数日後、結果が発表されます。私とお姉ちゃんは、PCの前で待機します。
ミラベ「いよいよだね。ドキドキするね。」
アヤベ「もう、忙しないんだから。時間になれば分かるのだから、急くこともないわよ。」
そう言いながらも、お姉ちゃんも気がはやるようです。時間になり、サイトを開きます。
ミラベ「合格、合格だよ、お姉ちゃん!」
アヤベ「ええ。でも、これはスタートに過ぎないわ。入っても結果を出せずに辞めていく子は大勢いる。」
ミラベ「そうだね。」
ベガ「2人とも、合格が決まったなら、今から準備をしなさい。」
「「はーい。」」
ウマ娘は、速く走るためにいろいろとケアをしなければならないので大変です。女の子として、ファッションにも気を使う必要がありますしね。荷物が多くなるのも納得なのです。人によっては特別なものを持ち込んだりもしますし。
アヤベ「ふわふわ…。」
ミラベ「あ、お姉ちゃんはやっぱりそれ持っていくんだ。」
アヤベ「当然よ。」
お姉ちゃんはふわふわ触感のものが大好きで、特に人を駄目にするクッションがお気に入りです。え、私ですか?鉄オタなので、一眼レフカメラです。
トレセン学園は京王競バ場線で向かいます。この路線、普段は2両編成のワンマン運転ですが、レース開催日には臨時列車が増発されるほど輸送量に極端な差がある路線なのです。
◇
学園に着くと、新入生の寮案内をしています。
フジ「やあポニーちゃん達、待っていたよ。私はフジキセキ。双子のアドマイヤベガとミラクルベガだね。」
ミラベ「はい!」
アヤベ「そうよ。」
フジ「君達は私が寮長を務める栗東寮だね。」
ミラベ「じゃあ、お姉ちゃん、また後で。」
アヤベ「ええ。」
フジ「ああ、ミラクルベガさん、君には学園長から話があるから、すぐ戻ってきてくれ。」
ミラベ「あ、はい。」
部屋に入ると、のんびりゆるふわな感じの芦毛のウマ娘がいます。
ミラベ「こんにちは、今日からここでお世話になる、ミラクルベガです。」
ミラコ「ヒシミラクルです~、どうぞよろしくね~。」
ミラベ「うーん、これってミラクルじゃない!?ミラクルの名を持つウマ娘がルームネイトになるって。」
ミラコ「そう言われるとそうですね~。まー、ゆっくり語り合いませんか。」
ミラベ「そうしたいんですけど、寮長さんに呼び出されています。それじゃあ。」
急いで戻ると、寮長のフジキセキさんがいました。
フジ「おや、もう少しでも良かったのに。まあいいや、姐さん、暫く頼むよ。」
ヒシアマ「ああ、任しとけ!」
私はフジキセキさんに導かれて、理事長室に辿り着きます。
やよい「待っていたぞ、ミラクルベガ!」
ミラベ「えっと、どんな要件ですか?」
やよい「うむ、実は、新入生代表スピーチを、君にやってもらいたいのだ!」
ミラベ「あれは、その学年で一番入学試験が優秀な生徒がやるのが伝統ですよね?」
やよい「うむ。だが、その本質は学年の代表として、その世代を引っ張っていくべきウマ娘の初お披露目という側面が大いにある。故に、微妙な差であれば、一番以外のものが務めることもある。君の入学志望を聞いて、今年は君が相応しいと考えたわけだ!」
ミラベ「分かりました。お受けいたします。」
むしろ私の方から立候補したいくらいだったので、これは好都合です。
やよい「ありがたい。それと、生徒会長が是非とも君と話をしたいというので、入学式の後に時間を作ってほしいと言ってきた。」
ミラベ「大丈夫ですよ。というか、今すぐにでも話したいくらいです。」
やよい「あー、それは駄目だ。まだ正式に入学していないものと生徒会長が接触するのは、いろいろと面倒なことになるのでな。」
ミラベ「分かりました。あ、最後に一ついいですか?」
やよい「なんだ?」
ミラベ「入学試験一位は誰でしたか?」
やよい「テイエムオペラオーだ。彼女は勝負根性が特に秀でているという評価だ。」
ミラベ「成程、分かりました。」
オペラオーならまず大丈夫ですね。ナルシストですけど、他人の優れたところを正当に評価するので。
◇
部屋に戻ると、ヒシミラクルさんが待っていました。
ミラコ「何がありましたか~?」
ミラベ「新入生代表として、スピーチすることになりました。」
ミラコ「それは凄いですー、私みたいな普通のウマ娘には縁のない話ですねー。」
普通ですか。こういう自称普通さんこそ、逸般人だったりするんですよね。というか、競走馬のヒシミラクル号って、GIを3勝しています。競馬を調べていて分かったんですけど、未勝利戦を抜け出せるのが2/3程度、重賞に出走出来るのは上位10%程度です。GIを3つも勝つのに『普通』なわけないんですよ。こういうの、インポスター症候群っていうらしいです。まあ、本人に直接言うとアレなんで言いませんけど。
◇
数日して、入学式になります。理事長さんや生徒会長さんのあいさつの後、いよいよ私の番です。
グルーヴ「では次に、新入生を代表して、ミラクルベガ。」
ミラベ「はい。」
副会長のエアグルーヴさんに呼ばれ、私は壇上に上がります。
ミラベ「私は、この学園に奇跡を起こすために来ました。」
それを聞いてざわつく。でも、私は動じない。
ミラベ「何を言っているのかと思う人もいるでしょう。ですが、それが私の生きる理由であり、運命だと考えているからです。双子の姉妹という生まれからして、私は奇跡的な存在。ならば、その能力を用いて奇跡を起こし、人々に夢や希望を与え、友人や仲間を導くのが私の使命。そう考えています。」
かなり挑戦的なことを言っていますね。周りは受け入れるでしょうか。
オペラオー「ハーッハッハッハ!いい、実に良い!それでこそ、学年首席で入学したこのボクから新入生代表スピーチの座を奪い取っただけのことはある!」
ドトウ「オペラオーさん、あの人そんなに凄いのですか~?」
オペラオー「そうだよドトウ。ミラクルベガ君はボクと同じ視点で物事を見ているんだ。つまり、ボクと同じレベルになれるということさ。」
アヤベ「ちょっと、それは聞き捨てならないわね。」
お姉ちゃんが立ち上がります。
オペラオー「君の名は?ミラクルベガ君に似ているようだけど?」
アヤベ「ミラクルベガの姉のアドマイヤベガよ。一等星の輝きは譲らないわ。」
トプロ「私も負けません。この世代は、凄く凄く強くなると思います。」
「私も負けないわ。」「私も私も!」
皆触発されたようです。
グルーヴ「ゴホン、盛り上がるのは構わないが、流石に脱線し過ぎだ。入学式を続ける。」
おっと、熱くなりすぎてしまいました。ですが、さっきとは打って変わって、皆さん熱が籠っています。
◇
入学式が終わり、私は生徒会室に向かいます。
コンコンコン
ミラベ「新入生のミラクルベガです。」
ルドルフ「待っていたよ、入ってほしい。」
ミラベ「はい。」
ガチャ
ミラベ「失礼します。」
中には、生徒会の3人と、シリウスシンボリさんがいます。ちょっと予想外です。ですが、これも私にとっては好都合です。
シリウス「これがルドルフが気になると言っていた新入生か。なるほど、確かに骨がありそうだ。」
グルーヴ「入学式のスピーチで、学園全員を焚き付けるのですから、只物じゃありません。」
ブライアン「勝負し甲斐のある奴が沢山出てくるってことか、面白い。」
ルドルフ「そうだね。でも、私が聞きたいのは、君の哲学だ。私の金言と、この学園のスクールモットーを入学試験の面接時に持ち出した。それが半端な覚悟でないならば、君の哲学を聞かせてくれたまえ。」
ミラベ「はい。その上で、シリウスシンボリ先輩がいるのは好都合でした。」
シリウス「どういうことだ。」
シリウスさんが凄みますが、平気です。
ミラベ「ヘーゲルの弁証法的には、会長さんがテーゼで、シリウスシンボリ先輩がアンチテーゼです。」
ドンッ
シリウスさんに壁ドンされます。
シリウス「誰がルドルフのアンチだって?私の生き様を否定するのか?」
グルーヴ「やめないかシリウス。新入生に対して大人げないぞ。」
シリウス「こういう舐めた口を利く奴は、最初に分からせる必要があるんだよ。」
ミラベ「別に舐めてなんかいませんよ。会長さんとシリウスさんの考えを統合し昇華して、新しい段階に至る、それが私の目指すところですから。」
ルドルフ「成程、アウフヘーベンか。」
ミラベ「単なる会長さんのアンチでは、会長さんがいなくなったらアンチも消えてしまいます。ですが、シリウスさんはちゃんと自分の軸があり、それが会長さんと対照的なだけです。もし会長さんがいなければ、シリウスさんが生徒会長に就任していてもおかしくないですよ。」
シリウス「チッ、命拾いしたな。」
そう言いながら、シリウスさんが手を離します。
シリウス「ほら、さっさと行けよ。」
ミラベ「え、でも話はまだ終わって…。」
シリウス「私の気が乗らない状態で、お前が語っても無駄だ。さっさと行け。」
ミラベ「はい…。」
ガチャ
うーん、これは成功か失敗か良く分からないですね。オペラオーさんに相談しますか。
◇
ルドルフ「随分と気に入ったようだね。」
シリウス「チッ、あんなにも苛つく奴は初めてだ。」
ブライアン「素直じゃないな。自分より凄いことに気付いて、自分の優位を揺るがされていることに苛立っているようにしか見えないが。」
シリウス「そうじゃねえ。ああもポンポンと出来ると断言するのが気に食わねえ。」
ルドルフ「まあいい。彼女が本物なら、私はこの座を彼女に譲っても良いと思っている。」
ブライアン「テイオーに禅譲する気満々のあんたが、そこまで言うのか。」
シリウス「チッ、取り敢えずトゥインクルシリーズで結果を出してからだ。」
◇
オペラオー「おや、ミラクルアヤベ君じゃないか。さっきぶりだね。」
ミラベ「あ、テイエムオペラオーさん。さっき生徒会長さん達に会ったんですよ。」
~説明中~
トプロ「なんか、凄く凄い話であるのは分かりますけど…。」
ドトウ「これまで想像すらしたこともないですぅ~。」
アヤベ「考え方を理解するのは難しいと思うけど、受け入れてほしいわ。小さい頃から、こういう子だから。」
オペラオー「僕には分かったよ。」
ドトウ「本当ですか~!?」
オペラオー「歌劇はストーリーが大事だからね。それで話を聞いた結果だが、口ではああいっているが、内心シリウス先輩は喜んでいるね。」
アヤベ「ツンデレ、かしら。」
オペラオー「そうだね。自分のお株を奪われて悔しい気持ちが半分、自分と肩を並べる存在がいて嬉しさ半分、だろうね。」
ミラベ「じゃあ…。」
オペラオー「ああ、最初の接触は成功だよ。今後も定期的に話をするべきだね。勿論、ボクも一緒にね。」
ミラベ「はい!」
シリウスはいいぞ。
主人公が生徒会に入るかどうかはまだわかりません。
オペラオーが思った以上に主人公の良き理解者になっています。というか、ここまでチート積んで(哲学的に)漸く互角のオペラオーって凄いですね。