ARMORED CORE Ⅵ /LOST RAVEN 作:この先生きのこマン
治安維持を掲げる統括組織、アライアンスからの依頼だ。
内容は旧世代と思しき施設の調査だ。
調査のため先行したMT部隊が消息を断ち、更に周辺からは計機の異常も見られるとの報告もある。
パルヴァライザーを倒したお前に言う台詞では無いだろうが、油断はするなよ。
エド・ワイズ
鴉の鳴き声がこだまする。
それがすべてのはじまりだった。
昔話をしよう。
レイヴン──ワタリガラスの名を冠した傭兵が22人いた。
ある者は自由や野心という名の理想のため、ある者は秩序の復活のため。様々な理由を持って互いにかけられた懸賞金の為に互いの命を奪い合っていた。
彼ら全てに該当する共通項は2つ。
一つは、最強の人型機動兵器アーマード・コアを駆ること。
二つは、誰もが──生きるために戦っていた。
ワタリガラスが22匹。期待して身を寄せた組織は守ってくれず、残り21匹。
ワタリガラスが21匹、騙し討ちしたつもりが返り討ち。残り20匹。
ワタリガラスが20匹、父の敵討ち。復讐叶わず残り19匹。
ワタリガラスが19匹。青二歳が故に、その先生きのこれず、残り18匹。
ワタリガラスが18匹、ダムの藻屑となり残り17匹。
ワタリガラスが17匹。友を救えず弔い叶わず、後を追ってダムの藻屑。残り16匹
ワタリガラスが16匹、単純が過ぎて足元掬われ残り15匹。
ワタリガラスが15匹。運だけで生き残ったのに最後の不運で消し飛んだ。残り14匹。
ワタリガラスが14匹。抜かれた牙では相方を守れず敵も噛み砕けず。残り13匹。
ワタリガラスが13匹。規則を嫌うものの、ツキがなくなって残り12匹。
ワタリガラスが12匹。その忠誠が仇となり残り11匹。
ワタリガラスが11匹。その俗物さが仇となり頼れる味方諸共討たれた。残り10匹。
ワタリガラスが10匹。老兵、時代に抗いきれず残り9匹。
ワタリガラスが9匹。組織の正義を盲信し一人寂しく戦い続け、一人寂しく消えた。残り8匹。
ワタリガラスが8匹。紛い物と卑しさが故に孤立し討たれ。残り7匹。
ワタリガラスが7匹。享楽主義が、更なる暴力に打ちのめされ、残り6匹。
ワタリガラスが6匹。友に切り捨てられ残り5匹。
ワタリガラスが5匹。その脆さを突かれて残り4匹。
ワタリガラスが4匹。自己顕示欲が高じて身の程知れずに戦場に消えた。残り3匹。
ワタリガラスが3匹。策に溺れど悲願叶えて、鴉の羽ばたき見届け息耐えた。残り2匹。
ワタリガラスが2匹。ようやく追い続けたものに手が届き、残り1匹。
そして、他の誰もいなくなった空を最後のワタリガラスは見上げていた。
そんな彼を誰かが最後のレイヴンと呼んだ──
レイヴンによる秩序を謳ったバーテックスの蜂起から端を発した、多くの傭兵──レイヴンが死んでいったあの24時間から少し時間が経った。
旧世代の兵器と、24時間の騒乱により荒廃した大地は今もなおその傷跡は生々しく残したままだ。
レイヴン──支配という名の権力が横行する世界において、何にも与することなく高額な報酬と引き換えに最強の機動兵器、アーマード・コアを駆り依頼を遂行する存在。
最後の一人
依頼の開始。その時まで。
『聞こえる? レイヴン。ミッション領域内に到着したわ。間も無く降下に入るから準備して』
通信機から聞こえるオペレーターの声に目覚めたレイヴンと呼ばれた男は静かに操縦桿を握る。
起動を始めた計器たちを一瞥してから、モニターに映る外界に視線を映す。
ミッション領域は、大陸からやや離れた海上──深い青が広がり、そこにぽつんと落とし物のようにある白い人工島だ。
このACに乗ったレイヴンの役割はその調査である。
人工島というからには当然誰かが作ったことになる訳だが。
一体誰が作ったのか──不明。
いつ作ったのか──不明。
何のために作ったのか──不明。
そんなふざけた存在が今この瞬間、ACのカメラが捉えている。
依頼主は治安維持を掲げる統括組織、アライアンス。
とはいえレイヴンには関係のないことだ。その昔旧世代兵器にひどい目に遭わされたが全く関係ない。あの無尽蔵に降り注いできたイナゴ共に個人的な恨みなど決してない、あぁ決して。
『静かね……先行したMTが壊滅したようには思えないのだけれども』
話によればアライアンスはこの施設から得られる成果を独占したかったのだろう、子飼いのMTを先んじて派遣した。
が、結果はお察しの通り。通信が途絶という有様だ。人数の規模としては事故という線はあり得ないとのことだ。
冷静に考えなくても大事だ。
だが、『よくあること』でもある。
アライアンスを好ましく思っていない組織個人など掃いて捨てるほどいる。あれはかつて世界を支配していた『企業』、ミラージュ、クレスト、キサラギを始めとした組織が母体となっている。
少し前に起きたとある災厄を機に弱体化した企業たちは復興の為に、秩序の再構築の為にあらゆる強引なこともしてきた。
当然、それに反発するものなど腐るほどいる。
バーテックスも──創設者の意志はさておいてそこに籍を置いた者たちはアライアンスに反発した結果のものも少なくない。
その手の者による待ち伏せか。それとも──
あまり考えたくない可能性を思考の隅に追いやっている最中、作戦領域に足を止めたヘリがレイヴンのACを落とした。
【メインシステム 戦闘モードを起動します】
OPERATION CODE :SIGNAL LOST
CLIENT NAME:ALLIANCE
PLACE NAME:VALDONA LABO
START TIME:04:00
RECOMMEND RAVEN RANK:S
アーカイブ
作品
・ARMORED CORE LAST RAVEN
2005年に発売されたアクションものとしては10作品目のアーマード・コア。
最後のPS2シリーズであり本流のシリーズとしては最後の『レイヴン』が主人公の作品である(4は元が付くので除外)
8作品目であるARMORED CORE NEXUSの直接的な続編にしてAC戦の多さとスピード、膨大な分岐、戦闘領域の狭さ(昔はエリアオーバーすると作戦失敗となっていた)も相まって地獄のような難易度を誇る。
・ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
2023年に発売されたアクションものとしては15作品目のアーマード・コア。
最後に発売されたVDから10年ぶりの新作であると同時にまさかの『レイヴン』が主人公の作品である。
歴代シリーズの要素とこれまでフロムが培ってきたノウハウで出来上がっておりACは健在である、と世に知らしめた。
難易度はやや独特。
組織・称号
・レイヴン(旧シリーズ)
最強の人型兵器「アーマード・コア」を操り多額の報酬と引き換えに依頼を遂行する傭兵。支配という名の権力が横行する世界において何にも与する事のない例外的な存在である。
主にPS1からPS2シリーズの主人公が専らそう呼ばれる。実は4の主人公も元レイヴンである。
Ⅵとは異なりこちらは傭兵個人の称号ではなく職業、生き方に近い。そのため同じレイヴンと呼ばれる存在が大量に存在するのが旧シリーズの特色でもある。
アーマード・コアに乗る傭兵という点だけは共通しているが、作品によって微妙に定義が異なっており、アリーナ登録並びに特定の組織に属している存在をそう呼んだり、単なるAC乗りを十把一絡げにそう呼ぶ場合もある。
ラストレイヴンにおけるレイヴンはそのAC乗りを十把一絡げに呼んでいる節がある。
・アライアンス
かつて社会を支配していた『企業』こと、ミラージュ、クレスト、キサラギ、その他諸々の集合体。
ACⅥの言葉で言うなら、アーキバスとベイラム、RaDらが技研の遺産で酷い目にあったので死にかけたので合併、連合したという状態である。
とある出来事で荒れ果てた世界を治安維持や、復興の為にその手腕を振るっていたがその強引さなどから批判は少なくない。
バーテックスと呼ばれる傭兵たちによる武装組織が蜂起したことでズタボロにされたものの、現在その力を取り戻しつつある。