東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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027話 感傷と変化する日常

 

楓君の家から帰る道中、向こうから此方へ向かってくる影が見えた。

 

髪は長く白い。髪飾りとして鈴が付いたリボンを片耳につけており凛としている。

背丈は楓君と同じくらいで白狼天狗の装束具を着ており恐らく、今日は哨戒か何かで出掛けていたのだろう。

 

 

 

「あらあら、もうお帰りになられるのです?もう少し私が早く着いてさえいれば共にご同席出来たのに…」

 

「…ええと、貴女は…?」

 

 

「私(わたくし)は白狼天狗、犬走楓様の妻であり、犬走椛の母でして…名前は犬走椿(いぬばしりつばき)と申します。どうぞお見知りおき下さいませ」

 

動揺する私を前に、膝を屈折して綺麗なお辞儀をした椿さんであった。

 

 

・・・・・・・・・

 

肩書き 名家犬走の華

名前 犬走椿

能力 風を切る程度の能力

特殊能力 穿刄(せんじん)

・魔力を用いる事によって使う剣術が全て相手の防御をすり抜けて攻撃が可能になる能力。また、どんなに硬いモノでも貫通して切断する事が出来る能力でもある。

 

現在の身体能力

 

耐久力 S

体力 S+

防御力 S-

魔力 SS

速力 A+

 

扱えるスペルカード

刄符『ウィンドスラスト』

風符『白嵐斬』

魔符『マジックソード』

守符『攻防一体の陣』

双塵『デュアルソードマジック』

秘術『写し身の護法』

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

椿さんと別れて数日経ったがルーミアさんに関する情報はこない。

また、余談だが楓くんが私に無自覚で口説いた事に関して椛さんが母親の椿さんに伝えたらしく後日たっぷりと絞られたそうだ。

因みにこの話は紋さんから聞かされたモノだ。

 

経緯についてですが、仔細を話すと長くなるので私なりに纏めます。

まず、楓くんが珍しく自分から紋さんを誘い、飲みに行ったらしいんです。

 

その時に少しお酒が進んだ後、楓君の口からその話が愚痴として飛んできたみたいです。

 

紋さんは時折楓君の意外な一面を思いだし、笑いが止まらなくなったせいで、途中から会話にすらならない言葉になって……。

まあ、最終的に私が心を読んで内容を知ったんですけど。

 

 

それはそうと、私達の方もルーミアさんに繋がる手がかりがなく、お燐は知り合いの猫にダメ押しで聞いたモノの空振りに終わり、神綺さんはカナさんと一緒に協力して探したが収穫無し。

 

私と幻月も最近知り合った麟さんや侑さんの所に直接向かいそれぞれ事情を話し、協力して貰ったが今のところ手掛かりもない。

 

天狗の方も哨戒任務の彼らが周辺を散策して捜索しているもののこの辺りには居ないらしく、探しだすのは難しいようだ。

 

射名丸家の二人は天魔と共に親子で協力しその四人で秘密裏に捜索、情報の共有をして貰った。

また、姫海堂家も同様に自慢の念写の応用を用いり、天狗達の眼では見えない暗い場所を探してくれた。

……だが、知り合い達全ての力も借りて捜索し尽くすも虚しく未だに良い報告が聞かされていない。

 

椛や楓君、それにならって独学で生み出した紋さんが持つ千里眼の力でも見つけれてないという事は…相当遠くに行ってしまった様だ。

 

少し弱体化しただけでは名のある妖怪や神すらもモノともしない。流石は、大妖怪と呼ぶべきだろうか?

 

 

まぁ…ここまで来てしまうともう賭けになってしまいますけど…仕方無いと思いますか。

 

 

…さてと私達が未だに探索しきれてない場所は…と。

 

えー、湖辺りに竹林はまだかもしれませんね。

人や妖怪達が寄り付かない場所に隠れているのならば、単なる噂話すらも頼らざる得ないです。

 

…すると、最近噂になった曰く付きの古びたあの館なら可能性がある筈…。

それに、森の奥にあると言われている花園も噂だけの存在みたいです。話によると人々や妖怪達が全く寄り付かず、幽霊が蔓延っているとされる危険な土地みたいなので、それも一度確かめてみたいですね。

それと後は…

 

 

 

「ねぇ…お姉ちゃん?」

 

「ええと、どうしたのかしら?」

 

私はまだ捜索していない地域を把握しておこうと思い、軽く情報整理をしていた。

 

そんな中でこいしが私に話しかけてきた。

 

台所で漬け物を作っていたこいしが声をかけてきた。作っているモノが一段落して余裕が出来たのだろう。

 

「じゃんけんをしよう!……もし、勝ったら負けた方を背負い投げすると言う罰ゲームでさ!!」

 

「えっ!?なにそれ?!どうして?なんでいきなり、背負い投げされる罰ゲームを始めようとするの!?」

 

 

急に何を言い出すのかと思ったら、突発的でとんでもない罰ゲームをしようと言い出したこいし。

 

せめて、こう。…もっと難易度の低いモノをして欲しいのだけど。

 

 

「そうだ!!幻月お姉ちゃんっ!!ちょっと来てぇ~!!」

 

 

「なになにぃ?どうしたの?こいしちゃん?」

 

「幻月!?あ、まさか……」

 

「お姉ちゃんとさっき約束したんだ!!じゃんけんをして、負けたら背負い投げをしてくれるってさ!」

 

「え、は?…さとり。……本気????」

 

幻月が私を見て引いている。

じゃなくて!!そうじゃない!いやいやいやっ!違う違う!!…誤解!誤解なの!!

元々はこいしが勝手に決めたことなの!

しかも、それ私はまだ同意してないし!!露骨に冷めた眼をしないで!!

 

 

「…なんてね?嘘嘘。ちゃんと信じていたから安心してよ。…三割程度ね?」

 

それ、信じていないと言っていると同然よ。

 

 

「まあまあ、そんな事よりもなんで背負い投げなのかなあ?相手の言うことを一つ聞くじゃダメなのかな?」

 

「幻月お姉ちゃん?そんな身も蓋もない約束しちゃったら、良からぬ事になっちゃうよ??」

 

はーーーーーーっ????????

 

なにが?!!何が良からぬ事なのっ!?

 

「何処からそれを聞いてきたのかなぁ…。こいしちゃんもこいしちゃんで…ほんと卑猥だなぁ…」

 

意味がわかる様に言わないのっ!幻月!!

ああー想像しちゃったじゃん!

こいしが言っている良からぬ事をぉ~!

 

 

じゃなくて!

こういうことをするのは貴方しか居ないわよっ!こいし!

 

「…まぁ、それでも良いけど…?」

 

いいのかい!?てか、なんで疑問系なの??と言うか、否定的だったのにこれでいいのかい!?

と言うよりこれ墓穴を掘ってしまったかしら……。

 

…。

墓穴を掘っちゃっているわね…うん。

 

「と言う訳で改めて……お姉ちゃん達!じゃんけんしよう!!」

 

 

 

「……まぁ、いいか。私的には賭けってのは結構苦手なんだけども…勝った人の言うことを一つ聞くってなら、悔いは無いかな」

 

「ええ、まぁ……良いですけど」

 

 

「あたいも混ぜて欲しいね」

 

 

 

お燐もやるのですか?!まあいいですけど…そうなるとサードアイを隠してと…。

 

ここで普段なら幻月の従者(仮)のエリスも混ざってくる筈なのだけれども…今回は見守っていますね。

 

…なんでかなぁ?って思っていたら、エリスは『参加しないの?って目で見ないで下さいよ。私は幻月様よりも賭け事が大の苦手なんですから…』とため息混じりで私の思っていた事に答えてくれる。

 

…幻月達はさとりでなくても心を素で読める技術があるのでしょうか?

 

 

まあそれはそれとして、こいし。貴方も私と同じさとり妖怪なのですから、不意に心を読まない様に隠さないと。

そうしないと、さとり妖怪じゃないお燐は、絶対に勝てないじゃないの。

 

 

「え?勝たせなきゃダメなの?」

 

 

 

「それは酷い扱いじゃないですかぁ?!」

 

「ちょっと酷すぎない!?」

 

「それは酷いですねっ?!」

 

 

せめて勝つ可能性だけは残しておいて!出ないとじゃんけんする意味がなくなっちゃうから!

 

隣で幻月がいやいやと苦笑し、可能性を残したとしてお燐が勝てる可能性はあるわけ!?と反論する。

 

…それもそうですね。考えてみれば私とこいし、幻月が相手ではお燐が勝つ可能性を与えたとしてもその確率は1%にも満たないですね。

 

 

 

「やっぱりそう思うよね…」

 

「やっぱり勝たせる気ありませんよねぇっ?!」

 

 

まあまあ、結果が全てですからこうやって妄想してももしかしたら確率が嘘をつくって言いますから。

 

ほら、さっさとやりましょう!

 

話を濁しながらも強引にじゃんけんをする流れに変える。

 

「それじゃ…最初はグー!じゃんけん……」

 

 

 

三人の手の動きを確認、お燐は手のひらが開く兆候無し。グーが確定。

 

続けて幻月は…幻月も同じく手のひらが開く兆候が見られない為、同じくグー確定。

 

こいしは…ダメね。私と同じで探っているわ。指の開き具合からしてパーいや、チョキに切り替え?…いえ、こっちが探っているのを知っていて……??

 

時間が無いわ!ここは…確定している二人のグーに対抗する為、パーで!

 

 

「「「「…ポンッ!!」」」」

 

 

……お燐がグーなのは良いとして、幻月は私が予想したグーとは反対にパーを出してきた。こいしも同様で直前にパーに切り替えられたとは…。この場合、お燐は私とこいし、更には幻月の言うことを聞かないといけなくなりますね。

 

 

 

「お姉ちゃん、今のは後出しだったでしょ~??」

 

ですが、こいしはなんだか納得がいかない様子。

 

 

「それを言うなら貴女もよ?こいし」

 

コンマ数秒差の後出しではあるが……

 

 

「幻月お姉ちゃんは上手いね?まさかグーだと思って目を離した隙にパーに切り替えちゃうなんてねぇ~?」

 

それは私も思った。

マークさせないように私達にブラフを掛けて信じさせ、直前になったら切り替える。後出しでもない変わった手法である。

 

「ちょっと、ちょっと!?盛り上がっている所申し訳無いですが言わせて下さい!勝てる可能性を残すって言っておきながら完全に私を潰しに来てますよねぇっ!?」

 

 

え?だって、お燐は純粋な上、立ち回りが単純です。本当に行動と思考が分かりやすいですもん。それに、貴方が私達と正面からやりあって勝つ気なら相手に解らない範囲で後出しなり、手の動きを変えるなりすればよかったじゃないの。

 

 

「それじゃあ……どうしようかなぁ…♪」

 

やけに嬉しそうな顔をするこいし。…ちょっとは遠慮しなさいよ?後、変なのは止めなさいね。お燐が可哀想だから……

「悩むなぁ…私を慕っている訳じゃないから、あんまりふざけたことが出来ないのは事実だからなぁ…うーん」

 

それってエリスの場合はかなりえぐい罰を与える気だったんじゃ…

幻月はハハハと乾いた笑いをした後に『さとりは知らないかもしれないけどさ?貴方が見てないその裏側でエリスが私に今まで色々とされてきたんだよねぇ?…で、仕返しという形の罰ならばいくらでも思い付くけど?』と返された。

 

幻月って思っていた以上に腹黒く根深いんですね…。やり過ぎないように気を付けないと…

私はその後の返しがなかなか思い付かず、会話が続く事はなかった。

 

「さとりも少しは自重して下さいよ?…ある意味こいしや幻月よりもさとりの方が怖いんですからね?」

 

 

……失礼な!私はちゃんとしたものを命じますよ!

 

「…ちゃんとしたもの(かなり重い奴w)と言う事が多い気がするけどねぇ~?」

 

わざわざかっこと、かっことじをつけてまで私を煽る必要あります?それに…草も生やすんじゃありません!失礼ですよ!

 

「そうだなぁ~……じゃあっ!今度ね?模擬戦の相手をお願い!」

 

その途端にお燐ががっくりとうなだれる。どうしたのでしょう?そこまで酷いものじゃない気がするのですが…

 

それでも疲れたような…なんか悟っているような表情は晴れない。

 

「あ……あはは…わかりました…」

 

 

本当にどうしたのでしょうか?

 

まぁ、別にいいのですけど…。

 

「んじゃさ、今度お燐は神綺さんに一日付きっきりでお手伝いをするって事で」

 

 

「へっ?!し、神綺さんと?!…うぐっ。わ、わかった……です」

 

ショック過ぎて言葉選びがおかしくなっているわね。

確かに神綺さんに付き合うと色々と疲れるというかなんというか…。

威厳と母性があるのは認めますけど…それ以外の方向が全然駄目でそれを軌道修正するまでがキツいんですよね…。経験したからわかります。あの人意外にも頑固で意地でも曲げない性格なんで…

 

 

少々ブカブカと変なことを考えているとジト目になりかけたお燐がこっちを睨んでいた。

 

そう言えばまだ、私は言ってませんでしたね。

 

「そうですね。…なら、取ってきて欲しいものがあるのだけど……」

 

 

「あたいは召し使いかい……」

 

「いえ、ただの小間使いよ?」

「違うね。私の便利道具(じりつにんぎょう)でしょ♪」

「ううん。お姉ちゃんの飼猫(ペット)よ!」

 

「酷い!!酷すぎるよぉ!!!」

 

 

 

じょ、冗談です!冗談ですから!!泣かないで下さい。お燐だって家族、大事な家族なのですし。それに幻月やこいしだって好奇心でお燐をからかっただけですので!

 

 

 

 

拗ねて猫に戻ってしまったお燐を私の膝の上に乗せて優しく撫でる。

 

本当に好きなのか…すぐにリラックス状態に。可愛いモノです。

 

 

「それじゃあ、私とお姉ちゃん達二人でやるぞぉーー!!」

 

 

まだ、続けるのですか…

ほら、幻月もやるんですよ?もう…面倒とか言わないの!

 

静かにこの場から立ち去ろうとしていた幻月を捕まえ、参加させる。大きなため息を吐いて、観念したかのように首を左右をゆっくりと振る。

 

「「「最初は………」」」

 

 

別に負けても良いですけど…二人のどちらかに負けたら何されるかわかったものではないので負ける訳にはいかない。

 

「グー!!」

「「パー!!」」

 

刹那、私の世界が止まった。いや、私だけ凍りついたとでも言った方が良いでしょうね。

 

 

「……えっ?」

 

 

少し遅れて私の時間が動き出す。

 

突然の状況なので、脳が上手く機能しない。

 

 

 

「貴女達ぃーーーーっ!!?」

 

 

 

「あれ?駄目だった?」

 

 

駄目に決まっているでしょう?!予告も無しにいきなりパーを出すなんて!

 

後、こいしは勝ち誇った顔を…幻月は呆れた顔をするのは止めなさい。こいしはともかく幻月の方を思い切りぶん殴りたくなっちゃうから……

 

「この三人なら普通に考えてみてよ…。正当な方法でやると思う??勝てるならどんな手でも使いそうと思わなかった訳?」

 

 

幻月の言うだけありますね。確かにこのメンツなら後出しなりでも使って勝とうとしますか…。

 

「それに…幻月お姉ちゃんもだけど、この、じゃんけんってさ…最初はグーだなんてルール決まってないでしょ?」

 

 

それは、そうだけども…基本は最初はグーなのよ?

 

「でも、さとりはこのルールを先に言わなかったよね?言ってくれたら守ったのにさ」

 

なんで私が悪い感じになっているの??こいしもそこで頷かない!本当に殴りたくなるから!!

 

ですが、理論的には間違ってはいません。…なのですけど、やっぱり屁理屈です。

 

こんな手で来るなんて…読めなかった私の落ち度です。

 

潔くこいしと幻月の言うことを聞きましょうか…何されるのだか…不安です…。

 

「そうだなぁ…何を聞いて貰おうかなぁ…」

 

勝ったことが嬉しいのか魔導書を抱きしめ、悩み始める。まるで今夜のおかずは何がいいかなぁ…みたいにレシピ本を持って悩む子のようだ。

 

 

「言っておきますけど……痛いのは無しですからね?」

 

 

 

「そんなの、さとりにさせる訳にはいかないじゃん」

 

「うん。そうだよ。お姉ちゃんに模擬戦頼む訳にはいかないもん!」

 

 

そう言いつつ黒い笑みを浮かべる妹と悪友(げんげつ)。なんだか物凄く不安になってきました。

 

なかなか決まらないのかモジモジし始める二人。その途中でこいしは幻月に耳打ちをしたりと落ち着かない様子であった。なんだか私も居心地が悪くなってくる。…早く決めて欲しいのですけど…急かす訳にはいかないですし……。

 

 

「無理しないで…」

「無茶しちゃダメだよ…?」

 

相変わらず二人は笑顔のまま。でも、目は真剣そのもの。

 

 

「……えっ?…ど、どうしたの?」

 

 

 

「一人で全部抱え込まないで…辛かったら辛いって言って?」

 

「…正直に…全部話してよ?……さとり、貴女は一人じゃない。私達がいる事を…忘れないでね?」

 

 

 

やはり、子供というのは感情の変化に敏感ですね。

…それにいつも隣にいる友も、子供と同じ位に相手の心を見透せるのですね。

 

 

 

「……お姉ちゃんさ、最近無茶し過ぎだよね?ルーミアさんの事だって、置き手紙を残して何処かに去って行った瞬間から様子が少し変だもん。なんでもないふりしてしているけど…割り切れてないんだよね?」

 

 

まあ、割り切れてないのは認めますけど…そこまで無理をしていましたっけ?

 

 

「(さとりって時々変に悩んだり、抱え込んだりするからねぇ?)」

 

ぴょんと私の腕から抜け出したお燐がやれやれと言った感じで呟く。

 

その声に呆れ半分同情半分の気が含まれている。

 

 

 

「さとりが無自覚で抱え込むのは仕方無いと思うから百歩譲るけど、それで壊れちゃうのは見過ごせないよ。貴女を慕っているヒトまで悲しませる事になるしね?…だからさ、……私とこいしちゃんの我儘だと思うけど、許してね?」

 

 

 

いつもはふざけている幻月も本気で心配していると判る二人の眼差しが私に突き刺さる。

 

…幻月とこいしの我儘。

 

 

…成る程。それなら合点がいきます。

 

あの時、息を合わせたかのようなじゃんけんで私を負かした…あの瞬間から…いえ、その前からこいしからの相談を受けていたのですね。

 

 

 

 

その姿がだんだん霞んでいく。…あれ、おかしいですね…なんででしょう。ちゃんとみないといけないのに…いつの間にか背負うものが大きくなってしまって…背負いきれなくなっているのでしょうか……?

 

 

 

 

幻月がその姿を見たとき、やっと表に出したんだね…。と呟く。

…顔が少しだけ赤くなった気がする。

 

こいしにはバレないように目元を拭いてまっすぐ見る。

 

 

「こいし……ありがと…」

 

 

「気にしないで、お姉ちゃん」

 

 

 

 

こいしの姿がぶれる。

 

その直後、頭の上に人の温もりが感じられ思わず身体が震えた。

 

 

 

 

 

「こいし……?」

 

 

 

「……たまには…良いでしょ??」

 

 

その隣には、幻月がその様子を微笑み見守っていた。

 

たまには…良いですね。こんな日があったとしても…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…面白い子ね?…あなた達なら……」

 

 

 

そんな声が耳のそばで聞こえた気がした。振り向いて見ても、後ろには窓しかなく窓の外には人の気配もしない。

 

幻月の方を向くと、何か思い詰めた顔をしていた。幻月も聞こえたようですね。なら、少し話を…

 

「お姉ちゃん?」

 

 

「……。なんでもないわ。ただの気のせいだったみたい」

 

首をかしげるこいし。まぁ、唐突に気のせいだったみたいだなんて言っても解らないわよね。

 

 

「さとりちゃん?こいしちゃん?それに幻月ちゃ~ん。お風呂が沸いたから入っても大丈夫よ~」

 

 

「えっ!?ホント!」

 

 

 

 

もう少し早く気がつけば窓の外にふんわりと舞う金髪が見えただろう。しかし、次の瞬間にはそれは幻想のように消えていた。それに気付いたモノは私と幻月しかいない。いや、見たとしてもあれは幻想ではないのかと自らを納得させて終わってしまうかもしれない。

 

 

 

それにその事のことは、後々知ることになるのだから…

 

 

 

 

「お姉ちゃん達!早く入ろ!」

 

 

こいしが私を含めて幻月の手を引っ張る。

 

「ちょっと?!こいしちゃん!お風呂は逃げない、逃げないからぁ…服を引っ張るのだけは…脱げる!脱げるからぁ!」

 

「ちょっ!?こ、こいし!引っ張らないで!脱げる!脱げちゃうから!!」

 

 

「今更、何いっているのさ~?」

 

 

 

 

 

この後、滅茶苦茶になりながらもお風呂へと入ったのだった。

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