ARMORED CORE Ⅵ /LOST RAVEN 作:この先生きのこマン
【メインシステム、戦闘モード起動します】
ガシャンガシャンと駆動音を立てながら頭部パーツの機能を作動させる。
施設ならびに基地潜入はACの華だ。
だが迷ってしまっては意味がない。広大な基地に潜入したものはいいものの遭難して帰還不能になった傭兵も珍しくはない。
そうならないためのオートマッピング機能だ。
これを駆使して地図を作っていく。
想定より広いこの人工島。
漁れば企業が欲しがりそうなものも転がっていそうだ。とはいえ先行したMT部隊が行方をくらましたのは今いる人工島の1Fではない。
AC、MT輸送用のエレベーターで降りて下層。
乗機のたかが知れたハッキング能力でも容易く起動するエレベーターに拍子抜けしつつ、レイヴンは自機の調子を確かめるように上半身を左右に捩らせる。
脚部は中量二脚。
上半身は比較的軽量のパーツで構成されている。
よく言えば万能。悪く言えば器用貧乏。
何が起こるか分からない不測の事態を考慮すればこのようなアセンにもなるというものだ。
『調査隊が向かったのはそのエレベーター最下層まで降りてから先よ。何が起こるか分からないわ、気をつけて』
オペレーターの声。
この先何が起こるか分からない。
それはレイヴンを取り巻く者たち全員の見解だった。今のレイヴンは特定の組織、所謂斡旋組織には属さず自らの伝手でオペレーターと情報屋その他諸々を雇っている。
声の主であるオペレーターもその1人だ。名前はシーラ・コードウェル。元々企業所属オペレーターだったが退社してフリーに。レイヴンに雇われて今に至る。
情報屋。エド・ワイズ。
この仕事をする上で情報は必要だ。特に後ろ盾のない独立傭兵からすればいつ背中を撃たれたり先を越されるか分からない手前上情報面で先手をとる必要がある。
彼の場合元々企業の依頼を受けて手に入れた情報を売り捌き生計を稼ぐフリーだったが先の騒動で仕事が激減。
レイヴンに雇われて例の24時間からずるずるとその腐れ縁を続けている。
いずれもこの奇妙な人工島について全く見当が付いてないのが実情だった。
オペレーターがメインの仕事であるシーラはさておいて、裏社会に精通しているはずのエドに至っては完全に匙を投げている。
旧ミラージュ、クレスト、キサラギ、ナービス。いずれの企業がこの人工島を作ったという記録はない。
旧世代の遺産について研究を進める学問もあれどこの手の話は出ていない。
ふと、レイヴンの脳裏にあの赤い特殊兵器が過ぎる。排除排除とそれ以外の言葉を発さず広大な施設の中を飛び回りパルスとミサイルをばら撒く赤い蝶のような──。
ええい。思い出すんじゃない。過ぎたこと。
レイヴンが我に返るとすでにエレベーターが最後まで降りきっていた。
ガリガリと音を立て埃を落としながら扉が開かれはじめ、エレベーターの心許ない灯りが眼前に広がる闇を少しだけ塗り潰していく。
どうやらここの通路の電源は落ちているらしい。肉眼ではおそらく何も見えないだろう。
ACの暗視カメラを作動させると、長い長い通路が顕になる。
その道の横幅は、MTやACが横並び数体でも余裕で動けるぐらいの幅だ。
直線距離は──あまり考えたくはない。
再び機体を走らせる。
戦闘があった痕跡は現時点では見当たらない。もう少し奥の方だろう。
刹那。キラリ、と何かが青白く輝いた。
「!」
その時、死の予感がした。
本能のままにレイヴンが機体を横にジャンプさせた刹那、青白い閃光がACの脚を掠める。
『敵!?』
レイヴンのACの動きに異変があったことに気付いたシーラの声。レイヴンはそれに言葉を返さず機体を左右の壁の窪みにACを隠す。
先ほどレイヴンのACがいた場所には青白いレーザーが一定間隔で奔っている。
ひょい、と冷やかしに陰から顔を出すと真っ先にそこに目掛けてレーザーが飛んできたので即座に再び身を隠す。
出力はまぁ、万全な整備をされたACならある程度許容出来るレベルだろう。
相手は固定砲台か、それともMTか。はたまたACか。
固定砲台は──おそらくないだろう。先行した調査部隊がここで落ちていたとしたら残骸がその辺に転がっているはずだ。その形跡がない以上ある程度動ける何かと見ていい。
なんにせよどんなものでも破壊できるはずだ。
そのためのACだ。そして今、叩くだけの兵装ならある。
ACの右手にはリニアライフルCR-WR93RL*1。
左手には通常ライフルのCR-YWH05R3*2。
ACやMT程度なら沈められるはずだ。
レーザーの発射間隔を確認しているとシーラが通信を送ってきた。
『……おそらく一体ね』
「そして無人機だろう。そういう撃ち方だ」
続けたレイヴンの言葉には少し勘が混じっていた。が、無人機とは何度も戦わされてきて育った勘がそう言っている。
レイヴンからすればその勘を信じる以外の選択はなかった。
レーザーの照射が止んだ途端、咄嗟にレイヴンは機体のアクセルを踏み、ブーストを噴かせる。
振り子のように機体をステップさせながら、相手の照準を揺らす。
FCSに頼り切ったその撃ち方では、この動きに振り回される。まるで踊っているようだの、酔っ払いの千鳥脚のようだとも揶揄されるその動きは実際問題弾速の速いレーザーを避け切って見せる。
そして、相手が得物の冷却のためにその砲撃を止める直前を見計らい、とあるスイッチを押した。
ガチャン、と
オーバードブースト。
ACにおける切り札の一つで莫大なエネルギーと冷却システムを摩耗する代わりに莫大な機動力を獲得する。
距離を詰めるのは一瞬だった。
すれ違うより先に、得物のリニアライフルが火を吹く。
その威力と衝撃は敵を大きく怯ませるには充分だった。次に連射力に優れる通常ライフルが敵の装甲を穿ち、オーバードブーストをカットしたその慣性のまま、その敵のすぐ横を通り過ぎる。
その傍らでぐしゃり、と機械が潰れるような音がした。
『MTだったみたいね……』
先程までここを警護していたのであろうMTはレイヴンのACが通り抜けた時には既に事切れていた。
当然だ。リニアライフルとライフルで蜂の巣にされたとなればその辺のMTの装甲程度では耐え切れるはずがない。
レイヴンは機体を180度振り向かせその事切れた背後のMTをACの頭部カメラで捉えその画像をシーラの乗るヘリへと送信した。
見たことのない──灰色のMTだった。
脚部はさておいて胴体と頭部が一体化している。
役どころとしては狙撃用MTもとい、CR-MT83RSを彷彿とさせるがコイツは何かが違う。
なにぶんライトアームがレーザーライフルそのものとなっている上にエネルギーパックが剥き出しで装着されている。
『このMT……アライアンスやバーテックスのものでもないわ。エド何か知ってる?』
ミラージュの元社員だったシーラなら何か知っていると思ったもののそんなはずもなかった。珍しくヘリに同乗していたエドも黙って首を横に振ったらしく無言が続く。
レーザー絡みとなればミラージュがその先鋒を行く企業だ。あの企業が開発したものじゃないかとレイヴンは考えたものの現実シーラは知らない。
ならば最新型のものかと思うだろうがその選択肢は最初からなかった。
ここにいるMTはまるで──何十年もの間放置されているかのように各部が錆び、節々が朽ちていた。
『なんなの……このMT』
そんなことレイヴンも知りたかった。
ただ一つ言える確かなことは、先行した調査隊はおそらく無事ではないことだった。
今回レイヴン君の設定はNX〜LRを通過している経験者。そのためNX主とLR主は同一人物説を採用しています。
その為排除君のことをしっかり覚えていてトラウマと化しているとかなんとか。
今回のお相手のMTは封鎖機構のアイツです。