東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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投稿放棄したと思いました?
残念ですが、実は色々と忙しかったのと地道に作っていたせいで完成が遅れてしまいました。
次の話も遅くなるかもしれませんが、ゆっくりと作っていきますので応援宜しくお願いします。


030話 理想と現実

 

聴覚から入る風の音が私の世界を支配する。少しだけ肉体から離れていた意識が一瞬の内に戻る。

 

 

 

季節の移り変わりなのか風がやけに強い。無意識でいるとすぐに流されちゃう。頭上を飛んでる渡り鳥には嬉しい風だろうけど…。

 

 

紫さんと一緒に文達の前に現れからお姉ちゃん達はちょくちょく何処かへ行くようになって。

…一体何をしているのかが全く判らなくなっちゃった。

 

 

 

 

 

 

なんでも、妖怪と人間が共存する楽園を創るために動いているのだとか…。

判らない私に神綺さんは、私により解りやすく説明はしてくれたと思うんだけど……やっぱり難しすぎてよく判らない。

 

私なりの解釈で妖怪の山と人里程度のような感覚かなぁ…って結論を出したんだけど、神綺さんは苦笑しながら、それとはちょっと違うってやんわりと否定された。

 

 

 

 

お姉ちゃん曰く、妖怪と言う存在は弱くていつか人間に否定されちゃうみたい。

 

私は妖怪が弱いって意味が判らなくて…『なんで?妖怪は今でも強いじゃん』って聞いたんだけど、幻月お姉ちゃんは、『単純な力…物理的な解決方法…ううん。純粋な力とかそういう現実的な問題じゃないんだよね~』って笑いながら返してきた。

 

 

ますます意味が判らなくなって唸っていたんだけど…お姉ちゃんが答えてくれた。

 

『私達、妖怪って種族は、人間の肯定…まぁ、解りやすく言えば、妖怪が存在しているのは現実なんだな思ってくれるって意味ね?…それだけさえあれば私達は此処で生きていられるの。…ただ、その存在認識を人間側が否定してしまえば、その瞬間に私達は死んでしまう。…端的に言えば人間側が否定するだけで一方的に消えてしまう存在なのよ』

 

…私なりに解釈にすると人間達が私達、妖怪なんて存在する訳がないって思うだけで簡単に私達を消すことが出来る。…まだ、想像は出来ないけど、言葉にしただけでかなり焦っちゃうね。だって、これは私達の生死にも関わる重大な事。お姉ちゃん達が紫さんって人に協力するのも頷ける。

 

問題なのはそこだけじゃなく、私達の様な存在を否定した場合、同時に人間側の方もその存在を保っていくのが危うくなる。簡単に言うと棒の先端に乗ったやじろべえみたいなものらしい。

想像できない人は、人差し指に定規を乗せて定規が落ちない様にバランスを保ってみるといいよ。

人間は妖怪みたいに単純じゃない。

お姉ちゃんから少し引き継いだ前世記憶?…から参照すれば、人間社会って言うのがあるんだって。

それは複雑過ぎて訳がわからなくなる程に絡み合っていて、それの何処かを間違えるだけで、その社会は根元から一気に崩れ落ちて最期は消え去るみたい。

本当にその通りなら、いずれ自ら滅んでしまう運命を辿ることになっちゃう。

…妖怪無くして人間も居らずって言った所かな。簡単に説明は出来ないけど、妖怪と人間は一心同体で片方が消えちゃえばもう片方も自滅の道を辿ってしまうって所だね。

だからこそ、人間と妖怪が共存していくことが出来る楽園を創るんだとか。誰にとっての楽園なのか…人々なのか…妖怪達なのか…又はそのどちらもなのか…

 

 

別にお姉ちゃん達を取られていじけている訳じゃないよ?

毎回、ちゃんと帰ってくるしあの大妖怪……妖怪の賢者とか言うヒトらしいけど……。でも、お姉ちゃんは信用に値している人物と一緒だから、大丈夫って思っているから気にして無いんだけどね。

 

 

ふと、妖怪の賢者と一緒にいるお姉ちゃんを見たときの文の顔を思いだしちゃってクスリと笑っちゃう。

 

あそこまで驚くこと無いだろうに…。幻月が核心に迫る質問をした時、顔を真っ赤にして全力否定していたっけ…

 

文も幻月も二人とも乙女なんだねって二人が会話している時に割り込んで茶化したら、幻月はなんか知らないけど…無言で絶句していた。

…なんで?

…んで、文はさっきよりも顔を赤くしてたね。

 

 

 

それにしてもこの山は綺麗だよなぁ……百年近く経ったけど飽きる事なんて無いし、毎回違った味を出してて…お姉ちゃん、本当場所選びが上手いなぁ…

 

のんびり景色を堪能していると後ろから誰か飛んでくる気配を感じた。

 

振り返って見れば、お燐とエリスが必死に私を追いかけて来ていた。

 

技術はお燐の方が上のはずだけど、よく見ると両手に猫を抱えているのが見えた。流石に猫を抱えたままじゃ、追いかけるのは大変みたい。

…なら、エリスに託せば良いだけじゃんと思ったんだけど、どうやらエリスはお燐の抱える猫に嫌われている様で、頑なにお燐の抱える腕から離れようとしない。

 

そんなやり取りが、私の耳には届かずとも行動が遠くからみて取れたので恐らくそうだ。

 

更に今日は特に風が強いようだ。

仕方無く飛ぶ速度を緩め、私に追い付くのを待った。

 

 

「はぁ…はぁ。…やっと、追い付いた…」

 

「こいしちゃん。こんにちはっ♪」

 

うん。こんにちはー!

 

 

私はエリスちゃんに挨拶をして、お燐に向き直る。

…息が切れているところを見ると、相当頑張ったみたいだね。普段のお燐からは想像できないや…。

 

「お疲れ様。お燐」

 

「いやいや、はぁ、さっきから呼んでたんだけど…?聞こえないから、嫌々全力で追いかけたんだよ……」

 

全然聞こえなかったよ。

…もしかして風の音に支配されていたからかなぁ?…どっちにしても、お燐には悪いことをしちゃったな…。

 

「所でこいしちゃんは何処へ行こうとしてたの?」

 

「うーん。考えていなかったや…まぁ、暇を潰せるのなら何でもいいしね。私の興味があるモノがあったら、取りあえず寄る予定」

 

エリスと会話している内にお燐の息が整ったようなので再び進む。

 

今度はお燐も追いつけるように結構のんびりと飛ぶ。

 

「それで…結局どこら辺で暇を潰そうと考えていたんだい?」

 

「うーん。そうだねぇ…。あ、そう言えば丁度天狗の里で祭りがあるらしいから、お手伝いに行こうと思ってねぇ~」

 

 

まあ、それもあるけど…出来ればそこで友達を沢山作りたいし、私自身もお祭りで楽しみたいからね。

お姉ちゃんが入れば良かったんだけど……大事な話のようだから仕方無いよね。

 

 

「…へぇ?祭りの手伝いだなんて珍しいねえ」

 

「私だって手伝うときは手伝うよ。今回はたまたま妖怪の祭りを手伝うだけだから」

 

私だって人間のお祭りなら手伝ってるよ。屋台の組み立てとか山車引っ張ったりとかさ。

 

 

 

「凄いなぁ~こいしちゃんは。…で、本心は?」

 

「…ついでに少しだけ遊べたらなって」

 

「まあ、そうだろうとは思ってたさ。でも、そうだねぇ…丁度、さとり達もいないし…あたいも手伝いにいこうかね」

 

え?お燐が手伝うって?…いや、そうでもないかなあ。よくお姉ちゃんの手伝いで色々と走り回っているからねえ…。

 

うーん、でも……

 

「もしかしてなんだけど…お姉ちゃんに用事でもあったの?」

 

「まぁね、今日は蚤(ノミ)取りの約束があった筈なんだけどさ…」

 

そう言って体を震わせる。きっと痒いのだろう。よく見ると腕の中の猫も痒そうに体を掻いていた。

 

 

御愁傷様だね。お姉ちゃん達、今夜は帰れないみたいだし…帰ってきた直後にねだるほどお燐もマイペースじゃないし。

 

むしろ、マイペースなのはお姉ちゃんの方。え?私も?嫌だなぁ…私はマイペースじゃないよ。他の人よりもちょっとズレているだけだから。

 

「こいし、さとりの代わりに蚤(ノミ)取りしてくれない?…我慢出来ないしさ」

 

「無理!…私、蚤(ノミ)取れないんだよ……」

 

なんか、蚤(ノミ)取りしようとしても毎回失敗するんだよね。一時間に一匹捕まえられるかどうか…。不器用なのか…才能が無いのか……いや、蚤(ノミ)取りの才能ってぶっちゃけ欲しくないんだけどさ。

 

 

因みにある時気になって夢月に聞いた所、お姉ちゃんは蚤(ノミ)を心の声が聞こえるから、それを便りに蚤(ノミ)の行動を先読みして正確に捕まえているんだとか。

 

…それを聞いて私は、さとり妖怪だし心が読めるから出来そう。…そう思ったんだけど…私にはその蚤(ノミ)の声が聞こえなくてさ…途中で蚤(ノミ)取りを諦めちゃってお姉ちゃんに丸投げしちゃった。

お姉ちゃんは、苦笑いしながら許してくれたけど…その時のお姉ちゃん…なんか悲しそうだったな…。

 

 

 

 

「あれ?…こいしちゃんじゃないですか」

 

 

「あ、椛だ!やっほ~♪」

 

「それに、エリスさんも来ていたんですね?お疲れ様です」

 

「お疲れ様で~す。椛さん。今は仕事中でしょうか?」

 

「はい、そうですよ。それはそうと貴方はこいしちゃんの見守り中ですか?」

 

「まぁ…成り行きではあるけどね。概ねは間違ってないよ」

 

 

そろそろ里かなぁ……って、ところで地上に降りてみれは木材を運んでいる椛とばったり遭遇した。

 

お燐は里の方まで飛んでいくらしいので一旦別れる。エリスはと言うと、私についてくるんだそうだ。どうせ、また後で会えるんだしエリスもいるから寂しくなんて無いもん。幸先は良くて椛とも会えたんだから。

 

「…椛さん。その木材って祭りに使うんですか?」

 

「えぇ。櫓の設営にですが」

 

「なら、私も手伝うけど?」

 

「…そうですね…。人はいればいるだけありがたいですけど…大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ。こんな見た目でも幾つかなら余裕余裕♪」

 

それにしても…重そうなのをひょいひょいと担いでいる。

 

やっぱり、妖怪なんだなぁ…

でも、なんだか無理をしているっぽい?少し腕が震えているし…

 

その様子をエリスは判っていたようで先んじて木材を持った。

 

「…ふぅん。…まぁまぁだね」

 

「エリスさん。…見た目で判断しちゃいけないって改めて学びましたよ。…意外にも力持ちなんですね」

 

「幻月様の無茶振りと比べればかなりマシな方ですけどね」

 

「幻月さん…エリスさんにどんな頼み事を…?寧ろそれが気になってきましたよ…」

 

「何か言った?」

 

「…いいえ、なんにも」

 

軽々と持っている辺り流石、幻月お姉ちゃんに遣えているだけあるね。…よし。

 

「ねぇねぇ、私も何か持つよ」

 

 

「え、こいしもですか!?」

 

なんで、そんなに驚くの?

好意で手伝うのって…私、そんなに珍しいのかなぁ…

 

 

「……まぁ、人は見た目によらないって知りましたし…お言葉に甘えます」

 

否定はしなかった。普段の椛ならやんわりと断る筈なのに……やっぱり無理してたんだ。

 

エリスに続き私も椛が腕に載せてた何本かを貰って三人共に歩きだす。

 

軽くなったのが余程嬉しかったらしく…椛の尻尾が揺れている。

 

「…重たいね」

 

「まぁ、それはしょうがないですよ」

 

 

 

「なんで毎回組み立てたり、解体したりするのかなぁ…」

 

 

ふと思った疑問を漏らす。

 

櫓くらいなら組みっぱなしにしても良いと思うんだけど…?

 

「組みっぱなしだと、監視とかの邪魔になるから?」

 

エリスの言うことも一理あるかなって思う私…。

 

でもまぁ、確かに撤去した方が意外にも楽だったり…?

 

 

「…さぁ?上の考える事は解りませんからね…予想しか立てられないのが精々です」

 

 

まぁ、そんなモノなのかな…

 

上下関係があるって難しいや。私は絶対馴染めなさそう。

 

 

そんな事を考えながら椛についていく。途中、河童から誰だ?こいつみたいな目線で見られたけど椛と一緒だからか私達が資材を運んでいたからかなのか特に咎められる事も無かった。

 

「つ、疲れた……」

 

「お疲れさま、こいしちゃん。…無理し過ぎないでよ?」

 

「判っているよぉ…」

 

 

 

比較的非力な私は里に着くまでの間にバテちゃった…。

おまけにエリスから心配される始末…。こんなんだったら魔術で体力強化してから運べば良かったなぁ…。使わないだろうと思って魔導書を置いてくるんじゃなかったよ…

 

 

エリスは私の疲れた様子を見て椛に休憩しようと提案。椛は仕方無いですねと呟きながら資材を邪魔にならない位置に置いた。

私は、里が一望出来る位置にてちょっとどうでも良いことを考えたり考えなかったり…いつの間にか隣に座っていた椛の尻尾を触ったり…

 

 

 

でも、なんだかいつもの里とは違うような違和感がある。何かが足りないような…うーん。

 

深く考えてみるけどよくわからない。…いや、…あ!そうか!!

 

「ねぇねぇ、いつもいる鬼ってどうしたの?」

 

私が聞くとエリスは、事情を理解しているのかため息を吐いた。

 

何かな?と思いつつも私は鬼の姿が無い事に納得していた。

 

あの怪力持ちが資材を運んでくれたならもっと早く終わると思ったんだけど…

 

「…あぁ、それ…なんですけど………」

 

急に椛が口ごもる。なんか言いたくなさそうだけど、どうしたのかなぁ…。あ、もしかしてだけど…

 

「……言いたくないのなら、私が言いますよ?」

 

「エリスさん…。いえ、大丈夫です。私が言いますので…」

 

「…もしかして、山から消えたの?」

 

「…えぇ、そうなんです……」

口ごもった椛を心配してエリスはそっと寄り添う。その後、椛が私の質問に答えようとしたんだけど、それに被せる形で質問をされたせいで、意を決した顔から苦笑いへと変わり、静かに肯定をする椛だった。

 

 

そっか、やっぱり山から去っちゃったんだ。お姉ちゃんの言った通りだね。

 

でもそれって結構騒ぐ事なのかなぁ…。確かに山は天狗が治めてけどそれにバックには鬼が居たからであって、その鬼がいなくなったって事は勢力争いがどうとかあると思うんだけど…

 

その事を聞いても結局、下の者には判らないですで終わっちゃいそう。そういうのはやっぱり鴉天狗の二人…ううん、紋さんかあかねさんの二人に聞いた方が早いかも?

…だって紋さんは鴉天狗の中でも天魔さんと近しい存在みたいだし、あかねさんは紋さんと友達で情報交換とか行っていそうだからね。

 

でも、今何処にいるのか判らないからなぁ…探すのもかなり大変だし………

 

 

「でも、なんで山から去っちゃったのかなぁ…?」

 

 

「詳しくは解りませんが…萃香様は、あの時の責任を感じていらっしゃいましたし…他の二人も人間に愛想を尽かしちゃったみたいでしたし…」

 

そう言えば、あの時の陰陽師達って萃香さんを追い掛けてこっちまで来たんだっけ?

 

其処まで萃香さんが気にする必要も無いと思うんだけど…。そう思うって事はやっぱ思うところがあったって事か……。なんて、他人事の様にしか感じないや…。いや、そもそも、この件は他人事だしね。

 

「…まぁ、いいや。他に手伝う事はある?」

 

気持ちを切り替えよう。今考える事でも無いしね。

 

「そう…でしたら…」

 

 

人手が足りないのはどこもおなじみたい。前まで鬼がいた分、今年は作業が進まないんだって。

でもさ、山の一員でもない私達に手伝わせる事なんて、たかが知れてる…そう思ったんだけどね?

 

 

「……あら?…珍しいお客様ですね?…ボンボヤージュ~?…じゃないわ。初めまして~♪」

 

椛に案内された先に居たのは、この辺では見ない大人びたお姉さん。

服の着飾り的に何処か品のある所に住んでいそうなイメージを持つお嬢様と間違えても不思議じゃない。

色は藍色と白を主体としてこの辺では売ってなさそうな綺麗な帽子を被っている。

右手には、お姉ちゃん達から教えてもらった、仰ぐ為の道具の…確か、扇子?…って言うモノを持っている。

 

 

「…えと、この方と一緒にお手伝いをしてくれればと。…何気に見てて危なっかしい行動ばかりしますので…」

 

椛は苦笑いで溜め息をつく。

 

「…否定はしないわ。…目覚めた先が地上だなんて、普通はあり得ないコト…ですから。…此処には珍しいモノばかりで、端から私の行動を見れば危なっかしいと言われて当然ですもの」

 

「そうなんだ~♪…えと、まずは初めましてだし、自己紹介。私は古明地こいし!…お姉さんの名前は?」

 

一方的に話し続けるお姉さんを前に、私は問答無用で自己紹介を始めてしまう。

 

目の前のお姉さんは、私の自己紹介に『はっ!?』とした顔になった後に、こほん。…と話す前の咳払いをする。

 

「興奮の余り、私の自己紹介を忘れていました…。私は綿月豊姫(わたつきのとよひめ)。…本来なら月に居なければならない存在…のようですが、何の因果なのか、気が付いたらこの森で寝ていた様なのです。…この世界の事を余り知らない…見た目通りのお姫様みたいな存在と考えて頂ければと。…なので、差し障りが無いようでしたら、色々と教えて頂ければ、助かります」

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

肩書き 穢有地上之守護者(グラウンズガーディアン)

名前 綿月豊姫(わたつきのとよひめ)

能力 山と海を繋ぐ程度の能力《使用不可》

   地と空を断つ程度の能力

特殊能力 多重調整能力(マルチスキル)

・自分が持つ能力を同時に二つ以上を重ねて使用が可能。また、加減をして能力を使う事も出来る。その場合は元々持つ能力と性質が変わる事も確認されているとか。

 

現在の身体能力

耐久力 SS

筋力 A+

防御力 B+

魔力 C-

速力 S-

 

扱えるスペルカード

 

扇符『空間をも凪ぎし旋風』

『フェムトファイバーの組紐』

権能『山と海を繋ぐ仙境』

権能『地と空を断つ境界』

兵器『試作型β量子殲滅砲』

兵器『波動扇』

兵器『時空歪曲量子砲』

干渉『視覚聴覚遮断』

干渉『触覚嗅覚遮断』

干渉『魔力能力封印』

奥義『波動扇・薙』

奥義『波動扇・凪』

 

簡易キャラ詳細

この世界にて確立してしまったもう一人の月の使者。その名は綿月豊姫。

元から月に居る綿月豊姫と同一人物であるが、実際はそうではない…かなり曖昧な人物である。

扱える能力は本来の綿月豊姫と正反対の性質であり、あらゆるモノへ干渉が可能。場合によっては、一時的に相手の能力や感覚等を強制的に切断する事が可能である。

また、綿月豊姫の本来の能力も所有している。

…が、現在は扱えないみたいで…?

・・・・・・・・・・・・

 

綿月豊姫さんね?

何だか、見た目と雰囲気から察すると、相当マイペースの人柄のよう。

でも、お姉ちゃんの様な安心感もある気がする。

 

「宜しくね~♪」

 

私はとびっきりの笑顔で豊姫さんに宜しくの挨拶を返した。

 

「元気が良いわね。…フフフ。…えぇ。此方こそ宜しくお願いするわ」

 

同じく豊姫さんも控えめな挨拶を返してくれる。

 

「…さて、本当ならこのまま貴女とゆっくりと話をしたい所だけど、まずはこの建築作業の手伝いを終わらせてからにしましょうか…?」

 

 

と、豊姫さんの目の前には椛も言ってた大量の木材が。

 

これを全て使って櫓を作るみたいだけど…

 

「まさか、櫓建築(やぐらけんちく)を一人で任されるなんて…」

 

 

人手が足りないって言うかなんと言うか…一瞬だけ大丈夫じゃないかなぁって思っちゃったよ…天狗社会。

 

 

まぁ、いいか。他人の事を心配するよりも目の前のこれを組み立てていかないとね。

一応、にとりって言う河童が指示を出しているから、効率は悪くなんてならないし、まさか間違えたりなんて…そんな失敗はしないと思うけどさ。

 

「あの、こいし…様?…これから何をするのでしょう?」

 

「…こいしで良いよ。私、長くは生きているけど、堅い呼ばれ方には慣れてないんだ。…だから、豊姫さんも何時も通りの呼び方で大丈夫」

 

「…では、お言葉に甘えちゃいますね。…こいしちゃん。…今から何をするのかしら?」

 

「…そうだね。取りあえず、少し見てて。言葉で説明する事がどうしても苦手でさ…」

豊姫さんは私の返しに笑みを浮かべる。

「言葉の説明より実際に見せた方が何なら解りやすいって事よね?…大丈夫、安心して。ちゃんと見ているから」

 

「…判った」

 

豊姫さんが此方を見ているのを横に私は目の前にある組み立て予定の資材に意識を集中させた。

 

…まず、腕に妖力を込めた後、資材と資材を糸で繋ぐ様なイメージする。

 

そのイメージを再現するべく、私は妖力を注ぎ込む。

 

妖力の流れを変えながら柱になる木材を組み立て、そして設置完了。

 

私が一度に操れるのは二本まで。

幻月お姉ちゃんや神綺さんなら…もしかしたら、10本以上操れそう…って思うのは変な話じゃないよね?

豊姫さんは、感心する様に見ており、にとりは?…と言うと見ない力故に驚いていた。

 

ただ、その顔を見るための余裕は今の私には無い。

 

やっぱり魔力が無いってだけでキツいね……

 

後でお燐の所にでも行こっと。

 

…多分、なんかくれるでしょ?

 

 

暫く観察していた豊姫さんだったが、ウンウンと何かを掴めたかのように頷くと此方に近づいてくる。

 

「…と、豊姫…さん?…危ないよ?」

 

「…いえいえ、お構い無く。もし万が一にでもその木材が落ちてきても私の肌には届かない設計になっていますので」

 

「…え?……何か特殊な能力とかあるの?」

 

「…フフフ。違います。…かなり専門的な単語になるのだけれど…これは目に見えない材質で作られた…近未来的な世界にあるバリア…貴方達の世界で言う所の『結界』と言うモノに似通ったモノかしらね?」

 

「…その名前こそ《月光歪極防壁(メタマテリアルキャテステラ)》…まだまだ試作型ではあるけど、多分大丈夫だと思うわ」

 

「め、めた?…あの、ゴメン。多分、お姉ちゃんとか幻月お姉ちゃんなら何をいっているか判るかも知れないんだけど…私には判んないや…」

 

すると、豊姫さんは苦笑いをし始めた。

 

「あらら…ご免なさい。専門用語過ぎて解らないわよね…。…私って、得意分野の説明を求められるとついつい難しい説明をし始めちゃうのよ…」

 

「ううん。平気だよ。この話を私のお姉ちゃん達に聞かせられたら面白いし、もし良かったら豊姫さんも一緒に来る?…今日の事とかもお姉ちゃん達に話したいし」

 

すると豊姫さんは、困惑の表情を浮かべる。

 

「…ええと、良いんです?貴方達の住む家へ許可なく入っちゃっても…」

「良いものは良いんだよ。だって、私も許可出せるヒトの一人だもん」

「…そういう問題では無い気が……ふぅ。そうですね。解りました。では、こいしちゃん。貴方のお言葉に甘える事にします」

 

そう言って豊姫さんは、資材を謎の力で持ち上げると私にどういう組み立てかたをしているのかを聞いてくる。

私がイメージしている形を言葉で簡単に説明をすると豊姫さんは、浅く首に振って少しの間考え込んだ。

 

その後、私と豊姫さん二人で五分も掛からずあっという間に櫓の建築が完了したのだった。

 

 

 

にとりは、少しの間、余りの光景に驚きすぎて上を見上げたまま動かなかったけど、私達が作業を終える所を見た瞬間に我に帰って私達の側に寄ってくる。

 

にとりは私達のおかげだと言っていたけど、私が思うにやっぱり、にとりの指示が良かったから早く終われたのだと思うよ。

 

更には豊姫さんの使う謎の技術に興味津々で質問攻めされていたよ。

普段は見ないにとりの目が輝いていて、陰ながら笑っちゃった。

 

 

 

質問攻めされていた豊姫さんは、軽くだけどにとりに先程の技術を説明していた。

 

私はさっきの作業で疲れたので説明をしている豊姫さんを見ながらのんびりと寛いでいた。

 

少し経ち、にとりから解放された豊姫さん。

その側に文が居たので、疲れた体を引き摺って、文におんぶをして貰うべく近寄った。

 

文はそんな思いで私が近寄ったのを悟ったのか、少し近付いただけで一言『おんぶしてあげましょうか?』と言われる。

 

私は軽く頷くと文の背中に引っ付いた。

 

文は仕方ないですねぇ?…と嬉しそうに私をおんぶしてくれた。

 

豊姫さんはその光景を見て何も言わずに微笑んだ。

 

 

暫くすると、全体的に祭りの準備やら何やらが整い始めたようで料理や提灯などが準備されていく。中には既にお酒を飲んでいる白狼天狗の男衆がちらほらと…流石にお酒を飲む時間には早いと私は思うけどなぁ…。

 

そんな事をボツボツ考えたり、考えずに周りを見渡したり、時には茶化されたりしていたら、忘れている事を思い出した。

正確に言うと忘れていると言う事を思い出した。

 

……えーと、なんだったかなぁ~

 

あ、そうだった。

 

 

「そう言えばさ…あーや?」

 

「…何です?どうかしましたか?」

 

 

おんぶされたままだと文がどんな表情をしているのか解らないや。

 

…でも、文の事だし嬉しがっているかもね。

豊姫さんの表情と文の声だけで、取りあえずは文がどんな表情をしているか大体は判る。

 

豊姫さんは少し微笑んでいるし、文の方は少しだけ声が上ずったからね。

…あくまでも私の感覚だから。…実際、どうなのかは解らないけどさ?

 

 

「もしかしたら、気に障るかもしれないけど…此処に居た鬼達が居なくなっちゃってさ、今の山の権力争いとかって大丈夫なの?」

 

そう私が訊いた途端に文の足並みが一瞬止まった。

並ん歩いていた豊姫さんも一瞬文の足が止まった事に気付き同じく足を止めた。

何かを考え出した様で無言になった。

…やっぱり大事な事だから、どう返したら良いか迷っているのかなぁ?

 

私は文の事が心配になり、文の背中に回している腕に少しだけ力を込める。……教えてほしい。妖怪の山がまた戦火に飲まれるのは嫌だから…

 

「…あやや。…本来なら、例え友人でも言う事じゃ無いのですけど…、別に禁止されている訳じゃありませんし…。…ま、良いでしょう」

 

そう言ってまたのんびりと歩き始めた。

 

 

「…ありがとう…文」

 

自然とそんな言葉が漏れてくる。

 

 

 

一瞬だけ、文が微笑んだような気がしてしまったのは気のせいじゃないはず。

 

だって、豊姫さんが文に小声で、こいしちゃんに信頼されて良かったですねって文に伝えていたもん。それで赤面していたのを私は見逃してはいないよ?

 

…ま、すぐに真面目に雰囲気になったから、訊こうにも聞けなくなっちゃったしね。…思い出した時にでも聞いてみようかなぁ…。…多分ね?

 

 

「…そうですね。実際に鬼がさっちゃった事によって妖怪の山のトップは私達に移ったのですが……」

 

やっぱし天狗が実質的にトップなのは変わらないか。

これは、お姉ちゃんの前世記憶?…みたいなモノの解釈だからホントか解らないけど。

 

「鬼と言う後ろ楯が消えてしまったのは、正直言っちゃえばとても痛いみたいですよ?…私の母が事情を話してくれましたし」

 

「それで、今は鬼無しの体制には慣れていませんので、はっきりいって私達は弱いのです。こんな状況、普通なら妖怪の山のトップが狙うには絶好のタイミングなんでしょうけど…」

 

確かに、天狗の組織は上下関係とか幹部の席の奪い合いとか色々とありそうで外からの攻撃に弱そうだもんね。

 

組織ってやっぱり嫌いだなぁ…。お姉ちゃんも幻月お姉ちゃんもそういう関係性になるのは苦手だって言ってたし。

 

それにしても、絶好の機会だって言う割に随分と周りには動きが無いよね?……何かあるのかな?

 

「…でも、違うんだよね?」

 

「ええ。その通りですよ」

 

 

ようやく文は得意気な口調になる。さっきみたいな自虐的な物言いよりもこっちの方が断然良いよ。

 

 

「鬼の四天王とほぼ互角の強さを持つ妖怪が一匹。それ以上の実力を持つ妖怪が二匹。…それを含まずしても陰陽師を軽く撃退できる実力を持つ妖怪達が多数彼女達と共に住んでおり全員が天狗側についている。更に、私達の頂点である天魔様とも友好関係であり、天狗界では余りにもイレギュラーな実力と権力を持つ私の母、射名丸紋さんすらも友人関係にし、極めつけには妖怪の賢者や山の神様達すらも彼女達の事を気にいっているって噂がありますし。…そのお陰でどの勢力も手をこまねいているみたいなんですよ」

 

「へえ……??なら、その妖怪達全員をダシにして平穏を保っているってな訳なのね?」

 

 

言い方はかなり悪いけど事実だし。それにそんな妖怪達…私の知る限りでは、確定的にあの人達しかいないよねぇ……

 

 

「まぁ……そうなんですよね。…自信満々に言った私が言えた事じゃありませんがね」

 

きっと苦笑いしているだろう文の顔を見れないのがちょっと残念。

 

「さっき言った話って、お姉ちゃん達は知っているの?」

 

まあ、お姉ちゃんの事だし知っていても知らなくても変わらなさそうだけどね?

 

「薄々わかっているんじゃないんですか?あの人達、勘とかも鋭い方ですからね」

 

「それも、そうだね。…あ、そろそろ降りるね!」

 

美味しそうな匂いが漂ってくる建物を見つけたので、文の首に回していた腕を解き飛び降りる。

 

 

 

「もっと背負ってても大丈夫なのですけど…」

 

 

こっちを振り返った文が寂しそうな目で見つめてくる。そんなに私といて楽しいのかなぁ…

 

……あぁ、そっか。

 

 

「文…さんは、もしかして山伏の服に着替えなければいけないのでしょうか?」

 

「文で構いませんよ?豊姫さん」

 

私が言おうと思った矢先、豊姫さんが私の代わりに聞きたい事を聞いてしまった。

 

因みに、山伏の服装はお姉ちゃんが広めたモノで本来の服装とは大分違う。…というか、お姉ちゃんが椛家族や文に渡したら何故か天狗全体に流行りだしちゃった。幻月お姉ちゃんは、一言『だから言ったのに…』だそうで、椛の母親の犬走椿さんは、喜んでいた。…一方で椛と楓さんは困惑していた。

話を戻すけど、今ではこの山伏の服装は祭りとかで着る正装にまでなっちゃっている。

男は別に良いとは思うけど…(楓さんは完全に嫌そうな顔をしていたけど)なんで、女用は通常の天狗の服と同じスリーブ型の……袴?スカート?なのかなぁ……どう見たって腰から下の脚が丸見えじゃん。

寒くないかとか心配するもそうだけど一番の心配は下から下着が見えちゃうじゃんって思うけど…誰も気にしてない所を見てると価値観の違いを感じちゃうなぁ…

 

 

「…貴方も判っちゃいますか」

 

「貴方も?…もしかしてこいしちゃんは既に?」

 

豊姫さんが此方を見つめてくる。

私は豊姫さんの方を向き軽く頷いた。

 

「まぁね。…別に心とかも読んでもないし、なんなら文の視線だけで気付いちゃったもん。…さっきから控え室の方度々見てたし…そりゃ判るよ」

 

「あやや……。こいしが気付くのはまだしも…知り合って間もない豊姫さんにも気付かれるなんて…。…気付かれない様に誤魔化していたつもりですけどね」

 

「…先程からこいしちゃんと楽しそうに話す反面…何かを気にしていましたし…会話も何かとぎこちない感じでしたし…」

 

「もう、バレバレだよ。私も豊姫さんも待っているから、早く着替えて来てね?」

 

 

きっと見て欲しかったんだね。でも、ここで別れたら多分、合流するのは難しい。だから、一緒に居ようって思ってたんだろうなぁ…

 

 

そう言えば、お燐はどこにいるんだろ?…さっきから姿が見えないけど…建物の中にでも居るのかなぁ…?

 

「…文さんは貴女にも着て欲しかったんでしょうけどね?」

 

「さとりちゃんの妹だもの。きっと似合うと思うわ」

 

「いや、そう言う事を言いたいんじゃ…」

 

隣から急に声が聞こえる。

 

「あ、と……椛に紋さん。何時から居たの?」

 

いつの間にか隣に椛、椛の横には文のお母さんの紋さんが立っていた。…気付かなかったよ。

 

 

「紋さんと話し終わった所から居ましたよ?」

 

「私の方も同じくね?」

 

 

当たり前の事を訊かないでよ。…みたく言っているけどさ…こんなにヒトが沢山居るところで気配を消されていたら流石に無理だって!

 

 

「…所で、其方の方は…またさとりさんの家で世話になる新しい住人の方なの?」

 

 

紋さんが私の方を向いて問いかける。

 

「えーと、う、うん。そうなんだ~♪…ね?」

 

「……。え、えぇ。そうよ?」

 

不思議がる紋さんは、ふーんって言いながら目線を此方にへと戻した。

 

 

「…そう言えば、さっき言っていたけど私に着て欲しかったってホントなの?」

 

なんで、そんなことが分かったのかなぁ?

 

「文ちゃんの目が一瞬だけこいしちゃんの方を見て、何か企んでいる感じだったわ」

 

「……流石、文さんのお母様ですね。…あのままこいしがおんぶしたままだったら確実に着替えさせられていたでしょうね」

 

 

……ふーん。

 

「…?…どうしたんです??」

 

「…別に……。…あ、いや、ごめん、なんでもないや」

 

不意に溢した独り言が、二人の心の中に思っていた事に対しての返しだった為、咄嗟に先程の発言を誤魔化した。

 

そうだったよ。私にはサードアイがあるから迂闊に人前では服を脱げないんだった…。

なるべく一人で着替えないといけないけど、文と一緒じゃなぁ…。

紋さんなら事情を判ってくれる筈だし、椛も許容してくれるかも…。

文も紋さんの娘みたいだから、話せば事情を理解してくれるとは思うけど…やっぱ、文には見せたくないし…

 

「それになんですが……」

 

何かを付けたそうとして急に椛が黙っちゃった。

 

 

「それに?」

思わず聞き返してしまう。

言うかどうか迷っているみたいだからこっちから催促してはいけない気がするけど…

もう聞き返してしまったんだからしょうがないよね。

 

 

「…やっぱ、いいです。気付いていないようですから」

 

……なんだったんだろう。まぁいいや。

 

ふと、横を見ると豊姫さんが含み笑いをしていた。

 

「…なんで笑っているの?」

 

「フフフ。お気になさらず…。…強いて上げるなら、貴女に興味を持たれている方がいらっしゃるのに気付かない様子が私として微笑ましい光景だと思っただけですよ」

 

何を言っているんだろう?

文とは既にそう言う仲なのに…どう言うことなんだろう…。

 

文を待っている合間に椛や豊姫さんに言われた事を思い出しながらどう言うことなのか考えていたけど、結局は解らなかった。

 

悩んでいる私を見て椛は呆れてたけど……一方で紋さんや豊姫さんはその姿を見て微笑んでいた。

その内、二人は気があったのか雑談に華を咲かせていた。…何の話で気があったのか、何の話で盛り上がったのかさっぱり判らず仕舞いだった。

 

そうしていると、着替えが終わった文が一緒に誰かと一緒に出てきた。

 

白の服に杏子色の裾や赤色ベースの装飾、色が重なり合いながら相殺せずにしっかりと調和されている。スカートの様な所も黒に黄色とオレンジの模様がきめ細やかに描かれている。それが自然と上の服とマッチして他の人のよりも一層、彩をわき立たせている。お姉ちゃんが作ったやつだから当然と言えば当然だけど。

 

反対にもう一人は、なんか黒子みたいな格好してて誰か解らない。歩幅的に女性。少しだけ頭とお尻が不自然に膨らんでいる…から、きっと獣人。よく見ればお燐の歩き方の癖に似ているような……もしかしてだけど…

 

「…あ、こいしじゃんか」

 

「やっぱりお燐だったんだね」

 

んもう、分かり辛い格好しないでよ。顔まで隠したら解らないじゃないの。

 

少し、ふてくされる。別に少しだけなら良いよね。

 

「あはは、ごめんごめんって。あたいの服装じゃちょっと目立つだろう?…こうしておかなきゃいけないし、仕方無いって言われちゃったしさ」

 

でも、それはそれで目立つなぁ…

 

「それより、横にいる女性は誰だい?…もしかして、こいしの新しい友達かい?」

 

お燐は、隣にいた豊姫さんの事を質問してきた。

 

「えーとね?…うん。友達だよ。…名前は綿月豊姫って言うみたいで…どうやら、此処に不慣れみたいだから色々と案内をしている最中だったんだ~」

 

事実を織り混ぜながらお燐に説明をする。

 

「そうだったんですね。こいしの友達ならあたいの友達だちさね。…あたいは火焔猫燐って言うんだ。こいし共々宜しくするよ」

 

「これは、ご丁寧に。…私は、先程の紹介に預かりました。綿月豊姫と申すモノです。…気軽にお燐って呼びますが…構いませんか?」

 

「あぁ、良いよ。あたいも堅苦しいのは嫌いだからね。気軽に呼んでくれたら助かるよ」

 

「…はい。宜しくお願いしますね?」

 

二人の自己紹介が終わる。

その間、私は暇だったんだけど…まぁ良いか。今は祭りを楽しもう!時間としてはちょっと早いけど食べ物とかはもう出揃い始めているし。

 

「静葉お姉ちゃんも此方にきて踊ろうよ~♪」

 

「こーら、稔子!山の神様の一人だと言う自覚を持ちなさい!見ててみっともないわよ?」

 

「良いじゃない、今日くらいは。お姉ちゃんもたまには神様としての威厳や自覚、矜持とかを忘れて…ぱぁ~っと弾けちゃおうよ~♪」

 

「…私だって、裏で弾けているわよ…思い切り」

「お姉ちゃん?なにか言った?」

 

「ううん。なんでもないわ。…稔子、暫くしたら屋台を見て周りましょ?」

 

「うん。判った~」

 

 

本当なら私も弾けたいけど、そうしたら大切な妹を傷付けるかもしれないから、今は我慢。

稔子が居ないタイミングを図って私も楽しみに行こうかしら?…うん。そうよね、今日くらいは弾けても良いって稔子が言っていたんだから。

ちょっとくらいハメ外して騒いじゃいましょう!

 

 

静葉さんの心の声が聞こえてきたんだけど…大丈夫かなぁ…。

 

お姉ちゃんが言っていたけど、静葉さんがハメ外すと怖くなるみたいだし…ちょっと心配。

 

…うん、でも、大丈夫でしょ。

稔子ちゃんとかは既に踊り始めちゃっているし、他人の心配しても仕方無いしね。

 

「そう言えば、そうでした。耳よりな情報がありまして…なんと、最近地下へと続く縦穴が見つかったらしいんですよ」

 

 

「…文ちゃん。それは、一体どう言う事??」

「地下?……それって…」

 

祭の合間に文が言った呟きを紋さんと豊姫さんは見逃さなかったが、それ以外のヒト達には軽く流された様で反応が無かった。

 

 

「…へぇ~?!面白そうな話だね?続きを聞かせて!」

 

 

約一名を除けばだが……

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