見てみると、じゃがいも含め根菜類が比較的安価になっていた。これを使うか……何を作ろうと思い、冷蔵庫の中を思い出す。

 

確か、冷凍庫の中にベーコンとソーセージがあったはず。それをベースにじゃがいもとにんじん、タマネギを使えば、何か作れるか?

 

そう思いたち、野菜の袋を一袋ずつ手に取り、レジに向かう。先ほど話していた店員とはまた別の店員がレジの応対をしていた。

 

このスーパーは、最近多くなった客が自分で精算するタイプのレジではなく、昔ながらの対面レジをいまだに採用していた。これはこれでいいと思っているので何も言わないが、人によっては文句をつけることもあるらしい。

 

会計を済ませ、懐に抱えていたナイロン袋に食材を入れ、店を後にする。寒空は風を吹かせ、まるで急かすように足早に帰路についた。

 

帰宅し、服を着替えてエプロンを纏う。買って来た食材を並べ、準備を始める。野菜は皮を剥き、一口大に切る。どの食材も、無難に化ける力を持っている野菜ばかりだ。

 

冷凍庫の中に切ってストックしていたベーコンを袋ごと取り出しす。袋の中で固まっていたため包丁の柄で叩くようにして砕き、使う分だけ取り出す。

 

鍋を出そうと思い、しまっていた場所から取り出そうと思ったが、ふと考えた。鍋でやらずに炊飯器でやってもいんじゃないか?そう考え始めたら、やらずにはいられなくなり、炊飯器の窯を取り出す。

 

5合炊きの炊飯器にベーコンを入れ、切った野菜も入れる。顆粒コンソメと塩胡椒をいれ、味を調えて炊飯ボタンを押す。

 

しばらく待つ間に、風呂を掃除をしたり洗濯物を取り込んだりしていると、調理が終わったのか炊飯器から音が鳴る。

 

蓋を開け中を見てみると、成功したようでちゃんと調理できているようだ。一応確認のため、竹串で火が通っているか刺して確認すると、スッと串が刺さりちゃんと火が通っている。

 

それを器に盛り、テーブルに並べる。1人で食べる用なので、そのまま直で行っても良かったが、なにかモヤっとするので、取り分けて食べる。

 

「いただきます」

 

手を合わせ、スプーンで探るようにして野菜を口に含む。じゃがいもは思っていた以上にスープが染みていて驚いた。

 

そこからは、スプーンが止まらなくなり、一口、もう一口と進んでいく。味を変えるのもアリかと思い、冷蔵庫にあったマスタードをつけて食べてみるとやはり美味しかった。

 

確か、フランスでもマスタードは必需品だったと思う。それも昔読んだ本の記憶だが、いまはどちらでもいい。ただ、ひたすらに胃に流し込むようにいただく。

 

全て食べ終え、手を合わせる。使った食器等を流し台に持っていき、お湯に浸ける。

 

満足してリビングに戻ると、端末が震えた。なにかメールかSNSの通知か?と思い、確認するといくつかのメールが届いていた。

 

仕事のメールが数件と航空会社からのメールが届いていたが、仕事のメールだけを確認した。どうやら、急ぎではないらしいが仕事が舞い込んできたようだ。

 

そしてSNSの通知が一件。実家の母からまた結婚しろだろの催促だろうかと思い、確認をしてみる。

 

どうやら父が職場で倒れたらしい。

 

容体はわからないが、急を要すると思ったため、何も準備せず急いで家を出た。

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