東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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029話 超反応センス

 

こいし視点

 

「あやや~!?こいしさんに夢月さん、エリスさんじゃないですか!どうしたんです?」

 

 

お姉ちゃんと紫さん、幻月お姉ちゃんと神綺さんの四人との話を盗み聞きするのに飽きて山を散策していた。お燐についていきたかったけど、屋根の上で昼寝を始めちゃってつまらなくなっちゃった。エリスと夢月さんは私の後をついてくるだけで話をしても長く会話が続かない。

結局、特に何がとかそう言うわけもなく無意識ながらに歩いていたら、急に上空から声をかけられた。

 

 

 

知っている声……まあ私達の事を知っているって事は知り合いなんだけどね?

 

 

 

「あ、えーと、鴉羽のヒト…そう、紋さんの子の文!!」

 

いけない、いけない。忘れる所だったよ。実際、忘れていたかも知れないけど…思い出せたからセーフ、セーフ。

 

 

 

「ぶふっ!鴉羽のヒトって……!」

 

 

あれ?文の影に隠れていたけどもう一人いるね。誰だろう…?

初めて見る天狗だけども…

 

 

 

直感任せで言えば……

 

 

「……母親共に引きこもっているヒト??」

 

 

 

二人の表情が固まる。なんか、ビシッ!って言うか…パキンッ!という感じの…空気というガラスが壊れる音が聞こえた気がするけど…気のせいかな…?

 

 

 

でも、二人とも機能停止している…。

 

 

 

 

「……なぁっ?!!!」

 

 

22秒03程経って知らない方の天狗が復活。

 

「◇◆※@○□◆☆★@ーっ?!!」

 

 

……したのは良いけど…恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてワケわからないことを……。

多分、何か言いたいけど言えないその矛盾によって喉から導かれた言語っぽい事を発したらしい。

 

 

「アハハハハッ!!図星じゃないですかぁっ!」

 

やや遅れて文の方も復活。腹抱えて笑いだした。そんなにおかしな事を言った訳ではないのに……わかんないや。

まぁ、確かに子は母に似るって言いますので…あながち間違ってはいない。…と夢月は小声で呟く。

 

そうは言われてもわかんないな…私は素直に思ったことをそのまま話しただけなのに…

 

「わ、笑ってるんじゃないわよっ!!それに、私は母さんとは違って引きこもりじゃないわよ!」

 

「えーと…それで、文さん達は新聞のネタでも探しに来たのでしょうか?」

 

ネタ探しじゃなくても暇だった私にとって渡りに船。

夢月お姉ちゃんやエリスちゃんは多分、私の護衛的な何かだから気にしなくても良いかなぁ…

まあ、天狗とも一緒なら何か面白いことに出会えそうだし…二人は私やお姉ちゃんより世の中の視野が広い。エリスちゃんも良く人里に出掛けているしちょっとは視野が広そうだけど、それを踏まえればより面白い話が聞けるかも知れない。

…だから、いろんな話を聞くためにも是非とも友達になりたい。

 

 

「ま、そんな所ですね。…切っ掛けは、私の母さんが知り合いの鴉天狗を紹介するから始まりまして…何故か強制的に新聞記者としての実力を測りたいとなり…で、今に至るんですが…」

 

 

未だにいじけている…。

まだ、名前も聞けてないのでなんて呼んだら良いか判らない方は、会話に入れなかった腹いせなのか、先程引きこもり呼ばわりされて拗ねたのか…変に視線をそらしている。

 

 

 

これは、ちょっと言い過ぎちゃったかかなぁ…反省しなきゃ……

 

 

「…なら、文のお母さんの知り合いが引きこもりのライバルの子供である事を承知の上で、文はその引きこもりのライバルの子を引っ張って来たって事?」

 

 

視界が横に傾く。気が付いたら小首を傾げていた。

 

視界を戻すと良いネタを見つけたと言わんばかりの顔で文が見つめていた。さっきまで左手に収まっていた筆とメモ帳がスタンバイしていた。

紋さんも確か取材となるとこういう感じになった気がするなぁ…。

 

私が思いに耽っていると、文の背後ではライバル?が目を見開いてこっちを見ていた。

 

そこまで見られると、落ち着かないなぁ……。

 

 

「よくわかりましたね?」

 

 

「大方、紋さんとその知り合いの二人が文達を強要して手伝ってほしいとかなんとか…まあ、そういう感じで仕方無く協力した感じかなあ?」

 

「…な、なんでそこまで判るのよっ?!」

 

 

文を押し退けて天狗少女が目の前に突っ込んで来た。

あのさ…顔が近いよ…?エリスちゃんなんか勘違いしてキスしてると思っているみたいじゃん。…なんで判る?そんなの顔とか雰囲気とか掴めば一発だよ?一発。あと、そこまで驚くことでも無いでしょ?

 

「…まぁ、雰囲気が語っているし…文達も慣れれば見るだけで判ると思うけど??」

 

 

雰囲気?と二人ともよくわからなそうな…でも、なんかわかりそうな…そんな複雑な表情をして考え始める。

 

夢月達は、まぁこいしですしと微妙な顔をして納得したみたい…私の法は納得できてないけど。

 

 

「だって、文の顔はそっちの人と話をする度にパッとしない感じの様に見えたし、逆にそっちの人は文に対してかなり強めに当たっているでしょ?…でも、文は案外ノリ気だし、そっちの人は文の事を嫌っているとかそんな感じには見えない。それに二人とも全くの初対面じゃないっぽいし?…ここまでは大丈夫?」

 

 

「え、えぇ…」

「…フムフム」

 

よし、大丈夫そうだね。

 

「それでね?そこまで強く当たるのには文に対して何かしらを思う所があるって事。ならその何かしらとは何か…?鴉天狗同士ってなると何かを競いあっていると考えても言い過ぎじゃない。…例えば、飛べる速さとか体力とか…でも見た感じ文や貴女には無縁な気がする」

 

「あややー…よくそこまでわかりますね…」

 

 

だって、文はそういうことに興味なさそうだし、そっちの子もどちらかと言えばインドア派…力とかで証明するよりも知性においてどれだけ勝っているかを勝負するのに重点を置くタイプなのかな…って感じただけ。

 

「これくらいならある程度見知った仲なら判るわよ」

 

 

似たような事は楓さんとか椛ちゃんとかもやっていたしね。寧ろ、あの二人は癖とか身のこなしとかの違いで正確にものを言い当てているから凄いよねぇ……

 

…あっ。…話が逸れちゃったし、戻さないと…

 

 

 

「なら、何をそんなに意識しているのか…。趣味とか、仕事とかが主に当てはまるよね。…そうなると、真っ先に浮かぶのは新聞。前にお姉ちゃんに取材を申し込んでいたし、そのお母さんも新聞作りのプロだって有名だって文さんは語っていたし…そうなるとそのお母さんの知り合いも新聞作りのプロということになる。それを踏まえてさっき私がライバルと言ったんだけど……それを当てはめれば貴女も紋さんと似た理由で始めた…。だから、そこの貴女は同じ新聞記者」

 

 

「ちょっと待って!なんでそこで文の母さん繋がりで私の母さんまで新聞記事を、書いている事に繋がるの?そもそも母さんが新聞記者だとしても私が新聞を書かない可能性だってあるじゃないの!そこの所はどうなのよ?」

 

確かにね。普通なら真っ先にそこに行き着くってことはまずないよね。でもさ…二人とも…

 

 

「どうって言われてもね…。なら、聞くけど…二人とも。…なんで、左手側にペンを挟んだメモ帳を持っていたの?貴女達の利き手って右だよね?…それに、使わないなら胸ポケットにしまっておけば移動とかも楽なのに…常に手放す事なく持っているって事は…何かあった時にすぐにでも使えるようにと…無意識中に持っていたんじゃないの?」

 

最初に文達と出会った時にはその違和感をなんとも思わなかったんだけど…今になって、ようやく納得出来た……のは、閲覧者達と私との秘密ね?

 

 

「「あ……」」

 

 

我に帰ったかのように天狗少女達の声が止まる。

さっきから私の言葉をメモしていた文の手も同時に止まる。

 

「今の反応から察すれば、その持ち方の場合は素早く文字を書くことが出来るようにする普段からの癖。そんな癖がつくのは、さっきも私が言った様に何が起こるか解らないから、その起こった一瞬の出来事でさえも記録しておきたいと思うヒトが該当するよね?」

 

「…ほら、理屈が揃えば簡単でしょ?」

 

二人とも呆気に取られているけど……悪いことをしちゃったかなぁ?

 

 

「…でも、記者にしては引きこもり…だけども、文とは張り合える位には活動出来ている……」

 

ここからが全然解らないや…。

 

引きこもりって認知されているって事は普段は人前に出ないで家にいる事が多い。そうなると他の天狗よりも情報を集める事が出来ない。周囲に感付かれない様にこっそりと出ているのだとしても堂々と動く天狗よりネタ情報にありつける確率は極端に低い。それでも文と良い勝負ってことは…文は売れてないのか…あるいは貴女が何か別の情報ルートを持っているのか……。

 

お姉ちゃんや幻月お姉ちゃんが文のお母さん達と話している所を偶然聞いちゃったんだけど…確かその知り合いが何かの能力を持っていて家の中でも外の情報を得られるとかなんとか…?

まあ詳しくは聞いていないんだけど、お姉ちゃんが独り言で呟いた時に姫海堂さんのなんとかの力でも…とか言っていた気がするけどね。よく覚えてないや。

 

 

 

「…えーと、ゴメン。これ以上は解らないかな…」

 

思考がこんがらかって訳がわからなくなった。ここまで来ちゃうともう考えようがないや…。夢月お姉ちゃんかエリスちゃんならわかるかなぁ…?

 

そう思い二人の方へ視線を向ける。

 

「…そうですね。私が答えられる範囲なら話します。…まず、文さんは其方の方と面識がある。そして、お二人はどちらも新聞記者だと。…そして、新聞記者なのかどうかを見分けた方法が普段からの癖。…それに付け加えますと…。貴女の母さんは遠隔で外の風景を見る事が出来ると姉さんから聞いておりますので、もしかしてと思っただけです」

 

 

夢月はこう答えた。

エリスは、『流石に夢月様に匹敵する回答は出来ないから…ゴメンね』と返される。まぁ、仕方無いよね。

 

「凄いわね…。貴女と言い…其処のメイドも……。初対面で会ったその短時間でここまで情報を纏められるなんて…」

 

驚き半分、興味半分って感じで天狗少女が感想を漏らす。

 

文の方は…まだメモが終わりそうに無いみたいだね。

 

「あ、名乗り忘れていたけど…私は姫海堂はたて。姫海堂家自慢の娘よ。宜しくね?」

 

 

「知っていると思うけど、こいしだよ!」

 

「私、今あなたの名前を知った気がするけど…」

 

「え?聞いてなかったの?私の名前を文は叫んでいたじゃん」

 

「あぁ…。確かにそうね。…で、後ろの保護者みたい方達は…?」

 

「ご紹介が遅れました。私の名前は夢月。姉さんの妹であり、貴方達の事は姉さんから聞いておりました。以後、お見知りおきを…」

 

「私はエリス。主様に使える自称、忠実な従者です。今回は主様達に来客が来ておりましたので…私達は自己判断で、こいしさんについてきた従者だと思ってくれて良いですよ」

 

「ふぅん、そう。まぁ、宜しくお願いするわ」

 

 

 

はたてと呼ばれる鴉天狗がエリスちゃん達と会話する。

そういえば、私の名前を文は言っていたのに無視されたのって…まさか、私の愛称だと思っていたとか?

う~ん。私ならまだ良いけど、お姉ちゃんの場合は後々大変な事になるよ?例えば、さとりと言う名前なら二重の意味で驚かれるし、聞き流していたなら気絶すること間違い無しだし……

 

「まぁ、それはともかく…。貴方達って結構凄いわよね?洞察力とか推理力とか…私なら到底出来ない芸方ほよ?感心するわ~」

 

心なしかか、はたての目がキラキラしている。

 

ただ、若干なり探っているというか…多分、記者の目ってやつかなぁ…

 

 

「んぅ~?殆んどはお姉ちゃん達が教えてくれたんだけどね?それに、椛も文のお母さんの紋さんもこういうのは得意だよ?」

 

…って言うか顔が近いってば。…そんなジロジロみても何も無いってば。

 

 

ようやくメモを取り終わった文が復帰。はたてを私から引き離す。

 

 

 

「なんか迷惑をかけちゃってすみませんね」

 

別に文が謝る必要は無いんだけどなぁ…まあいいか。

 

「いいよいいよ。私も暇だったしさ」

 

 

暇と言う単語に反応したのか二人の耳がピクリと揺れる。

私か暇しているってことがそんなに珍しかったのかなぁ?

 

 

「あ、こいし!」

「こいしちゃんの事だし…まぁ、大丈夫だとは思うんだけど…取り敢えず、私は幻月様の所に戻るから、夢月さんは引き続き宜しくお願いします」

 

 

背後で二人の声が聞こえたと思えば、いつの間にか二人に手を引かれて宙を舞っていた。

 

 

どうやら、暇なら同行していいと判断されたらしい。同意したつもりは無かったんだけどなぁ…

 

 

まあ、いいか。暇だったしわけだし。

 

 

 

 

後ろについてきたのは夢月お姉ちゃんただ一人。どうやらエリスちゃんは先に帰っちゃったみたい。そんなに幻月お姉ちゃんの事が心配なのかな?それとも…恋愛感情でも持っているのかなぁ…。

 

 

 

「ねぇねぇ、二人とも。そのメモを見せて!!」

 

 

 

「メモ帳??えと、…は?…きゅ、急にどうしたのよ?」

 

 

はたてが突拍子の無いことを言い出した私に対して変な目線を向けてくる。

 

まあいきなりそんな事を言い出したらそうなるよね。

 

「貴方の能力を当ててみたいからさ」

 

さっきから二人ともなんか空気がおかしいんだよね。私達が同行してるなのかもしれないけれど。

文は妙によそよそしい。と言うか…チラチラみてきては目線を合わせるとすぐに視線を避ける。凄く不審なんだけど…

 

 

 

はたては、相対的にジーッとみてくる。何かを探っているような……ただ見とれているだけなのかはわからない視線を浴びせてくる。

 

 

「おやおや??何だか面白そうですから…貸してあげましょう!」

 

 

文は面白そうなものに目がないのかなんなのか…大事な商売道具を簡単に渡してくる。

 

あのね?言い出しっぺの私が言うのもなんだけど……こうも簡単に他人に大事なモノを渡しちゃ駄目なんだからね?

 

「まぁまぁ、そこは私なりに貴女を信用してますので、気にせず大目にみて下さいよ~」

 

わかった、解ったからさ…

 

 

「…ほら、はたても!!」

 

「……ぐ。…仕方無いわね…。…文が信用する相手だし…貴方が悪用しないというなら……」

 

悪用なんてしないよ。それに、私は情報を流出させるような事はしないからね。

 

 

 

二人から貰ったメモ帳を交互に見る。

 

紙製…へぇ、ここまで技術が進んでいるんだぁ…。

 

 

 

夢月、これを一目見て、どう思った?…

 

「どうと言われましても…ただ、そうね。そっちのメモ帳は文のだったかしら?…なら、どうみてもはたての持つメモ帳が小さいのは否めないわね。その場で筆を持つ必要すらなく…いえ、必要最低限の字だけで良いとみるべきかしら」

 

 

成る程、成る程。

 

なら、私の中の答えが纏まったかな。

 

 

 

 

 

「そうだね。…もしかして、念写系の能力だったりする?」

 

二人からおぉ~っと歓声が上がる。どうやら正解だったみたい。

 

「良くわかったわね。因みに理由を聞いてもいいかしら?」

 

 

「理由?…う~ん。…ま、言った通り、文のメモ帳ははたての持つメモ帳よりも大きいでしょ?」

 

 

「確かに、言われて見れば少し大きいわね」

 

「多分、はたての方が小さいだけだと思うけど…」

 

 

 

 

そこを指摘すると、途端に不機嫌そうな顔になる。表情豊かなのは良いんだけど…

 

怒らないで欲しいなぁ……。

 

 

 

「でも、それだけじゃ、念写伝々なんて解らないじゃない」

 

「確かにね。でもね、あの娘も言っていたでしょ?小さい方を使うって事は必要最低限の字だけで良いって。その方が荷物にならないし、所要する時間も必要ない。なら、なんで文は小さい方のを使わないのか?…ネタを沢山描きたいから?…ううん、違う。最も単純な理由だよ。それに、答えは文の持つメモ帳の中身を見ればすぐに出てくるよ」

 

「……中身…ですか。それは流石に貴方達からお願いされたり、例え脅迫されたとしても同業者には見せられませんよ…。なんなら、見せたらそのネタを横取りされますからねぇ」

 

 

「うん。それはそうなんじゃないかと思ってたよ。だから、簡単な結論を言っちゃうね?文のメモ帳には、文字と一緒に当時のスクープを手書きの絵が描かれているんだよ」

 

 

「………えっ!??」

 

 

「…絵だけに?」

 

「ねぇ。…今はそれを言う時間じゃないんだけど…?」

 

「……すみません。姉さんの癖がつい…」

 

 

「…気を取り直して…。文の新聞、文々。新聞だったっけ。…その新聞には絵が…ううん挿絵があるよね?その絵は多分、編集の時にだと記憶が曖昧になっちゃったりするから、その為にもそこで見たものを素早く描いておく必要があるんだよ」

 

「あややっ!?正解です!!」

 

ちょっと鋭い目で見られた。…なんだろう…一瞬、私の背中に悪寒が走ったんだけど……。

 

「それに対して、はたてのメモには字が並ぶだけで…絵が一切無い」

 

「それだけじゃ、私が素早く描くのが下手なだけかもしれないけど?」

 

「そうだね。その可能性もある。…でもさ、それだったら絵の代わりに字で埋め尽くして当時の情景を字で表している筈だよね。それをしない上に字数が少ないし…その簡略化もされている。…なら、編集の際にどうやって当時の事を細部まで思い出すつもりなのかなぁ?」

 

 

「…え、あ。………確かに」

 

 

私は納得してくれたところで一回転をする。

 

 

「そこまで来たら後は簡単!書かれて居ないのは書く必要が無いから。なら、なんで書く必要はないの?答えは二択。当時の光景を細かくまで覚えておくことが出来る絶対記憶保持者であるのが一つ。もう一つは念写の類いが出来る人物であるのか。…さっき言った推理は、多分、後者の方が近いよね?…私は勿論、勘なんだけどさ」

 

 

「やっぱりと言うかなんと言うか…勘なのね?勿論って意味は解らないけど…大体予想はついていたわ」

 

 

 

だって、これ以上は説明出来ないもん。

 

もう説明することはないよ。…との意味を込めて、もう一度ひらりと舞う。

 

少し短くしてある裾が大きく翻る。

 

 

 

 

「いやー…良いものを見させて貰いましたよ!お二人共!」

 

 

 

何故かほくほく顔の文に私が後ろから抱き抱えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでさ、文はどこまで行くつもりなの?」

 

さっきからずっとグルグルと移動して…誰かを待っているみたいだけど…いい加減にしてほしいってオーラがすぐ隣のはたてからダダ漏れして凄く辛いんですけど…。

夢月も痺れを切らして、さっきからため息と少々殺意のオーラが大きくなっている気がして気が気でならないよ…。

 

「本当なら、はたてには別のところへ行って聞き込んで欲しいんですけど…。ご覧の通りなんかくっついてくるんですよねぇ……」

 

と文は一つため息を吐き、口を開いた。

 

 

成る程。さっきからの行動は、はたてを振りほどく為にやっていたんだね。でも、なんでだろう?ライバルに見られちゃ行けないことなのかなぁ?

 

 

「良いじゃないの。別に減るものでも無し。それに文に独占取材させるわけにはいかない訳だし……」

 

急に歯切れが悪くなる。何を考えているのか気になるけど我慢。…きっとなんか考えているんだろうね。当然だと思うけど。

…???

 

……はたての顔…。少しだけ赤いけど…。

まるでお姉ちゃんと幻月お姉ちゃんみたい。

 

毎回観察しているけど…時折、顔が赤くなっては話が続かなくなったり…誰かと一緒になっている時には急に歯切れが悪くなったりと…。

 

 

…え?…私が文の方について行っているから?

……それが顔が赤くなる事に繋がる?

………ん~???…よく判らないや。

 

 

「それで、文は誰に取材しに行くの?」

 

 

答えによっては、はたての方についていこうかなぁ…。だって、文の取材ってたまに危険な事があるもん。

この間だって、興味本位で取材についていったら時焉侑さんが問答無用で弾幕を文に撃ってきて危うく私まで巻き添えを食らう所だったし。

その時は侑さんが私の存在に気付いてくれて、途中で弾幕を撃つのを止めたから良かったけど。…文は?…と言うと、侑さんからきつい説教をされていたし。

…それに、知り合ったはたてとも仲良くしたいと思っているからなぁ…。

 

 

って、あれ?なんで急に黙りこんで考えてしまうの?誰に取材しに行くのか教えたくないの?

 

 

「いや、別に教えたくない訳では…」

 

「じゃあ、遠慮せずに教えてよ~」

 

「………貴方のお姉さんですよ」

 

 

ようやく言ってくれたね。お姉ちゃんに取材かぁ~……凄く久し振りだね。

 

「…あ~!成る程。だから、はたてに別のところに行って聴き込みしてきて欲しかったのかぁ~。納得だよ」

 

 

ウンウンと納得する。確かに文とかそのお母さん位だもんね。好き好んでお姉ちゃんに近付こうとする鴉天狗ってさ。

 

あれ以来お姉ちゃんに興味を持っても怖くて近づけないって妖怪が増えたからなぁ…。

そんなに恐れなくても良いのにね?別に近付いた所で害する訳でもないし…そっちから攻撃する意志がなければこっちだって何もしないのに。

 

「私は問題ありませんよ。姉さんも急に来た所で久し振りの来客で喜ぶと思います。それも多ければ多い程はしゃぐかもしれませんね」

 

夢月は、ため息を吐きながらこう答える。

鬱陶しいと言う表情を出しているけど、本当は嬉しいんもんね。幻月お姉ちゃん程感情を表に出さないだけさ。

 

「何よ……。二人して…余計、気になるじゃないの」

 

「アハハッ!確かに!久し振りの来客でしゃぎそうだよね。…勿論、私から異論はないよ。別に家に来ても構わないし、お姉ちゃんも多分平気だと思うよ」

 

 

 

みんな誤解しているだけか、偏見に踊らされているだけなんだよね。まぁ、それでもあの程度で済んでいるのはお姉ちゃんの人徳だから…なのかな?

 

 

…でも、はたては偏見とかそう言うのは無さそうだから……うん。信じてみよう。そうしよう。

 

 

「ほーら、この子もそう言っているんだから、話してみなさいよ」

 

仕方ありませんね。とため息をつく文。

確か…文はあれ以来お姉ちゃんや幻月お姉ちゃんには会ってないみたいだけど……。

 

 

 

「「「古明地さとりと幻月」」」

 

 

「……えっ?」

 

私達の口から出た名前に、はたては凍りつく。

 

「その子の姉で私と私の母さんの知り合い…いや、友達とか…そんな所です。そっちにいる素っ気ない感じの子も同じく姉がいまして、その姉とも友と呼べる仲ですね」

 

そうだったっけ?…お姉ちゃんや私はともかく、幻月お姉ちゃんや夢月の事を友だと思っているのは知っているからね。だって見てたもん。

 

 

 

「え……えっ…!?……じゃあ、まさか…?」

 

「そうだよ。私は古明地こいしっ!」

 

「……改めて。…私は、幻月姉さんの妹の夢月。今は居ないエリスも同じく幻月姉さんに従っている人物よ」

 

 

改めて宜しく。…と私は両手で裾を持ってお辞儀をする。

あまり見慣れない仕草に文も夢月も不思議がる。

夢月からは驚愕の顔をされる。

…失礼よ?そう言うの。私だって淑女のたしなみ位は出来るんだよ。

え?嗜みじゃなく礼儀だって?

…………。

まぁ、良いじゃん。後で直すよ。

 

 

「そんな。……じゃあさっきのは…いや、心は読んでないみたいだし。本当に純粋な洞察力……??」

 

「はたては、最初に疑わないんですね?この娘がさとり妖怪の妹だと知った瞬間、もしかしてあの洞察力も心を読んでいたから出来たんだと」

 

 

私が言おうとした事を先に言われちゃった…。

普通、さとり妖怪だと知ったら心を読んでいたって疑う筈なのに…意外な反応だった。

もしかして、はたてにはさとり妖怪の知り合いが居たとか…?

 

 

「…そうね。私は知り合い程度なんだけど、母さんは昔、覚妖怪と友達だったみたいなの。…小さい頃に覚妖怪と顔を合わせた程度で会った事があるの。…まぁ、話に聞いていた印象よりずっと良かったな…って、記憶に残っているから、貴方が覚妖怪だからって軽蔑したり怪しんだり疑ったりなんてしないわよ」

 

 

その声になんだか不自然な影が出来る。

凄く気になるけど誰でも知られたくないことの一つや二つはあるモノだしこんなのは当たり前なんだなぁ~…と、考える事にして気を抑えた。

 

意識してないと好奇心に吊られて無性に心を覗いて答えをみたくなっちゃう辺り…やっぱり、私も覚妖怪なんだなぁ……って、感じちゃうかなぁ…。

 

 

「はたての母さん……ならば、覚妖怪の特徴である心を読む力を使ってもらって新聞の作成とか協力とかしていたの?」

 

 

「流石の母さんでもそんな事はしないわよ」

 

苦笑しながら、はたては夢月の問いを否定した。

 

「そうですねぇ…。私の母さんが言うには、当時のあかねさんは友人の覚妖怪に心を読んでもらって、自分が発行している新聞の評価やその宣伝、書く記事の内容についてとかを色々と相談を受けてもらっていた…って言ってましたかねぇ…」

 

 

 

「その話…私が新聞記者になると母さんに打ち明けた時に聞かされたわね。…なんなら、話の最後にはあなたも覚妖怪と交友を持ったら、私のように覚妖怪を頼りなさいって念押しされたのよ…。私が幼い頃に会ったあの覚妖怪。元気かなぁ…あれから何年も経っているけど、一向に姿見せなくなったって母さん言っていたし…」

 

 

 

話から察するにかなり前に会ってから今に至るまで音信不通になった訳かぁ…。

 

…想像はしたくないけど、お姉ちゃんと私が今を生きる最後の覚妖怪なのかもしれないなぁ…。

 

もしかして、お姉ちゃんがその時の覚妖怪だったのかも…?

…ううん、違う。お姉ちゃんから受け継いだ記憶にはお墓があったし、そこではっきりと死んだって書かれていたみたいだし。

 

じゃ、お姉ちゃんはあの覚妖怪から生まれ変わった?

…それとも………?

 

…考えたらきりがないしもうやめよ。

 

 

「まぁ、いいや。それでお姉ちゃん達に何を取材したいの?」

 

いつまでもこの話題は嫌だから、すぐに別の方に誘導する。

 

 

 

「あぁっ!…話に夢中で本題を忘れる所でした。私が取材したいのは、この前に妖怪の山が侵攻されましたけど…その時何が会ったのかとか、その侵攻された後の後日談を簡単で良いので聞いてみたかったんですよ」

 

思い出したかのように文は詳細を詳しく答える。

はたてはそれに続いて頷く。

 

 

あぁ、成る程。だから、お姉ちゃんなのか。いや、取材はついでだね。多分、二人っきりで色々と話し合いたかったのだろうね。さっきまでそんな目をしてたもん。

 

 

「で、もしダメだったとしてもその時の事を知る人に話を聞きたいなって考えてましてですねぇ…」

 

 

その為に、天狗少女のお母さん達はわざわざはたて達を外へと出させて、その時の事を知るヒトに探させようとしたけど…ものの見事に失敗してたってとこか。

 

と言うより、天狗少女のお母さんってその時の事情も知っている筈なのに…なんで話さないのかなぁ…。

 

「…今、お姉ちゃん達、お取り込み中なんだよね」

 

「お取り込み中でしたか…」

 

肩を落として落ち込んじゃった。

 

 

どうにかしてあげないとなぁ…あ、そういえば、今日って……。

 

 

「多分ね?四季映姫って言う…ヒト?……ホトケ様?…おお地蔵様?……まぁ、呼び方はどうでも良いけど、そこで待っていればいいと思うよ」

 

「…なんか、パッとしないわね」

 

まぁ、そう思っちゃうよね。

 

 

「だって、あのヒト。なんだかわからないんだもん」

 

 

「……その名前は、確かにお地蔵ですけど……どうしてそこへ?」

 

純粋に疑問に思った文が訪ねてくる。確かになんでお地蔵の所って思うよね?

 

お姉ちゃん達の交友関係って広いって言うか…複雑なんだよね…。

 

偶然…成り行き…その場しのぎ…紹介…手合わせ…等々、色々と辿って来た道ではあるけど、その全てが縁となって今の交友関係に繋がっているから…一言で言い表せない程、複雑ではあるんだよ。

 

 

「それは、行ってからのお楽しみって奴だよ♪」

 

え?親切じゃない??だって教えちゃったらつまらないじゃん。面白い事は黙っておくのが一番だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、私の所へ来たのですか?」

 

なんの前触れもなく鴉天狗二人を連れてきた私達二人を見て何を察したのかしてないのかよく判らない眼差しを向けた四季さんに事情を話すこと数分。

…今度は呆れられたよ。…なんでだろう??

 

「……ダメだった?」

 

「いえ、丁度退屈していた所ですし構いませんよ。そちらの二人の希望に答えられるかどうかは解りませんけど」

 

まぁ、それはお姉ちゃん次第だからね。本当は家に連れて行っても良かったんだけど……それだと少し都合が悪そうだからなぁ…。

 

 

「そこは気にしなくてもいいと思うよ?だって、今日でしょ?」

 

「確かに、それは今日ですが……」

 

「なら、待っていれば姉さん達は来ますね」

 

 

事情が解ってない二人は首を傾げるばかり。でも、私も四季さんも、夢月すらも話すことはなかったからか、ついに諦めた。二人して休憩所でのびのびし始めたと思いきや数分経った頃には、はたては夢月や四季さんに早速あの事を取材し始める。四季さんはため息付きながらも仕方なく付き合っているし、夢月に至っては愚痴を溢しながら取材に答えていた。一方は文は私を膝の上に乗せて愛で始めた。

 

 

文の行動が全く意味わからないけど……判らないけど、私が気にする事でも無かったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの尋ね人、良い人そうだったし、多分そろそろ来ると思うけど…まだかなぁ……。

 

うーん?読み間違えた?でも、そしたら良くない方向へ転んじゃったとか?……いいやそれはないよ。…だってお姉ちゃんは、ちゃんと言っていたじゃん。後でここへ来ることになるって。

 

…だんだんと不安になってくる。

 

 

「……ぇ?」

 

急に一肌の温もりが背中全体を包み込んで来た。

 

私の不安を感じ取ったのか…文が優しく抱きしめて来た。

 

「…大丈夫ですよ。今までこいしの予想は一度も外した事なんてありませんでしたから。多分、来ますから」

 

 

 

その途端、はたてが何かに気付いたのかふと此方を見てきた。夢月も同じく此方を向く。

 

どうしたの?二人して。

 

「どうしたのですか?二人とも…。あ、こいしは渡しませんよ?」

 

 

「いやいや、あんたの性癖なんてどうでも良いし。私にそんな趣味はないわ。…そこの空間。なんか違和感かあるんだけど?」

 

 

「…えぇ。夢月はもう気付いたかもしれませんけど、さっきから私が展開している結界をこじ開けようとしていますね」

 

はたての疑問に半笑いで答えたのは意外にも四季さんだった。結界なんて張っていたんだ。…夢月はそれを知っていたようだし…。

まぁ、こんな所で地蔵と妖怪が集まっていたら人間に変な誤解を生んじゃうからね。意外と気を利かせてくれてたんだね。

 

 

突然、空間に切れ目が出来る。

 

結界内部に侵入されたみたいだね。すぐにはたてと文は臨戦体勢に入る。

まぁ、これは確かに知らないとこうなっちゃうもんね。

私も始めて見たとき…今朝方だけど、そういう反応をしちゃったもん。

 

 

ぱっくりと割れた空間の中は目玉と…目玉と……やっぱり目玉。

 

見てて凄く目が回りそうになる。

 

「あれ?皆さんお揃いで」

 

「…一体どうしたのかな?」

 

そんな直視するのが嫌になる空間から少女二人が飛び出してくる。

 

見慣れた姿…見慣れた声に…何時も一緒の二人の掛け合い。

 

ようやく来た……。もう、待ちくたびれたよぉ!

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