東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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025話 我が家と絆の小宴会

 

扉が開く音が聞こえる。

 

こいしは、恐る恐るという感じで立ち上がる。

手には魔道書を持っていた。

 

「お燐…」

 

「はいよ…」

 

奥の部屋に寝かせているルーミアをお燐に任せたらしく、玄関の方へ向かっていく。

 

「…夢月お姉ちゃん」

 

「どうしたのかしら?…何か心配事?」

 

途端にこいしが私の方へと近寄ってくる。

 

音を立てないようにゆっくりと歩いてくるこいしは、此方を見つめて不安な顔をしていた。

 

「…ううん。…でも、その…」

 

「えぇ。判ったわよ。じゃあ、一緒に行きましょうか」

 

私の事をお姉ちゃんと呼ばれるのは慣れていないんだけど、こいしから言われるのは全然嫌じゃない。

寧ろ、嬉しい気持ちになる。それにこいしが今から話そうとしている事がなんとなく判った…様な気がする。

 

なので、こいしが本題を話す前にこいしが頼みそうな事を先読みして答える。

 

「……。ありがとう」

 

こいしは小さな声でお礼を言って玄関へと向かう。

私も同じくこいしについていく形で玄関へと向かう…

 

 

 

「こいし、警戒しなくても大丈夫よ」

 

 

 

「……お姉ちゃんっ!!」

 

 

私が部屋を出ようとした瞬間、さとりさんの声が聞こえこいしの歓喜の声が響く。

 

「…ふぅ」

 

一つ溜め息。

 

 

どうやら、玄関へと向かう必要も無かったみたいね。

そう思い、踵を返し部屋へと戻ろうとした所…

 

 

「夢月(むげつぅ)~♪たっだいまぁ~♪」

 

「っ!…姉さん!!」

 

幻月姉さんの声が次に聞こえ、戻ろうとした足を止めて玄関へと駆け寄る。

 

「コラコラ、お帰りなさいが前(さき)でしょ?」

 

「…あ。…その……お帰りなさい、幻月…姉さん…」

 

「…うん。ただいま、夢月っ♪」

 

 

 

玄関には、まだ日の明けていない時間で暗い中で天狗装束に身を包んでいるさとりへ抱き付いているこいし、その隣で所々が破れて素肌が見えている幻月姉さん、後ろでその様子を見守っているエリスが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お姉ちゃんっ!!」

 

 

 

家へと入ったさとりを最初に出迎えたのはこいしちゃんの明るい笑顔と声であった。

 

こいしちゃんは思い切りさとりに抱き付く。

 

「夢月(むげつぅ)~♪たっだいまぁ~♪」

 

私はその後ろから玄関へと入った。

 

「っ!…姉さん!!」

 

夢月に聞こえるように何時も通りの声で挨拶をする。

 

すると夢月はまるで、不意を突かれたかのように驚き刹那、夢月の大きな声が、私の名前を呼んだ。

 

「コラコラ、お帰りなさいが前(さき)でしょ?」

 

「…あ。…その……お帰りなさい、幻月…姉さん…」

 

「…うん。ただいま、夢月っ♪」

 

 

夢月の嬉しそうな声が玄関前に響く。

 

「姉さん。…良かった。無事で……」

 

私は夢月がこいしと同じ気持ちなのを察して両手を広げる。察しの通りで夢月は私にゆっくりと抱きついた。

 

「無事なのは当然でしょ?全く。…そういえば、神綺さんは?…もう帰って来ているんでしょ?」

 

「…えぇ。神綺さんは今、ルーミアの事の面倒を見ているわよ。…ただ、一緒にいた静葉さんや稔子さんは神綺さんの方向音痴に苦戦して既に疲れていた訳だけど…」

 

「そっか…なら、良かった…」

 

「良くない!!全然!!」

 

私がそう言うと側からこいしが何故か此方に向けて憤慨してきた。

 

「うわわっ!?……ど、どうしたのさ?こいしちゃん…何も此方に向かって怒んなくても…」

 

「…だって!お姉ちゃんが傷だらけになって…それを止められなかったんでしょ?!それもこれも全部…静葉ちゃん達から聞いたもん!!」

 

こいしはさとりに抱き付いたまま私達に矛先を変えて言葉での攻撃をしてくる。

 

「…こいしちゃん…えと、わ、私が悪い訳なの??」

 

「……ううん。違う…違う…けどぉ……!…でもぉ…っ!」

 

こいしちゃんは私の質問に対して有耶無耶になる。その後に顔を伏せて少しの沈黙が訪れる。

 

 

「こ、こいし……離れてくれない…かしら?…身動きが……」

 

そういえば、さとりはこいしちゃんに抱きつかれていたんだよね…?

 

…完全に忘れていたよ。

 

………。

………………。

…さとりはこいしちゃんに束縛されているようで動けないみたい。

…じゃあ、振りほどけばいいじゃんと思うかも知れないけど、此処までの流れで判る通り、さとりはかなり体力が削られ、体はボロボロで傷ついている。

そんな状況中でこいしちゃんに本気で抱き締められたら振りほどける筈もない。私だったら無理かな…うん。

 

「……っ」

 

「…ちょ、こ、こい………きゃぁっ?!」

 

途端にこいしちゃんは体重をのせたらしく、勢い良くさとりは押し倒される。

バタンッ!

 

 

「…こ、こいし??」

 

さとりの胸にこいしの頭が乗っかる。そのまま、こいしは顔を伏せて無言になった。

 

 

「…さと」

 

「大丈夫です。…私に任せて下さい」

 

まだ、私は話そうとしている途中なんだけどなぁ…まぁ、良いか。

「エリス、夢月。私達は先に上がろうか。神綺さんとルーミアの様子が気になるし」

 

「…解りました。では、姉さん。此方です」

 

夢月は、此方の手を引き歩き出す。エリスはその後ろを付いてくる。

 

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。こいし…。私は、平気ですから…」

後ろではさとりがこいしちゃんの頭を撫でている最中であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

家に入るなりこいしが抱きついて来た。

 

不安だったのは解りますが…あの、血とかまだ落としていないから…もうちょっと待って欲しいなぁ…。

 

「夢月(むげつぅ)~♪たっだいま~♪」

 

「っ!…姉さん!」

 

 

私の後ろで幻月の声が廊下に響く。

すると、明らかに部屋へと戻ろうとしていた夢月が方向転換。幻月の元へと駆け寄ってくる。

 

「コラコラ、お帰りなさいが前(さき)でしょ?」

 

「…あ。…その、お帰りなさい、幻月、姉さん…」

 

「…うん。ただいま、夢月っ♪」

 

 

幻月達の会話の流れを横で聞く私。

仲が良いんですね。

………。

……………。

 

「こいし……身動きが取れない……」

 

「お姉ちゃん。私が、どれだけ心配して待っていたと思う?」

 

私がその会話に耳を傾けていると突然、こいしから話しかけられる。

 

 

「え?…そ、そうね……?…それは、本当にごめんなさい…」

 

「本当に反省しているの!?…ねぇ!…もう二度と心配させないって約束出来るの?!」

 

「…そ、それは…その……」

 

積もりに積もった心配や不安等が一気に爆発してしまったのでしょうか。

 

私はこいしの返答に困り顔を横へ…。すると、こいしはそれみたことかと言わない代わりに大きな溜め息を吐く。

 

 

「そっか…なら、良かった…」

 

「良くない!全然!!」

 

幻月が夢月との会話の最中で安堵する言葉を放つと、それに過剰反応し反論し始める。

 

「こ、こいし…落ち着いて…」

 

私の言葉はこいしには届いていないみたいで、仕方無く目を瞑り小さく溜め息を吐いた。

 

「うわわっ!?……ど、どうしたのさ…?こいしちゃん…何も此方に向かって怒んなくても…」

 

 

「…だって!お姉ちゃんが傷だらけになって…それを止められなかったんでしょ?!それもこれも全部…静葉ちゃん達から聞いたもん!!」

 

 

「…こいしちゃん…えと、わ、私が悪い訳なの??」

 

「ううん。違う…違うけどぉ……!でもぉ…っ!」

 

勢い任せの会話は続く筈も無く、途中でこいしの方が言葉が思い浮かばないまま有耶無耶になり、会話が途切れる。

 

私は切り込んで話すならここだと思い、口を開く。

 

「こ、こいし……離れてくれない…かしら?…身動きが…」

 

「…………」

 

こいしの締め付けが強くなる。

 

「…こ、こいし?!…聞いてる?…ぅ、苦し…っ!」

 

私の言葉を聞いてか締め付けが緩くなったものの離してくれる気配はない。

 

 

「……っ」

 

「…ちょ、まっ…こい……きゃぁっ?!」

何を思ったのか突然、こいしは自分の全てを私に押し付けてきた。

 

…今の私では体格がほぼ一緒なこいしを支える事は出来ない。

 

のしかかられるとバランスを取るのが難しいのは毎度のこと…あっさりと押し倒されてしまう。

 

 

「さっき、幻月お姉ちゃんの時にも喋ったけど…お姉ちゃんが一番攻撃を受けて身体中が傷だらけになって…ボロボロじゃん…。なのに、なのに……お姉ちゃんは幻月お姉ちゃん達に頼らなかったんでしょ!?…ねぇ、どうしてなの…?こうなるって判っていたんでしょ??」

 

言葉に詰まる。

 

確かに私は身を犠牲にしてまで幻月達を頼らなかった。決して信用していない訳じゃない。

ただ、相棒の幻月やそれに慕っているエリスまでも巻き込みたくないと思ったからに過ぎない。

でも、それは自己満足である。結果的にこいしを悲しませてしまっている。でも、私はあの選択は間違ったなんて思ってはいない。

 

「……はぁ。お姉ちゃんが答えなくても解っちゃった。…どうせ、皆を巻き込みたくなかったんでしょ?…いつもの事だし…気にしてない…けど…」

 

私の胸にこいしの頭が乗っかりそのまま伏せてしまう。

 

その通りですよ、こいし。

 

なんて言えない。

 

胸に顔を埋めて無言になるこいし。その様子を察するによほど寂しかったのだろう。…改めて悪いことをしてしまいましたね。

 

頭を軽く撫でた。

 

「…さと」

 

幻月から私へ救いの手を差し出してくる。

何時もならそこで私が手を握る所だけど、今回ばかりはそうは言っていられない。

こればかりは他人の手を握っても解決しない。自分の手で解決しないといけないことだからだ。

 

「大丈夫です。……私に任せて下さい」

 

私がはっきりと断ると目を丸くした後、軽くアイコンタクトを取ってくる。

 

……任せた。

 

…ですか。

はい。…任されましたよ、私。

 

 

幻月はその場を後にしてエリスと共に居間へと入っていく。

 

 

私は胸に顔を埋めたこいしを撫でながら口を開いた。

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。私は平気ですから…」

 

 

その言葉に反応し、こいしが動き出す。

 

手が私の肩へとかかり、大きさがやや大きい椛さんの上着がずり落ちる。

 

下に着ていたボロボロの着物があらわになる。

 

「…本当?」

 

「…フフッ。…本当ですよ」

 

 

心配そうな顔をするこいし。

 

ですが、それよりもまずは体を洗わせて下さい。正直な話、血の匂いが気になります。

 

私の体にのしかかっているこいしをゆっくりと引かせてから立ち上がる。

 

終始、私の顔色をうかがっている様子でしたので私は誤魔化すような笑みを浮かべて風呂場の方へと向かう。

 

こいしは…なにやら複雑な表情を浮かべていましたけど、其処まで心配させていたのであればそれは私に非があるのだろう。……止める、止めないかは別として。

 

様子を見に来たお燐が足元へ寄ってくる。彼女も物凄い心配しているのでしょう。足元へすり寄って来て離れない。

 

「ただいまお燐。…ええと、ルーミアさんの今の状況だけ教えて下さい」

 

 

考えを紛らわせる為にルーミアの事を聞く。

 

後で言いたい事はたくさん言わせてあげますから、今は心配しなくても大丈夫ですよ。

 

 

 

 

 

「…そうだねぇ。神綺さんが言うには後は寝ていれば回復するってだけ聞いているけどね?…あぁ、さとりの訊きたいことはそこじゃなかったか。…今は寝ているさ。夢月とエリスに今は変わってもらっているよ」

 

 

容体は安定しているようで何よりです。神綺さんが処置を施したのであれば、後遺症が在るのか否か…記憶はどの辺りにまで留まっているのか…を調べたかったのですけど…それは後でも良いです。

 

 

ボロボロになった服を破棄し大浴場に直行。

 

振り返るとお燐がボロボロになった服を眺めていた。

 

…風呂場へ行こうとするとお燐が声をかけてくる。

 

「ねぇ、さとり。嫌なら答えなくても構わないんだけどさ…この服の有り様を見るに現在お風呂に入っている幻月が脱いだ服と大差変わりないんだけど…一体何があってこうなったのか教えてくれ」

 

……今、幻月もお風呂に入っているのですね。教えてくれと言われましても…うーん。お燐にどう説明すればいいのやら…

 

「…難しいですね。…でも、教えられる事はありますよ。…私の服がこんなになったのは妖怪の山での乱戦の一件で集中砲火を受けたからに他ありませんよ…」

 

 

風呂場の方を向きながらお燐に説明する。

 

私はその後大浴場へ繋がる扉を開きお燐の方を見向きもせずに扉を閉じた。

 

扉越しに少しだけ見えたお燐の姿は少しだけ悲しそうであった。何を考えているのかまでは読めなかったが大方の予想はつく。その後の行動にどう影響するかまでは想定出来ないし想定するつもりもない。

 

 

 

 

 

「…さ~とりぃ~♪」

 

 

お風呂に入るなり、出迎えてくれたのは私の予想通りの人物であった。

 

「幻月…私が来るまで待っていたんですか?」

 

「いやいや、そんなわけないじゃん。さっきシャワーで体についた血を隅々まで洗い流していた所~」

 

幻月は私が風呂場に入って来た瞬間、飛んでくるかのように近付いてきた。

 

「と言うことはまだ湯船に浸かっていないのですか?」

 

「…うん。…と言うか、さとりがさっき風呂場に入ってきた様に私だってさっき入ったばかりだよ」

 

…成る程。

ようは、血を洗い流し終わった直後だった訳なのですね。

 

私は幻月が湯船に入る様子を見送り次第で私の体を洗おうとそう思いその後ろ姿を眺めていたら、ふと幻月の翼が気になった。

 

解りづらいが、赤黒くなっている。

恐らく、洗い残しだろう。更にはあそこは手入れが難しい所であり自分で確認するのも至難の技であろう。そのまま入れば、お風呂も汚れてしまうだろう。なら、友人である私が取るべき行動は…

 

「幻月、ちょっと待って下さい」

 

「…んぅ?…何々?もしかして、一緒に入りたいの?」

 

「…違いますよ。全く。…貴女のその翼、洗い残しがあります」

 

「へっ?!」

 

私が指摘すると、それに驚いて幻月は翼を確認しようと後ろを見ようとするも汚れている所まで見ることは叶わず、ただただ空を見るだけであった。

 

「うぅ~…手が…届かないぃ…」

 

「………」

 

私は体にこびりついている血をお湯で洗い落とす。殆んどは服が吸ってしまっている為、派手に血の跡が飛び散っている訳ではない。

 

しかし、匂いは別。

 

流石に匂いを落とさないと落ち着いて山を歩くなんて出来ない。それにしてもわかりづらい。そこに傷があったと言うのは血の跡ですぐにわかるのですが…匂いまでとなると相当飛び散ってますね。

 

私自身がこんな惨状なせいで風呂の用意をしたいものの悠長に準備する気はどうしても起きない。

 

その為、神綺さんが創ってくれた大浴場は本当に感謝している。もしも、神綺さんがいなかった場合、私は今頃冷たい水で体を洗っていたであろう。それにこんな暖かいお湯を作る力は私には残っていない。そんな状況でこいしに手伝ってもらうなんて…申し訳ないですしね。

 

「…………」

 

「……ひぅっ?!…や、何するのさ…さとりぃ…」

 

幻月は私に指摘された翼を洗おうと頑張っているが、未だに届かず。

しびれを切らした私は、黙って幻月の後ろに立って汚れている翼に向かってシャワーをかける。

当然ながら幻月は翼にシャワーを当てられた事に対して反応を示す。

 

「貴女が頑張っているのはわかります。…ですが、一人で洗おうにもこんなにも感度が良いと……」

 

ビクンッ!

 

「ひゃんっ!?」

 

私が優しく翼に触れたその瞬間、幻月の体は跳び跳ねる。その上に変な声を上げた。

 

「…この程度で反応してしまうなら、一人で洗うなんて夢のまた夢では??」

 

 

幻月の翼は異常な位に感度が高い。なので、私が翼に触れただけでも過剰反応してしまう。

…解りやすくすると猫の尻尾や犬の尻尾と同様に感度が高いとだけ言っておきましょう。

 

ただその代わりと言った感じで無敵に等しい位の能力と無限に近い程の魔力量を備えているんです。

 

「んぅ。や、それは…そうだけぇんっ?!…だけども…」

 

「……遠慮したんでしょう?…私の事を想って」

 

友人を苛める訳では無いが、翼を洗っている際の幻月は普段よりも弱々しくて…なんか、弱味を握っている感じがして、変な気分で…その、癖になりそうです。

 

「……ぅん」

 

「…相変わらず、幻月は私一筋ですね。…そんなにも私が…?」

 

「………」

 

コクリ。

 

小さく恥ずかしがりながら頷いた。

 

「…フフッ。そうでしたか。…それなら私だって同じですよ。だからこそ、距離を取っていましたけど…。そうですね。…少しだけ時間をくれないでしょうか?…考える時間が必要なので…」

 

翼を洗いながら私は話す。

 

「…うん。待ってる…」

 

気持ちいいのか、それ以降は幻月は喋ることも無く、小声で喘ぎながら私に体をゆだねていた。

 

 

 

 

数分が経ち、私は幻月の翼を洗い終わった。

私は終わった事を告げるとゆっくりとその場から立ち、翼を動かして確かめる。

 

「…うん。さっきよりも翼が動かしやすいかな。…ありがとね?」

 

「…どういたしまして」

 

 

別に私は洗うのが上手いとかそういう特技はないのだが…喜んでもらえて良かった。

 

「さぁて、さとり。湯船に浸かろ?」

 

彼女は私の手を掴み、転ばないようにエスコートし始める。拒否する道理もないのでそのまま幻月に従い湯船に一緒に入った。

 

湯船に入った後、幻月はなにかを話すかと思っていたが結局なにも話すこともなく時間が過ぎていった。

 

 

 

汚れを落とし終わったのですぐに別の服へ着替える。

…あの服とコート…お気に入りだったんですけど…

 

 

 

 

過ぎてしまったことは仕方無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こいし」

 

「お姉ちゃん?どうしたのー?」

 

「それは椛さんのだからあまりいじっちゃダメよ」

 

 

綺麗に畳んで置いていたはずの天狗装束はいつの間にかこいしに着られていた。しかも着ている本人はクルクルと回っている。

 

「着るくらいいいじゃん!」

 

「こいしちゃんの好奇心は止められませんでした…。ちょっと付き合ってと言われて来てみたんですが…既に遅かったです。…それに便乗してお燐もなにかしてましたし……」

 

その側でこいしの面倒を見ていたエリスはアハハと苦笑いをしながらこうなった経緯を伝えてくれる。それに私は別に着るなとは言いませんよ?

でも、お燐はなにを描いてるのです?

そんなに後世に残したい貴重なモノなんです??

 

私がジト目で見ている事に気付いたお燐はあ。と呟く。

 

「あ、あたいはこいしに言われたので…」

 

 

それ以上は直接口に出さなくても読めばわかる。

 

…成る程、こいしに言われて保存用にと…

 

写真があればそんな苦労はしなくてもいいんですけど…

 

この時代にはまだ、カメラは無いですしね。

 

河童辺りなら作れそうですけど、お駄賃がどうなることやら…どうせ法外な事になるでしょうし…。

ま、法なんて無いんですけどね。

 

 

いっそのこと神綺さんに創って貰うのは…。

いえ、止めておきましょう。

ちょっと悪寒が走ったので。

 

 

カメラを手にした暁には、珍しいこと、何でもない事に対して記念だとかなんとか言って記念撮影をとりかねませんね。下手したら、神綺さんが創った恥ずかしい衣装に身を通さないといけなくなって最悪、黒歴史に……

 

いけませんね。これ以上の想像は身を滅ぼします。

ですが、有り得ることではあるんですよね。

…あの神綺さんはかなりの甘やかしする親バカみたいなモノですから。

 

…私がこう提案しなくても天狗の内社命丸家がカメラを要求して作る事にはなるだろうとは思いますが…現状ではなんとも言えませんね。

 

 

 

「…そろそろ来る頃合いかと思ってましたよ」

幻月が私の隣に来たみたいでニコニコしながら座る。

 

「…まぁ、長い付き合いだしね。ちょっと残念かな~」

 

「そこは素直に喜ぶ所でしょう?」

 

「それは、お互い様じゃん」

 

「…そうですね」

 

 

「ねぇねぇ~?お姉ちゃ~ん。私の…これ。…どう?似合ってるかなぁ~?」

他愛もない会話を二人でしていると唐突にこいしから話しかけられる。

 

よく見ると先程まで回っていたこいしがピタリと回転を止めたらしく、興味津々に此方へ意見を求めてきていたのだった。

 

 

「えぇ。ものすごく、似合ってますよ」

 

言わずもながら即答である。下に着ている服の色とはちょっとあっていませんが…それを差し引いてもこいしに凄く似合っている。と言うか、その笑顔が眩しい。…どうして其処まで純粋に笑えるのでしょうか…?

 

 

「…えへへッ♪幻月お姉ちゃんはどう思う~?」

 

「そうだなぁ…。端的に言えば服だけを見れば似合っているよ。…でも、色を鑑見れば…うーん、似合ってるけど相性が合わないからなんか変な感じにみえちゃうかな…」

 

幻月は、私の思っていた事を正確にこいしに告げる。

こいしは一瞬だけ悩むとコクリと頷く。

 

「そうなんだぁ~。…うん。でも、あ~あぁ…。私もこういう感じの絵柄の服を作りたいなぁ……」

 

 

今度、色合いも兼ねて一着作っても良いかもしれませんね。

 

そうしたら布と染料をまた集めないと…ついでに私の服を一緒に作っちゃいましょうか…

 

こいしが再びくるくると回り始める。その仕草がまた可愛い。

 

反応するにしろ私の表情は基本的に無表情でしかない。ちょっとは寂しくもあるけど、もうとっくに割り切りました。

…余談ですけど、常に一緒にいる幻月は私が例え無表情でも見え透かしたかのように思っている感情を当ててくる。昔まではただ面倒だと思っていましたが最近になってからそれが凄く嬉しい事だと言うことがわかりました。

…今更とやかく考えても無駄ですね。

 

…そう色々と考えていた所、一瞬、視界が歪む。

 

「………っ」

 

……どうやら自覚するよりも先に自分の体の方が限界をむかえていたみたいです。

 

 

 

 

私の体がゆっくりと倒れていく。

 

緊張の糸が切れた体はただの鉛と変わらない。自らの意思でもどうすることも出来ず…異変に気付いた幻月やこいし達が慌てて駆け寄って来てもそれに反応するどころかどうしていいかすら浮かばない。

 

そうしている合間にも徐々に声や音等も聞こえなくなり……。

最後には意識すらもなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

気づくと私の意識はどす黒い海の中にあった。

 

 

 

 

 

光も音もない。上に行っているのか下に行っているのか…そもそもこれは虚構か現実か……。

 

 

 

 

考えている訳でもないし考えていない訳でもない。どっちなのかと言われても私にはわからない。

 

それに考えれば考える程、訳がわからなくなってくる。無意識さんがいた方がいいんですけど…もうあれは何処かに消えてしまいましたし…それじゃあ、空いてしまった無意識を作っていた人格の部分は何が補っているのだろうか……

 

もしかして、今の私なのでは……そんな事ないか…

 

 

 

そう試行錯誤していると、突然私の目の前に見たことあるような姿をしたなにかが現れた。

 

『………』

 

あなたは、誰ですか?

 

『…そう、ですね。…言うならば私はあなたです』

 

ええと、質問の答えになっていない解答をしていますよね?

 

『…失礼しました。もし、私の事を貴女が解りやすく捉える事が出来る言葉で…あえて言うのなら…私は狭間と狭間の中…意識と無意識が作用する線(ライン)……その中心点から生まれた存在です』

 

先程よりもさらに難解になってませんか?

 

『…文句しか言いませんね?全く。…貴女の存在が人間寄りなモノだとするなら、私の存在は妖怪寄りのモノ…これでわかりましたか?』

 

はい。丁寧にありがとうございます。

 

『…今回はそんな話をしにきたんじゃありません。…単刀直入に訊きます。…あなたは一体なにがしたいんです?』

 

何が…と言いますと?

 

『…時には人間らしい振る舞いをするときもあれば、妖怪らしい振る舞いをするところですよ』

 

…ようはなんです?私が中途半端な存在とでも言いたいんですか?

 

『いえ、そうではないです。中途半端がいけないとかじゃなく…私は貴女のこれからを危惧しているんです』

 

………

 

『…本当は貴女は既にわかっている筈。このままではいけないと…。現実に目を背けているだけだと…』

 

私はこれから彼女がなにを言うかは既に察しがついていた。

なぜなら、これまでの行いは人間らしくもありつつ妖怪の暮らしをしてきました。

ですが、それが長く続くと体の方にも少しながら異変が生じてくる。

前に話したかもしれないが妖怪という存在は、少々特殊で認識という範疇で妖怪という存在が確立しているのだ。

それもただの名前や存在だけでは難しく、その妖怪の名前として人々の記憶に深く刻まれていないと行けないとか。

 

最初はそんな事をして存在が刻まれてきてはいたのだが、最近では人間のフリをする為に人々に人間としてその存在を刻んでいる。そのお陰もあって人間の里で暮らせてはいたがその反面、【さとり】としての存在があやふやとなりつつある傾向が見られていた。

ここ最近では、私の体調が時々すぐれない時があった…でも、生活するのには支障が無いため無視していた。

…ただ、最近は体調が悪いだけでは済まなくなってきている傾向が見られていた。

ですが、私だって簡単には人間を止められれば苦労はしないんですよ。

 

『いい加減、現実を見ましょう?そうすれば、貴女は気が幾分か軽くなる筈。…妖怪らしく振る舞えばその分だけ体調が回復するのです。…人間なんて止めて私の言う通りに……』

 

…煩いです!

いくら無意識の私だとしても…妖怪寄りの私の意識だたしても…自分の意思は私のモノです。

だから、私の道は私が決めます!黙ってください!!

 

『…良いでしょう。ですが忘れることなかれ。……貴女の身は一歩間違えるだけで簡単に滅びると言うことを…』

 

妖怪寄りの私はその言葉を告げた後に闇に溶ける様に消えていく。

今となってはその存在すら感じない。完全に居なくなった様だ。

 

…私の道か…。

後々考えなくては…今の私が普通に生きられる道を……

 

 

 

 

私自身との会話をし終えた直後身体が左右に振り回される。

 

この体験は現実なのか夢なのか…はたまた魂だけが揺さぶられているのかわからない。

 

ただ…なんだか安心するというか…そんな暖かさが感じられてその一瞬だけ体が軽くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ!お姉ちゃん!!」

 

 

「…こいし?」

 

視界が一瞬にして明るくなり周囲の光景が目に入ってくる。

 

その途端、目の前が妹の顔で埋め尽くされる。

……顔が近いです。

 

「ねぇ、私の事…判る?見えてる??」

 

 

「え、えぇ。見えてるわよ。こいし。…どうしたの?…そんな食いぎみに…」

 

「良かったぁ…。幻月お姉ちゃ~ん!!お姉ちゃんの目が開いたよぉ~!!」

 

「こいしっ?!」

 

タタタッ!

 

 

「さとりぃっ!!」

 

ガバッ!

 

こいしは私の応否を確認した後、過保護者(げんげつ)を大声で呼びだした。

 

幻月はそれを聞くや否や私の元へ飛び付く様に抱きついた。

 

「ぅぐっ?!……げ、幻月…?…そんなに走らなくても…良いじゃないですか…私は何処にも行きませんし、消えないですから…」

 

 

「ホントに…もぅ…!無理しないでって予め言っていたのに…」

 

「すみません。…これからは気を付けますので…」

 

「…これで何度目かなぁ…。まぁ、もういいや。急に倒れた時にはどうにかなりそうだった事…忘れないでね…?」

 

「肝に命じておきます」

 

幻月は一安心した様でようやく私から離れてくれる。

 

 

 

 

 

 

が、その瞬間に隣の襖が勢いよく開き誰かが顔を覗かせてくる。誰だろうと思い私は視界を邪魔しているこいしを避けて、見ようとする。

 

 

 

「おいおい…さとりぃ!…私達が居るってのに、何無言で帰っているんだよ…つれないなぁ…」

 

 

何故か萃香さんがいた。

 

目の錯覚でしょうか?…私はまだ疲れているようですね…

 

気のせいだと思い襖から目を背けようとする私だったが、その意を汲み取ったのかその行動に対する返事が帰ってくる。

 

「…貴女には悪いと思うけど、私もいるわよ」

 

萃香さんの上から華仙さんが顔を覗かせる。

 

ナイスバディが頭の上から押し付けられ萃香さんがムスッとし始める。

 

いくらなんでもそのイラつきは理不尽でしょうに…

 

私がそんな顔をしたのをみた幻月は、そっと私の側に近寄り小さな声で喋りだす。

 

「…胸の大きさで気になるヒトはいるんだよ。特に今は貴女の事が好きだからね…。誰が最初に誘えるか競っているんじゃないの……?」

 

…そうなんですかね?

私自身は気にしたことありませんが…

 

…じゃなくて、腕が完全になくなっているならこんなところにこないでしっかりと安静にしていてくださいよ…

 

 

「おう、起きたのかい?だったらこっち来て顔見せてくれよぉ!幻月だけいい顔はさせないぞぉーーー!」

 

ひときわ大きい声が二人の奥から聞こえる。

ちょっと待ってください。まさか勇義さんまで来ていると!?

 

「…勇義さんも来てます??」

 

「あぁ。うん。と言っても聞いただけだったし。なんだったら最初にあの三人と会話して家へと上げたのは神綺さんだし」

 

幻月は淡々とその事実を口にする。

どうやら現実を見ないといけないようですね…

 

幻月が言うにはあの三人は先に私達が帰ってしまったのを怒って、何故か私の家で宴会をしようとしていたらしい。

 

それなのに当の本人は寝込んでいると、きたものだから…三人は家に上がったのは良かったけどもその後はどうしようかと悩んでいたみたいです。

 

…何故と言う疑問が生じますが皆さんはなんで私の家に集まってくるのでしょうか?

幻月が言うには、私は無条件でヒトを惹く才能があるとか…そのお陰なのか今こうして鬼の三人が集まっていますし、その前にも神綺さんやカナさん、紋さんに楓君等々の縁を結んで来ていますしね…

 

 

一応、妖力が洩れないように華仙が結界を張ってくれたとはいえ、覇気や空気の流れまでは遮断出来ませんよ?

 

多分、ここで威圧なんてしちゃったらそれこそ外の空気に影響しちゃいますし…そこは押さえてくれますよね?え…酒が入ったらわからない??

 

それじゃ、お酒は無しで…って嘘ですよ、嘘。

 

だから、この世の終わりみたいな顔しないでください。

 

「ねぇねぇお姉ちゃん。あの一本角の鬼さんってなんて名前なの?」

 

「ん?こいしもあった事少しだけあるでしょ?…勇義さんよ」

 

「へぇ~あの一本角の鬼さんって勇義って言うんだ~」

 

 

あぁ、こいし。何故今まで知らなかったのですか…前にもあって少し会話したことあるでしょう…。

あのヒトは近付いたら地形が変わる攻撃をしてくるヒトトップスリーに入っているヒトなんですよ?

 

攻撃時の貫禄を見た日からは絶対に忘れる事が出来ない人物なんですから覚えて下さいよ…

 

こいしははーいと軽い返事をして勇義さんに近付いていく。…ホントにわかっているのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

「…コホン。話は変わりますが…こんな人数で良かったのですか?」

 

「んぅ~…。まぁ、良いだろ。後から誘った奴等もいずれ到着するだろうしな」

 

 

一体何人誘ったんです…?

まぁ、萃香さんの言うこの宴会は犠牲になった妖怪達の弔いの意を込めた宴会ではあるらしいが、そういう大掛かりな大宴会はまだ先の話らしく、我慢できないこの人達を中心にフライングで私の家に突撃しているって言うのもあるみたいだ。

 

 

 

 

「誰を誘ったのか…ですって?…そうね…まずはカナって言う騒霊を誘って…次にその辺を歩いていたスターサファイアって言う妖精を誘ったかしら…いずれも貴女達の知り合いみたいだし…」

 

「妖怪の山関連ってことで天魔を呼びたかったんだが生憎と事後処理で忙しいと言う訳で、天魔代理として紋の奴を呼んだな。そして、もう一人会わせたい奴が居たからそいつも呼んだ。興味津々で聞いていたから多分、もうすぐ来るだろうな」

 

そんなに呼んだのですか…まぁこの場所は神綺さんのお陰で広くなりましたしその程度なら大丈夫でしょう。

にしても私達に興味を持つ人物とは一体……?

 

 

「いや~。にしてもさとりが居なかったらこうやって酒を飲むなんて事も出来なかったかもしれないからねぇ…」

 

 

そんな大袈裟な…私はほとんど何もして無いですよ?

 

私がやっていたのは神綺さん達が来るまでの時間稼ぎくらいですし……

 

 

 

…ってちょっと萃香さん!?

二本目を開けるのは良いですけど、まずは一本目を空にしてにしてくださいよ…

 

 

 

「いいじゃないか。どうせすぐ無くなるんだから」

 

そうですけど…

 

と言うか、家の主人が寝ている合間に人の家でなに酒を飲んでいるんですか…

 

「ごめんくださ~い。勇義さん達に誘われてやって来ました~」

 

「はいは~い、待っててねぇ~」

 

「お、噂をすれば…だな」

 

玄関の方から声が聞こえる。神綺さんが私の代わりに出迎えに行った。先程、勇義さんが言った私達の事が気になっている人物なのでしょう。

 

 

 

 

「お、お邪魔しま~す…」

 

「おう、待っていたぞ。私達を除けば、お前が最初の一人だ」

 

部屋に入ってきたのは、小柄な少女であった。

見た目は何処かの国ではナースと呼ばれる服装をしており、身長は大体145cm~150cm位。

髪色は黄色く、金髪と言う程黄色ではない。

短髪であり、髪飾りを後ろ髪に付けている。

服はかなりはだけており、端から見れば巫女の様にも見える。

 

「…えぇと、その。初めまして。…冴月驎(さつきりん)と言います。…辺境の森で小さな病院を営んでおりまして…今後共、お近づきになれたらばと…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

肩書き ???

名前 冴月驎(さつきりん)

能力 空気の違いを見極める程度の能力

特殊能力 麒麟の血脈

・古の神獣である麒麟の血を色濃く受け継ぐものだけが持つ特殊能力。滅多な事では死ぬ事が無く、老いもしない。殆んどが蓬莱人の様な力を持つも一つだけ違う点がある。それは負傷箇所や様々な病気、更には疫病ですらも自らの力を行使する事で、一瞬で完治、治癒出来る特徴を持つ。

ただし、呪術系統や魔道の類における精神汚染系統の症状は専門外であり、この力を使っても完治、回復は見込めない。…が、それらに対する耐性と知識なら専門家に匹敵する程持っている様だ。

 

現在の身体ステータス

 

耐久 B+

体力 A-

防御力 B

魔力 SS

速力 B-

 

 

 

所持スペルカード

花符『月花水鳥(げっかすいちょう)』

烈風『風凪散花(かざなぎさんか)』

雷符『閃光召雷(せんこうしょうらい)』

音符『震音斬波(しんおんざんぱ)』

幻獣『麒麟の雷落とし』

『神獣麒麟(しんじゅうきりん)の滅尽亡雷(めつじんぼうらい)』

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

名前を聞いて唖然とする。

私の前世記憶の中でも特に印象が強く残っている人物名だ。

歴代東方プロジェクトの第六作目、紅魔鄕にて本来参戦する予定だったボツキャラの名前である。

 

当初の神主は、三人目の自機として追加させる予定らしかったが、製作途中でファンの皆が経緯もない状態で突然の新キャラを自機として追加するのはどうかと言う事になり、結局発売時にはそのキャラはボツにされ忘れられてしまう。

 

 

…しかし、誰かがその解析に成功する。それで判明したのが【冴月驎】というボツキャラの存在である

そこから、冴月驎を登場させた二次創作が有名になり更にはそのキャラデザインまでもが今でも作られているとか…。

 

 

 

「いえいえ、ご丁寧にどうも。私の名前は古明地さとり。ぜひ私の事はさとりと気軽に呼んでくれれば、貴女の事は驎と呼びますので」

 

「私は幻月。こっちも気軽に呼んでもらえると嬉しいなぁっ♪」

 

驎は、はい!と答える。

その後、驎は私の隣に座った。会えて余程嬉しいのか時々、私の事を見てははぁ~と嬉しい吐息を洩らす。

 

そんなに見られると恥ずかしいのですが…

 

と新しいお客さんの驎に話しかけようかなと思い口を開こうとする。

 

「お酒って美味しいね…♪初めて飲んだんだけど…」

 

唐突にこいしが喋りだす。

 

こいし…こんな状況なのによくもまぁ……

 

「あ、それ私の盃…」

 

ぼそりと勇義さんが呟く。

 

いつの間にか勇義さんが持っていた盃をこいしが手にとっており、周りを気にせずごくごくと飲み始める。

 

……良い飲みっぷり…じゃなくて、こいしぃぃぃぃっ!?

人の…あ、ヒトじゃなくって、オニ…そう、鬼の盃を勝手に使っちゃ駄目でしょぉぉぉっ!?

 

「あー…ま、まぁー気にするな…」

 

なんで顔を赤くしているんですか、勇義さんは…

幻月はそれを見てぼそりと『間接キス…』と呟く。

 

…。

別に良いとは思いますけど…気にします?そんなに。

 

 

 

「それにしても、酔うってどんな感じなの?」

 

 

 

「…私は、解りません」

 

 

 

 

私は飲んでもほとんど酔った事がない。少しだけ頭の回転が鈍るくらいですね。

幻月はそれを酔った状態って言うみたいですけど…。

うーん。酔った酔わないの判定がわかりませんね…いっそのこと個人の匙加減で大丈夫という制度を作りません?…作れない?あぁ、そうですか…

 

話は戻しますけど、こいしは私と同じでお酒を飲んでもほとんど酔わないかと思いますが…

 

 

「へぇ…??妹の方はお酒が飲めるんだ…。ふぅん?」

 

こいしがお酒を軽々と飲んでいる様子を見て三人は、此方を見て意味深な事を呟く。

 

ええと、華仙さん?なにお酒を注いでいるんですか?

別に飲ませても良いですけどほどほどにお願いしますよ?

 

 

 

 

 

「あの……萃香さん?なんで私にお酒を注ごうとしてるんです??」

 

「良いじゃんか、少しくらい」

 

 

……私は特定のお酒しか飲めない体質なので…遠慮します。幻月の持ってくるお酒なら飲めそうではあるんですが…今は、どれも切らしていましたね…。

色々とあった毎日だったので幻月に頼む余裕すらありませんでしたし…今度頼んでおきましょう。

 

「「お邪魔しま~すっ!」」

 

「あらあら?いらっしゃい♪上がって上がって、既に集まり始めているわよ~?」

 

「えぇ~?早すぎだよぉ…」

 

「まあまあ、カナさん。良いじゃないですか。まだ着いていないヒトも居ることですし…」

 

カナさんやスターも到着したようですね。顔を見るのは久しぶりな二人です。

 

「さとりさん、お久しぶりです。宴会に呼び出されて来ちゃいました♪」

 

「幻月さん、さとりさん。二人とも大変でしたね?他のヒト達もお疲れ様です。今日は一杯楽しみますね」

 

「ねえ、なんか他のお酒置いてない??量的に合わないわよこれ?」

 

「あ、だったら私が持ってこようか?人間達とは顔見知りだし…どうせわたしたちがいるのは、あっちもわかっているだろうし…」

 

 

本当に自由な人達ですね…。というか、お酒しか持ってこないとかどういうつもりで宴会を開こうとしているんです?

…普通、つまみとかも持ってくるものじゃないんですか?

 

……あぁ、そういう…。後先、何も考えてないんですね…この人達が開く宴会は。

 

 

「それじゃあ…何か食べるモノを作ってきますから少し待っていて下さいね。…もし、なにかあったらこいしかお燐、夢月に神綺さんに聞いて下さい」

 

 

「……あ、お姉ちゃん。私も作るの、手伝う~」

 

 

「気持ちは嬉しいわこいし。…でもね、多分お酒に酔っちゃっているから……うん。お皿を用意するときに呼ぶから」

 

 

こいしは、ちょっと考えてから『はーい』と言って元の場所へと戻る。

酔っている状態で料理を手伝われても危ないし危険だから気持ちだけ受け取っておくわ。

 

 

 

さて、おつまみってことですけど…早めに出来上がるものから作りましょうか……。

 

 

 

 

油を使いましょうか。

…えーと、しまっている場所は…床下収納(ここらへん)でしたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、後ろに気配を感じて我にかえる。

 

料理に夢中になってしまっていたようです。息遣いや歩幅からして…こいしですね。

 

「おねぇちゃ~ん…。このお料理…持っていっちゃって…い~い~?」

 

少しだけアルコールの匂いが漂ってくる。程よく酔っているのでしょうかね。

 

「えぇ、構いませんよ」

 

 

「みんなぁ~お姉ちゃんが料理を作ったみたいだからぁ…運ぶねぇ~♪」

 

 

 

顔が少しだけ赤くなっているこいしが料理をどんどん持っていく。

 

あ、こいし。そのお皿は後でだから…先にこっちね?

 

 

 

「どっちでも良いけどぉ……まあいいや!」

 

パタパタと軽い足音が遠ざかっていく。

 

同時に、酒の席の方がまたガヤガヤしだす。

 

「なにこれぇっ?!見たことないけど…」

 

「私も知らないよぉ~!」

 

こいしも知らないのも無理はないです。だって、普段は作りませんからね。お酒のおつまみなんて調味料が無駄にかかりますしね……

 

…って、あれ?会話がここまでダイレクトに入ってくるって事は…こいし……台所の襖を開けっ放しにしているわね…?

 

今、火元の管理が忙しいから手が離せないと言うのに…

 

 

 

 

 

「ん?!…これ、美味しいね♪」

 

 

「んぅ~♪本当ねぇ♪お酒にピッタリと合うじゃないっ♪」

 

 

「でしょぉ~♪お姉ちゃんの料理って初めて見るのが多いけど、全部美味しいんだよぉ♪」

 

 

 

喜んでくれたなら幸いです。

 

あと、紋さん。おつまみなんですから、お酒に合うのは当たり前なんですよ。

 

 

まあ、この時代にはまだ料理方法すら確定していないものばかりですからね。

 

それらを思えば、こんな美味しい料理を産み出した先人達は凄いですよね。

 

そう言えば、先程気がついたのですが…誘った人物が多すぎませんか?

此処から見て、カナやスター、今日知り合った麟さんそれに料理に夢中になっている間に紋さん、以前に知り合って以降、たまに此方の家に遊びに来ている火車(かしゃ)の炎鼎桜(えんていさくら)さんも来ていますね。更には神綺さんやエリス、夢月に幻月も一緒に混ざって…これじゃもう小宴会という話ではなく、既に大宴会状態ですよ……。

 

周りに聞こえない小さな溜め息をつき、次のおつまみを作るために、まずは火元の管理を再開しようとする。

 

「…ねぇ、私もお手伝いしようか?」

 

後ろから声が聞こえる。このノリと言葉遣い。

幻月でしょうね。今回は大丈夫だから手伝わなくても良いって釘をさしておいたのに…仕方ないですね。

 

「幻月?…前にも言いましたが、今回は手伝わなくても……」

 

と、後ろを振り向く。

しかし、そこには幻月の姿はなく、代わりに萃香さんの様な見た目をした少女が立っていた。

 

「…???あぁ~…。幻月ならあっちにいるけど…呼んでこよっか?」

 

「いえいえ、いいですいいです。あのヒトは少しだけ過保護なので、呼ぶのはやめて下さい」

 

 

「あ、ご、ごめん。名前を呼ぶものだからつい…」

 

 

と少女は苦笑いで謝る。幻月と似て友好的ですね…その見た目に反して。

 

見た感じは萃香さんにそっくりですが、雰囲気は年長者のお姉さんって感じですかね。

頭には二本の角が生えており、禍々しい形をしています。

髪は長く色は水色とクリーム色のメッシュ。

服は蒼を中心として不思議な形を模しているドレスを着ております。

まるで何処かの地獄の行政官及び閻魔様の様な風格を感じますね。

 

 

 

 

「いえ、いいです。そんな事は。それよりも、貴女は?」

 

「…あ、まだ、名乗って無かったね?私は時焉侑(じえんゆう)。萃香とは旧友でね?友達が桜ちゃんなんだ」

 

・・・・・・・・・・・・・

 

肩書き 次元と時空の管理者

名前 時焉侑(じえんゆう)

能力 時空を操る程度の能力

特殊能力 仮想時系空間(ディメイションリープ)

・予め想定した時系列と設定を元に仮想空間を創る事が出来る能力。その空間は過去と未来をリアルタイムで再現する事が可能である。

また、その空間は入っている間は時間が進むことは無く、あらゆる事態の想定にも仮想空間が柔軟に変化し対応が可能である。

 

特殊能力2 権能-再現

・対象がこれまでに対峙した敵、状況、時間を記録として読み取り、その記録を忠実に再現させる地獄の管理者としての権能の一つ。その権能は地獄に堕ちたモノの罪を再現し罪人に追体験させる為の能力である。

 

所持スペルカード名(東方のEXボスとして使う想定)

時符(じふ)『千壊時復(サウザウンドリープ)』

時獄(じごく)『再骸亡讐(リターンズリヴェージ)』

弐獄(じごく)『儡醒渇亡(アイドルブリテンダー)』

惨獄(さんごく)『刺躰猟奇(カラミティア)』

死獄(しごく)『望まぬ再壊(さいかい)』

誤極(ごきょく)『偽審冤罪(フェイトオブギルティ)』

無寒(むかん)『終無滅罪(エンドレスギルティ)』

那由多(なゆた)『永遠虚空(インフィニティボイド)』

八寒(はっかん)『極寒地獄(ごっかんじごく)』

『超次元圧縮(ハイパーミッシッング)』

 

 

ステータス

 

耐久力 SS

筋力 SSS

防御力 Unknown

魔力 SSS

速力 D-

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

へぇ…桜さんとは友人なのですか…。

確かに侑さんの見た目的に地獄にいるモノだとわかりますね。

「ご丁寧ありがとうございます。私の事は知っている様ですが…改めて、私はさとり。古明地さとりです。あ、そうそう、お手伝いは大丈夫ですよ。ぜひ、宴会の席にて待っていて下さい」

 

「…そう?…貴女がそう言うなら、お言葉に甘えるね。…無理しないでよ?萃香が心配するからさ…」

 

侑さんは、それを言った後気配が去っていく。

…萃香さんが心配するですか…下手をしたらあの萃香さん、侑さんに八つ当たりでもしてそうですね…どうにもならない気持ちを紛らわせる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……。

 

「……こいし。つまみ食いしちゃ駄目ですよ。…貴女が物音立てないようにしてても私から見ればバレていますから」

 

 

「…ぅっ!?」

 

気配とか音を消していても空気の流れだけでわかりますから。

 

 

箸でお肉の状況を見ながら感じとる。…ちょっとだけ、神経使いますね…。

 

おっとと、そろそろ仕上げですね。

 

 

「……えーと?そう、摘まみ食いじゃないよ。ここでの食事だよっ♪」

 

 

「あぁ、成る程っ!食事でしたかぁ~!…なら、大丈夫ですね。…はい、どうぞっ!」

 

 

……って、良くない無いわよっ!

 

ついつい、幻月との何気ないボケとツッコミのノリでやっちゃいましたけど、駄目ですからね??

 

ちょ、開き直っちゃって…普通にモグモグと食べているけどそれ……萃香さんの好物ですよっ!?

 

いくら見た目が見たこと有るなと思ったからって……そんなに食べるなんて…お腹すいているのなら今から作りますから。

……うっ?!負のオーラがなんか流れていますし…。

 

 

丁度作っていたモノが出来たので、火を止める。一通り作りましたし、もう良いでしょうかね。

 

「さて、料理を完成しました……よ?」

 

 

物凄い形相でこいしを見ている鬼が一人…

 

 

ちょっ!?怖い怖い!!

萃香さん!怖いです!!あと、襖、壊れる!壊れますから!!

侑さんは萃香さんの事を泊めに入った様だ。

 

…でも、これは時間の問題かもしれない。…早くしないと萃香さんと侑さんの下らない争いに発展するかもしれませんね。

 

とそこへ私の視線を追って後ろを振り返る人物が…

 

「あ、萃香さん!一緒に食べよぉ~♪」

 

いやいやいやっ!そうじゃなくて!!…他にこう…言うことあるでしょう?!

 

 

「お!良いのか?!ありがとな!」

 

それでいいんですか!?

 

本人が良いって言うならいいんでしょうけども…そんなんで良いんですか!?

 

 

 

残っていた料理を向こうの部屋へと運んでいく。

 

案外、怒って無さそうですし…どうせ、最初から怒っている訳では無さそうでしたので…まぁ、気にしないでおきましょう。…侑さんは、『はぁ…』と溜め息を吐いた後、アイコンタクトでごめんねと謝罪してましたよ。

 

私はそれにたいしてアイコンタクトで大丈夫と送り返しましたが。

 

 

「あ、さとり~主役なんだから、こっち来なさいよぉ~」

 

「ねぇ~神綺さんの酒の酔い方エグいんだけどぉ…!」

 

「なんでそんなに嫌うのぉ~。グスン…お母さん、悲しいわぁ……」

 

「し、神綺さん!大丈夫です、大丈夫ですから…ほら、水、飲みます??」

 

「エリス、酔っぱらいに無理しない方がいいわよ。そのうちだるがらみをしてくるから」

 

 

「…………。空いている皿…片付けちゃいますね」

 

 

 

茨木さん酔いすぎです。

 

あと変に絡んでくるのやめてください。

 

他の人達も随分と騒いでいますね…目を思わず瞑りたくなる程に。

 

私に絡み酒をされると凄く迷惑なんです。

 

以前にそれされて現に二回も意識を落としていますし最近、そのせいでサードアイがつぶれて一時期、再生するのに時間がかかっている黒歴史があるんですから!

 

 

 

…勇儀さんも酔いつぶれてるお燐に無理矢理飲ませようとしちゃだめですよ。

 

いやいや、どう考えてももう限界超えてますよ!

お燐もお燐で無理矢理飲もうとしちゃだめだから!!

 

 

 

 

 

そんなことを考えていると急に腕を掴まれてその場に座らせられる。

 

直ぐ真後ろに茨木さん。

 

膝の間に座らされたようです。

 

 

 

「……茨木さんっ!?」

 

 

 

「なでなぁでくらいはぁ~…いぃ、でしょぉ~?」

 

 

 

そう言って頭を撫でてくる。

 

…絡み酒されて無理矢理飲まされるよりは大分マシですが。

 

 

…あの…別に嫌では無いですけど、…いや、もう酔っぱらっていますし言っても聞こえませんね。諦めましょう。

 

 

 

 

そう言えば、私が誰かに撫でられるなんてことは今までなんて無かったです。

 

 

華仙さん、酔っぱらっていても撫でるのは上手いですね…。

気持ちいいです。

はぁ…。これはこれで悪くないですねぇ…♪

 

 

 

 

 

「あぁ~。お姉ちゃん…いいなぁ~」

 

 

気持ちよさを堪能しているとこいしが此方を見て羨ましそうな声を上げる。

 

「ん?…それなら、私が撫でてやろうか?」

 

 

 

「えぇ~。勇儀さんは…その、なんかぁ、力を有り余って逆に私が潰されちゃいそうかなぁ~ってぇ……」

 

 

 

 

 

いやいや、こいし…それは言い過ぎでしょう…?

 

 

 

「…ぁあ~、確かになぁ…。…前回の無茶振りの時に私が撫でたその時に一回だけ萃香の頭を潰して、そのあと喧嘩になったんだよなぁ…」

 

 

はぁ!?

それ、かなりの黒歴史が過ぎるでしょっ!?

 

 

 

 

 

 

 

まあ結局は、全員がなんだかんだで帰った後に私が片付けをして…

 

ゆっくり……というわけにもいかなかったけどお酒を飲んでも酔わなかった幻月や夢月、麟や侑さんに手伝って貰った。

 

 

 

 

 

「……起きないね」

 

あの騒ぎに近い宴会の中で私はずっと気になっていたのだった。

 

 

 

こいしが時々見に行っていたようですが…

 

全然起きる様子はなかったみたいですしね……

 

 

 

現在もルーミアさんは、ぐっすりと寝ているようで…未だ起きる気配はない。

 

あの術式を神綺さんにやってもらって、勿論自分は無力で悔しいと言う感情はありますけど…

でもと言って今すぐ強くなろうとは思えない。

 

この負の感情の連鎖は自身の破滅を及ぼしかねない。だから…もう忘れることにする。

 

いつまでも引きずっては、神綺さんに助けて貰い安静にしているルーミアさんに示しがつきませんから。

それに、幻月達にも悪いですし…

 

 

 

「んぅ……ふぁぁ…」

 

「あ、起きた!」

 

「……さとり、幻月……ただいま」

 

「「……はい。お帰りなさい。ルーミア(さん)っ!」」

 

以前とは比べ物にならないくらいに弱体化している大人なルーミアさんの目が開く。そこにいた全員がルーミアさんへ帰還の挨拶を交わして宴会以上に喜んだのだった……

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