東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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020話 酒場と新たな出会い

 

萃香に連れられて訪れたのは居酒屋のような建物。

 

営業中の看板以外は上げられておらず、なんて名前の店なのかすらわからない。

 

 

まあみんな知っているから今更店の名前なんて掲げなくても良いって良いだろう。まあ私としてはこの店の名前がなんであろうとどうでもいいようなことです。

 

幻月はこの店へときた事があるみたく、途中でこの店で飲むってわかった途端、『はぁ、面倒だし本当は嫌だけど付き合って上げる』と言って率先して歩き始めたのだ。

 

萃香さんは、『おうおう、やっぱり誘って正解だったよ。じゃ、ちょっと待ってな?』と言って萃香さんは店の暖簾をくぐり中で店員相手になにやら話をし始める。こういう場合どうしたらいいかわからない私は残っている幻月と外で話し始める。

 

 

「ねぇ、さとりさ…もう既になにかわかっているんでしょ?」

 

「…?な、なにがですか?」

 

「鈍いな…もう。萃香の事だよ。本来は萃香の誘いを断る癖に今回はやけに従順だから…なにかわかった感じなのかな~って」 

 

「私は先読みの達人かなにかですか?!まぁ、なんと言いますか…。今回の萃香さんの表情がいつもと違って曇っていたのが気になったものでして…その理由が聞ければと」

 

「成る程ね~」

 

 

幻月は納得した表情を浮かべる。

この後も幻月の他愛のない雑談をして時間が過ぎていく。暫くすると萃香さんが店から出てきて手招きをする。入れという合図なのだろう。

 

幻月は私よりも先に入る。

私も続けて暖簾をくぐった。

 

 

鬼の四天王だろうが最恐の悪魔だろうが、悟り妖怪だろうが全然関係ない。そんな雰囲気をひしひしと感じる独特な空間だった。

 

気を抜けば精神が流されてしまいそうな喧騒の中を萃香さんに連れられて進む。

 

 

そのまま端っこの席に案内され、椅子に座るように促される。

 

 

 

 

 

「わかってはいましたが…私相手にお酒ですか…」

 

 

「良いだろう?…だって酒がなければ始まんねぇからなあ…。幻月はどうする?」

 

「う~ん。そうだなぁ…じゃ、無難に串焼きと…桜花爛漫(おうからんまん)を」

 

「さとりはどうする?あ、お代はいいぞ。今回は全部私のおごりだ。気にしなくてもいいからな?」

 

何を始める気なんだか…もう、勝負なら散々やったじゃないですか…。

 

「おーい?さとり。考え事してないで、なにが良いんだ?」

 

と萃香さんの声にハッと我にかえる。

 

「……あ。えと、すみません。考え事をしてまして話を聞いてなかったです。もう一回…大丈夫でしょうか?」

 

「…すまんすまん。えーと?さとり。今回のこの店のお代は全部私のおごりなんだ。遠慮なく頼めって話だ。んでだ、なに頼む?」

 

「えーと…申し訳ないですけど、とりあえずお冷で大丈夫です」

 

「…私の奢りだってのにか?」

 

「いえいえ、その気持ちは嬉しいんです。でも、今は食欲かなくてですね…」

 

「ふーん。そうかい。なら、無理には勧めんな。気が変わったら遠慮なく言えよ?…おーい、美宵。注文決まったぞ~!」

 

 

 

「ハイハ~イ!萃香さんですね~?今、行きますので少々お待ちを~!」

 

 

と、萃香さんが一人の店員の名前を口にする。

すると甲高い声が響き渡る。

 

 

「えーと、今のは?」

 

「ん?ああ、美宵だよ。この店の店主にして人気の高い店員の一人さ。私とはまだ日は浅いが、この店に通っている常連客として毎日通っている、そんな仲なだけなのさ」

 

 

 

 

私に萃香さんと先程話した店員の関係性を説明してくれる。

 

 

少しすると先程、萃香さんが説明した店員…美宵さんがやってくる。

 

 

「お待たせしました~。萃香さん。ご注文をお伺いしま…。今日は、お連れ様もいらっしゃるんですね?失礼しました」

 

「んなことは後からでいいって。…なんて思ったけど、一応紹介するよ。こいつが先程の声の主。私が贔屓にしているこの店の店主、鯨呑亭の看板娘の奥野田美宵(おくのだみよい)だ」

 

 

「え~と、はい。さっき萃香さんに紹介された通り、私がこのお店の店主で店員の奥野田美宵です。と言っても最近構えたばっかりの未熟者ですけど…。…でも、まあ私は座敷わらしですからヒトをもてなしたり、笑顔にするのが趣味ですし。私自身、そこはあんまり気にはしてませんけどね~♪」

 

と笑顔で自己紹介をした美宵であった。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

二つ名 鯨呑亭(げいどんてい)の店主にして看板娘

名前 奥野田美宵(おくのだみよい)

種族 座敷わらし

能力 幸福を分け与える程度の能力

   対象を酔わせ魅了する程度の能力

 

特殊能力 溺れ酒

・対象の精神を操り、強制的に泥酔させる。泥酔させた相手は記憶と判断力が曖昧になり二日酔いにもなる。ただし、この能力は基本的には発動条件が不明で今まで一度も発動したことはない。

 

 

特殊能力2 霧状生命(ライフオブミスト)

・実体を持たないため基本的に不老不死。そして自らの身体を構成しているのは霧状の一つの意思である。ただ、実体を持たないと言ってもこの能力は自らの匙加減で調整が可能。そのため普通のヒトの様に生活も可能だとか。

 

 

 

美宵のステータス

 

耐久力 C

筋力 A

防御力 B

魔力 A+

速力 D-

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「そんなに卑下すんなよ。私としてはここまででも立派だぞ?」

 

「いえいえ、私としてはまだまだなので」

 

「そうか、そうか。まあ、いいや。とりあえず注文をしてもいいか?」

 

「あっ!そ、そうでした。危うく忘れる所でした」

 

「おいおい、しっかりしておくれよ」

 

「アハハ……。すみません」

 

「んじゃ、私からいつもので幻月は…」

 

「蛇の肉の串焼きと、桜花爛漫(おうからんまん)を」

 

「了解致しました~。そこのお方は…」

 

「…え、あ、その。お冷だけで大丈夫です」

 

「…あ、そうでしたか。…う~ん。じゃ、私のサービスでレモンサワーをつけちゃいますね?勿論、それは萃香さんの奢りで」

 

「おいおい、そりゃないだろ…」

 

「フフフ。でも、そのつもりだったでしょう?」

 

「…返す言葉がねえな。んじゃ、それで」

 

「かしこまりました~♪」

 

え?あの、ちょ。

私は一度もはい。って返事してませんって!!

 

なんで、勝手に話をすすめちゃうんですかねぇ…

 

まあ奢りですし、ありがたく頂きますか…アルコール度数が少なめが来てほしいですけど…

 

 

 

一方で、その注文をしている間私はずっと萃香さんの様子をみていた。

 

普段と変わらないが若干元気がない。

 

右腕の運びかたが不自然だ。どうもつっかえた感じがする。もしかして、怪我でもしたのだろうか。だとすれば、かなり、強い相手と戦ったことになる。

 

 

その視線に気付いた様で、美宵との会話及び注文をした後、こちらに語りかけてくる。

 

 

「ん?…私の顔になにかついていたのかい?」

 

「…いえ、特になにも」

 

 

酒が入らないとあまり喋らない性格の為二人の間にはやや重たい空気が流れる。

 

必死に空気を軽くしようとしてみるが私は自ら話し出すのが苦手な性分な為結局空振ってしまう。

 

 

幻月は一言。『無理して頑張んなくたって良いんだよ』と言われてしまいました。

確かにそうですね…ですが、このままでは色々と面倒な事に…

 

 

そうこうしている内に厨房を覗いていた萃香さんが一声。

 

「おっ!きたきた!!」

 

その声に反応して私も美宵さんが持ってきた料理をみる。

 

結構な料理と……何でしょうね。

 

居酒屋だからと言われればそれまでですけど…それを抜きにしても凄い酒の匂いだ。

 

正直これだけでも酔ってしまいそうだ。

 

 

「御待たせしました~♪萃香さんのいつもの奴と……幻月さんが頼んだ蛇の肉の串焼き十五本に桜花爛漫の三本。…さとりさんにお冷とレモンサワー二本のオマケで~す♪」

 

と美宵さんが注文された品を読み上げる。

 

「はぇ!?わ、私、こんなに頼んだ覚えないんだけど…?!!」

 

と幻月が驚きの声を上げる。

 

「はい。わかっていますよ。これは私の気持ちのオマケです。代金はとりませんから安心してください。…因みに、十五本分で三本分の代金と桜花爛漫三本で一本分の代金となりますね~♪」

 

美宵さんはこちらにウインクしてその場から去る。

 

幻月は、『はぁ…。食べなきゃな…』と呟きながら蛇の肉の串焼きを啄み、桜花爛漫を一杯目を飲み干す。

 

「そうだねえ……。あんたが先程口にした何かあったのか。って返答だけど、私も大江山の方で色々とあったりしたんだよ。これでいいか?」

 

 

その様子を見ていた私の側から萃香さんが突然口を開いた。

 

 

「唐突ですね…。はあ。なにがあったかは興味ありませんけど…どうせ人間と戦ったとか、妖怪と戦ったとかそんなところでしょう?」

 

 

「いやいや、今回はその両方さ。片方だけならこんな酒の場で話すことはないからな」

 

 

両方ですか。…まさか反乱とか…いえ、そうだったなら私達の方にも噂が流れてくるはず。それなら、反乱とかではなく喧嘩かなにかで相手の妖怪が卑怯なことをした。…もうひとつが鬼退治にしにきた人間に何か気にくわない事をされてイライラしているのか…。

 

私の横で幻月は蛇の肉の串焼き五本目へと突入しており、桜花爛漫は四杯目を飲んでいた。

 

「ふぅ。さとり。注文されて無いとはいえ、少しは飲んだ方が良いよ?レモンサワー」

 

おっと。そういえば私も不覚ながら美宵さんの心遣いでレモンサワーを注文されていたんでしたっけ。

 

仕方なく私はそのレモンサワーを私専用のコップに注ぎ、飲んだ。

 

「…アルコール…は、あまり無いですね。本当に私を配慮して割ってくれたようなんですね」

 

「そりゃ、当然だろう?美宵は意外にも私達の特徴を直感で判断して飲みやすい奴を作るんだ。これは凄い才能なんだ。尊敬に値するよ」

 

ふむ。美宵さんにそんな能力が…。

 

じゃなくて、話が逸れていますって。

 

気がつけば、萃香さんは二杯目を飲み干していた。普段よりペースが早くないですか?萃香さんのペースに疑問を、感じてしまう。

 

幻月はあのスピードがいつものペースらしい。ので変わったことはない。……ただ萃香さんはそれをみて『へぇ…案外やるねえ?』と呟く。

 

別に私がどうとか言うつもりはないんですけど、というか酒臭くてだんだん気持ち悪くなってきました。第一レモンサワーよりも臭いがきついのはどうかと思いますよ。それに、私がわざわざ付き合ってここに来ているのにつまみの料理を全部食べるのやめてください。少し位分けてくれてもいいじゃないですか。

 

「なんだ?そんなかおして。たかが酒だ。酒と一緒食べるんだからいいじゃんかよ」

 

「違います。私を誘ってくれて奢ってくれるんですよね?そして、この料理の数。少し位食べてもいいじゃないですか」

 

「なら、食べろよ」

 

「萃香さんの箸のスピードが異常なんです。食べようかなって思ったときにはもう無いんです。少し位加減を…」

 

「なら、お前さんも注文しろよ」

 

「いえ、だから、そういうのじゃないんです」

 

「わからないなぁー」

 

「いえ、もう、いいです」

 

「…あ、私の蛇の肉の串焼き」

 

 

幻月が悲しそうな目で此方をみる。

 

「…はあ。幻月、これひとつ良いですか?」

 

「…まあ、良いよ。私も食べきれるか不安だったし」

 

いやいや、そう言っているのに今、蛇の肉の串焼きに手をつけていたのが、十一本目でしたよね?!

いつの間にか桜花爛漫が一本消えてますし…。

 

 

 

 

 

「最近さ…人間が対等に戦ってくれなくなってきてねえ…」

 

「…まさか、相談事ってその事ですか?」

 

 

これは重たいです。下手したら今後の鬼達の人生にも影響が出るかもしれないものですね。

 

 

 

 

「幻月も隠しているだろうが、わかるだろう?」

 

と萃香は幻月の方を向く。

 

「…だね。私との戦いのときも最近は呼び出しておいて誰もいないと見せかけての遠距離からの奇襲だもん。萃香の気持ちもわかるよ」

 

幻月はたまに村や都の方に顔を出している身である。更には妖怪であると言うこともばらしてある。それをよくないと思う人たちが武器を手に攻撃をしてくることもあるそうだが、それが最近過激化してきてるらしい。

 

 

「だろ?なら、話は簡単さ。いつも人間の里にいる事が多いさとりが人間の事をよく知っているんじゃないのかって思ったのさ」

 

 

 

まあ、そうですけど…伊達に人里にいつも顔を出しているわけでもないですが…

 

 

 

「そもそもの話、人間の力だけでは純粋に鬼には勝てませんよ。」

 

 

「それはわかっているんだ。…だけどよう、卑怯な戦法を使うことはねえだろう?」

 

 

私の返答を答える前に幻月が先に答えた。

 

「まあ、私とて人間との戦いをしにいっている身じゃないから詳しくは知らないけど、向こうは人間。そして此方は人外。どちらにせよ、生きるか死ぬかの戦い、殺すか殺されるかの二択の戦い。そういう生き死にする場所では人ってのは生きて勝利を掴むためには何でもするんだよ。少なくとも私との戦いでは真っ向勝負って感じじゃなかったけどね。んで、戦いにおいて最も重要なのが相手を倒せる方法…弱点とか攻略方法だね。それを卑怯な戦法と捉えるのか立派な戦法で知恵だと捉えるのかは個人次第だと、私は思うかな」

 

 

 

「……幻月の考えはわかった。さとりはどう思っているんだ?」

 

 

「……何を基準に正々堂々と戦うって言うんですか?そもそも鬼の価値観を押し付けているだけだと思いますけど…??」

 

 

「…それの何が悪いんだい??」

 

 

ちょっと睨まれる。えっとその、正直怖いですし顔近いです。

 

 

「いや、悪いわけでは無いんです。ただ、人間が純粋に鬼に勝とうとする場合、人間やめたチート野郎になるくらいしか方法が無いんです」

 

 

ただでさえ力の差が大きい人間と鬼だ。こちらから対等にと言ったところで向こうは聞いてくれはしない。

幻月の話した例が良い例だ。

 

 

「方法は無いもんかねえ…このままだと他の鬼も人間に不信感を抱いちゃってシャレにならない事態になりそうだよ」

 

 

 

方法ね…。あることにはあるのですが…種族間での大事な取り決めとなりそうですし…それをすると絶対反対勢力が出てきますし…。予想される鬼の反発は萃香さんや勇義さん達が押さえつけてくれるはずだからそこまで酷くならないでしょう。

 

問題は人間達側…

 

最近、都の方では打倒妖怪を掲げる人達が活性化してきている。

現に幻月が都の方に行ったらかなりの数の人達が問答無用で攻撃してきたとか。

 

そんな状態では話し合いなんて無理。

 

この案は没確定。でもこれくらいしか正直思い浮かびませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん。そうですね。…勝負の時にある程度ルールを決めてから行うしか無いですね…」

 

「やっぱそうなるよなあ…。幻月に挑もうとする鬼達が悉く戦い終わった後に説教されているのを見掛けていたんだがな…もしかするとそうかもな…」

 

ん?この話は初耳ですね。幻月から聞いた話だと鬼から挑まれる事が良くあるとだけ言われていたんですけど…

 

「…幻月が、鬼に説教ですか?」

 

「珍しいと思うだろう?…でもな、試しにその一人に話を聞いてみたら、挑んだ皆戦い終わった後に説教されているのが日常茶飯事なんだとさ」

 

「…ふむ?んで、なんで説教を?」

 

私は萃香さんに理由を聞いてみる。

幻月に聞いたところで話にするまでもない、しょうもない話だから私がその気になったらね?と隠すに違いない。

 

 

「…お前さんはそれで良いのかい?幻月に後でとやかく言われるかもしれんぞ?」

 

「私は幻月の友人であり、一番の理解者です。友達として、一緒に暮らしている仲として…知って当然だと私は思いますが」

 

 

 

「そうかい。なら私からはもう何も言うことはないよ。ああ、そうそう。忘れるところだったよ。あいつが言うにルールを無視して攻撃する事が許せないんだとさ」

 

「そう、ですか。ありがとうございます」

 

「幻月は、第一にルールを破る奴が大嫌いだって前に私と戦った時に散々聞かされたからな。これくらいは覚えているさ」

 

 

「それは、容易に想像出来ますね…」

 

「ハハハッ!まあ、そうだろうな。…でもな、私とか勇義に華扇の三人を除いた普通の鬼達は、細かいルールを決められるのは苦手なんだよ」

 

 

「…え?そうなんですか?私との勝負の時はちゃんとルール厳守で戦ってくれますよね?それは大丈夫なんですか?」

 

 

本当は幻月と戦う時は私とは違った戦いをするのかって尋ねたかったのですが、そうすると話が長くなりそうだと思ったので今回は訊かない事にする。

 

「お前との戦いはちゃんとルールを守って戦う様にしているさ。鬼達のルールに当てはめちゃ…お前の体が壊れちまうだろう?それに、ルールと言っても、非死性弾幕を綺麗に撃ち合うっていうだけだろう?なにも難しいことじゃないさ」

 

 

「だったら、それを人間達にも適応すればいいじゃないですか」

 

萃香さんは私の返答に溜め息を一つついた。

 

「……それが出来りゃ苦労はしないよ。私だって出来ていればそう考えたさ。でもな?さとり。逆に訊くが…人間、全員弾幕を撃てるとでも思っているのか?」

 

一回食事を止めた萃香さんが呆れて此方に質問してくる。

 

 

「…え?普通、陰陽師とか、対妖怪専門とかの力を持つ者が妖怪や鬼とかと戦うんじゃないんですか?」

 

いや、予想はつく。実際に妖怪を退治すると言った文献では、時代よって武士や剣士が妖怪を倒す事もある。

 

 

「…だと、良かったんだけどね?」

 

と返したのは、横にいた幻月であった。

 

「前にも言ったかも知れないけど、私は都で襲われて…。その時に居たのは陰陽師とか対妖怪専門の奴の他、直接刃物で殺そうとする剣士まで居たよ」

 

 

「…萃香さんもそういうのに遭遇した感じですか?」

 

「んいや、そういうガチじゃないな。でも刀を持った連中だったからもしかするとそうなのかもな」

 

 

まさか、普通の人まで妖怪退治を始めているのですか??

 

 

おそらく、人間側の世で色々とあったのでしょうね。大方、現在の政治が不満なのかなんなのか…そう言えば、もうすぐ鎌倉時代でしたね。だとしたら確かに武士が陰陽師の真似事をしてもおかしくないか…

 

 

「人間と妖怪では根本的に価値観が違いますし…今後はそういうやつだなと思って戦うしかないんじゃないでしょうか…」

 

「やっぱ、そうなるか…」

 

残念そうに返事をしながら更にお酒を飲んでいく。

 

 

「あまり役に立てなくてすみません」

 

 

 

「まあ、すっきりしたしいいか!よし、口直しに鬼殺しだ!さとりも飲め!」

 

そして、この切り替えの速さである。正直同じことをグダグダ引きずらないのは助かる。

 

この前は茨木さんの愚痴を聞いていた時なんか凄い後まで引きずってましたし…そういうのって私は好きではないんですね。皆もそう思いますよね?

 

「はいはーい。萃香さんのご注文ですね?かしこまりました~。で、さとりさんはどうします?遠慮なさらないで下さいね?」

 

「ええ、と……。ありがとうございます?…その、心遣いはありがたいですけど、私はまだレモンサワーが残っていますので…お構い無く。あ、そうだ。じゃ、冷奴だけでもお願いします」

 

 

なにをすればこんなに速く美宵さんが来るかわかりませんが、取り敢えず今回は注文は取らないことにする。

 

「んじゃ、私は蛇の肉の串焼きと猪の肉の串焼きのセットで」

 

「畏まりました~♪……あ、いらっしゃいませ~」

 

美宵さんは幻月と萃香さん、私の事をみた後に新たにきたお客さんの対応に向かったのだった。

 

 

「もう…さとり。頼めるときは頼んだ方が良いよ?後悔しても知らないからね?」

 

「……はぁ。全く。では、次来たら私も幻月と同じ奴を頼んでみましょうかね。…お酒は結構ですがね」

 

私は観念して次、店員が来たら頼んでみようと意気込んでいた…

 

 

「あやや!?さとりさんと幻月さん…それに、萃香様?!」

 

 

ガヤガヤした店の中に一瞬だけ私達の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

決して大きい声量ではなかった。むしろ、普通なら店喧騒に紛れて気付かない程度のものだろう。

 

だが、偶然にも私の耳は覚醒状態だったためその声を聞き取ってしまった。

 

「あれ?文さん」

 

 

入り口を覗くと一匹の白狼天狗を連れた文がこちらをみて唖然としていた。

 

食事をしに来たら思いっきりヤバい人と出くわしてしまった。と言った所ですね。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

二つ名 幻想郷最速の名を持つ天狗

名前 射命丸 文

能力 風を操る程度の能力

特殊能力 神速業風

・風を使う事で目に見えぬ速さをうみ出せる。また、それを応用すれば、自らの足場にしたり逆に壁を作り出したりと出来る。

 

文のステータス

 

筋力 S

耐久力 A-

防御力 C

魔力 B

速力 SSS++

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「お!ブン屋の母親の娘じゃないか。丁度良い。おーい!こっちだ!こっち!」

 

 

 

 

「あ、あの!その、用事を思い出しました!!」

 

「はぁ~?いくらなんでも急すぎやしないか?…それに、お前がここに来るって事はなにかを食べにきたんだろう?それは実質、用事なんかないって事じゃないのか?」

 

「あ、いや、そうなんですけど…違くて、これを食べたらすぐに戻らないと言うかなんというか……」

 

「あ?…ちょっとは飲んで行っても、それに遅れるこたぁないだろぉ?」

 

 

 

鬼に強く出られると他の妖怪はなかなか断れない。

 

…幻月はそういうのをガン無視して断るようだがその度に鬼の機嫌を悪くして最悪喧嘩へと発展するのですが…

 

その機嫌を悪くしてしまう事が他の妖怪に取っては恐ろしい事であり、一度悪くしてしまったら何が起きるかわかったもんじゃない。

 

そういう理由もあって自動的に縦社会、いえ、どちらかというとカースト制度に近い構図を作って対処しているのだ。

勿論、私達はこれに組み込まれていない。

 

端的に言えば、よそ者だし、そもそもの話山に住んでいないからだ。……山に家を作って暮らしてはいますが、それを話すと長くなるので此処等で止めておきましょう。

 

 

「萃香さん?無理にお酒に誘わなくても……」

 

流石に可愛そうなので萃香さんを止めにかかる。

 

 

「…本来なら、天狗達二人共一緒に誘うつもりだったけど今回はさとりのお陰で少し助かったから多めにみてやろう。…んじゃ、鴉天狗は忙しいみたいだしそっちの白狼天狗を借りるぞ」

 

 

「えっ!?な、なんて私だけ?!」

 

突然の鬼の生贄を言い渡された白狼天狗は途端に狼狽する。

 

 

「おお…!!萃香様、ありがとうございます!」

 

反対に文さんは嬉しそうに、無駄のない洗練された無駄な動きで白狼天狗に気付かれないよう店を後にしようとする。

 

「え……文さん?!…私を置いていくつもりなんですかっ!?」

 

「あ、バレた。なにやってんだか…」

 

「う、うるさいですよ!」

 

幻月は文さんに向かってボソッと呟く。

まあ、私自身どうでも良い事なんで、そんな光景を無視して、目の前に置かれた料理に箸を付ける。

 

 

「はいは~い。幻月様のご注文の蛇の肉の串焼き10本と猪の肉の串焼き12本のセットと、さとり様へ冷奴一つにサービスで蛇の肉の串焼き三本と猪の肉の串焼き三本のセットをお持ちしました~♪」

 

「あ、美宵さん。ありがとうございます。えっと、サービスで串焼きのセットですか?…遠慮なく頂戴しますね」

 

「はいは~い。また何かあったらなんなりとお申し付けくださいね~」

 

 

「わかりました」

 

私は幻月の注文した串焼きを受け取り幻月の元へと回す。一方で私の注文した冷奴に美宵さんはサービスしてくれた様で幻月の注文した串焼きのセットと同じ奴を持ってきてくれた。

 

 

 

「椛…すみません。後は頼みます…っ!!」

 

文さんの一言に続いて店内に紋さんと似た風が吹く。

 

気付いた頃には文さんは店には居なかった。どうやら神速で逃げたようだ。こういう所は紋さんにそっくりですね。

 

「あ!まって!あ、文さんの薄情者ぉーっ!!」

 

「うーん。流石、鴉天狗最速を名乗るだけはあるねぇ…。紋の娘だと言うことも頷ける」

 

「ん?紋さんの事を知っているの?」

 

「そりゃ知っているさ。紋の奴とは昔ながらの縁だからね。たまに一緒に酒を飲み交わす事もある。……が、大体は断られちまうな。理由は…そうだな。家の家事や育児、鴉天狗の長の一人としての仕事があるとかなんとか…」

 

「…あ、勘違いするなよ?アイツから誘ってきたりもするんだ。…あの鴉天狗やこの白狼天狗みたく、色々と理由を付けて断る奴じゃない。…本当に都合が悪くて断るんだ」

 

「…アハハッ!文の奴、嘘ついているのばれているじゃん?」

 

「フフッ。この私は『鬼』だからね?嘘なんて一発で判るのさ。…『私に嘘をつくなんて良い度胸だねえ?…身の程を弁えろよっ!!』…って言う所だけど、今回は気分が良いからね。あれは見逃してやることにするさ」

 

幻月と萃香さんは互いに笑う。

 

もう、なんというか…茶番ですね。……あ、猪より蛇の肉の方が味が染み込んでいて美味しいです。

 

 

「う、ううぅ………」

 

「あの……椛さん。隣、どうぞ。後少し食べて落ち着きましょう?」

 

半泣きの椛を隣の席に誘導する。ここまできてしまってはもう逃げられませんしここで変に逃げようとすれば社会的に痛手だろう。ましてや鬼に叛旗を翻すなんて噂が立ったらどうなることやら。

 

 

「あっははっ!そこまで身構えなくても良いよ。なにも取って食うわけじゃなし。肩の力を抜いてさ?ほら、鬼殺し」

 

真っ青に震えている椛を思ってかお酒を勧めてくる。それも、私にまで……

 

 

「ちょいちょい、萃香?流石に強いお酒を勧めるのは良くないと思うよ?貴女みたいな鬼じゃないんだし、まぁ、この娘に気遣ってくれたのは助かったけども」

 

椛は完全に逆らえない状態ではあった。それを見て幻月は、フォローを入れてくれる。

幻月は此方を見た後に軽くウインクをした。

 

…私もフォローを入れろって事ですか。

 

「そうですよ、萃香さん。お気持ちは嬉しいかと思いますけど鬼みたくお酒に強い訳じゃありませんから…」

 

「二人にそういわれちゃ、申し訳ないな。…お前さん、悪かったな」

 

「へ?…あ、いえ、大丈夫です。二人共、ありがとうございます」

 

 

萃香さんはまだ酔いが回っていなかったらしくどうにかお酒は撤回出来た。

 

 

それよりもなにか食べる物をですね…

 

 

「はいはーい。美宵ちゃんが呼ばれそうな気がしましたので呼ばれていないのに来ちゃいました♪」

 

「ほんと、心でも読んでいるんです?」

 

「いえいえ、そんな筈はありませんよ。ただ、私のおもてなし心が囁いたんです。もう少ししたら貴方達に呼ばれるかもしれない。…なんてね?」

 

「そ、そう、なんだ…」

 

「こほん。…では、さとり様、幻月様、そして…えーと。ご予約に記載されていた白狼天狗の椛様ですね?…どうなさいますか?」

 

「…そうですね。では、三人分の猪の肉の串焼きを二つ、飲み物で私はレモンスカッシュ、幻月は、レモンサワーで…良いわよね?」

 

「うん、良いよ~。じゃ、椛はどうする?何飲む?」

 

「…そうですね。では、芋の水割りで」

 

 

「畏まりました。では、暫くお待ちください」

 

 

と注文を受けた美宵さんはこの場を去った。

 

「おいおい…。そこは割らないで一気にいけよっ!」

 

 

萃香さんはちょっと黙ってて下さい。……って、既に空になった器を掲げるのは止めてください。見ている此方が恥ずかしくなりますから…

 

 

目の前で暴れ始めた大酒呑みに私達は呆れて幻月は見て見ぬ振り、私は溜め息一つついて視界から外す。

 

 

それを境に周りにいた鬼達にちょっかいをかけ始める。まあ、これもいつもの光景だ。

 

ですけど、普段の癖で他の人にお酒を飲ませようとするのは止めません?天狗とか鬼を恐れる妖怪達みんな怯えて完全に逃げようとしてますし…貴方に釣られて他の鬼達がどんどん悪ノリを始めてますって。

 

 

別に私に被害が来るわけじゃないのですが、美宵さんが大変なことに…

 

と心配して美宵さんの方を見ると

 

 

「…仕方ありませんね。…はいは~い。皆さん。ふざけるのは結構ですけど、あんまり他のお客様に迷惑をかけないようにしてくださいよ~?」

 

慣れた手つきで場を治めていた。

 

そんな光景をみた幻月は溜め息を一つつく。

 

「先に食べちゃうか?アレはもうどうにもなりそうにないし美宵ちゃんがその悪ノリを促しているしさ…ね?」

 

 

「それもそうですね」

 

「そ、そうですね」

 

 

 

先程から困惑しっぱなしだった椛さんに料理を渡す。

 

なんか食事なのに色々と気を使わせてしまっているみたいで申し訳ないです。

 

 

 

 

萃香さんは完全に別の席にて他の妖怪相手に飲み食いを始めていたためこちらに絡んでくることは無さそうだった。

 

それに気付いて多少は落ち着いて来たのかだんだんと表情が柔らかくなってきた。

 

 

「所で、椛さんって犬走?」

 

 

そう言えば、完全に知り合い状態で話していましたが、この娘とは今日は初めて会ったんでしたね。流れに任せて名前を呼んでいましたけど。…というか幻月はその流れに乗ることはなく私とは違い名前を呼んでいなかった。それにこの娘の面影はなんとなく誰かさんに似てましたし。

 

 

 

「そうです。初めまして、でしたね。改めまして、犬走椛と言います。さとりさんと幻月さんの事は父上から聞いておりました」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

二つ名 犬走家の後継者

名前 犬走椛

能力 千里眼を扱える程度の能力

特殊能力 超直感(スーパーセンス)

・意識を自分以外の方に向けると周りに誰かの気配がいち早く判る。また、例えそれが存在を偽っていたり姿を隠していたとしてもこの能力を用いることでその存在を確認が出来る。

特殊能力2 絶対防壁

・妖力を用いる事で自分に危害が加わる可能性がある物を無効化出来る。またその場合360°の、どの角度からの攻撃も無効化出来る。

 

 

椛のステータス

 

筋力 A+

耐久力 S+

防御力 S

魔力 A

速力 A-

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「……なんて聞いているのかはあえて聞きません」

 

「悪くは言われていませんよ?変わり者だとかなんとか言ってますね……」

 

それ、完全に悪く言ってますよね?まあ、なんと言われようと個人の勝手ですから良いんですけどね。さとり妖怪だと知られていないからその程度で収まっているけどももし私達の正体がバレていたらそれこそ風当たりが強くなっていたでしょう。

 

いくら歩み寄っても妖怪も人間も…意思あるモノには踏み込んではいけない領域がある。

 

その領域に平然と入ってしまう私達は存在自体が既に禁忌のようなものだ。

 

もし彼女が、私の正体を知ったら…いえ、考えない事にしましょう。

 

前にも話したと思うが、私のメンタルが持ちこたえられそうにないですから。

 

 

「椛が自己紹介してくれたんだし、私達も自己紹介しちゃおっか?」

 

唐突に幻月は自己紹介をしようと言い出す。

 

「え?いいですよ。そんな気遣いは。そもそも父上からある程度聞いておりますので大丈夫だと思いますが…」

 

「…そうだとしても、貴女が改めて名乗ってくれたのを見て私は失礼かな~って思っちゃったし」

 

「別にそんな事はありませんよ」

 

「まあ、そんな事はどうでも良いよ。兎に角、私達の事をちゃんと知ってもらいたいしね?」

 

こうなった幻月は頑固で訊かないからもう観念するしか無いようですね。

 

「…仕方ありません。では、私から。…私は古明地さとり。なんの取り柄もない………。…妖怪です」

 

 

・・・・・・・・・・・

 

二つ名 正体を隠すさとり妖怪

名前 古明地さとり

能力 心を読む程度の能力

特殊能力 超再生

・自らの身体が致命傷を負ったとしても死ぬ事はなく、常に身体が再生、回復し続ける。

 

さとりのステータス

 

筋力 B+

耐久力 A+

防御力 B-

魔力 S

速力 B

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「んじゃ、次は私ね?…私は幻月。こうみえて悪魔なの。宜しくね?」

 

 

・・・・・・・・・・・

 

二つ名 最恐の大悪魔

名前 幻月

能力 理を操る程度の能力

特殊能力 超限火力(オーバードライヴ)

・保有魔力の限界ギリギリを使用する攻撃、または身体が致命傷に近い危険な状態中、全ての攻撃が普段の千倍以上の破壊力となる。

特殊能力2 超限再生(オーバーリミットヒール)

・常に自らの魔力を使用して身体を再生し続ける。その時、身体が傷付いていなければ、永遠と再生能力を変換して自らの身体に蓄える。変換した再生能力は殺傷力がある攻撃全てに対して自動的に発動し、その攻撃の強さに応じて使用量が変化する。その際は身体が幻のように朧気となって攻撃がすり抜けるとか。

 

 

幻月のステータス

 

筋力 S-

耐久力 S

防御力 A+

魔力 SS

速力 SS+

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「すみません。私みたいな者にここまでしてくれるなんて…」

 

「ううん。気にしないで。元々は私が始めた事なんだしさ」

 

 

 

 

 

 

そんな感じに食事やら会話やらをしながら鬱な事を考えていると急に店内が騒がしくなる。いや、元々騒がしかったのが更に騒がしくなったと言うか…。勝負が始まる前の声援に近いものになっている。

 

 

「萃香の姐さん!がんばれ!!」

 

「そっちの神様も負けるなぁ~!!」

 

 

一体何があったんでしょう?

 

 

「あの…何かあったんですか?」

 

 

様子に気付いた椛が近くにいたまともそうな鬼に聞く。

 

 

 

「唐突と始まった事なんだがな?…あそこにいる萃香の姉さんとその隣にいる神様が勝負をするんだとさ」

 

 

まともそうな鬼はその二人に指を指して教えてくれる。

 

目を凝らすとそこには萃香さんのツノがあった。

 

その隣には金髪の女性もいた。

 

「隣の人は誰でしょうか?神様とか言ってましたけど…」

 

 

遅れて、萃香さんを見つけた椛が隣にいる金髪少女のことを不思議がる。椛はまだ若いのだから知らないんでしたっけ。90年近く生きていて若いって。感覚がおかしくなりそう。…いえ、とっくにおかしいんでしたね。

 

 

「えっと…秋…の色彩を司っている方」

 

 

「秋静葉でしょ?わざとやっているでしょ?!」

 

「さとり!いい加減にしなさい!私の名前を何時になったら覚えるわけ!?」

 

地獄耳の様に私達の会話に突っ込んできた。まさか、聞かれているとは思ってなかった為、椛がビクッと驚いていた。

 

 

 

だって影薄いですし、稔子さんの方が最近よく会いますし…。

 

 

因みに、幻月はこれでも秋姉妹達とはかなりの友人であり、いつも冬~春にかけて定期的に差し入れを持ってあげたり、秋姉妹の手伝いをしてあげたりと非常に友好的である。

幻月がたまに言うのだが、稔子は最近村で畑の神として崇められているらしく、形は違うが信仰者が増えており、それを羨ましく思っている静葉が幻月を誘って愚痴る為に酒を飲んでいるんだとか。

なので、今回の私のように心にもない言葉を口走ると静葉さんの他、幻月まで反論を返してくるのだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

二つ名 色彩と終焉の象徴

名前 秋静葉

能力 葉に色を塗る程度の能力

特殊能力 黄金比

・一回みただけでそのモノの特徴やらなにやらを記憶して再現する事が可能。ただし、それは絵を描いた場合に限る。

特殊能力2 稔と紅葉の季節

・季節が秋の場合に限るが、ステータスが大幅に上昇する。

特殊能力3 死と終焉の季節

・季節が冬の場合に限るが、ステータスが大幅に低下する。

 

 

秋静葉のステータス

 

筋力 S-

耐久力 A-

魔力 S-

防御力 A-

速力 B+

 

季節が秋の場合

 

筋力 SSS

耐久力 SS+

魔力 SSS-

防御力 SS+

速力 SS-

 

 

季節が冬の場合

 

筋力 E

耐久力 F-

魔力 D+

防御力 D-

速力 F-

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・

二つ名 稔りと豊穣の象徴

名前 秋稔子

能力 豊作にする程度の能力

特殊能力 収穫祭

・この能力を持っているモノは近くいるだけで収穫出来たモノや取れた作物全てが上質なモノになる。ただし、この効果は秋限定であり、それ以外の季節であるとこの効果は無効化される。

特殊能力2 紅葉と稔りの季節

・季節が秋の場合に限るが、ステータスが大幅に上昇する。

特殊能力3 終焉と死の季節

・季節が冬の時に限るが、ステータスが大幅に減少する。

 

 

 

秋稔子のステータス

 

筋力 S+

耐久力 S-

魔力 B+

防御力 S

速力 S+

 

 

季節が秋の場合

 

筋力 SSS+

耐久力 SSS

魔力 SS-

防御力 SS+

速力SS+

 

季節が冬の場合

 

筋力 F-

耐久力 E

魔力 E-

防御力 F

速力 F-

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

「勝負って…喧嘩は外でしてくださいよ」

 

椛が嫌そうに呟く。椛はこう言うところが初めてだったのでしょうか?まあ、私も初めてなのですけど…幻月に流されるまま此処まで来てしまったのでもう慣れてしまったのですけど。

 

にしても、酒の席での勝負といったら相場が決まっているものではありますけど。

 

「喧嘩?アハハッ!ここは飲み屋なんだぜ?嬢ちゃん!」

 

「飲み屋で戦うならあれしかねえだろう?」

 

そう鬼達に言われて椛も「あ。」と気付いた様だ。

 

 

「まさか、飲み比べ…」

 

「神様ってお酒に強いんでしたっけ?静葉さん本人が勝てると見込んで勝負に乗った訳ですし…相当お酒に強いんでしょうね…」

 

冬とか飲んでいる所とか見掛けますし…

 

幻月に言わせてみればあれは自棄酒らしいのですけどね?

 

 

「椛さん。ああいうのと付き合うのは極力避けることをおすすめします」

 

「ええ。言われずともそうしますよ…全く。見ていられません…」

 

 

 

素直に頷く椛の頭を軽く撫でる。まだ、この頃は純粋なんですから…私達みたいに生まれてすぐに疑心暗鬼の人生を送られたら此方が悪いですし。

 

最初は身体を震わせていたが、それも一瞬だけ。すぐに気持ちよくなったのか目を細めて気持ち良さそうにしている。

 

ただ、長く続けてもあれなので、すぐに撫でるのを止める。

 

 

 

すると椛さんが何故か名残惜しそうに此方を見てきました。

 

…なんででしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~。お腹一杯…」

 

「幻月?だらしないですよ?」

 

「…良いじゃん。たまにはこうしてだらけるのも」

 

「仕方ないですね」

 

私達三人はあっちで騒いでいる萃香さんを抜いて少しの雑談と話で盛り上がった。

 

お皿に残った料理があらかた片付きお腹もちょうど良い感じで満足された。

 

萃香さんたちの戦いはまだ続いているらしく、少し離れた所にいる私達の方にも熱気がやってくる。

 

 

「さて、私達はそろそろ帰りますね?」

 

「あ、でしたら私も」

 

私がいないとこの先どうなるのかわかったもんじゃないと気付いているのか、すぐに身の回りを整え始める。

 

注文した料理の分のお代に色をつけてお皿の近くにおいておく。

 

「あの…私や萃香さんの分まで払わなくても…」

 

「いやいや、こう言うときはね?多少嫌でも美味しい物を食べられたお礼って事で払うのも大事なんだよ?」

 

幻月が笑顔で椛に返答する。

 

幻月のいう通りです。仲良くなれた訳ですしね。ちょっとした気持ちのつもりですから。

 

それに萃香さんには悪いですけど勝手に帰るわけですからね。

 

 

「では、ご馳走様になります」

 

 

「はいはーい♪またのご来店お待ちしますよ~♪」

 

 

美宵ちゃんに帰ることを告げて店を後にする。

 

星々の光と炎に照らされて活気付いた天狗の里に足を踏み出す。

 

萃香さんに連れられて通ったときとは随分と雰囲気が変わっていて新鮮な気分になります。

 

 

 

「そう言えば、今日は休日だったんですか?」

 

「ええ。哨戒もありませんし、剣術の練習をしていた所に文さんが乱入してきて、強制的に連行されましたので…」

 

 

「ああ、成る程。大変だったんですね」

 

そう言えば、物凄く気になったことではあるが、椛は天狗の装束が普段着なのでしょうか?

 

 

剣術の練習をしてからここへと来たと言ってましたからどう考えても正装でずっといるのは不自然というかなんというか…

 

 

「…あの、普段着って持ってますよね?」

 

「いえ。基本的にこれと同じのが複数着ありますけど普段からずっとこれですよ?」

 

 

 

まさかそんな……

 

 

 

思わず驚愕してしまう。

 

楓君!お母さん、もうちょっと年頃の女の子として育てようよ!!

 

こんなに色気のない格好しか出来ないって……かわいそうですよ…。まあこの時代の制度じゃこれで良いかもしれませんけど…

 

 

 

 

「困らないですか?いつも同じ服を着てて…」

 

 

「哨戒の時のものと同じなら色々と手間が省けますし楽ですよ?それに機能的で使い勝手が良いですし」

 

 

成る程、実用性優勢ですか。

 

間違ってはいないのですけど…もう、そう考え完全に楓君の思想から受け継ぎましたね!?お母さん、何やっているんですか!

 

 

 

「お母さんは、それで良いのって聞かれなかったの?」

 

「母上は、立場上…家に殆んど帰ってこれなくて…」

 

 

 

 

幻月が聞くと急に表情が暗くなる。

 

これ、地雷を踏んでしまったかもしれませんね…。

 

幻月は迂闊に、興味本位で聞くんではなかったと頭を抱えて唸っていた。

 

ああ、もう。

 

 

 

 

「…あの、どうかしたんですか?」

 

 

幻月と私の様子がおかしいと思った椛が交互に顔を覗かせてくる。

 

純粋に心配してくれているのでしょう。澄んだ瞳がこちらを見つめてくる。

 

 

「ううん。何でもないよ。ね?」

 

「え、ええ。大丈夫ですよ」

 

 

 

よし、決めました。椛にも今度服を作ってあげましょう。そうです…そうしましょう。

 

そう心に決めてその日は帰宅。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、久しぶりに私達は楓君の家を訪れていた。ここに来たのはいつぶりでしょうか?確か…改築の手伝いで行ったきり…うーん。思い出せません。

 

 

包みで大事に保護されたそれをちらりとみてそれを着た椛の姿を想像する。

 

お燐やこいし、幻月の妹の夢月にそれを慕うエリスからも綺麗だとお墨付きを貰ったし、多分、大丈夫だとは思うのですが…気に入ってくれるでしょうか?

 

 

幻月は大丈夫、大丈夫。きっと、気に入るからへーきへーき。と私の不安を見透かして言ってくる。

 

駄目でもその時はその時だと気を切り替えた。

 

 

意を決して家に踏み入れる。そう言えば自ら他人の家に行くのは今回が初めてでしたね。

 

 

では、初めての挨拶という事で気を新たに……

 

 

「こんにちわ」

 

「こんにちは~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人の考えは時に排他的に…残虐になる事がある。

 

その考えの矛先に当てられた生物に取ってはなんとも迷惑な話ではあるが…人間が力を求め始めたこの世界では仕方のない事ではあった。

 

 

 

「………では、始めようじゃないかっ!!」

 

とある一角で野望を募らせた人々が動き出す。私達がそれを知ったときには既に手遅れでしたけど…。

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