東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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現実が忙しく、中々作れず、地道に作っておりましたがようやく作れました。
まだまだ、さとり達の物語は始まってすらいない。
続きをお楽しみに。
さとり「これが正真正銘のアホ…ですかね」
幻月「…さとり?流石に辛辣。言わないであげないで。…可哀想で仕方ないわ。…ということで作者さん、頑張ってね~っ!」


011話 さとり物語 決死防衛 ~終~

月が昇る時刻。

 

 

表には既に輝夜さんが知らせを回した様で、月へ帰す事を全力で阻止しようと軍レベルの武士の数々が待ち構えていた。

 

私達の姿を見た人達は、少し驚くがそれだけで騒ぎにはせず、輝夜さんの友人としての噂も広まっているらしく道を開けて通してくれた。

 

 

暫く歩くと広場の中央に輝夜さんが今か今かと待っていた。

 

「…あら。早かったわね。其方が貴女達のお仲間さんかしら?…さとり達から聞いていると思うけど、改めまして、初めまして。」

 

輝夜さんは、此方に気付くと私と幻月を除くお燐達を見据えて堂々と自己紹介をし始める。

 

「おっと、これは、これはご丁寧に。アタイは、火焔猫燐。気軽に『お燐』って呼んでくれりゃ答えるよ~?…因みにアタイは、火車。妖怪の一人さ。宜しく。輝夜さん。」

 

「お燐さんね。…従者として相応しい身のこなしようね?是非、私の元で働いて欲しい所だけど、貴女は貴女の慕う主がいるのもね。その主さんを大事にしていきなさいな。」

 

輝夜さんは、お燐の自己紹介に感服していた。

次に名乗り出たのはルーミアさんだった。

 

「私は、ルーミア。さとりの友達なのだー。巷で噂になっている人喰妖怪なのだー。貴女は食べないわよー。これから来る月人は食べる予定だから、邪魔しないでねー?」

 

「ルーミアさんね。…確かに最近の人里で人喰事件が相次いでいたけど貴女だったのね。…此処で始末(たいじ)…は、しないわよ。ただこれからやり過ぎたら問答無用で始末(たいじ)するから宜しくね。それに今は心強いわ。…若干なにかずれているけど…仕方ないわ。宜しくお願いするわ。」

 

輝夜さんのリアクションを見るに心を読む間でもなく引いていた。ただ、かなりの貫禄と度胸を秘めているらしくルーミアさんの威圧にびくともしなかった。

 

…ただ心中ではビビっていた所を除けば。

 

 

「貴女が、輝夜さんですか。私は夢月。姉さん。…幻月姉さんの妹です。こういう格好はしておりますが決してメイドではありません。コスプレです。…でもって、姉さんには色々と尽くす所存の妹です。これからよろしくお願いします。」

 

「夢月さんね。よろしく。…貴女には、なにか異質なモノを感じるわ。まるで元々一人だった様な…。幻月さんだった気がするけど今は詮索しないでおきましょう。…それに、私の従者の様な思考を感じるわ。…これからが心配ね。でも戦力としては十分ね。一夜限りだとは思うけどよろしくするわね。」

 

夢月の自己紹介の際、意味深な言葉を呟いてはいたが…まぁ、気のせいでしょう。

 

「えーと。その。かか、輝夜さんですね。初めまして。私は、エリス。幻月さんに尽くす悪魔です。いずれは幻月さん専属の従者になりたいと思っています。…戦力としては不安ではありますけど、何卒よろしくお願いします!」

 

「エリスさんね。…そんなに慌てなくても大丈夫よ。笑ったりしないから。…それに、貴女が思う熱いその気持ち。…へぇ?…確かな様ね。…なら、頑張りなさい。もしかしたら振り向いて貰えるかも知れないわね。…フフフッ。…それに何もこの戦いは、傷付ける事が目的じゃないわ。あくまでも私を逃がし消息を絶つための戦い。サポートに回るもの非常に重要な戦力だから、エリスさん。その腕がたつ支援。…期待しているわね。」

 

 

 

エリスさんの言葉を聞いてそれだけでエリスの思う気持ちを殆んど読み取った輝夜さんの読心術に匹敵するほどの洞察力。

…エリスは輝夜さんに言われた言葉を、耳にして少し頰が赤く染まっていた。

 

幻月はというと…

 

…あ。

何かを悟ったのかエリスとは反対の方向に顔を背けた。

 

きちんと伝わったみたいね。幻月さんはツンデレ気質がある気がしますけどね。

 

 

 

皆が集まった所を見た輝夜さんは此方に向けて手招きする。

 

「こほん。重要戦力が集まった所で、少し私からの情報を上げるわ。私の逃亡に協力する従者が居るって前にさとり達二人に話したわよね。」

 

確か、輝夜さんの従者で名前が永琳さん。

月からの追手として密偵し、時がきたその瞬間裏切って月の者達を皆殺して輝夜さんと、一緒に逃げる月の頭脳だとか。

 

 

「えぇ。私と幻月さんは聞いております。他の皆さんにも大体の話はしましたので続けてどうぞ」

 

その言葉に輝夜さんは縦に頷き話を続ける。

 

「そう。助かるわ。…その従者何だけどね。月からの通信での作戦で、まず、私を連れ戻しにやってくるんだけどその際に発する光には穢れに反応して対象以外の動きを封じる作用が有るらしいの。」

 

…それは初耳です。

というかおとぎ話のかぐや姫も阻止しようとするけど一向に動けずされるがままかぐや姫を連れ去っていく話もありますし、事実、そんなことされたら作戦処じゃありませんよ。

 

「でね、此処からが重要よ。月の使者が私に接触する数百メートルで永琳は私に合図を送るらしいわ。その数秒後に永琳は、使者を裏切り手始めに回りの月の使者を皆殺しするそうよ。…そうなれば、月の使者達は大混乱。姫を連れて帰る処じゃすまなくなる訳。」

 

成る程。

混乱に乗じて作戦決行する訳なのですね。

そして、その際に必ず追手も来るからその足留めに私達がいると。

 

酷く言えば、捨てゴマ。

良く言えば、逃げる為の正当防衛。

 

 

…どちらにしても良い気はしませんが、これからの事を考えれば必要な事です。

 

 

「そこを突いていく私達が居る。って訳ですね」

 

「えぇ。今なら引き返せるわよ。死にたくないなら逃げても私はなにも咎めないわ。」

 

「はぁ。まだ言います?私達を舐めないで下さいねって。こんな戦いで死にはしませんよ。そうですよね?!」

 

「おうともさ!!こんなで死ぬくらいならアタイはとっくに死んでるさ。」

 

「大丈夫ー。この位の修羅場は潜っているから。」

 

「さとりの半身だよ。死ぬわけないじゃん。寧ろ、返り討ちにしてあげちゃうから!」

 

「姉さんの言う通りです。姉さんを傷付けるなら、全員容赦しませんから。」

 

「戦闘とは無縁になりそうですが、精一杯サポートしますねっ!!」

 

「…。じゃ、頼りにするからね。…後悔しないでよ!?」

 

「えぇ。皆さん頼りになりますから、遠慮なく逃げてください」

 

…その、言葉を発した後輝夜さんは定位置に戻っていく。

 

輝夜さんもツンデレ気質が有るんじゃないんでしょうか?…恐らくですがね。

 

 

 

と、其処へ。

 

「おぉ!?姫と話している奴が誰かと思って覗きに来たが、まさかさとりに幻月。久しいな。昨日ぶりか?」

 

…妹紅の父親の不比等さんですか。

 

「なんで貴女が。妹紅さんは?」

 

「いやな…。やはり欲には抗えぬ性でな。私とて男だ。姫には惚れているのだ。…命をかけてでも守りたくなるものだ。…それが、例え、姫にとっての捨てゴマだったとしてもな。」

 

…予測はしていましたが、此処まで輝夜さんに心身を捧げていたとは…。

食えない奴ですね。娘を差し置いてまで命を張ろうなんて…

 

「…馬鹿な父親ですね。」

 

「アハハ。何度でも言えばいいさ。だが、私とて譲れない一線がある。それこそ親としての威厳だ。もし、姫が家族になったら…。そう思えば…。好きな奴を…。惚れた奴を…。それ全てを守れずなにが父親だ。」

 

迷言ですよ。

かなり的を射った言葉ですが、馬鹿過ぎる。

頭の中お花畑なんでしょうか?

 

「…欲張りで夢見が良すぎるんじゃないですか。…それこそ、この戦いで生きて帰れるなんて。…死ににいくようなモノなんですよ。…それでもいいんですか?」

 

不比等は、私の尋問に真面目な顔になる。

 

「元からその覚悟だ。姫の為ならなんでもするさ。…まぁに、心配する事なんてない。すぐに守って妹紅の元に帰る。それだけだ。…そうそう。さとり。…私に何かあったら妹紅をよろしく頼むぞ。」

 

言いたいだけ言って…私の事も知らないで…。

 

「はぁ。親不孝ならぬ娘親孝じゃないですか。…馬鹿な父親です。ホント。あの娘が知ったらどうするきなんですか…。…ってもういないですし。」

 

いつの間にか消えていた不比等を探すのも馬鹿馬鹿しくなって私の仲間の元へ戻っていく。

 

 

 

 

其処へ

 

「あ~。さとりちゃん!」

 

その声は、幼き頃の妹紅さん。もとい妹紅ちゃん。

 

「あ。もこうさん。…どうしてこんなところに?」

 

「うん。お父様に会いに来たの。ホントそれだけだよ。。さとりちゃんは?」

 

私は…。

 

「そうですね。私は先程貴女のお父さんに会って話してきたところです。貴女も行くなら早く行った方が良いですよ。あのお父さん。目を離すとすぐいなくなりますから。そのせいで此処まで来ちゃいましたし」

 

 

優しい嘘をつく。

今の妹紅さんに何を言っても首をかしげてしまう。

ここはこれで良いのだ。

 

「そうなんだ。じゃあね。さとりちゃん。またあおうね~?」

 

だけど、今の妹紅さんに…。

自分が後悔しない為。

…伝わらないと思うけど。一応、伝えてみる。

 

 

結局は自分の為?

そうですよ。

自分のエゴですよ。心残りにしない為ですよ。

…悪いですか??

 

 

「妹紅さん。」

 

「…うん?……なぁに?」

 

「…その。…貴女のお父さんにさよならの挨拶をしておいてくださいね?…会えなくなるその前に。」

 

「???…うん。…判った。」

 

…解っていませんね。あの容子では。

 

 

 

 

妹紅さんはその後、私に言われた方向に向かって走っていった。

 

その様子を後ろから、妹紅さんの背中が消えるまで見守っていた。

 

 

「どうあがいても、死ぬのは変えられないですか。恐らく幻月も…」

 

「…さとりの奮闘。みさせて貰ったよ。…さとりのその後に続く言葉は判るよ。…私の能力でも限界がある。…もし、あれを助けても、代償として今度は妹紅が、死ぬかもね。…どちらにせよ誰かが死ぬのは変わらないんだよ…。」

 

いたのですか。

…幻月さん。

 

そうなんですね。

理を操ったとしてもその運命事態は回避は出来ないのですね。

今回の場合は、死ぬ運命。

 

妹紅さんのお父さんが死ななくてもその中の内大切な誰かが死ぬと。

 

理を操る程度の能力も万能じゃないと言う事なんですね。

 

 

「…そうなんですね。…ありがとうございます。幻月さん。」

 

 

「ううん。私はなにもしてないから。…そんなことより、そろそろ時間だよ。…あの作戦。覚えているよね?」

 

 

気がつけば辺りは暗く、月が中央に移動しようとしていた頃だった。

 

さて、私達の力をみせてあげましょうか。

 

 

「そうですね。行きますか。」

 

 

私はそう一言呟き、集合場所へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

予定開始時間五分前。

 

私達二人は、お燐達が待っている集合場所にギリギリ間に合った。

 

「皆、待ちました?」

 

「いやいや。丁度来て安心した所だよ。」

 

お燐は苦笑いで此方の質問に答える。

 

…心の中では…

~心配したよ。逃げたんじゃないか?~

…って思っていたようですね。

 

…まぁ、実際あり得る話ではある。

囮にして自分だけ逃げる。

 

卑怯者が考えそうな事だ。

 

「さとりさんが来ないから何があったのかー?って思ったけど、無事に来て安心したのだー。」

 

 

ルーミアさんは、純粋に心配していたようだ。

 

~……逃げたかと思ったわー~

~そうしたら、私が一人で月の人を食べられたのにー~

 

…前言撤回。

 

心の中では私が逃げていたら大変な事になっていたかもしれませんね。

 

逃げる筈無いじゃないですか。

 

 

 

 

 

「姉さん。さとりさんも。…あの人と話してきたんですよね?…どうにかなりました?」

 

「……。」

 

 

幻月は夢月の事を見た後に目を瞑り、左右に首を浅く降った。

 

「…そうですか。…姉さんでもどうにもならない事は、直感で判ってはいました。さとりさんに賭けましたが…やはり、そうなりますよね。」

 

 

「…運命というのは変えられないんだよ。…うん。どうあがいても、死合うのは変わらないのよ。…でも、この運命だからこそ、あの関係になったと喜んだ方が気持ちが軽くなると思うな…。」

 

 

「…そうですね。…姉さんがそういうのならば、それに従いますよ。……よっぽどの無茶振りじゃなければ、ですが。」

 

 

「判っているよー?そんなこと。でも、私がそんな非常な事を思い付くと思う?」

 

 

「………。」

 

 

幻月の質問になにも答えず、目を瞑る。

 

それを見た幻月は

 

「ねぇっ!?…其処は肯定してよっ!??どうなのぉー?!」

 

 

と、夢月とじゃれ合う幻月で合った。

 

 

夢月は知っていたんですね。

 

それもそうですよね。

 

幻月さんから夢月さんが生まれたんですもんね。

それも、幻月さんから二つに解れたモノですもんね。

 

 

思いは同じって事ですね。

 

 

「さとりさんや幻月さんが戻ってくると、信じていましたよ。…戻って来なかったらどうしようと思いましたが…ホントですよっ!?」

 

 

 

 

一人で盛り上がっているエリス。

 

…心を読んでも思っていることは同じでした。

 

~お二人は逃げたりしない~

~言った事は絶対通すって~

~私は信じていますから~

 

 

 

…かなりの生真面目キャラになりましたね。

何処かの名も無き小さな悪魔みたいですね。

 

 

そんな事はおいておきますか。

 

 

「…そろそろ時間です。戦いの準備。何時でも戦える臨戦態勢を。」

 

「さぁて、しゃきっとしよー!!…これが終わったら、のんびり宴だよー!!」

 

 

 

幻月が叫ぶ。

 

その刹那。

 

月が光る。それも今までにない以上に。

 

 

 

勘が訴える。

これは先程から待ち望んでいた決戦の時間が迫っていると。

そして同時に、相手は私達にどうにか出来るかどうかが五分五分の相手だという事だということだと。

 

 

 

 

「あれが、噂の…」

 

「ス○ー……デ○○○○ヤー…。」

 

「いや!似てるけども!?」

 

「突っ込んでいる余裕なんて有るんですか??幻月さん。」

 

「私のせい!??…じゃなくて。…あぁ。もう良いよ。それで。…そうだったねー。うん。…それにしても、この威圧。牛車の中からでも感じるよ。ただ者じゃない奴がいるよ。」

 

 

私は解らないのですが、戦闘配備された時にいる人物の中にただ者奴がいるとか。

 

恐らく、その中に輝夜さんが言っていた従者が紛れているとか。

 

「ねぇ、そろそろ行っても?」

 

「駄目です。様子を見ましょう。」

 

お燐は、戦闘したくてウズウズしているが、まだ出てはいけない。

 

周りの人間達は何かしらの術で動けない様ですし。

もし、不用意に動いたらこっちまで術を食らった計画のなし崩しですし。

 

ここは人間達が動けるようになるまで、輝夜さんの動きがあるまで耐えるまでです。

 

「どうしてー?…今がチャンスだと思うけどなー?」

 

ルーミアさん。…やめてくださいよ!?

ここで動いたら計画が壊れちゃいますから。

 

「ルーミア。駄目だよ。我慢して。もし、動いちゃったら、月の人が此方に気がついて逃げられちゃうかもよ??それでもいいの?」

 

「確かに良くないのだー。我慢するのだー。」

 

 

 

…はぁ。

肝が冷えましたよ。

 

でも、新しい発見ですね。

 

幻月さんは以外と相手の心情と性格を読むのが上手いですよね。

 

 

 

 

そう考えていた私は、周りを見渡した。

 

輝夜さんが見ている方向に私は視線を向けた。

 

 

…輪とした佇まい。

背中にはみたことがない弓を。

髪は長髪で、捩るように束ねていた。

一言で言うならカッコいい。

男性と間違えられてもおかしくない程の美形である。

 

あの人、誰かを探している?

私がそう頭を巡らせていた所。

 

 

……ピタッ!!

 

私の視線があの女性の目とピッタリと重なった。

 

…あれ?もしかして、此方を見てる!?

 

はい。そうですね。がっちり見てますね。

私の存在に気付いた人物は、この中での月の人では一人だけ。

 

 

「……!?」

 

鋭い視線を向けられた直後、背後に何もいない筈なのに凍るような威圧が当てられる。

 

その光景を見ていた近くにいた幻月さんは、心配したのか静かに近付いてくる。

 

「…恐らくなんだけど、あれ…さとりを試しているんだよ。物凄い威圧だとは思うけどね?」

 

「…ふむ。成る程。」

 

 

…探していた人物は多分私。

あの時、輝夜さんが通信で話していた計画の中に私の存在が関わっていると伝わっていた。

だから、この時に私がいる事は知っていた。

 

それを確かめるために私に威圧を送ってみたと。

 

幻月さんの解釈はかなり的を射った発言だと私は思いますがね。

 

 

そう思った刹那、その女性が動く…。

女性が此方に一瞬コクりと首を浅く縦に降った…様な気がした。

 

 

…背中に装備していた弓を素早く左手に携え、それを真上にへと向けた。

突然の事で私もエリスさんも、お燐さんにルーミアさん。そして、月の軍隊達や輝夜さんを防衛するために寄せ集められた人間達も反応が出来ていない。

 

幻月さんや夢月さん。輝夜さんはこの事に動じておらず、次に踏み出す行動の為、すぐに動ける態勢をとっていた。

 

輝夜さんは判りますが、幻月さんと夢月さんは、こういう事になるってどうやったら予測できたんでしょう。

 

と思い幻月さんの方を見ると、私の心を読んだのか此方に小さな声でこう伝えた。

 

「…少なくとも、纏めれば勘だよ。…輝夜さんの目とあの女性の目、そして、此方に向けて頷いた行動を読んだに過ぎないよ」

 

流石の読心術ですね。

 

こうして私が下らない話をしていても時間は待ってくれない。

 

その女性はいつの間にか右手には矢の代わりに淡く黄色く光る明らかに大技をしてくるだろう細長い物を持ち、そのまま弓の弦に当て狙いを真上に定めた。

 

 

 

その光景を見た幻月さんは突然、

「さとりっ!!今すぐ、伏せてっ!!」

 

突然の事で私は気が動転していた。

「え、どうして?」

 

私がそう尋ねると。

 

「つべこべ言わないのっ!!死にたいのっ!!」

 

 

幻月さんの指差す方向に顔を向けると。

 

その女性がまた、一瞬此方を睨む。

その後、弓から放ち穿たれた『ソレ』は上空で無限に等しい位の光放つ矢に変わり、それらは自我があるかの様に此方に音速に等しい早さで飛んできた。

 

「あっ。」

 

…間に合う筈もなかったのだが、間一髪で幻月さんが音速で私の身体を抱き抱えて一緒に地面へと叩き伏せた事でギリギリのところを避ける事が出来た。

 

「さとりっ!」

 

幻月さんは私の事を大声で叫ぶ。

 

《今の一瞬を音速で動いちゃったせいで私はまだ動けそうにないなー。だから…だからさ。…あの子達を…お願い》

 

…判りましたよ。

 

普段は心を読ませない人なのにこの時だけ読ませてくるとは…。

 

…全く。仕方無いですね。

窮地を助けてくれた恩を此処で返しますか。

私は、急いであの矢の次が飛んでくる前に仲間の元へ戻った。

 

…瞬間、次の矢を携えて弦を引く音が…。

くっ!間に合えっ!!

 

…。

 

いいえ!間に合わない!!

いえ、ギリギリのところね。

 

「伏せてっ!!」

 

私は危険を承知で、草むらから顔を出している二人に覆い被さる勢いで前に飛ぶ。

後ろから感じる殺気と殺意の塊。

 

私が二人の頭に手をかける頃には、既にすぐ後ろに迫る殺意が…。

必死の思いで呆気に取られているルーミアさんとエリスさんの頭を地面に叩きつける勢いで強制的に隠す。

 

…どうやら、時の運と後先考えない行動が吉と為したやうである。

 

途端、須臾に迫る時間の差で合った。何かが通り過ぎた後である。

 

行動と判断が遅れれば…致命傷、もしくは命はなかったであろう。…少なくとも、私だけが。

 

…直後、物凄い閃光と轟音が辺りに響き渡る。

 

遅れて、地上でいくつもの爆発が起こる。私達の後ろでも数発の爆発が…どうやら、数発は私達後ろへ落ちたみたいだ。

 

因みに夢月は、隣にいたお燐に伝えていたようで心配はいらなかった。

 

…常々思いますが、従順で良かったと私は思いました。

 

 

「MIRVみたいな攻撃ですね。」

 

「酷く冷静じゃないの??」

「言っている場合かっ!??というか、なにそれ、呪文!?」

「貴女も人の事を言えないでしょ!?」

 

エリスとお燐の突っ込みが響く。

 

爆発音が止んだので顔をあげた。

 

周りをみてみると、先程の爆発が威力を物語っていた。

 

月の兵器である戦車は蜂の巣の様に穴だらけになり使い物にならない鉄屑と化していた。

 

私は、これは動く好機。

 

そう思い立ち上がる。

 

「ほら、ルーミアさん。エリスさん。いきますよっ!」

 

 

「はへっ!?いや、ちょぁっ!??」

 

「あ、ちょっ、急に引っ張らないで~っ!?」

 

 

その近くにいたエリスさんと動乱しているルーミアさんの二人の手を引っ張り二人を上空につれていく。

 

 

ルーミアさんは何か言いたげですが、この際は無視します。…どうせ、文句だろうと思いますので。

 

エリスさんは…何も言わずに従っていますね。

…流石としか言えませんね。幻月さんの指導……いえ、きつめの仕置きが効いているのでしょうね。

 

…改めて上空からみていると三つ巴の戦いになっていた。

私が言う事じゃないですが、上空に気を配る余裕も無いのですかね?

 

私達が空にいる事に気付かないのはどうかとは思いますが…まぁ、これはこれで、幸運だった。…と思うことにしましょう。

 

 

下を見ると状況判断は、容易い事に肝胆な言葉だけで済ますことが出来た。

 

あの弓を持った女性が時折撃ち穿つ、ホーミング性能極高な攻撃で数多くの月の戦車を壊すも残った戦車で人間達の集団を凪ぎ払う。たちまち人間達はぶっとぶ始末。

 

直撃を受けた人間達は先程の言葉に付け足して人体模型の様に木端微塵に吹き飛んでいく。

 

一方で兵器に乗っていない月の兵士達はというと、月で作られた光線銃の様なモノで襲い来る妖怪や人間達に発砲。直撃を食らったモノ達は皆全て五体分離、破壊離散されて肉片に変えられていく。

 

 

「うわぁ……。第三者視点で見る光景は、私から見ても引くなー。…これを私がやるなら問題はないんたけどー」

 

「これが本当の地上対宇宙の戦いなのね。…完全有利なのは月の人なんだけどね。」

 

…色々と言っている二人はさておいて、輝夜が見つかりませんね。

 

幻月さんもそろそろ動ける頃合いになったでしょうか。

 

お燐と夢月さんを連れて多分私と同じ事をしている筈。

 

…そんなに遠くに行っていない筈なんですけどね。さっきの混乱で逃げるのなら誰かが追っている筈ですし。

…えっと。

エリスも何時までも私に抱えられているのでは申し訳ないようで同じく探し始めた。

 

「…あ、幻月様。…さとりさん。幻月さm…じゃなくて、幻月さんがいましたよ。」

 

…エリスが幻月を見つけたようだ。

その近くにはお燐と夢月さん。そして、横には輝夜とその従者らしき女性もいた。

 

途端、ルーミアさんが私の肩を引っ張る。

 

「…うぐっ!?…ちょっ、なんですか!?今は彼方に行くのが先でしょう?!」

 

先程進行方向とは真逆に引っ張られた為、首が絞められるような圧迫が一瞬襲った。

 

ルーミアさんは、指を刺し引き留めた理由を淡々と話す。

 

「ねぇー?あれ、壊して良いのかー??」

 

その指先の方角を見るとまるで母船の様な巨大な戦艦があり、その場所から複数の何かが飛び出してきた。

 

縦に異様に細い胴体に左右に飛び出た長方形の様な翼。昆虫の触覚と思わせるような先端。その頭の上で回転する大きな羽。そして、尻尾の様に後ろに伸びた胴体の一部。

 

この形状は…まさかっ!?

 

前世知識にあるモノの内、形が最も似ているモノを想起させられ、自らの勘が警告する。

 

 

「…なっ!?せ、戦闘ヘリですかっ!!」

 

それもただの戦闘ヘリではなかった。

 

メインローターの上に搭載されたお皿の様なモノ。

AH-46D……通称、アバッチ・ロングボウ。

 

数々の攻撃を持つ戦闘ヘリの中では唯一遠距離にも対応しているバランスブレイカーの一つ。

 

それに搭載されている機関銃は弾速は減衰する事はなく、またブレる事もない。

マシンガンの様に続けて撃った所でショットガンの様にばらつきは無く正確。

連射出来る時点でガトリングガンの様でもあるが、遠距離も狙える為、実質スナイパーライフルの様なモノでもある。

 

あんなモノに近付かれたら、ガトリングガンを間近で撃たれるモノと同じことになります。

 

……そもそも、あれを近付かせたら一瞬にして終わりだと言う事ですね。

 

 

…いやいや、私自身、それは想定外ですよっ!?

輝夜さんだってヘリがいる。なんて一言も言っていませんでしたし?!

 

……ただ、向こうの思考を読むに辺り、恐らくあれらは試作なのでしょう。あれを見るにどうも動作がぎこちないきもします。推測ですがこれらは造られた瞬間に投入された様なモノばかりなのでしょうね。万一の可能性を考えて報告にすら出していないモノも使う。

自らの身内にスパイが紛れていると考えた。

そんな感じでしょう。

 

 

「…くっ。…ルーミアさん。良いです。構いませんよっ!遠慮無く壊しちゃって下さいっ!!……って、話は最後まで聴いてください!…早すぎますよっ!?」

 

「判ったのだー!」

 

 

私が、良いですと言った辺りから最後まで言い終わる前にルーミアさんは闇を纏って突っ込んでいった。

…まぁ、付け加える補足は余り無いので最後まで聴く必要は無いんですが…。

 

しかし、非情にも私の中にある前世知識のにある悪い予感が見事に当たってしまった。

 

 

それこそあのAH-46Dという戦闘ヘリは、極めて探知機能が凄まじく、遠くから接近してくるモノまで察知が可能なんです。

だから、あのルーミアさんか使う視覚阻害の闇が合ったとしても、探知機能が合ったなら意味もなさない。

 

…例えるなら、不思議のダンジョンの様なランダム地形生成ゲームにある様なマッピング機能が良い例である。

 

あの手のゲームは周りが見えない状態になってもマップや敵等が表示されてさえいれば、プレイヤーはそれらに頼ってごり押してでも進める事が出来る。

 

…そんな感じで夜で闇を纏っているルーミアさんは視覚で彼方からは見えないものの、あっちでは近付いて来るのがモロバレな様で、機体の高度を上げた後に三機のアパッチが胴体の下につけられた機関銃がルーミアさんがいるだろう方角へと向けられる。

…刹那、機関砲が旋回し始め、其処から容赦なく弾丸を撃ち込み始める。

 

 

「…へっ!?……あ、ちょっ?!…や、やや、やっぱり無理なのだーっ!??」

 

 

 

ルーミアさんはそれに気付いた様で途中で方向転換。闇を解除して此方へと逃げてきた。

 

だが、あのヘリは逃げたルーミアさんを追いかける事は無かった。

どうやら先程の攻撃は正当防衛の様であった。

あっちはあっちで味方の支援に回りたいのか、それとも此方に使う程無駄な弾を使いたくはないのか…。

 

どちらにせよ現状は助かった。

対策は無しで挑むわけにはいかないからだ。

 

「はぁ。はぁ。…ちょっと。さとり…。アレ、どうやって倒すのだー?…私には無理なのだ…!」

 

先程の弾丸が掠ったのか右足から血を流していた。

 

…まぁ、うん。判っていましたが、あれはちょっと危険すぎますね。私が一回弱点を教えるべきでしたかね。

 

…いや。説明する前に突貫していきましたし、どっちにしても同じ結末になってそうですね。

 

「…はぁ。私の話を最後まで聴かないから。…良いですか??あれの弱点は、上で回っている羽か後ろの方の小さい奴ですよ。……訊いてますー??」

 

「わはーっ。」

 

「……。」

 

人の話を聞いてないし。…いえ、元からでしたね。まぁ良いです。ああいう奴に有効なのは習うより慣れろですよ。

私が仕方無く実践を見せてあげようと来たその時、あのヘリの周りが騒がしくなった。

 

何事か。と思いそっちに目線を向ける。

 

あの羽。…そうですね。やっとですか。

 

 

向こうに見えているヘリに近付かんとする一つの影が。

 

幻月さんですね。

 

幻月は、自身に近い手頃なヘリに一瞬で近づいていく。

それには気付いているようでアパッチはその突撃を回避しようとする。…ですけど、幻月が元から持つ早さには対応出来ず瞬く間にヘリのテイルローターに接近、刹那、テイルローターと胴体を切断。

 

斬られた部分は一秒遅れでバチバチと火花が飛び出る。

 

幻月さんの右手には黒い剣が握られていたが、それも一瞬。幻の様に、離散して消えていく。

 

ヘリはと言うと、制御を失って落ちていき、三秒後には爆発する。

 

 

「ルーミアさん。あれこそが本場の戦闘塾ですよ。見習ってくださいね?」

 

「…。さとりもあんな感じで戦うのかー?」

 

「いや、あんな戦闘は私には出来ませんよ。」

 

そう言って、私も手頃なヘリを探す。

…その時此方を警戒するアパッチが一つ。

先程の幻月の戦闘のせいですね。

…距離的にも丁度良いですね。手初めにアレをどう破壊するのかを見せてあげましょうか。

ただ、いくら距離が離れていてもAAMがあったなら狙えてしまう。無いと………祈りたい。

 

 

不安要素があるが、それは起こってから対応は出来る。……筈。

 

 

メインローターに向かって弾幕を発射する。当然だが、目前で攻撃を見たならそれを避けようとするでしょう。アパッチは旋回して回避しようとする…んですけど、甘すぎます。サードアイで先読みしたルートにも弾幕を放つ。その一発がテイルローターに命中する。

それは小さく爆発しローターが吹き飛んでいく。

 

「まぁ、あんな感じに私ならこういう感じに落とせる感じですね。幻月さんの様な派手な戦いは出来ませんけど。」

 

テイルローターを失った機体はメインローターのトルクを相殺できずにくるくると回りながら、地面へと叩きつけられる。触覚の様な機首が潰れ胴体がひしゃげる。

 

「…す、凄いのだー。ただ、判るのは、さとりも幻月も色々と飛んでいるのは判ったのだー」

 

…はて。…飛んではいますよ。…物理的に。

…違う?思考??これが、普通なんじゃないんですか??

 

そんなどうでも良い事はおいておきまして。

 

「幻月さーん!!そろそろ輝夜の援護に向かいますよっ!」

 

「りょうかーい!!今これを始末してから向かうから先行っててー!」

 

仕方ないですね。

 

「では、ルーミアさん、エリスさん。行きますよ!」

 

「はーいっ!」

 

「了解ー」

 

 

気の抜けた返事を聞いた後、幻月さんが残りのヘリを始末する音を背に戦闘領域を離脱する。

途中で此方に向けて撃ってくる音が聞こえるもそれを幻月さんは許す筈もなく、『面倒だなぁ、慈悲をかけて残して上げたのに、仇にするなんて…良いよ、息つく暇もなく一瞬で葬ってあげる!!』

大声で叫んだ後の刹那の大爆音の連続。

恐らく一瞬で10機以上始末したのだろう。

 

その後からは音が聞こえなくなり、気がつけば幻月が隣にいた。

 

 

「…ふぅ。さとり。あっちは片付いたよ。…ただね。数が凄いね。下手するとこうやって飛んでいるだけで見つかっちゃうかもよ。」

 

…幻月の言うと通りですね。

 

さっきまで私達は支援に回る筈のヘリを片端から壊していましたから、こうなるのも無理はありませんね。

 

…仕方ありません。森の中までおりますか。

 

「……っ!?…さとり。まだ、安心は出来ないよ。空が駄目なら地上からって言うし、…流石、月の守衛。頭が回るねぇ…。」

 

 

しかし、やはり月の追っ手達は簡単に逃がしてはくれないようで、幻月はいち早く後ろから迫ってくる脅威に気付いた。

 

 

 

私も遅れながら意識を外に向けてみると、数十人の人の気配がもうスピードで後ろから迫ってきていた。

 

…これは、バイクですかね。

それも、手慣れています。

その他何人かは…ふむ。

 

バイクのハンドルを握る手の内片手側を離して、何かを持っている感じね。

 

…時々響く爆竹のような破裂音。

恐らく、手榴弾の様なモノなのでしょう。

そして、それ以外にも何人かは片手に銃を手に此方にへと向け……。

 

……っ!??

 

補足された!?いつの間に!?

 

 

「幻月!逃げますよっ!!」

 

「言うの遅いって!!もうっ!…ハイスピードで前を行くから、後から私に竹林の竹にぶつかったのは貴女のせいですとかの文句は、言わないでよっ!!」

 

「…善処しますねっ!!」

 

幻月は、足早に通常出せない音速の領域の速度にてその場から離脱する。

私もそれに見習って同じく音速とは行かないものの、それなりの早さにて逃走を開始する。

 

音速に近い速度にて飛んでいるのに間関わらず一向に距離が離せない。幻月が感心するのも頷けますね。

 

「…大分、飛んでいるけどまだ見つからないのっ!!?」

「貴女にも私と同じ力が使えるでしょう!?使わないのですかっ!??」

「……馬鹿言わないでよっ!?私がこうやって全力で飛んでいるんだよっ!……貴女の力を使うのには貴女の存在という理に集中しなくちゃいけないっ!…寧ろ、それ出来たらこんな事貴方に訪ねないしっ!!そもそも、私が"全力"で飛んでいるのっ!余力なんてないに決まっているじゃんっ!!」

 

今の幻月の話を私なりに纏めますと…

 

・幻月の能力の理を操る程度の能力は、"基本的"には何でも出来る。

(他者が持っている程度の能力の完全再現使用や、飛行速度極限化、未来予測に不死、蘇生や認識阻害等々。あまつさえ自分の偽物を創ったりも可能。)

 

・他者の力を使うにはその人物の存在を想起させる必要がある。

(人物の名前やその存在の確立。能力の詳細や性格等。)

 

・想起させる為には想起する能力を持つ人物の詳細や理解を完全に深めていなければ出来ない。

(親睦を深めている関係なら言わずとも、その人物の癖や言葉遣いも判っている事。)

 

・また、想起する為には少しながらの意識を使わないといけないらしく全力で一点集中している時はそれが全く出来ない。

(現在絶賛逃走している際のように別の能力を全力で使っている状態での別の能力の同時行使等、"一つの能力を全力で使っている"状態中には別の能力を使えない。)

 

 

…という感じに冷静に分析してはいますが、事実、私もかなり焦っています。

この音速に近い速度に追い付ける月の兵器の追跡速度が計り知れなく、能力の使用した場合、若干速度が落ちそうで怖いんですよ。

…ですが、このまま逃走劇を続けている様では埒が無いです。

 

 

…掛けてみますか。能力行使にて報われるのならばっ!

 

 

…。

……。

…………。

 

 

…見つけたっ!!

 

 

 

「幻月さんっ!貴女からみて正面四十四度!!現在輝夜さんとその従者は追っ手と接敵中!数は二人。…その他にて正面左に七十五度、距離は輝夜さんの所とはそんなに遠くない所にて夢月さんとお燐も同じく接敵中。…その数は六人。…そして、ルーミアさんとエリスさんは夢月さんとお燐の支援に回ってこれ以上敵が通らないように防衛しております。その数は凡そ八から九人位で方角的に幻月さんから左に九十七度でそのまますぐに曲がれば合流可能ですっ!!」

 

私が正確に情報を幻月に伝えると幻月はすぐ行動を始める。

 

「…そっ。じゃあ、私は今から夢月達と合流するからさとり。貴女は輝夜をお願いねっ!!」

 

「お願いします。…死なないで下さいよっ!!」

 

「だから、それはお互い様だってのっ!もし、此方が終わりそうになさそうなら、夢月かエリスを向かわせるから。…可能な限りお燐も向かわせる。…じゃ、頼んだよー!」

 

 

そう言い残し、直線を行く私に対し幻月は左、森の奥への姿が消えた。

幻月の挙動に気付いたのか、幾つかは左の方向に逸れていった。

しかし、敵の数はそれでも半分以上残っている。私の存在が合流する事を恐れているのでしょうか?

 

そんな推測はさておきまして。

 

目の前に見えるは、輝夜さんとその従者さんの行く手を塞ぐ兵士が二人。

 

その内の一人が私の視界内に入る。

 

好機。

即座に段幕を発車する。赤と紫が混ざったような色をした弾がばらまかれる。

 

突然の事で対応しきれなかった兵士の一人が吹き飛ばされる。

 

直後。

 

「お待たせ~!さとり。タイミングバッチリだった様だねぇ。」

 

私の左側から赤と黒のゴスロリ衣装を纏った人物が飛び出してきた。

…お燐ですね。ということは、幻月さんはあっちでお燐の代わりに防衛をしているって所でしょうか。

 

何はともあれ助かりました。

 

「…お燐でしたか。幻月さんの支援。間に合った様ですね。…では、此処は任せましたよっ!」

 

「お前さんに言われずとも…ねぇっ!!」

 

不意打ちにて登場したお燐は応援と駆けつけたであろう月の兵士達複数人へと突撃。

 

此方も突然の事で対処できていないその一瞬にて、何処か身に付けてきたであろう格闘術にてお燐は、複数の兵士達の首筋に爪を刺してあっという間に絶命させていた。

 

それこそ映画のワンシーンの様な綺麗な立ち回りにて攻撃をし、攻撃をし終わった直後に首筋から血飛沫が舞う。見ていて圧巻の光景であった。

 

ただ、そんな見る時間なんて無いもので…

 

 

私の後ろからバイク音が聞こえてくる。

そうです。先程からずっと後を追って来ている月のストーカー達です。

 

…本当しつこいですね。

 

 

「遅れました」

 

バイクのお客様よりも先に輝夜とその従者に遅れた挨拶をする。

 

…が、挨拶をする暇は無いようですね。

…さっきから私の向く方にバイクの光が照らされて眩しすぎる。

 

スポットライトなんて必要ないですよ。目立ちたくないですし。え?今は関係ない?聞こえませんね。

 

…仕方ありません。あちらには此方の常識と匙加減が分からないようなので、此方が調整をしてあげませんと。

 

眼孔が直ぐに絞られて目に入る光量を調整。それと同時に私の能力の指定範囲内に入っていることを一瞬で確認。その後、私のサードアイが光る。

 

「あ、貴女は、まさか?!」

 

 

 

「従者さん。私の説明はこれを切り抜けてからです!!」

 

 

こうしている間にお燐の奇襲もあってこうして輝夜と従者さんと邂逅できたが、それも少しの間だけ。

 

相手は防御しない馬鹿ではない。

お燐のお陰で何人かは討ち取ったが、残った人物は体勢を立て直し、小型結界等を張ったりして、お燐の攻撃を防ぎ応援がくるまでの時間稼ぎをしていた。

 

いつの間にか相手は応援が駆け付けており、数が揃いつつあった。

 

これ以上は数に押されて最悪殺される可能性があるわ。

 

私は、即行動に起こした。

「…お燐!!引きなさい。貴女を死なせる訳にはいかないもの。」

 

 

「…え!?…わ、判った。」

 

 

お燐は私の指示を聞き、バックステップにて凄い跳躍力で空へと翔け、逆回転するかの様に回りながら、夜の森、その暗闇の中へと消えていった。

 

突然の事で少し動転していたが直ぐにお燐が相手をしていた月の兵士達は一斉に此方を意識する。

 

…滅茶苦茶私を睨んで来ていますけど…だ、大丈夫なんでしょうか?

 

輝夜と従者さんと平然と会話をしている私に警戒をしているのか、迂闊に攻撃はしてこなかった。

正直、攻撃してきてくれた方が楽なんですけどね。

 

…少しだけ精神攻撃位はした方が良いのかしらね?

 

…と思い、先程から聞こえてくる心の声の一つを読み上げる。

 

 

「…妖怪風情が…!任務の邪魔だ。大人しく死ねよ。…ですか。…確かにあなたの言う事は理解できますが、素直に従って死のうとする願望者(ばか)なんて、あなたの住む国にいるんですか?…まぁ、いないですよね??その言葉はあなたの身を滅ぼしますよ?例え、心の中で思っていても…ですよ?」

 

「…なっ!?」

 

考えていた事の一つを言い当てられた兵士の一人が驚愕する。

「狼狽えるなっ!!」

 

「…そういうあなたは、こういう奴がいる地上が嫌だったんだ。早く帰りたい。…ですか。…なら、帰ってください。私だってあなたのような理解の及ばない月の人達と相手をするのは嫌なんですよ。地上にはあなた達の様な存在は要らないんです。迷惑なんです。大人しく消えて下さい。」

 

 

「大人しく聞いていれば舐めやがってっ!!このっ!生意気なっ!!!」

 

 

一人がそう叫んだその瞬間、私とその後ろにいる輝夜達に向かって鉛弾が飛んできた。

 

瞬間。

 

…キンッ!

 

刹那、物凄い風が辺りを襲う。…そして。

 

いつの間にか私の前に幻月さんが。

 

「…私の友人に八つ当たりの攻撃をするなんて、これは万死に値するかな~?」

 

「な、なんで、お前が…!?」

 

と幻月さんは今すぐに攻撃しようとする。

…が私が幻月さんの右肩を左手で優しく押さえる。

 

「…幻月さん。此処は私が行きます。…貴女はあの方達が逃げられなくなるようにしてください。…あっちの機械…バイクとかを破壊してください。」

 

「…判った。君達。…私達を侮った事。そして、この地上へ来たからにはこの地上が持つ洗礼を受けて貰うよ。…勿論、貴女達の故郷には生きては返さないからね~?」

 

幻月は、その勢いのまま月の兵士が乗ってきただろうバイク等を壊し始める。

 

 

…と言うより、話くらい聞いてくれても良いじゃないですか。

煽った私が言うのは変ですがね。

 

 

そう思い続けている間も私には絶えず鉛弾が飛び交う。…が。

 

「な、なぜ、効かないっ!??」

 

 

 

先程、幻月さんが弾いた弾だから、次は当たると踏んだのだろう。続けて鉛弾を撃つも私には傷一つも掠りもしない。

 

マシンガンの様に乱れ撃つ銃弾は地面や木々に当たり破片が飛び散る。

当然だが、其処には私や輝夜の身体があるならば良いのだが、残念ながらそんなものは無い。

 

 

「何で?…って聞かれましても…効かないものは効かないんです」

「…それよりもいいんですか?逃げなくても。…これだけ撃っても傷一つ付かない私」

「…どう考えてもあなた達に勝ち目は有りません。今なら逃げても追撃はしませんよ。まぁ、降参するならさっさとここでしてください。殺しませんし、逃がします」

「…あぁ。勿論。あっちで大暴れしている私の友人も、あなた方が大人しく引いてくれるのなら止めますけど?…どうします?」

 

私はゆっくりと近づいていくそれも、わざと逃げるチャンスを作る様に。

しかし、その試みも虚しく。

 

「…くそっ!!我らが地上の者に劣っているものかっ!此処で逃げるなら我等は此処で違えてでも死んでやるっ!!」

 

「……はぁ。弾幕はブレインって言葉を知らないんですかね?…あ。違いました。馬鹿は知識力より力業でどうにかなりますもんね。…戦いの時は考えて行動する事よりも最新の技術だけてゴリ圧す脳筋馬鹿なんですよね?あなた達って」

 

煽り煽る言葉を私は次々に生み出していく。

 

これで攻撃が過激になればもうけものなんですが…。

 

予想は当たり、次々に銃にて手たたり次第に鉛弾を飛ばす。

時折、輝夜さんや従者さんに飛ぶのだが、それらは従者さんの張る結界にて防がれ無傷である。

 

さてと。

次は、慈悲を与えたと言うのに逃げずに攻撃を加え続ける脳筋に死別を与えてあげますか。

 

 

「…うわああああ!来るなああ!」

 

 

適当に狙いを着けた兵士の元へと歩いていく。

無慈悲にもあなたに逃げるという選択肢はもう残されていない。何故なら、それは先程与えたから。なのに逃げなかった。なら、私に追い詰められて死ぬ覚悟が出来ているということ。

 

あーあー駄目ですよ。パニックになって銃の乱射はいけませんよ。

それらは全て輝夜とか幻月さんや従者さんに手間を掛けさせますし後で私が怒られます。

 

それに、当たらない標的に使う銃弾が勿体ないのに…無駄に使うだけ無駄だと言うなのに?

 

それなら、観念して自ら死ねば恐怖なんて無いと言うのに。

 

 

 

「や、止めろっ!!目がっ!目が潰れるっ!!」

 

あー煩い。煩い。

そんなに暴れられると手元が狂ってしまいますよ。

痛みなくあなたを逝かせられないじゃないですか…?

 

 

 

ふふふ。

 

逃れられない恐怖の記憶と地上の妖怪の恐怖。

存分に味わいながら逝くと良いですよ。

 

「さぁ、狂気の夜は始まったばかり。まだまだ遊びましょう?月の民さん??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ま、そんな感じに月の兵士の皆は、私の能力にて『私』に蹂躙される。

 

…そんな幻覚を見ている真っ最中である。

あなた達に判りやすく言えば、先程から繰り広げられていた戦闘の殆んどはあの人達の幻覚です。

…え?いったいどこで?…ですか?

 

そうですね。

月の兵士達にすら現実と幻覚の認識を混濁させる様に工夫しましたし。

ここでタネ明かし…しましょうか。

 

でもって、至って単純ですよ。

能力を行使したのは輝夜さんと従者さんを見つけた瞬間の所にまで遡りますね。

 

 

あの時の表現。

 

お燐が森から奇襲をかける為に出てきた。

そう例えましたけど、実際は違う。

 

あそこからが幻覚ですね。

あの時出てきたのはお燐ではなく最初から幻月さんなんです。

 

…えぇ。そうですよね。

見ているあなた達は

 

『そんなわけ無いだろう。』

『完璧にお燐だった。』

『台詞も立ち振舞いも攻撃の仕方も全てがお燐だったよね?』

 

と思っていますよね?

 

ですけど、忘れていませんか?

幻月さんの能力。

そうです。理を操る程度の能力の事ですよ。

 

 

幻月さんの能力の一つに

 

『他者の存在へ変質出来る上に、自分の存在を偽装させ、そのまま認識させる事が可能になる力』

 

があるんです。

 

 

幻月さんはこう言っています。

 

 

『この力の正式名称は詐称変異(メタモルブリテンダー)。例えば身内とかに…さとりとかに詐称出来る上に詐称した人物が持つ程度の能力や言葉遣い、声音や性格、更には立ち振舞い、本人の全てを真似る事が出来るんだよ。……そうだね。エリスが持つ程度の能力と似ている。いや、同じって言っても過言じゃないかな。』

 

そんな感じで、幻月さんには一芝居うってもらった訳なんです。

 

…何処が幻覚で何処が現実か?

 

皆さんの疑問は其処では無いのでしょうか?

 

…まずは、お燐の登場は本当ですが、実際はお燐じゃなくて幻月。

 

次にお燐がその場から引く場面。

お燐に変異した幻月が回転して夜の闇の森の奥へと消える。

あれは半分幻覚です。

森の中へと消える時だけを盛って大胆に映える様にしたんです。現実では、幻月が空へと舞って森の中へと消えた後の刹那の時にて輝夜と従者さんの元に移動していた。

 

次に私が挑発する所。

あの後の私の言動と行動、幻月の参戦と破壊行動等々……あれ、全部幻覚なんです。

 

現実では、私は能力をかけて幻月が引くまでは実際に口を動かしていましたけど、その後は幻覚である私にある程度のシナリオを自動作成。後は現在進行の形に収まる。

実に鑑賞に至りますね。幻覚と言ってもただの幻覚じゃない。本格的な幻覚を見せている感じね。

…人間が持つ五感全てを逆利用した精神を破壊させる夢を見せているのだ。

話は変わるけど。

 

これは私の知識と偏見で産み出した名言なんだけどね?

全ての生きるモノ達は肉体と意識の二つが両立しないと死んだ事と同じモノ。

現実と幻想は表裏一体。無くてはならないものであり、有りすぎても無さすぎてもそれが毒となり苦しみ続けいずれ死する。

現実では肉体が生きる第一の世界で在り、幻想は肉体が積んだ経験を元に心象が生み出す第二の世界である。

夢も現実も『生きている』限りはどちらも命を失ってはならない。

失えば二度と現し世に戻れず永遠に目覚めぬ骸となろう。

 

なーんてね。怖かったかしら?

これだけ語ったけど、判りやすく簡潔に言ってしまえば私が言いたいのがただ一つなの。

『生きているこの世界』も眠っている時に見る『夢の世界』のどちらも『当人が生きる世界』である事。

 

…要は、痛覚、視覚、聴覚、味覚、触覚。

その五感全ての狂わせてしまえば後は勝手に味方同士の死合が始まって流れ弾が仲間に当たったり、乱射しすぎて同士討ちとなったりとなる訳ね。

 

 

 

コホン。話を戻しましょう。

 

月の兵士が勝手に自滅し始めた所から続けましょう。

 

「…見ている人がいる中で簡単な説明ありがとね?…でもね。私の目の前で繰り広げられている地獄。どう考えても容赦無いよね。」

 

幻月はそう口にすると、隣で聞いていた輝夜もウンウンと頷いた後に口を開く。

 

「全くね。幻月の言う通り。あなたって手心って言うか…手段というか…。言葉にするのは難しいけど、相手が格下と判った相手には優しく見逃すわよね。でもって慈悲を与えたのにそれを無下にした相手には、容赦なく叩き潰すかの二択しか無いのね。…ホント、幻月に聞いた通りの両極端な性格で幻月からエグいって言われないの?」

 

 

「はぁ。別に言われたことありませんが…まぁ、語彙力失って、なんか凄いね?って言われたことはありますよ?」

「そんな事よりも私が叩き潰すとか、容赦ないとか。言ってませんよ?その言い方だとまるで私が直接手を下しているかの様じゃないですか?!」

 

「…いや、事実じゃん。」

 

輝夜は《事実回りくどく言っているだけね?かなりエグいわ…》…ですか。両者が何を言っているのかよく判りませんね?

一応、選択肢は与えてますよ。煽る形ではありますがね。

 

 

「言っておきますけど、私が直接殺していませんし、なんなら、精神崩壊して、勝手に死んでいくだけなんですよ。……大人しく寝ていれば良いものを。」

 

「ねぇ。さとりってたまに本気なのか嘘なのか解らない殺意が籠った言葉を平然とぶちまけるわよね?」

 

いや、これは本気ですよ?あそこで降参するならしてほしいくらいですし、無益な戦いなんて私は求めていませんし、なんなら仲良く出来るなら仲良くしたいですよ。

今回はあっちから仕掛けて来ましたし自費は最低限なだけですよ。生きれるってだけで良いじゃないですか。

 

「…それに私は、二度と馬鹿なことが出来ない様に、精神を再起不能なる位に止めているんですよ??やるときは精神壊して殺すことだって可能なんです。それを私は再起不能にだけに収めているんです。この意味わかります?」

 

「え、えぇ。判るけど、そんな力説しなくていいわよ。……永琳。警戒しなくても大丈夫だから。こう見えても私の友人。そこそこ付き合った仲だから判るの。あれは、本気じゃない。決して私達を害しないから。」

 

「…姫が其処まで仰るのなら。」

 

「……で、これなら生命活動に支障をきたさない程度に留めているんですよ?これこそ、私の最低限の内の最低限。その慈悲なんです。聞いてます??」

 

「ねぇ、さとり。いつまでもそんな下らない話をする気?早くしないと、また月の兵士達来ちゃうよ?」

 

はっ!!

 

幻月の言葉で正気を取り戻しました。

反省反省。

 

 

 

さて、感動の再会と行きたいですが、今はそんなことよりも現状の把握ですね。

 

此処からが本番ですよ。

 

 

そう私は心に決めるのだった。

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