東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~ 作:龍姫★サキ
…バゴーン!!キンッ!!
…ビュンッ!!ドンッ!!
様々な飛来物が霊夢を襲うもそれを力で押し切り、魅魔の元へ近寄り物理で一撃。
その力押しでは流石の魅魔の持つ絶対魔力障壁すら機能せず連続で直接攻撃を喰らってしまう。
「チィッ!!博麗の巫女め…相変わらずの力押しか…お陰で絶対魔力障壁で守る意味すらないよ!!」
「お誉めに預りどうもありがと!!残念だけど、これで…仕舞いよ!!!…霊符『夢想封印』!!」
霊夢が持つスペルカードが光出す。其処から生み出された陰陽玉がバリアの機能不全に陥った魅魔を容赦無く襲った。
「……くっ!?…まさか、これ程とはな…正直私の情報と今の状況とでは確実な見誤りが過ぎた様だな。…フン。確かにあんたは他の歴代巫女とは格が違うさ…私はお前達と最と此処で遊んでいたいけど、どうやらここまでのようだ。ここらで退散させて貰うよっ!」
魅魔はかわし切れず何発か貰うもすぐに体制を建て直し魔力障壁でカバーした。
その直後に魅魔は唐突と身を黒い霧に変えてこの場から消え失せた。
「そっちから仕掛けておいて……逃げる気!?」
霊夢は止めを射さんと持っていた札を前に勢い付くも消えてしまい立ち往生する。
「戦略的撤退って奴さ。まぁお前達とはまた会うことになるかもねぇ…いずれにせよここじゃ、私の本気は出せない。…また会おう。博麗の巫女。次は、こうは簡単にいかないよっ!!」
その声だけを最後に魅魔の気配は完全に消える。
戦いは終わった。
結果は、魅魔の逃げで引き分けといった所である。
「終わりましたね。…霊夢。判っていると思いますが…」
「判っているわよっ!母さんが言わずともね。……今は異変解決が最優先よね。立ち往生する暇あるなら先に進む事。それがなによりも異変解決の糸口になるのだから。」
霊夢は悔しそうにその場を後にするのだった。
私はその背を見るも掛けてあげる言葉が見つからずただただ呆然とついていく事しか出来ないのだった。
暫く飛んでいると突然真上から声が聞こえる。
「其処。止まりなさい。」
…気のせいかな?
「…なんか聴こえた気がしたけど誰もいなさそうだし、先に行きましょうか?」
「そうですね…」
私がそう言い再び前に進み出す。
「……ちょっ!?貴女達ぃ!?女神の声を……この私の声を無視するのは流石に無いでしょ!!ねぇっ!!」
とまた、上から聞こえてくる。
流石に気のせいじゃ済まないので見たくない頭上を見る。
「やっと気付いたわね。…待っていたわよ。………じゃないっ!!遅いのよっ!気付くのが!!!」
「あら?ほんとね。真上を見たら女神の形をした仏像が一つ。貴女が話しかけて来てる感じ??」
そう霊夢が問うとノリが良い感じに答える
「そうよ。私は地獄に昇る月。別名【地獄の月】の異名を持つ女神。名前はキクリ。英訳すれば【ムーンオブヘル】と言うわ。覚えておきなさい。」
身体は金色一色で統一されており、髪色も言わずながら金色。
…ただし眼の色だけは限りなく違い、翡翠と銀色の二色の色に統一されている。
また、身体は仏像の様な光沢を放っており、丸い球体に収まる形で浮いている様な姿をしている。
足は動かせない様だけど、見る限り腕や手首なら動かせる様ですね。
…本人のそれで困ってないか?って知りたくなる位にですが…
「…貴女達。此処に来るという事は、もしかしなくても此処等で暴れている亡霊剣士。名を地獄亡霊騎士…別名では【冥剣士】の異名を持っている【コンガラ】という奴を倒しに来た地上世界で生きる人間でしょ??」
キクリは核心を突くように訊ねてくる。
流石、女神様です。概ね大当たりです。
先程キクリさんが説明した通りで、この地獄で暴れている最強格を誇る騎士が幻想郷を支配しようとするのはコンガラだ。別の異名としてあげられるのは【冥府の亡霊騎士】。英略すれば【アストラルナイト】。
性格は正々堂々の武士道派である。喋り方は未だに判らないけど…きっと、前世の知識を頼りにした姿だけみれば、礼儀正しい女性だと言う事が見た目から見て解る。
「えぇ。そうよ。私達はこんな馬鹿な真似をする奴を止めに来ただけなのよ。だから、さっさと通してくれない?そしたら痛い目見ずに済むわよ??」
霊夢がそう言い切った。
「そう。なら尚更通す訳にもいかないわ。言ったでしょ??この先は危険なの。命を落とす可能性があるからこうして忠告して、更には此処を通さない優しさだって有るんだから」
きっぱりと霊夢を見下して断言する。
『通す訳にいかない』と。
「あっそ。なら、仕方無いわ。平和的解決の為に話し合いで解決出来たなら私もあんたも楽できて一石三鳥だったのにね…」
霊夢はお祓い棒をキクリに向けて戦闘体勢へと入る。
私はというと、霊夢の成長の為にひたすら見守る事にする。
…これも後の霊夢が送る異変解決の為の名声の為。霊夢の自信の為なの。
私が此処で出来る事と言えば、霊夢の手伝いをする事じゃなく、義理の親になってしまったさとり妖怪である私の宿命だと察するのであった。
「フフッ。確かに。私も同感です。此処で貴女達が引き返してくれれば、私だってこうやってしてまで追い返しはしないのですから…!」
キクリはその状況をクスリと笑い、その刹那弾幕による攻撃を繰り出して来た。
「くっ!この弾幕の量……。流石地底の女神の様ね!!」
「光栄ね?博麗の巫女さん??地獄に来てまでご挨拶な事。確かに貴女はここ地獄を牛耳っているコンガラと言う人物の野望を阻止する為に…簡単に言えば倒そうとして此処へと来た。違う?」
…キクリは攻撃の手を緩めることは無く、その状態のまま霊夢に冷徹な表情をして問う。
「…そうね。コンガラは、魔界のサリエルと言う人物と結託して、私達の住む幻想郷へと侵攻しようとしている」
霊夢は目を瞑り自分の感想を告げる。
「…ま、私的にはどうでも良いけど…安息の地、平和な土地を侵略してまで脅かそうとするなら、話は別よ?この私。第八代目巫女。博麗霊夢が元凶を悉く潰すまでよ!!」
霊夢はそう宣言する。
キクリはそう言う事を聴かされる事を判っていたかの様にクスリともう一度笑い、その質問にノリが良い様に答えた。
「フフッ。判りました。貴女の目的とその理由が明確な事でそれを考慮すれば確かに貴女達が住む世界が脅かされます。……ですが、尚更、私はこの先へと進ませる事は出来ませんね。…コンガラに勝つなら私を打ち倒す位の強さがありませんと。」
キクリは力を貯め始める。
「判っているとは思いますが、スペルカード発動しますよ!!」
……私は霊夢に口を開け警戒させた。
「判ってる!警戒は越したことは無いから!ちょっと黙っててっ!!!」
霊夢が私に反抗した。
……暴言が過ぎるかも知れないが…
「……暴言が過ぎるのも問題点ですが…それが後の霊夢らしい性格になるのですから、仕方無いですね。」
「金光寺、徐晃寺、金閣寺……全ては煌めく夢の中…。歴史の戦禍に呑まれ滅び行く…。…取り戻すは偽りの寺の色。…違いに気付かぬ愚かさに泣き崩れて自壊しなさい!」
「…偽憶『銀閣寺の七枚天井』!!」
キクリがそう宣言すると自分達の頭上に埋め尽くさんとばかりの弾幕が、私達を襲う。
「……というか戦闘参加してない私も犠牲になるのですか!?」
と私は大声をあげる。
「それは当然でしょ?貴女も異変解決へ来ているのでしょ?なら、その渦中で巻き添え覚悟になるのは、貴女自身、覚悟してきたのでしょ?」
かの当然の様にキクリが反論を返す。
「…私は霊夢に、もう反論を返せぬ程、強制的に異変解決の為だと強制に連れてこられただけです。」
「…まぁ!?…それは御愁傷様。でも…素直に『行かない!』…と反論をしなかった貴女が悪いわよ?…幻想郷と言う場所に住む家に閉じ籠れば良かったんじゃない?…それでもこうして私の目の前に立っていると……」
「…なら簡単ね?それは貴女の自業自得。…それで話は終わりね。巻き添えで貴女が死んでも、ついてきてしまった貴女が悪いわね。」
……ド正論だった。腑に落ちた。
確かにあのまま私が行かないと言い続ければ霊夢だけが此処へ来た筈だ。それなのに心配で霊夢についてくるだけついてきてしまった。
その因果応報が今のザマだ。
…致し方ない。
霊夢だけの異変解決を見届けるつもりだったけど…私が巻き込まれるのは流石の流石にゴメンだから。
…私が珍しく二度も同じ事を言ったけど…その位窮地に立たされている。
…私だって巻き添えで死ぬのはゴメンだから……。
だから……。
「…すみません。霊夢。…今回は私があのキクリを倒します。手柄を奪う事はすみません。ですので今回の件で悪く思うなら後で怒って下さい。…どうやらこの世界のコンガラは私が思っている以上に厄介な存在になっている様ですしね…」
私は溜め息混じりでスペル詠唱を始める。
「…母さん??何で…?」
霊夢は、呆気ない声で私に訊いてくる。
「…たまには親の顔をさせてくれたっていいじゃないですか。それに、今回の異変は、少々厄介ですから。…下手をしたら…魔界にいる陣営すら此方に回さないといけなくなるかもしれませんが…今はさておいてキクリという奴を倒します。良いですよね?」
それを私は受け答えする。
霊夢は、此方の顔を垣間見た後溜め息を吐いた。
「良いんじゃない?…殺られないでよ?母さん。私は母さんのサポートに回るから…奴を…お願い。」
「舐められたモノですね。我が娘ながら立派になりましたね?…でも、素直になれないのは頂けませんけど…それは、あいつを倒してからですね。」
「…ッ。(私が編み出した新スペルの一つ、変質『―――』。この―――の部分にかかれた名前の者の姿や話し方の全てに為る力がある。…また、私の前世記憶にある者達の姿や喋り方すらも…誉められたモノではないけど…このスペルはエリスの能力から得た物だから…解かない限り永久にその人物として過ごす事も可能なのだ。…だから。)」
「…私に月の守護者たる巫女の力を貸してください。……スゥ…。」
私は、そのスペルの詠唱を始めた。
「…月の叡知。その師範。そして無敗なる月の守護。今、その狂気を纏い、私を依り代にして顕現せよ!変質『綿月依姫』!!」
そう私が詠唱仕切ると、私の姿が変質していく…。
背が伸び、髪色はピンクから薄紫色へ、髪は伸びポニーテールに結われる。
懐刀が生成されそれは頭に神刀『月詠ノ大太刀』と言う名前が思い浮かび、その使い方や近接戦闘の極地、持ちうるスペルカードを枚数等々。
姿が代わり、目の前の敵を凝視する。
そして、私は一言。
「…この位の弾幕の量。舐められたモノですね。…キクリ…でしたね?。…攻撃はそれだけですか??」
私は今『綿月依姫に変質』している。
性格や何もかもが。
そして、それは内部すらも綿月依姫に成っていると言う事である。だから、キクリの放つ弾幕がかなり遅く見えてしまっているのだ。
「…なによ?私に怖じ気づいたの?さっさと帰れば済む問題でしょ?なら、私の出す弾幕から背を向けて逃げるだけ。私は追わないわ」
粋がっているようですね…。
この想起は想起であって想起ではない。
なにせ実力も本人に為るのだから。
「…物怖じしないヤツなのね??…確かに地獄に生きる強さも理不尽さが見に染みて解る。でも、それだけ。…良いでしょう。地獄に浮かぶ月の実力をこれで見定めましょう。」
そういって私は『綿月依姫』としてのスペルの一つを繰り出す。
「…これこそ神を生んだ原初の母。落とされ恨み、堕ちた復讐の母。…死の世界を支配し最初の冥府の女王として君臨した消えぬ憎悪の焔。地獄の冥刀即ち…獄神『伊邪那美神』!!」
私がそう宣言して自ら持つ刀にある神の力が宿る。
刀は怪しげに紫に燃え上がり、自分の身体は燃え上がる憎悪があるかの様に対象の考えている事が掌の上にあるかのように淡々と頭の中に浮かび上がった。
…また、身体は実体と半実体の中間に当たる位に透ける。その瞬間に私は一瞬にして残像を残し消える。
「な…いつの間に…」
キクリの目の前に瞬時に移動する。
そして―
「貴女が遅すぎるだけです。…安心して下さい。一瞬にして終わらせます。……眠ってください。」
私はキクリの後ろに瞬時に移動して、紫に燃え上がる刀を裏にして相手の身体を斬らない様に峰打ちをぶちかます。
「…うぐっ!?…けいこく……は、しましたよ…」
キクリは声掠れ此方に倒れる。
「…えぇ。それくらいは…承知の上です。」
私はスペルを解除して元の姿に戻った。
「…霊夢。もう大丈夫ですよ」
そういうと霊夢は隠れていただろう隅から出てきて此方に歩み寄る。
「…母さん。そんな力を隠していたなんて…語彙力ないからなんとも言えないけど…凄いわね」
「……えぇ。滅多に使うことはありませんし、そのスペルの衝動で誰かを傷付けたくないですから」
そう。このスペルはあくまでも私を依り代にして憑依する事によって、その人物をかなり強化する上に自分の意思でその人物として身体を動かせるイレギュラーなスペルだ。
下手を打つと憑依した人物によっては、スペルを解くまで身体の自由を奪われる可能性も十分ある。
……なので使いたくないスペルだったが、もしかしたらそのスペルで『コンガラ達』と戦う必要性があるかもしれないから『試運転』という意味合いで自分の中で使いやすい人物を呼び出しただけに過ぎない。
「…そう。じゃ、先を急ぎましょうか?……後、母さんがさっきいっていたコンガラ『達』ってどういう事なのかを目的地に行くがてら説明して貰わないとね?」
そう霊夢は近付きながら、溜め息混じりで私に質問をするのであった………。
次回に続く……!!