東方夢幻界鄕 ~有り得たもう一つの可能性の物語~   作:龍姫★サキ

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今回は幻月視点の話です。
さとりが表で動いている間裏で何をしていたのかが判る話となります。
話の繋がりはない擬似的な短編如くの話にはなりますが、楽しみ頂ければ幸いです。


裏編.1 幻月の事情

「あれぇ……?おかしいなぁ…さとりに頼まれた奴ってこの辺りで採れなかったっけ?」

 

と私は一人森の中で呟く。

 

私の名前は幻月。

東方幻想郷と言う旧作と呼ばれている弾幕シューティングゲームに出てくる裏ボスである姉妹の一人。

天使の様な真っ白な翼を持ちながらも種族は悪魔。

金髪でショートヘアー。ピンクのワンピースを着ており、専用テーマである曲は可愛い悪魔と言う題名であり、その名前通りに仕草や笑顔が可愛いのである。

 

ただし、それとは裏腹に滅茶苦茶凶暴でゲーム中では妹を倒された事に大激怒。

情け無用、容赦無い弾幕の数でプレイヤー達を挫折させてきた。更には戦いに時間をかけすぎると発狂と言う状態に入り、弾幕や攻撃の速度がクリア不可能レベルにまで到達するまさにプレイヤー殺しと呼ばれる起源のキャラなのだ。

 

そんな凶悪のキャラである私が何故こんなにも優しいのか……それこそ私を含む一部の人達はこの世界の人じゃない。

 

現に今の私の姿は原作とは大きく違い、髪は金と銀のメッシュの入った長髪で身長は12歳〜13歳程度の平均的女性の身長と同じ位。

他は特に違う所は無いとは思うけど…

まぁ…兎に角、私が言いたいのはさとり達の中に元人間が混じっているよって話。

…こいしは例外だよ?アレは本物の元人間だから。

 

 

…話を戻そっか?

 

私は今、さとりに頼まれた有るモノを探しに深い森の中を探索していた。まぁ、さとりに頼まれたのは八目鰻を数匹捕まえるだけなんだけど…私の本命は、別にある。

…因みにその事について、私と妹である夢月と自称従者のエリスしか知らない。

(例外で神騎さんとかカナちゃんにはあっさり見破られちゃったけど…)

 

里の人によるとその森に入った人物は森から抜け出す事が出来なくなるとか?

ただね?其処には珍しい食材とか見たことがない湖とか……あるみたい。

 

 

「…確か、この森の深くに川みたいな所があって…あ!あった、あった!」

 

記憶通り…ううん。私が知っている限りの推測で探していたけど合っていて良かった。

 

この川は何故か八目鰻が取れるって話で鯨呑亭の美宵ちゃんやさとりが絶賛していた事を思い出した。

 

「私は始めて来たけど…うーん。確かに黒くて細長い何かが泳いでいるしあれが八目鰻だとしても文句はないよ。…ただ、予想より遥かにデカい。大きい蛇と言われても納得する大きさだね」

 

川を泳いでいる黒い奴は見えている限りで全長四十センチ…太さは四センチの大蛇と呼ばれても良いくらいに大きかった。

 

 

…唐突に自分の後ろから気配がする。

それも、直前まで私の様子を伺うかの様に偵察をしていた伏兵の如く。

 

私はその存在に語りかける様にその体勢のまま口を開く。

 

「随分と用意が良いんだね?まるで此処へ迷い込んで来る事を予め判っていた様な…ううん。慣れている感じだったよね?」

 

「……………」

 

だが、返答は無い。

警戒しているのか…または無視して様子を見続けているのか…。

 

返答が有れば穏便に済ませられたけど…仕方無いか。

 

「…私のある記憶にはね?この森で人間を歌で惑わして盲目にし…偶然にも盲目を治すとして有名な食材である八目鰻の蒲焼きを訪れた人達に振る舞った挙句、料金を取ると言うとんでもない輩が居るんだって」

 

「その行為自体こそマッチポンプと呼べるモノになるんじゃないかな?…どうかな?種族が夜雀のミスティア・ローレライさん?」

 

 

私は今も気配を消しながらも様子を見ているだろう彼女に聴こえるような声で話しかける。

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

……あれ?

………あれあれ??

 

もしかして…もしかしなくても、予測が外れた??

 

こうして暫くの間待っているというのに、聞こえるのは木々の枝が揺れる音や風の音しか聞こえず、気配も気の所為だったかの様に失せている。

 

「……うっそん。…自慢気に…自信満々に決めたと思ったのに……これじゃ、恥ずかしいじゃん。もぅ〜!!誰だよ、此処に気配とか感じるとか言った奴はぁ〜!恥さらしにも程があるよぉ〜!!」

 

誰も周囲にいない筈の森の中で一人叫ぶのであった……

 

「…プッ!フフフ…フフフッ!」

 

…等と悲しくもそう思っていたら突然少女の堪えきれない笑い声が聴こえてきてフェードアウトが中断される。

 

「…ふ、ふぇ!?だ、誰!?」

 

「プッ…。そ、その台詞は本来私が言う台詞…なんだけどー??」

 

振り返った先にいたのは、髪が長く不思議な雰囲気を出した少女であった。

 

「そもそもー?こんな森の奥深くまで来る事が珍しいんだから…此処に住んでいるなら物珍しくて覗きに来るに決まっているじゃん」

 

木陰の隙間から日が注して彼女の姿が見える。

 

髪は長く、桃と茶のメッシュであり、顔立ちは整っている。

背丈は16歳〜17歳の平均的女性の身長位あり、胸は少し大きい。

茶色と白を基調にしたバランスの取れた服装をしており、その姿は雀を想起させる。

頭の先端は寝癖なのか癖毛なのか定かでは無いものの少々ボサボサっとしており、私の知る鳥の雀の頭らしさを醸し出している。

 

「…少し私の想像した見た目よりは大きくなっているけど…君はミスティア・ローレライなんだよね?」

 

そう尋ねると彼女は照れながら頷いた。

 

「…えへへ。まぁね?こんな見た目だけど、君も知っている通り、夜雀のアイドル。ミスティア・ローレライちゃんだよぉ〜♪」

 

ーーーーーーーーー

 

肩書 夜雀のアイドルマスター

名前 ミスティア・ローレライ

能力 歌や能力で人を惑わせる程度の能力

 

身体能力

体力 B+

耐力 E+

筋力 C+

妖力 A+

速力 B+

 

詳細

原作におけるミスティアの姿から成長しかなり大人びた姿へと変わった夜雀の怪。

性格は相変わらずではあるものの、人へと慈愛と冷静な態度。接客する時の女将らしさは美宵にも引けを取らない。その上かなり賢く、知将的な面が増えた代わりにその豊満な姿のせいで動きは昔より鈍くなり油断するだけで相手にも気付かれる様になってしまった。ただし、スペルカード等の攻撃性能や体力面に関しては以前よりも上がり簡単な事では倒れなくなったらしい。

 

ーーーーーーーーー

 

「所でなんだけど、此処へ何しに?…美宵ちゃんやさとりちゃんみたいに食材を調達しに来たんじゃないでしょ?」

 

「まぁ、そうだね。端的に言えば、この辺りの調査かな?…主に噂の確かめ程度だけど」

 

苦笑いで噂を確かめに来たと断言する私。

普通、こんな噂で確かめにくる奴なんて自滅覚悟の人しか居ない。

なんなら、眉唾物の噂を信じてやってくるなんて馬鹿の所業ではある。

 

「…ふーん。ま、さとりとか、神騎さんとかならやりかねないかなぁ。フフッ。ホント苦労人さんね。貴女って」

 

彼女は苦笑いで此方の発言に同情する。

「…と言うか、ミスティアさんのその発言ってホント?…此処へ神騎さんも来たって事になるけど…」

 

「ん?そうだけど?…神騎さんと私はよく顔を合わせる知り合いでさ…道に迷ったからってしょっちゅう私の経営する屋台に顔を出しては出口まで道案内させる位にはね」

 

「ミスティアさん。…それ、知り合いって言うよりも顔見知りって言った方が良いかも。…もしくは店の常連さんってのも」

 

「プッ。フフッ!何それ。意味は違うも私からすれば殆ど同じよ?…それに、私のことは今後呼び捨てで構わないから」

 

ミスティアはクスクスと片手で口元を抑えながら笑い出す。

 

「数奇な縁かもしれないし…贔屓にしてくれるお客さんにもなるかも…だからさ。…私の事をミスティアちゃんとか愛称込めてミスチー…なんて呼んでくれても一向に構わないわよ」

 

友好的な姿勢を崩さず此方に歩み寄ってくるミスティア及びミスチー。

苦笑いしつつ私はミスチーに歩み寄る。

 

「…それじゃミスチー。不躾かもしれないけど、友達として宜しくね?」

 

「えぇ。君の様な不思議な人と縁を持てたのは嬉しい限りだわ!…今後ともご贔屓に!」

 

とミスチーと友好を交わした所で私はハッとする。

 

「…っ!…そだったぁー…。まだ、時間あるよね?!」

 

私は思った事を口に出す。

 

「と、突然大声を上げてどうかした?…幻月ちゃん」

 

「へ?…あ、あれ?……もしかして声に出ちゃった?」

 

「うん。ガッツリとね。もしかしなくても時間に余裕無い感じ?」

 

うわぁ……こう言う所があるからパニックになりたく無かったんだよ…。

そもそも、原作の幻月なら予想外の事が起こった所で余裕で別の案を出しそうなんだよなぁ。

 

「いんや…そうじゃないけどさ…今日中に用事済ませて帰らないとさとりが心配しちゃうから…」

 

ミスチーは、私の言葉に対して何かに気付いたかの様に含み笑いをする。

 

「ふ~ん。…なら、丁度良いね。生憎、時間は一時間経った所だし、現在時刻的に丁度昼の十二時切った所だしさ」

 

「…貴女の屋台に寄って雑談兼ねての昼食を一緒に食べないかとかそういう事?」

 

「先に言われちゃった…。ま、そんな所。どう?まだ時間有るなら食事がてらお話でもしましょ?」

 

「でも、仮にそうだとしても……」

 

私の調査はどの位時間が掛かるか判らない。

私の計算的に今から再開して早くても3時間遅いと5時間掛かる見込みではある。

…ゆっくりとしていられない。

そんな、私の焦る顔を見たのかミスチーは笑顔で歩み寄る。

 

「大丈夫。私も協力して上げるからさ」

 

「…私の調査の目的も判らないと言うのに?」

 

「いいから、いいから。私がいいって言うんだからいいに決まっているじゃん。…私にとって君は数少ない親友の一人なんだから。…助けるに値するに決まっているよ」

 

ミスチーの根拠の無い理由で助けるとか…馬鹿みたい。

でも、なぜだかその言葉に信じてみる価値がある気がする。

 

「…判った。降参。取り敢えず君のお店に案内してよ。話はそれからだよ」

 

ミスチーは私の賛同に頷くとついてきてと一言。

 

私はそのままミスチーの後に続く様に森の奥へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

………暫く歩いていると森の中に一つ明かりがあるのに気が付いた。

 

「…あれは?」

 

「うんうん。そうだよ。アレが私の屋台。名付けて…夜雀食堂!」

 

「…それ、即興でつけたでしょ?…何かのオマージュとかパクリ?の類かな?」

 

「……断じて違う!……なんて言えないわ〜。私の知識の中に入っていて、丁度良さそうな名前があったから……ただ単に使ってみたかっただけよ〜」

 

私ははぁ。と溜息。

 

夜雀食堂ってのは、とあるサークルさんが作った東方二次創作ゲームの一つで雑に纏めれば客から金を集めて有名に至る経営シュミレーションゲーム…って所だね。

 

「はいはい。…んで、この屋台のオススメはあるの?」

 

「えぇ。…と言ってもまだ味の方は保証出来ないけど…。あ!違うの。あくまでも私の舌で確かめただけだから…他のお客さんの感想ってまだなのよ〜」

 

ミスチーは自分の発言に少々はっ!と口押さえ、慌てながら訂正し始める。

 

「そ、そんなに慌てなくても……私、食べるから。外面だけで判断とか…素人のする事だしね」

 

「???」

「…ま、まぁ、食べてくれるって事でいいのよね?」

 

私は肯定の意を表す頷きで返した。

 

ミスチーはちょっと待っててね。と言い残し屋台の裏側へと回る。

その後、ミスチーは居酒屋の店員が着る様な服装でカウンターの向こう側から現れた。

 

「…どう?…似合ってる?」

 

「さっきと印象が違くて驚いたけど…まぁ、似合ってると思うよ」

 

その言葉を聞いたミスチーは照れながらもコホンと咳払い。

 

「さぁて、お客様。其処に立って居ないでまずは其処の席へ座って頂戴」

 

私ははぁ。と生返事を返し椅子が並んでいる所の一番端に座る。

 

「当店自慢の八目鰻の蒲焼き。是非ご賞味下さい!」

 

ミスチーは予め用意していたのかカウンターの下から八目鰻が頭から串刺しされている様なモノが乗っている皿を受け取る。

 

「これ、蒲焼きじゃなくて串焼きだよ…」

 

「へっ!?そ、そうなのぉ!?」

 

知らなかったと言わないばかりの驚き様。

店員がしちゃ駄目な顔になっているじゃん……

 

「あむっ」

 

そんなミスチーを横に私は彼女が蒲焼きと言い張る串焼きを一口。

 

…意外とイケる。

 

鰻と違って八目鰻は、若干苦さもあって好き嫌いが分かれそうではあるけど…好きな人からすれば鰻よりも美味しいと思う。

 

私?私は、えーと、半々かなぁ。美味しいけど…何個も食べろって言われたら流石に遠慮しちゃうかも…

 

「味の方はどう?」

 

「うん。焼き加減が丁度いいよ。私的には可もなく不可もないからサービスで何個もってなっちゃったら流石に断っちゃうけどね」

 

 

その言葉を聞いたミスチーは若干笑みをこぼす。

 

「さてと、食べながらだけど君のこれからの予定を聞かせてよ」

 

いつの間にか先ほどの服に着替えており、私の隣にある席に座っていた。

彼女の皿には八目鰻の串焼きが50本位乗せられて、その内の一本を片手で取って口に運ぶ。

 

「あむぅ。…んぅ〜。美味しいっ♪」

 

半分位、八目鰻の肉を口に含んだ彼女は傍にあった秘酒『萬寿華峰(まんじゅがね)』をグラスに注ぐ。

 

「それ、お酒だよね?…大丈夫?探索に支障とか出ない?」

 

「大丈夫、大丈夫。これね、私の自家製なのよ〜♪アルコール度数は脅威のゼロ!なのに、お酒の味を楽しめるの」

 

ミスチーはそう言い、グラスに注がれた透明で少々紅い炭酸水の様なお酒を一杯飲む。

 

「…まぁ、それなら良いか。じゃ、私の目的を共有するよ。この森の奥に霧に覆われた湖があると言う噂が合って、今回其処に用事があるんだよね」

 

私の話を聞いたミスチーはうーんと唸る。

 

「…多分、君の思った通りの場所なのかは判らないんだけど、確かに四六時中霧に覆われていて辺りが常に薄暗くてやけに開けた場所があるってのは知っているよ?…でも、肌寒いから行こうと思わないのよねぇ〜」

 

ミスチーは串焼きを食べながら、淡々と話し出す。

 

…でも、もしもミスチーの言うことが真実なら私の中にある知識と大分一致している。

幻想郷にある霧の湖は、四六時中霧が漂っていて薄暗く、太陽が出ていても日が差すのは極わずかであり、気温もそんなに上がらない為、主に妖精や薄暗い夜を好む妖怪達の溜まり場となる事が多い場所である。

 

霧の湖と言えば、氷精のチルノか大妖精が居るイメージではあるが、その他にも人喰妖怪のルーミアや紅魔館と言う場所に住む吸血鬼達等、意外と妖怪達が好む環境ではある。

 

そんな中に私の求める妖怪が一人いる。

名前をわかさぎ姫。

ミスチーと同じく力が弱く一般的に草の根妖怪の一人として数えられている人魚である。

 

何故、其処までして彼女を探すのかと言うと…この近辺に私の能力が影響して無自覚に能力を使用した痕跡が二つ残されていた事だ。

一つは森の中でもう一つはその奥深くにある未開の地の何処か。それを私が微かに感じ取った訳だ。

 

一応補足だが、私の能力で強化された直後の妖怪達は欠片程弱いが、確かに私の妖力によって改竄された痕跡が暫く残る。例を言えば神騎さんやさとり、エリスにカナ…ルーミアもその一例だ。

彼女達は明らかに原作以上の能力(ちから)と身体能力、知能を得ている。

 

…だったら尚更良いんじゃないのか?

…彼女達が強くなったからどうした?

…探す意味はないんじゃないか?

……って思う気持ちはわかる。

だが、ちゃんと探さないといけない理由がある。

 

それは、強すぎる力故に溺れて原作以上に猛威を振るいかねない事である。

私の異例過ぎる能力(ちから)は他者の姿だけではなく、能力や性格にも影響が出てしまうと最近判った。

それも能力を行使しなくとも、私が居るだけで力が弱い妖怪や神様、能力が無かった時代の人物に強力な能力を授けてしまう。

それこそ、ミスチーなんか良い例である。

原作よりも力を得てしまって姿どころか能力から性格まで変わってしまっている。

私の知る彼女達は、性格こそ殆ど変わっていない様に見えるが、明らかに何かが違う。歯車が合っていても色が違って浮くみたいな感覚に近い。

それだけなら、私だって探す意味はない。

だって、力を得て姿が変わっても原作と何ら変わりない暮らしを送ってくれるのなら歴史もそうは変わらず、後に出来る幻想郷にも影響は余り出ない。

ただし、原作とは大きく違った行動を引き起こし万が一、私の知る幻想郷縁起にすら傷を残す程の事件を引き起こしてしまったなら……想像はしたくはないが、正史とは違う結末を迎えてしまう可能性が大きくなる。

そうなる前に、私がその人物と接触してこちら側に引き入れる他無い。

幸いにもミスチーは素直に此方の要求を飲んでくれたし…

 

そっと私はミスチーの方を覗くように見る。

 

「ムグムグ……むぅ?……なぁに?そんな目で私を見てぇ?…あっ。フフッ。…判ってるわよ。これからはちょくちょくあんた達の顔を見に行くわよ。勿論、お得意様(ともだち)の好(よしみ)って事で八目鰻の串焼きとかを無償で振る舞って上げるから安心なさい」

 

この様に私の事を慕っているのでなにも問題はなし。ミスチーの言葉は裏のない言葉が多い為、信用に値する。

 

「成る程ね。…りょ〜かい。んじゃ、早速その薄暗い湖まで行こっか」

 

「…へ?!…今すぐ!?……ちょちょちょ!!ちょっと待ってよ。僅かで構わないからさ。屋台閉めるまで少し待って!」

 

私が席を立つと、ミスチーは慌てて持っていた串焼きとお酒一杯を飲み干した。

その後屋台の裏側へと行き電気を消して後に素早く私の所へと戻ってきた。

 

「はい。準備出来たよ」 

 

「…私の知るミスチーとは比べ物にならないくらい準備が早いなぁ」

 

「ねぇ…それってどういう意味?意味は判らなくも無いけど、若干貶していない?」

 

「っ!…コホン。ミスチーの準備が整ったし、早速向かおうかっ!」

 

「……露骨に話を逸らしたぁ〜…まぁ、良いけどさぁ。気を取り直して此方よ。着いてきて」

 

ミスチーの冷えた視線が私を突き刺す。

…はぁ。と溜息一つ吐いた声が聞こえ、彼女は踵を返し森の奥へ先導する。

 

 

 

 

歩き始めて30分前後。

時刻は太陽の向きと季節を鑑るに午後1時25分辺り。

今の季節は春から夏へ変わる節目の境であり、私達の感覚を持って暦として換算すると大体、第801季の春であり、今年(こんとし)で恐らく二百年生きた計算になる。あくまで私基準だからもしかしたら230年とか…300年近く行きたかもしれないけど…実感は無いよね。

…悪魔とか神様に妖怪等、人外に歳は関係無いしそも歳取んないし。百年超えたらもう自分の歳なんて数えてられなくなるし、感覚も判らなくなるよ。

 

そう思っていると急に肌寒く感じてきた。とミスチーは此方の様子に勘づいて歩幅を合わせて話しかけてくる。

 

「この辺りから急に肌寒くなると思うけど、もうすぐ君の言っていた霧がかかっている幻想的な湖に着く筈だよ」

 

話し終えると前を見てと言わないばかりの目線を進行方向へと向ける。

私もそれに倣って目線を前へと向けると確かに開けた場所がその奥に見える。

 

 

 

暫く歩き続けてやっとその奥へと辿り着いた。

其処に広がっていたのは名前の通り、太陽の光が地表に届いている筈なのに、辺りは薄暗く同時に肌寒い。更に霧が所々に散見し視界は悪く見通しも悪かった。

 

「…ここが噂の湖。…この目で見られるまで少し心配していたけど、ホントにその噂のまんま。霧に覆われて言葉で表せないよぉ…」

 

「凄いでしょ?あんまり行かないけど、見る度に圧巻されちゃうよね〜♪」

 

「別にミスチーが作ったんじゃ…ないよね?」

 

「…良いじゃん。この際、気にしても意味無いし」

 

他愛の無い会話が周囲に響く。

しかし、二人以外は誰も居ない為、5秒から8秒の間だけ哀愁が漂い無言になる。

 

 

「…取り敢えず、此処からは目的の人物探しに取りかかろ?」

 

「そうねぇ〜♪…確か、君の探している人は私と同じ妖怪で、此処に住む人魚…だったかしら?」

 

「そうだよ。…名前がわかさぎ姫。…私の記憶が正しければ、少し臆病で趣味で綺麗な石を集めているみたいだし、本当に居るのなら声をかけるだけで出てくると思う」

 

「…警戒されないのかしら?」

 

「生まれてからずっと此処に住んでいて…誰も居ない湖に居るなら寂しさの余り出てきそうだけど」

 

ミスチーは私の推測に確かにと頷く。

試しに声を掛けてみなよ。とミスチーは私に催促する。

 

「やらないより、やってから考えるのも答えの一つだよね」

 

「すぅ……。わかさぎ姫ちゃ〜んっ!!居る〜?居るなら顔を見せてっ〜!!」

 

湖全体に聞こえる様に声を張り上げる。

 

………。

……………。

…………………。

 

呼びかけてから少し経つ。

未だにわかさぎ姫らしき人物は湖から姿を見せてはいない。

「…反応無し」

 

「もしかしたら、幻月ちゃんの勘違いだったんじゃないの?」

 

「えぇ〜…。そんな筈は、無いと…思うけど。…感覚的に此処らへんで感じたから勘違いな訳ないよ」

 

「でも、少し時間が経つけどわかさぎ姫って人は返事どころか姿だって見せていないじゃん?」

 

「うっ。…それは、そうだけどさ……」

 

ミスチーが痺れを切らして早々に切り上げて帰った方がいいんじゃないかと提案してくる。

私だってそうしたいのは山々なんだけど、直感が言っているんだもん。…此処らへんで間違いない。帰ったら後悔するって。

 

すると…

 

「誰々(だれだれぇ)〜??私の名前を呼ぶ人は?」

 

湖の方から声が聞こえてくる。

二人以外に誰も居ない筈ではある。

 

「ミスチー?何か喋った?」

 

「ううん。全然(ぜーんぜん)?口開いていないけどぉ〜?」

 

私の質問にはっきりと答えるミスティア。

となると残る可能性は一つのみ。

 

「……私かぁ」

 

「何でなのよっ?!其処は明らかに判るでしょう!?もうっ!私にツッコミさせたかったのかしらぁっ?!」

 

狙ったとおりに湖から勢いよく飛び出し私のボケにツッコんでくる下半身が魚の女性。

人魚と言えるその体の上半身には浴衣の様なモノを着飾っており、見るものを引き寄せる何かを感じる。

髪色は青を基調とし先に掛けては水色になっている。長髪のシンプルヘアーであり、よく見ると耳がヒレのようになっている。

 

私の記憶にあるわかさぎ姫よりも明らかに身体が成長しており、胸が大きくなりそれに伴った下半身の部分も大きくなって魅力的になっている。

一般的に見てよく見る人魚の女性としてのイメージにそっくりな見た目にはなってはいる。

 

「せ、積極的な人魚さんだね…」

 

「貴女がそれを言うの!?」

 

「……ゴメン」

 

「まぁ、いいわ。悪気があった訳じゃなさそうだしね」

 

「そ、それで、貴女が噂の人魚ちゃん??」

 

「噂…とか、どうかは判らないけど、ご紹介にあずかり光栄だわ♪…改めまして。私の名前はわかさぎ姫。見ての通り人魚よ?この湖に一人で住んでいてお歌が大好きなの。宜しくね?」

 

 

ーーーーーーーー

 

肩書 湖畔のセイレーン

名前 わかさぎ姫

能力 水分を含んでいると力が増す程度の能力

   歌声を聞いた者の傷を癒す程度の能力

 

身体能力 (地上or空中に居る場合)

体力 A+

耐力 B+

筋力 D+

妖力 SS+

速力 C+

 

身体能力 (水中に居る場合)

体力 A+

耐力 B+

筋力 D+

妖力 SSS+

速力 SS+

 

詳細

原作に存在するわかさぎ姫からかなり成長し大人びた姿。

15歳少女の様な姿であるわかさぎ姫から大きくなり、胸や身長も大きくなり20歳前後の様な姿へと変わった。

性格は堂々とする様になり、神騎の様に誰でも隔てなく接する様になった。原作と違って水が無くとも、大気中に微量でも水分が含んでいるのなら空中を泳ぐかの如く自在に泳ぎ回れるようになった。勿論、水中なら更に力が増し無双と呼べる程の力を扱える。ただし、あくまでも本人が水中にいる間だけなので、強い能力かと言えばそんなでもない。

更には、歌声を聞いた者の傷を癒す能力を会得し、ますます人魚らしくなった。

 

ーーーーーーーーー

 

笑顔で語るわかさぎ姫。

私の知る面影は残っているが性格面で大分変わっている。

この様に面と向かって自己紹介するのはわかさぎ姫に取って慣れ親しんだ人物しかせず、基本的に人見知りな一面が多く見られる。また臆病でも有る為、突然と知らない人に顔を出して発言にツッコむとか論外なのである。

 

「はじめまして、わかさぎ姫ちゃん。私は幻月…」

 

と私が話している途中でわかさぎ姫は私に近付いて抱きついてくる。

 

「…ふぇ!??」

 

「おぉ~?!だ、大胆な愛情表現ねぇ〜?」

 

「貴女が私に力をくれた人なのね?ありがとう!!お陰で色々と変われたわ!」

 

恐らく私やミスチー共に赤面になっているだろう。

そんな事をいざ知らず。わかさぎ姫はまだ私に抱きついたまま頬を擦り寄せている。

 

「ひゃんっ?!ちょ、ちょと…そ、其処は敏かんぅっ!でぇ…」

 

「……見ている此方まで恥ずかしくなってくるんだけどぉ〜?」

 

「ふゅ、ふゅか抗力じゃん………。仕方無いじゃん!…わかさぎ姫…ちょっと落ち着いてよ…」

 

私は、わかさぎ姫を優しく掴みそのままゆっくりと引き離す。

 

「…ご、ごめんなさい。私のこの姿と力の源が貴女なのを感じ取って思わず…」

 

しゅん…と項垂れる彼女の姿は元々の性格を彷彿とさせる。

となると…

 

「少なくとも、此方の夜雀よりも私の能力における性格侵食を受けていない感じかな。あくまでも核と呼べる元々の性格まで改変はされていないって意味だけど」

 

「…え?どういう事?」

 

「ねぇねぇ、明らかに君の発言が、私をディスっていたよねぇ?そうだよね?」

 

「ミスチーもわかさぎ姫も私の使う能力の副作用で力を得ちゃったんだよ。でもね、その力はまだ未知数で暴走でもしちゃったら最悪、私の知る歴史まで壊れちゃうんだよ…。だから…」

 

私が次の言葉をかける前にミスチー達が口を開く。

 

「貴女達の仲間になってって事?」

 

「私は全然構わないわ!寧ろ、こんなに自由に動ける様にしてくれたんだもの!仲間でも、貴女の家に住むでも何でもするわよっ!!」

 

「…まぁ、そういう事ね。話を聞いていてやっと私の中に流れる力が貴女のモノだと判ったよ。なら、断事なんて出来ないわ。寧ろ協力させて頂戴。貴女達の力になれるか判らないけど、精一杯頑張るわよ〜!」

 

ミスチーもわかさぎ姫も私が何か言い出す前に言いたいことを言い当てられてしまった。

確認の確かめをしたいが、あの二人の様子からして多分本気だ。なら、改めて聞くのは野暮である。

 

「…判った。それじゃ、これから宜しくね。と言っても、何かする訳じゃなくって…いつも通りに過ごして貰うだけだけど。…何かあった時に協力してくれるだけで構わないからさ」

 

私がそう言うと二人は嬉しそうに返答した。

その後、私を含めて三人はそれぞれ解散し元の生活に戻るのであった。

 

ミスチーは自分の事情を知っているからなのか私だけの時に会いに来てくれて八目鰻を振る舞ってくれるようになった。

わかさぎ姫は寂しいのか、よく私に会いに来てくれるようになり、たまに甘味屋で食事を取る様子を散見する様になった。

 

 

この出会いが吉と出るか、凶と出るか…

…その時誰も判らなかったのであった。




裏話として描く予定ですのでお楽しみにしていてください。
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