東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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019話 暑い夏と日常

 

暖かくなって寒くなってをほとんど変化なしに繰り返していく。妖怪であり基本的に寿命がないためだんだんと時間感覚が麻痺してきた。

ただ、夢幻姉妹に至っては自身が持つ能力で感覚は麻痺していないらしく、私が現在時刻と日付を聞くと姉妹共に殆んどズレなく正確に言ってくれるので正直助かっている。

 

知らない人に言うと、姉妹には時間関係の能力が備わっている。

姉の幻月には理を操る程度の能力が、妹の夢月には次元を操る程度の能力がある。

 

姉が持つ理を操る程度の能力は、主に規則性や常識、定義等を操る事ができる為、それらを少し応用することで現在の時間や日付が判るとか。

 

一方で夢月の方は次元を操る程度の能力である。姉とは大きく違い主に次元軸や時間軸、空間軸等の軸を操る事ができる。これを応用する事で今いる時間軸を調べ現在時刻や時期が詳細に判るとか。

 

ともかくこの二人以外は時間感覚が麻痺しており、数年が経過した事なのにそれを数日経ったと思い込んでいた事がしばしば。

 

そんな日々が続いて百年も経てば流石に姿が変わらない私達を見て妖怪だと気付くも、別に害を為す訳でもなく逆に仲良くしようとする妖怪には寛容な里の方針に幾度となく助けられた。

 

一応、妖怪に襲われたりしている人を助けたり、里に攻めてきた妖怪を追っ払ったりという程度にはやっておいた。

 

…やり過ぎると、天狗に睨まれるのでほどほどにではあるけれど。

 

…そんな感じで過ぎること百年、今年も蝉が五月蝿く鳴く季節がやってきた。

 

 

「お、お姉ちゃぁん……。暑いぃ~…」

 

 

「…天候に文句言っても無駄よ?それに今日で何回尋ねるのかしら…」

 

「そうは言ってもぉ~…あづいものはあづいのぉー…」

 

本日何度目になるだろうかこのやり取り。真昼間から部屋で脱力している妹を尻目に作業を続行している。

 

 

「…姉さん。…大丈夫ですか?…ほら、冷えた紅茶です」

 

「…あ、ありがとー…んくっ。んっ。……ぷはぁ~。ありがとう夢月」

 

「これくらいは当然です。…姉さん。取り敢えず、休んでいてください。交代で私がやりますね」

 

「…宜しく~」

 

幻月達は、新しく魔法を作るべく研究を重ねていた。その研究とは魔力を使用しなくても、念じるだけで誰でも簡単にその魔法が使える札みたいな物を作ろうとしているようで…一回使いきりタイプの消耗品である。今はその量産方法と効率に魔法の種類の三つを模索している最中である。

 

 

「あたいも暑いです…」

 

 

 

「貴方の場合は、猫に戻って水でも浴びればいいじゃないの」

 

 

「……私も水浴びたい」

 

 

「一人分の水は、流石に汲んでこないと無いわよ」

 

 

…ああぁ……とこいしの呻き声が聞こえる。

 

お燐もこいしも少しは我慢できないのだろうか。確かに今年の夏は普段と比べて暑いのだが…

 

まぁ、今作っているものが出来れば多少は楽にはなるはずですけど…。あ、氷が足りないや。

 

……まあいいか。

 

 

 

「ねえ、窓開けてもいい?」

 

 

「なら、コートを着なさい」

 

 

「えぇー…。だってあれ、暑苦しいんだもん」

 

 

一応、夏用に半袖のコートは作ってある。

ただし、あれらはサードアイを隠すことが最優先であり通気性が絶望的である。

 

まあ半袖にしてはなんとなくラフにしてはいるのだがここまで暑くなると嫌になる。私だって着たくはないのだが、着なければ私達を知らない人物に妖怪だと知られてしまう。

 

自分達の体調を取るのか、これからの事を考えて我慢するのか…私としては後者を望む。それはきっと幻月達も考えているのだろう。

 

 

…窓を閉めきってしまっている私にも責任の一端はあるのだが…今度風通用の窓とかも神綺さんと一緒に考えていきましょうか。

 

 

 

 

その後しばらくの合間、暑い暑いと文句が垂れ続けるのを聞きながら手元の作業はやめなかった。

 

途中、神綺さんの声やエリスのいちゃつこうとする音と声にそれを嫌がって抵抗する音と幻月の声、夢月が神綺さんの手伝いをしに行こうとする音と声がした。

 

 

気が付くと先程から文句を垂れ流していた声が一切聞こえなくなり、暫し静寂に包まれた。

 

 

 

少しすると、無言になった筈の部屋からガサガサと布が擦れる音が二つほど聞こえる。

 

何をやっているのかは気になる所だけれど、今はある作業の為に着けた火元の管理中なので手が離せなかった。

 

「幻月?いるかしら?」

 

「…ん~?なにぃ?」

 

と気だるそうに幻月と夢月とエリスの部屋から出てくる幻月。

 

 

「呼び出してすみません。…面倒なのは承知なのですけど、お燐達の様子を確認しに行ってくれませんか?」

 

「え~?!…めんど…。って言いたかったけど先に釘刺されちゃったし…はぁ、仕方ない。見に行ってあげるよ」

 

「すみません。宜しくお願いします」

 

「はいはい。いつもの付き合いだしね。何しているのかくらいは、確かめに行ってあげるよ」

 

と幻月はフラフラとしながらお燐達の様子を確認しに行った。

 

さて、幻月の報告がくるまえに早くこの作業を終わらせてしまいませんと…後で大変な事になりますね。

 

 

 

 

 

 

 

「……いや~こうすれば良かったね!」

 

 

「ですね…まあ、あたいは猫だから元の姿に戻れば多少は楽になるんですけど」

 

 

 

 

大体煮詰め終わったので火を消してしばらく冷ます。

 

…丁度向こうの確認を終えたようですね。

 

「さとりーただいま~」

 

「幻月。お帰り。…どうでしたか?向こうの様子は」

 

「…多分、私自身的には問題はないと思うよ?…でも」

 

「そうなのね。それなら良かった。丁度こっちもある程度作業が終わりました。あとは冷ますだけですので私もお燐達の様子を見にいきますね」

 

「ちょっと、見る人が違うとどう思うか…って、話聞いてないし…」

 

幻月が何か言いたげだが、多分許容範囲の判断でしょう。

 

そう思い、私は二人がいる部屋の様子を見るために襖を開ける。

 

開けた途端に台所の熱気が一気に流れていった。

 

「…………」

 

床に寝っ転がっているこいしと目が合う。同時に眩しい限りの笑顔を向けてきて……

 

即閉じした。

 

 

 

 

「ちょっと、ちょっと?!なんで閉めちゃうのさ!?」

 

私は溜め息を一つ吐いた後に私はお燐達に向き直る。

 

 

「あのねぇ…いくら暑いからって下着姿になっても良いって思っているの!?あと、お燐も注意しなさい!そして、幻月!貴方も!!」

 

 

「いいじゃんか?ねぇ?幻月」

 

「それを私に振られても困るんだけど…ま、家なんだし、良いとは思うよ」

 

 

良くない!良くない!!全然良くない!!!って言うか十何年前には幻月に注意したよね?!それが今度は貴方達とか…

 

 

幻月とは違って服を乱雑に脱ぎ捨てておらず律儀に畳んでおくのは誉めるけど、それ以外は殆どが幻月と同じ。やっていることが変質者と変わらない。

 

 

これが俗に言う教育に悪い真似って奴なのね。

 

 

「はぁ……仕方ありませんね。今、冷やした葛きり出しますからすぐに服を着なさい」

 

はーいと面倒くさそうな返事をして緑がかった銀髪がゴロゴロと揺れる。

 

まあ暑いので大目にみてあげますか。

 

私も汗くらいは拭かないとまずいですね。

 

 

「………こいし?」

 

「今度は何なの?お姉ちゃん」

 

「それ、私の服」

 

「知っているよ。だって汗掻いちゃって気持ち悪かったんだもん」

 

 

まあ、別に良いんですよ。サイズ的に同じくらいなのでね。

 

ただそれを着られると私の予備がなくなるんですけど……

 

 

そんな私の心情を悟ったのか幻月が近づいてくる。

 

「…まあまあ。妹なんだし大目にみようよ。面倒だとは思うけど同じ服を作れば良いんだし」

 

「…そうですね。仕方ありません。では幻月。冷やした葛きりを出すの手伝って下さい」

 

「そうだろうと思ってもうだしているよ」

 

流石幻月です。ではそろそろ私の分を…

 

「ん~!美味しいっ!!」

 

 

服の事を考えていたら先に食べられていた。

 

それにしても美味しそうに食べてますね。まさかお皿を二つも…?……ん?…ふた…つ?

 

 

物凄い嫌な予感が走る。いやいや、ちょっとまて。それはお燐が食べたやつって可能性もある。だから私の分もちゃんと……?!

 

 

希望を胸にお燐の方をちらりと見る。

 

当然ながらお皿を大事に抱えながらがっついている。

 

 

 

 

「………」

 

 

あれー?ちょっと待ってくださいよ!?じ、じゃあ私の分のお皿は?持ってきていた筈なんですが…

 

 

「…いや、私じゃないよ?!持ってきたのは私だけど、さとりの事を想っている私がそんな事すると思う?」

 

「…ですよね」

私は考えられる可能性として幻月を疑い目を向ける。

…も、やはりそんな薄情な真似が出来る訳がないと心の隅には思う気持ちがあった。

結果、その通りで幻月は犯人ではなかった。

 

考えられる可能性として一番濃厚なのは…。

 

「…こいし…それ…私の…」

 

 

「…ん?…んー。………んえっ!?」

 

…カランカランッ!

鳴り響く鉄製の音。

 

先程まで嬉しそうに食べていたこいしが、私の声を聞いて周りを見渡した。

その後、気が付いたら自分が持っているお皿の他にもう一つ空になったお皿があることに気付く。

 

それこそ驚きのあまり手に持っていたスプーンを落とす位に衝撃を受けた感じであった。

 

 

「……あ。あぁ………ご、ごめんなさい…」

 

 

気付くの遅すぎません!?というか無意識だったんですか?!

 

 

「………まあ、食べちゃったなら…良いです」

 

 

と、言ってももう戻ってきませんし…それに、こいしが喜んでくれたなら良いや

 

 

 

「…私の分、まだ食べてなかったけど…さとり。食べる?」

 

「……良いんですか?」

 

「うん。半分になるけど…」

 

「…構いません。食べられるだけ嬉しいですから」

 

 

幻月は自分が食べていない分の葛きりを切り分けて私の分の予定だった余りのお皿に盛り付ける。

ゆっくりと幻月は此方に歩み寄ってくる。

「…ほら、さとり。どうぞ」

 

「すみません」

 

幻月から手渡される半分になった葛きりを貰う。

 

 

「…はむ。…ん。冷たくて美味しい」

 

「そうですね。美味しいですね」

 

 

私はゆっくりと食べながらここまで暮らしてきた記憶を振り返る。

 

 

 

こいしとも暮らすようになってから100年。………流石にもうこいしも妖怪の体に慣れたわよね。

 

幻月が言うには半分妖怪らしくて半分は人間の血を引いているらしいわ。

だから、私の様に無理でもしたら普通に死んでしまう可能性だってある。

 

それこそ最初の数年は本当に色々とあった。

 

こいしの中で妖怪の気と人間の気が噛み合わずずっと情緒不安定だった。

 

それに拍車をかけたのは、中途半端に受け持った私の記憶の一部だ。特に前世の記憶。

 

どうやら、妖怪化した時に記憶や感覚の一部がこいしに譲渡されたようだ。そのおかげで余計に妖と人の精神が対立してしまったのだ。

 

この辺り誤算だったなあと思う。

 

夜中に何度も呻いていたし苦しそうだったのを見るとほんとこっちまで苦しかった。その時、幻月が言った言葉はよく覚えている。

 

 

当時、何度も苦しむ様子のこいしを見て何を思ったのか私にこんな話を持ち出してきた。

 

 

 

……私から生まれた夢月も実際そうだったんだけど…どうやらその体に馴染む程、元から受け継いだ記憶に苦しめられる事になるみたいでね?

 

幻月は目をつむり語るように口を開く。

 

…そして、ここから私の憶測の話になっちゃうけど重要だと思うからちゃんときいてね。

 

私は幻月の事を見る。幻月の目を見たことで反応し、軽い笑みを返した後、話を続けた。

 

…この世界には元々本来の歴史みたいな…運命とか秩序とか理と呼べるようなモノがあるみたいでさ?

 

…その本来の歴史とは全く違う方法で生まれたモノや繋がり等があるとそれに対してそれを本来の歴史に戻そうと裏で働くみたいなんだよね。

…で、その修正がその歴史に対して負担を掛けて戻そうとするみたい。それが歪みとなって色々な形となって現れるらしいんだよ。

 

 

…本来の歴史?それに負担とは??

 

 

私は幻月の話に首を傾げて質問した。

 

 

 

…うーん。簡単には説明できないけど…例に出すなら私のような存在かな。…元々は双子で生まれているのが本来の歴史なんだけど、貴方と出会った時には既に私だけが生まれている状態だった。

 

…例えば貴方の妹のこいし。貴方とあの娘の関係性と歴史は色々とあるようだけど、多いのが最初から妖怪であって血の繋がっている純粋な姉妹なのが本来の歴史な筈。

 

…なのに、貴方とあの娘の関係性は後天的に産み出された元人間の妖怪。つまりは半人半妖の存在であり貴方の記憶の一部を引き継いだもう一人の貴方のような存在。

 

 

私は幻月の話になんとなくわかった気がして頷いた。

 

……成る程、つまりは本来の歴史とは即ち貴方は双子で生まれている筈であり、私はこいしと純粋な血を引く存在であるのが本来の歴史である。それがいつの間にか本来の歴史とはかけ離れた歴史に今なりつつある。って事ですか?

 

私の返答にハハハっと幻月は笑って返し、よく理解出来たね。と一言。そうして、幻月は話を戻した。

 

…そんな所だね。そして、話を戻すけど…現在、こいしちゃんの身に起きている事は恐らく前者。その体に馴染みつつある。

 

…でも、本来の歴史とは全く違う訳で…それを修正するべく妖怪の気が本来よりももっと歪になってしまっているみたい。それが人間の気と上手く馴染めていない一番の原因っぽいね。

 

と解説する幻月。

 

そ、そんな。…なら、一体どうしたら…

 

狼狽える私。そんな私を前に幻月は私の質問には答えず首を横にゆっくりと動かした。

 

少し間を開けて口を開いた。

 

……どうしようもないね。出来ることはこいしちゃんが上手く馴染める様に応援する事だけだよ。それこそお姉ちゃんでしょ?…近くにいって見守ってあげるだけでも効果あると思うよ。

 

 

…そうですね。わかりました。

 

 

そう言って私は苦しんでいるこいしの傍へ。

 

 

こればかりはこいし自身でしか解決することは出来ないのだ。…こいしの負担を少しでも減らそうと側で見守ったり、手を握ったりすることだけしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

どちらにしろ、こうして元気に過ごせているのだし…まあいいか。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、さとり以上に自由奔放になったねぇ」

 

 

「……私って、そこまで自由奔放でしたっけ?」

 

「ほら、自覚無し。私からみても自由奔放だと思うよ。…私と比べるならまだマシな方だとは思うけど」

 

「貴女がそれを言いますか?!」

 

 

 

幻月に対して思い切り反論する。貴方はこいし以上に自由奔放でしょう??私はそんなに気儘に行動した事なんて…無い筈です。

 

…お燐にもそう言われるとは…ほんと心外です。

思い当たる節がない訳では無いのですが…最近はおとなしくしてますよ?

 

 

「幻月お姉ちゃんの言う通り、自由奔放だし結構トラブルメーカーだよね?お姉ちゃんってさ」

 

 

「え…。ひ、ひどくないですか?」

 

 

 

こいしの一言って幻月よりもかなり心に刺さるのですけど…いじけちゃいますよ?いじけちゃっていいんですか?

 

 

 

なんとなくいじけたアピールで三人に背を向け魔導書を書き始める。

 

いつもの流れだったりするしもう三人とも分かっているのでなにも言ってはこない。

 

 

また、神綺さんとエリスは私が魔導書を書いているのをみてたまにアドバイスをしたりしてくれる。

幻月と夢月についても以下同文ではあるが、私の魔導書の質を助言してくれる。流石、魔界及び殺伐とした世界で暮らしてきた実績を持つ人物達だ。

(原作の東方の旧作では弾幕勝負=殺し合いの世界だったらしいので)

 

 

 

 

魔導書と言っても書いてあるのは殆ど妖力を元にしたヤツだ。幻月達が使える本格的な魔導書の作り方や神綺達が使える本来の魔導書を使い方とは勝手が違うものだ。

私自身は、魔力は使えないし一回習おうとして欧州まで行こうとしたが行き来が面倒な為、神綺さんからの紹介でカナさんの能力を使わせてもらい、頑張って通った。

ただ、その頑張りに応じた成果は得られなかった。何故なら私には魔法のセンスが無いらしく、無駄に終わった。

しかしながらこいしにはそのセンスがあるらしく、それを鍛えられれば十分に使えると分かり、一応基本概念みたいなモノを覚えて帰ってきたのだった。

 

 

その事を知った神綺さんとエリスは魔法の基本概念の詳細を優しく丁寧に教えてくれた。

そして、幻月と夢月は魔法の基本属性と相性、霊力と魔力、そして妖力、それぞれへの変換方法を教えてくれた。

 

 

だが、先程も言ったように私には魔法のセンスが無く魔法の概念やら基本属性を教えられた所で使えるわけがない。ならどうするか…それらを書き記す為の本。つまりは魔導書を作れば良いのではないか?

そういった結論を踏まえ、私は今、魔導書を作っている。

 

 

 

魔法の産みの親とされる神綺さんに魔力と霊力に妖力と神力の扱いが非常に上手いである幻月の二人からこいしの事について教えて貰った。

それによると私とは違って元人間な事もあり霊力と魔力の両方を一応扱えるのだとか。

 

ただし、使うのはいいが使うまでの手順(プロセス)が上手くいかずに失敗ばかりで使えないようだった。

 

 

そこで登場するのが魔導書だ。

 

 

 

魔導書と言うのは簡単にいって魔術を使う為の手順(プロセス)が予め組み込まれた紙であり、それを駆使することで簡単に魔術が扱えるという代物である。

また仕組み自体は簡単であり、あらかじめ紙に発動するための手順(プロセス)を入れておけば後はそこへ魔力を流し込むだけである。

ただ、知っての通り魔導書は一枚の紙切れだけではなく本みたいに何ページもあるモノである。即ち使いたい場合は該当する魔法のページを開いたり、それを詠唱したりと、使用するまでのタイムラグが大きくそこまで万能というわけではない。

 

なので、大抵の魔法使いはこれらのプロセスを暗唱するかあらかじめ体に仕込んでいたりする。別にそこまで本格的になる必要はないし、こいし自身も面倒そうだったのでやらないが……

 

 

 

だったら、私が魔導書を書くんじゃなくこいしが書けばいいじゃん。ってなると思うがそういう訳にもいかなかった。

 

こいしが作ってもうまく発動しないのだ。

 

まあ本人が起動プロセス自体を作れないと言っているのに紙にそのプロセスを書くなんて無理な話なのだが……

 

 

エリスと夢月に相談し、色々と試した結果、私の書いたやつが一番使い物になるらしいのでそれ以来私が魔導書を書くことになったのだ。

幻月達も暇な時に私でも使えるような魔導書制作をおこなっているらしく、今日みたいな日には幻月と夢月が中心となって作っている。

 

 

 

こいしが後ろから近付いてくる。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん。今度はどんな魔法を書いているの?」

 

「貴方が前に言っていた広範囲攻撃型の物と高速回復のヤツをいくつかね」

 

 

 

「そういえばずっと思っていたのですが、さとりって魔力が無いのにどうして魔導書を書けるのですか?」

 

お燐からそんな質問が飛んでくる。

 

「……魔導書は一見、魔力を使用して手順(プロセス)を書かないと出来ないものだと思いがちよね?…でも実際はそうじゃないの。魔力が無くても魔法を使うための起動式の法則を覚えていれば、使うことは出来なくともそれを組み込むことだけは出来るの」

 

 

と夢月が私の言いたいことを全て分かりやすくまとめて話してくれる。

 

「へぇ~」

 

 

お燐の声が響く。

今の説明でお燐は納得したようだ。私自身詳しい解説は苦手だがやろうと思えば出来る。…ただまとめるとなると難しいかもしれないが。

 

 

また、魔術使いの中でも高度な魔術使いになるとその場ですぐに起動式を組み速攻で打つことが出来るのだとか。

 

 

「お姉ちゃん。いつも使いやすくて効率がいいやつをすぐに作ってくれるよね。そういうところがすごいと思うよ」

 

 

こいしから称賛の声がする。

ふと後ろを振り返るとこいしが笑顔でこちらに視線を向ける。

 

 

「そ、そうですか。…ふふ。ありがとう、こいし」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

そんな感じで炎天下な昼間が過ぎ去っていく。日が傾いてくれれば涼しくなってくれると思うのですけどね。

 

それにしても甘いのもっと食べたかったなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ~?さとり?いくらなんでも行儀が悪いよ~?」

 

「仕方ないじゃないですか!あの時、食べられたんですよ!?こうなるのも必然的なんですって!」

 

「いや、私のあげたじゃん…」

 

「半分だけですよね?…それだけじゃ埋められませんって」

 

「欲張りだなぁ…」

 

「欲張りで結構です!」

 

 

「…全く。話を聞いていれば…。それで貴方は半分しか食べられなかった事で欲求不満に負けてしまい、甘いもの欲しさに私の所にきたんですか?」

 

 

呆れたと言わんばかりの視線を向けてくる映姫と同じく付き添いで来てみっともない姿を見せられ、溜め息混じりで駄目だこりゃと呟く幻月を他所に、行儀悪くお菓子を頬張った。

 

 

あの後、早めに魔導書制作を切り上げ、映姫さんの所で愚痴ったり愚痴られたりしているところだ。勿論、幻月は私が強制的に連れてきたんですが、なにか文句でも?

 

 

そんな下らないことはさておき、今のこの状況の説明になりますが、あの地蔵を綺麗にして以降、神綺さんの協力の元、隣に休憩できる屋根付きの建物やなんやらを設置しておいて自然と、妖怪や人の流れを作ったりしている為か、自分で言うのもなんですけど…良好な仲である。

特に神綺さんとは、愚痴だけではなく色々な悩みの相談をされているようだ。…ただ、この関係も閻魔になったら逆転しそうで怖い。

 

そして、私との関係は少なくとも愚痴を聞く程度には良好だと思う。

 

 

「それもありますけど、別の用もありましてね。だから、幻月も連れてきたんです。…あ、食べますか?」

 

 

「だから、珍しく一緒に居たのですか…じゃなくて、それは私のですから食べますかと言われる所以は…じゃなく……まぁ、良いです。この季節は足が早いですから、消費してくれるなら消費しちゃってください」

 

 

色々と突っ込みたい所を抑えて映姫さんは首を横にふる。

 

 

霊体に近い本人はお供え物をされても食べられないのでこうして人が来る度に渡しているだとか。

 

 

「そうですか…幻月は食べます?」

 

「…ん。じゃ、遠慮なく」

 

幻月は私の差し出したお菓子を遠慮がちながらも貰い静かに食べ始める。

 

 

「…前々から思っていましたけど食事量と一日の消費量が釣り合ってないんじゃないですか?」

 

「何を唐突に……」

 

映姫さんがいきなりそんな事を尋ねてくる。

 

「………」

 

「…相方である幻月も微かながらもそう思っていたようですね?…私も言わせて貰うなら前に会ったときよりはだいぶ痩せた気がしますが…?」

 

 

そう言われるとなにも言い返せない。

 

幻月は最近、食事の時に私に対して時折見たりすると思っていましたし…映姫さんがわさわざ嘘をつくわけないし、ついたとしてもそんなしょうもない嘘をつく人ではないのでこれはもう確定だ。

 

 

「……最近、胃が弱りましてね…」

 

 

「全く。体には気を付けないとダメですよ?分かっているとは思いますけど、あまり無茶をし過ぎて倒れてしまっては周りに迷惑をかけるだけなんですから」

 

 

「わかっていますよ。だからこうして食べてるんじゃないですか」

 

「それは…食べている事に含まれていないんじゃないの…?」

 

 

「……体を動かすだけならこれでも大丈夫な筈ですし、心配しないでください」

 

「…そう言われても…ねえ?」

 

 

と幻月から心配そうな目で見られる。

これに至ってはどうしようもないと思うので無視することにする。

 

 

まあでも幻月の言う通り、本当なら牛肉やら豚肉とかあるならそれを使って焼肉でもして栄養バランスを整えたい所ではありますけど、まだ食文化として存在しないのでその肉自体が手に入らないんですよね…。

 

…仕方ないと割りきるしかないですよね。

 

 

 

 

 

出されたお菓子の最後の一つを口にいれる。

 

 

 

「…さて、そろそろ私達は行きますね?」

 

と私は立ち上がった。幻月はやっとかと言う顔をした後にゆっくりと立ち上がる。

「……本当にただ食べに来ただけだったんですか…」

 

 

「…映姫さん。さとりの事ですし深く考えない方が疲れないですよ…」

 

「……。それもそうですね…」

 

幻月が何やら映姫さんと話し始めた。

 

 

「………?…どうしました?何かありましたか?」

 

「…いえ…いいです」

 

「ううん。なんでも~」

 

 

 

 

なんだかよく分かりません。二人の話には別に気にすることなんて無いですし…ほっときましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が暮れ始め多少暑さも和らいできた。陽の光が辺りを赤く染めあたかも異次元に迷い混んだかのような感覚に陥る。

 

山道を歩くごとに聞こえているひぐらしの鳴き声と荷物を持った私達二人の足音が響く。

 

この時間は既に人間に取っては危険なもの。幻月から聞いた話に寄ればこの時間帯こそ逢魔が時、またの名を黄昏時とも言い換えられるらしく、私達…人の者ならざる者達が跋扈し始める時間だとか。なのでこの時間帯は私達に取ってはなんでもない時間であり安らげる時間帯でもあるのだ。

 

 

 

残っている熱気がコートのなかにまとわりつき余計に温度を上げる。

 

 

 

本当は飛んでいくのが早くて確実なのだが、こうも暑いと飛ぶ気も失せてしまう。だから、木下の方を歩いて通った方涼しくて楽である。…時間はかかってしまうが。

 

 

 

それに夏の山というのもいつ見ても飽きない。青々と茂った草木。花や紅葉とはまた違った色合いと趣を見せてくれてそれらが夕日と相まって幻想的になる。

 

そんな景色に見とれながらものんじりと足を進める。

 

 

 

夏に入ってから久しぶりに天狗の里に顔を出す事になった。

 

原因は使い魔の鴉がひょこっと軒先に現れたことからだ。詳細はわからないがこんな私を呼び出すと言うことはどこかの鬼達か天狗くらい。大体のことは察しがつきそうなものだ。尚、幻月は私の付き添いかつ何かあったときの身代わりだ。幻月も呼ばれてないのに連れ出される時点で多分理解しているだろう。

 

 

 

爽やかな風が一転。急に強い風に切り替わった。

 

同時に目の前に二人の犬耳…違った。白狼天狗が降り立つ。

 

「………っ!?」

 

「ちっ。我等でも予測できない事が起ころうとは…」

 

と白狼天狗達が独り言を発した瞬間、誰かに似たような一迅の業風が吹き荒れる。

 

「…あら?!もしかしなくても…噂のさとり妖怪ちゃんなんじゃないのっ!?」

 

と妙に甲高い声で此方を見つけて降り立ったのはなんと鴉天狗。…それも良く知っているようで知らない人物であった。

 

「…?私の事をご存じで?」

 

「えぇ。あ、これを言えば解るかしら?…どうも~♪清く正しい射命丸でぇすっ♪」

 

…その言葉には見覚えがあった。確か射命丸さんが使っていて母親からの受け売りとされているもの…と言うことは…?!

 

 

「…へっ!?も、もしかしなくても、射命丸文さんのお母さんじゃないのっ!?」

 

「あらあら?もしかして、貴方が文ちゃんの言っていた気さくで優しい悪魔の娘?確か幻月ちゃんね?」

 

 

「………」

 

あれが文のお母さん。射命丸紋さん。

 

立ち振舞いは文と全く変わらず気さくそうである。…も、違うのはその雰囲気。

ただ者ではないとオーラに加えてあの楓さんと同じ強さの気品が取れる。流石は楓さんの腐れ縁である。

一応姿を伝えると、姿は文を大人にしたような感じであり、髪はロング。頭には鴉帽を被り、首には愛用しているだろう紐付きカメラがぶら下げてある。

左手には鴉扇子を持ち、後ろ腰には片手剣が右手で抜ける様にセットされている。

色は黒く紋さんなりのアレンジと思われる。

鴉天狗らしさに加えて、白狼天狗らしい威圧も放てる極めて珍しい鴉天狗だと私は思った瞬間であった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

二つ名 鴉天狗の中でも最も珍しい剣術使い

名前 射命丸紋(しゃめいまるあや)

能力 業風と剣術を扱える程度の能力

 

特殊能力 無敵之受流止(インビンジブルパリィ)

・相手の攻撃やら自分に向かってくるもの全てを完全に見切り受け流して相手に返したり無効化する。また、これら全て本人は『無意識』にて受け流す為…いつしかこれが『無敵之受流止』と言う名前になったと言う。最大の欠点は防御ではない為、手数で押されると対応しきれず食らってしまう事である。

※昔の名前は『完璧之受流止(パーフェクションパリィ)』だったとか。

 

 

紋のステータス

 

耐久力 SS+

筋力 SSS

防御力 SS

魔力 S-

速力 Unknown

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

二つ名 伝統と家系を保守する白狼天狗

名前 犬走楓(いぬばしりかえで)

能力 一千里を見通す程度の能力

特殊能力 究極的反射之防御(マスターリフレクションガード)

・犬走楓が持ちうる防御こそ最大の攻撃を示す特殊能力。相手の攻撃を盾で受け流し無効化する上に受けた攻撃を数千倍にして反射するリフレクションや相手の直接攻撃を防御した後に最大百倍にして相手へとカウンターのシールドバニッシュを食らわせる事が可能。最大の欠点は受け流しではない為、多少は貫通してしまう事である事と守れる範囲外からの攻撃は食らってしまう事である。

 

 

楓のステータス

 

耐久力 SSS+

筋力 SS+

防御力 SSS

魔力 SS

速力 SSS-

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「…へぇ。今日は久しぶりに天狗の里へ顔を出すのね?…まぁ、嫌じゃなければ定期的に来てくれてもいいのよ?」

 

「いえ、そうは言ってもこちらの都合がありますので…」

 

「…あらら、冗談よ。フフフ」

 

「…紋さん。たまたま会った私から差し入れです」

 

「まぁ、嬉しいっ♪ありがとうね?幻月ちゃん」

 

「ううん。お礼なんて、この前文ちゃんから色々と教えて貰いましたから…そのお礼だと思っていただければと」

 

「フフフ。じゃ、遠慮なく貰っちゃうわね。…あらら、そろそろ行かなくちゃ…またね?お二人ともっ♪」

 

……ビュンっ!!!

 

 

瞬く間にその場から消え去る紋さん。

気がつけば紋さんはもうあんなに遠くに……

 

おっと。私からも白狼天狗さんに差し入れでもしなければ…。

 

「…遅れましたが、お二人に差し入れです」

 

荷物を白狼天狗に渡す。一応、中身は昼間に作っておいた葛切りだ。

 

ほんと、なんで葛切りはこの時代に無いんでしょうか?……こんなに美味しいのに…ねえ?

 

 

 

「いつもありがとうございます」

 

「いえいえ、暑い中も頑張っているんですからね」

 

 

本当にそうである。いくら三交代制とは言え暑い中での警戒は想像以上に体力を使う。それに剣と盾と短刀と言った兵装の重量もあるのだ。私なら絶対にやりたくない仕事である。

 

 

「…そう言えば、聞こうと、思っていたがあの紋とはどのような関係だ?」

 

と白狼天狗の一人が訊ねてくる。

 

「そうですね…簡単にいってしまえば、そのお子さんと関わってから知り合った関係でして…あの場で直接姿を見たのは初めてではあるんです」

 

「そうか。いや…済まない。我等、白狼天狗と鴉天狗の関係的に我等が下で鴉天狗が上なのだ」

 

「あのように突然やって来ては難癖つける奴もいてな…。しかし、あの紋だけはそれを重く受け止めており、たまにだがこうして我等の様子を見に来るのだ」

 

「感謝はしている。だが、その鴉天狗の立場が時折羨ましく思ってしまい、つい敵対的な目で見てしまうのだ…そこだけは済まない」

 

先程、紋さんが来た時に白狼天狗二人の態度が一瞬だが変わったのを確認していたのだが…まさか、こういう一面が合ったとは…

 

「そう言えば、今日は誰かに呼ばれたんですか?」

 

と白狼天狗の一人が訊ねてくる。

 

「ええ。まぁ…ちょっと呼ばれました」

 

 

妖怪の山の住民ですらない私達がここに来る理由なんてあまりない。

幻月なんて私に強制的に連れてこられた反面ここに来ること自体あり得ないのだ。

そんな私だって人里(ようかいのさと)での生活で満足しているのでこっちに顔を出すことなんて殆んどない。せいぜい祭りか宴会の時に呼ばれる位だろう。

 

それなのに、催しもなんもない日にひょっこりと私達が来てはそりゃ興味が沸くものだ。

先程も言ったが、幻月なんてここへ来たら色々と問題なのだ。…しかし、今回ばかりはしょうがない。なんたって何かありそうな予感が私の中でしているのだから。

 

 

と、考え事をしていたら唐突に目の前が暗くなる。

 

隣にいた白狼天狗も状況の変化に思わず戦闘態勢に入った。

 

そんな白狼天狗を見て幻月は一言。

「あ~。大丈夫。大丈夫だよ。だってこれ、さとりの友人だもん。敵じゃないから安心してよ」

 

「なに?…確かに冷静になってみれば殺気は感じないが…」

 

当然ながら私もなにもしない。大体、殺気がないのは感覚でわかっていた。更に言えばこういうことが出来るのは私の知る限り一人しか居ないわけで。

 

「あ、さとりじゃないかー」

 

「ルーミア~?気持ちはわからなくもないけど、せめて一声かけてから近寄ってよ…」

 

「お、幻月も一緒なのか~?珍しいなー」

 

「…ま、今日は一日さとりの護衛ってことだね」

 

「そーなのかー」

 

白狼天狗達は幻月が親しく会話しているのを見て剣を鞘へとしまった。

 

一方で幻月と会話しているうちに闇がふわふわと晴れていき金髪の女性が出てきた。

 

「ルーミアさん…急に。ほんと趣味悪くないですか?」

 

「趣味が悪いとは失礼なー。私はこれでも常闇の妖怪よー?常闇妖怪は闇がないと常闇とは呼べなくなっちゃうのだ」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

二つ名 常闇の妖怪

名前 ルーミア(大人)

能力 闇を操る程度の能力

特殊能力 日照耐性

・日が出ている時間帯でも行動ができる。また、日属性と火属性に対して非常に強くなり、例え闇を纏わなくてもデメリット無しで日中に行動が出来る。

 

特殊能力2 闇夜蹂躙(ミッドナイトスクランブル)

・太陽が出ていない時や太陽が当たらない場所での身体能力が上昇する。また、上昇する効果量は太陽の光

が無いの必須条件として自分の周りの明るさに比例して上昇する(最大二倍)。特に太陽が出ていない…または、当たらない場所な上、月が出ていない夜の時の様に真っ暗な場合は、全ての身体能力が観測出来ない数値に跳ね上がる。更に当人に対して害するモノがほぼ全て無効になり、自己再生能力が飛躍的に上昇し、仮に傷をつけられても瞬時に再生する様になる。…しかし、この効果は自分の周りだけでなく場所一帯が真っ暗にならないと発動しない効果である為、概ねの効果は最初に記述した身体能力上昇効果のみであり、下の効果は発動する機会は滅多にないとか。

 

 

ルーミアのステータス

 

通常時

 

耐久力 SS-

筋力 SS

防御力 S+

魔力 SS+

速力 A+

 

 

特殊能力効果量最大値時

 

耐久力 SSS

筋力 SSS+

防御力 SSS-

魔力 SSS++

速力 SS-

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ま、まぁ、ルーミアさんの言うことも一理あるといいますか……

 

 

「それに、ワンちゃんがいたから脅かして見たかったのだー!」

 

 

「おい!!誰が犬だっ!私は白狼だ!」

 

「聞いている人が細かいと貴女だけ訂正を求めている様に聞こえるけどね…」

 

「…そういうつもりで言った訳じゃない!聞いていればわかるだろう!」

 

「…わかっていますよ~。はいはい」

 

「くぅ……」

 

白狼天狗の一人が声を荒上げるも、相手が幻月だと言うこともあって、渋々引き下がった。本当は怒りたいのだろうな…あ、因みに白狼天狗達は幻月の冗談の事をわかっているので変に問い詰めたりはしない。ただ、言い返せないのには不服なようだが…

 

それにしても、ルーミアさんも幻月も…なんで相手を怒らせるようなことばかり言うんでしょう…?

 

後、ワンちゃんはダメでしょワンちゃんは。…いや、せめて狼って言って上げてほしいと心のなかで思いはしたがどちらにせよ怒られそうなのでやめた。

 

 

 

先を急ぎたいのでルーミアさんとはここでお別れ。

ルーミアさんは去り際に一言ボソっと言った。

 

まあまあ、楽しめたわー。じゃあねーさとりに幻月、そして、ワンちゃん達~

 

 

…なんで最後の最後まで煽るんでしょうかねぇ…。

 

その時ふと思った。

 

ルーミアさんは普段はどこらへんに住んでいるんでしょうか。

 

気にはなりますが、今は目的を果たすのを優先しましょう。

 

最後まで不思議でしたね…

 

 

 

 

 

 

最後の瞬間まで犬と言われてご機嫌斜めなのか、一緒についてきてくれる白狼天狗は怒りのオーラをずっと出していた。

 

 

 

 

結局は私が里に着くまで始終ご機嫌斜めだった。

 

 

 

 

「よっ!さとり。此処へ来るなんて珍しいな。何かあったのか?」

 

「今日は幻月ちゃんもいるのか…珍しいね?どうしたんだい?」

 

「あ、さとりさん。こんにちはー。ねぇねぇ、後ろの悪魔の人とはどういう関係なんですか?」

 

「あー!幻月さん!私ね?他の子達と一緒に遊んでいる所見ちゃったの。だから、私も構って構って~♪」

 

 

里に入ってすぐに、いろんな人達に声を掛けられる。

 

文さんの新聞に記事が載ってから私達二人の知名度が一気に上がった。

 

 

それ自体は別に気にすることではないが…私達がなにかをしたって訳もないのですけどね。

 

あんまり気にしないようにしましょうか。

いわゆるこれは、隣人程度の人気って感覚だと思いますが。

 

 

 

……いえ、訂正しましょう。隣人ですらない気がしますので噂の中心人物程度の人気って所でしょう。

 

 

それにしても私を呼んだのは誰なんでしょうかね?

 

ここまで来たなら姿くらい見せてくださいよ…。

 

 

「……多分、貴方だとは思うけど…。此処までさとりを来させておいて高みの見物なんて、趣味が悪いと思わないの?…ねぇ、萃香?」

 

 

隣に居た幻月が立ち止まり、首を少し捻って後ろを振り向きながら無に向かって話しかける。

それをみた私は、此処まで来るのに微かに気配がしていたのが既にわかっていた為、ため息を一つつく。

 

「…目的は私なのでしょうが、残念ながら私は最初から既に気付いていますよ。…この時間が惜しいので出るなら早く出てきて下さい」

 

 

幻月が発した言葉の内、萃香という単語に一瞬だけ周りがざわつく。

 

「なんだ…。もう気付いていたのか。流石、さとり達だと褒めるべきかな?」

 

「…少なくとも私はいりませんし、この手の脅かし方はもう慣れました」

 

「ちょっと、冗談でしょ?萃香がそんなこと言うなんてさ」

 

「アハハッ!この冗談も通用しないなんてねえ」

 

 

 

声の主は呆れ笑いをする。

直後、真後ろに霧のようなものが集まっていき、やがて一人の少女の形をとった。

 

鬼の四天王が現れたことにより周りが怖気つく。

 

そこまで恐ろしい存在なんですかね…?私にはあまりピンとこないんですけど…

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

二つ名 妖怪の山の四天王

名前 伊吹 萃香

能力 粗と密を操る程度の能力

特殊能力 鬼神王

・常時身体能力が三倍化。更に戦闘時間が長ければ長いほど身体能力が倍々化する。

特殊能力2 酒豪体質

・常に一定量の酒を飲み続けないといけない。…が、身体能力が常に二倍化。及び体の再生能力が五倍化し、酔いの上限が固定され一定以上は酔わなくなる。極めて有能な効果ではあるが、一方で酒を飲まない日が続くと身体能力が最大八割減衰し、再生能力が通常の半分となる。また、先の記述した効果によって特殊能力である鬼神王の効果が無効化される。

 

萃香のステータス

 

耐久力 SSS+

筋力 Unknown

防御力 SSS

魔力 SS+

速力 SSS

 

酒豪体質のマイナス効果値最大時のステータス

 

耐久力 S-

筋力 A-

防御力 C

魔力 E+

速力 B+

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「それで、私を呼んでどうしたんですか?」

 

「正確に言えよ。ま、本来ならさとりだけ呼んだつもりなんだが…どうせ、何かあると踏んで護衛役として一緒にきてもらった感じなんだろ?どちらにせよ…丁度良い。…少し、飲みたくなったから私に付き合ってよ。良いだろ?」

 

 

 

 

いつもの萃香さんらしくもない。

覇気が殆んど感じられない上に、表情がどこか曇っている。ただ、周りに感づかれない様に空元気で振る舞っているようで余計に違和感が凄い。

 

まあ、いつもの私なら誘いを断りますけど、こんな萃香さんは見ていられないですし…まぁ良いでしょう。

 

 

 

「……良いですよ。…さて、どこて飲みましょうか?」

 

個人的な相談で萃香さんが私を頼ってくるなんて珍しい。

幻月の方を見ると、また、面倒事なの?はぁ、嫌だなぁ…隙を見て逃げちゃおうかなぁ…という顔をしていたので私は黙って幻月の手を繋いで逃げられなくする。

 

「あっ!ちょっ、嫌なんだけどぉ……」

 

「今日は一日護衛役をするんでしょう?取り消しませんよ?」

 

「…うえぇぇぇぇ~!」

 

幻月は嘆きながら渋々私に従った。

 

 

因みに、周りにいた天狗達は勝負や宴会等の騒ぎが起こらないと知るや否やだんだんと日常の風景に戻っていったのだった。

 

 

 

鬼が恐れられている理由ってやっぱり酒と勝負だったんですね。

 

 

 

そんなことを考えながら、嫌がっている幻月を引きずり歩いていく。

 

 

さて、どんな事が飛び出すんでしょうかね?

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