ハルケギニアの極道者 作:1R1分1秒KO
~6年前~
当時、俺は9歳のガキだった。俺は叔父貴の竜討伐の連れでガリアからトリステイン、トリステインからゲルマニアの船に乗り無事に帰る筈だった。だが…トリステイン行きの船で事故が起こり砂漠へと墜落した。奇跡的に俺は生きていた。もっともそれがわかったのは事故から1週間後の事で頭を打ったせいか視界が真っ白に染まっていた。
「ぐっ!…よしてくれ、確かに腹は減っているが砂はごめんだ…」
俺が目を覚ますと男性の声が聞こえ、俺はそっちに行ってみた…
「誰だ!?いるんなら返事をしろ!」
すると俺の足音に気づき、その声が俺の耳に届いた。
「大丈夫か?だいぶ出血しているようだが…」
俺は出血していたのか手で顔を触ると確かに血の感触があった。
「…おい!そっちじゃねえ!こっちだ!」
どうやら俺は歩きすぎたらしくその男のそばから離れていた。
「ああ…」
「目をやられたのか?ちょっと見せてみろ…」
「…」
「大丈夫だ。この程度の傷なら俺が治療してやる。」
そう言って男が目を治すと視界が白から砂が舞う砂漠へと変わり…そしてエルフが見えた。
「…エルフ?」
「そうだ。俺はお前達の言うところのエルフのアルベルト。お前は?」
「俺はマサムネ…他の皆は…?」
「他の奴らは皆死んじまったよ…その程度の怪我で済んだお前はラッキーだ…少し休んでおけ…救助はすぐ来る。」
アルベルトは船の残骸を利用して影を作り、そこで横たわった。
「…」
俺もそこで横たわった…
それから更に1週間が経過しても救助が来なかった。俺は不安になりウロウロし始めた。
「じっとしていろ…」
アルベルトがそう言って俺を注意するがとにかく不安だった。俺は思わずこう言ってしまった。
「アルベルト…俺達は見放されたんじゃないか?」
「知らん…お前はどうなんだ?」
「え?」
「お前は生きるのを諦めるのか?」
俺は首を横に振った。
「だったらじっとしていろ!無駄に体力を使うんじゃねえ!!1日でも1秒でも少しでも長く生きるんだ!!せっかく救助が来てもその前に死んでいたら意味がねえ…」
「…」
俺は縦に首を振った。
「俺達がするべきことはただ一つ…救助が来るまで生き抜くことだ。少しでも体力を温存しておくんだ…」
「わかった…」
「もしもお前が危機に陥った時この経験も無駄にはならない…自分の置かれた状況を判断する力がその後のことを左右するんだ…だから今は生きろ…」
そのやりとりを最後に…
~トリステイン魔法学院~
…嫌な夢だ。あの頃の事件をまた思い出すとはな。
「ずいぶんうなされていたけど大丈夫ですか?」
そう言ってルフィーナが俺の目の前に現れた。
「昔の出来事が夢になっただけだ。そう気にするな。」
「わかりました…それじゃ汗拭いたら行きましょう!マサムネさん!」
そう言ってルフィーナは外へ出てしまった…あいつも子供っぽい一面があるんだな…
「まあ仕方ねえか…」
ルフィーナは使い魔の交流を楽しみにしていたからな…
「…それにしても身体が鈍るな。一度シュヴァルツヴァルト地方に戻って訓練をしてみるか?」
俺はそう呟きながら歩くと俺と同じ色の髪…黒髪の少年がルフィーナと話をしていた。
「ルフィーナ、その少年は?」
俺はそう言ってルフィーナに声をかけた。
「この人はミス・ヴァリエールの使い魔のサイト・ヒラガさんで東方の国からやってきたそうですよ?」
東方の地からか…それにしては俺の黄色の肌と瞳、そして髪の色が似ているな…
「うおおおおっ!?日本人!?」
サイトは驚いた顔をして俺の顔を触りに来た。
「ニホンジン?なんだそら?確かに俺はお祖父様に似ているがニホンジンではない…」
俺はサイトの手を払いのけ、そう告げる。
「なあ、マサムネ…そのお祖父様と会わしてくれないか?」
いきなりそんなふざけたことを抜かしたので俺はため息を吐いた。
「やめておけ。お祖父様は気性が荒く、大した用件もないのに会おうなんてことをしたら刀で斬られて殺されるぞ?」
サイトは見たところ変わった服装をしているが裏の世界の経験がない普通の少年だ…お祖父様から逃げれるとは思えない。
「げっ!?マジで…!?」
「マジだ。それこそキレたらルイズよりもヤバい。温厚な人がキレるとヤバいというが、あの人はそれ以上にヤバい。もしも会いたければ俺よりも強くなるか功績を挙げるこった…」
ルイズの気性の荒さはこの学院でも手がつけられないほどで他の生徒から聞いた。
「…お前に勝てばいいんだな?」
サイトがアホなことを抜かしたので俺はため息を吐いた…
「やめておけ…実力を見抜けない奴が俺に勝とうなんてことは無謀でしかない。」
「やってみなきゃわかんねえだろ!」
「だったらお前は素手でオーク鬼に勝てるのか?」
俺はそう言ってサイトに尋ねた…ちなみにオーク鬼は人間の女どもをレイプして子供を産ませるという外道だが人間の傭兵5人分の力を持っている。もっともその常識はトージョーの中では覆される。むしろオーク鬼を倒せない大人はトージョーの人間ではないと言われるくらいだ。…俺?俺は普通に倒せるが何か?
「オーク鬼ってなんだ?」
「オーク鬼がわかんなきゃそこにいるトライアングルクラスのメイジでもいいか?」
「トライアングル?メイジ?」
どうやら何も知らないみたいだな…
「メイジから説明するぜ…メイジってのは魔法を使える奴らのことだ。貴族…この学院の生徒はほとんど…というかルイズ以外は使える。」
「は?それじゃあいつがゼロって呼ばれてたのは…」
「そうだ。ルイズは魔法成功率がゼロ…そこから名付けられたんだよ。だからと言ってからかうのはやめておけよ?お前が奴のコンプレックスを刺激しまくって痛い目に遭うのは目に見えているからな。」
「う…確かに。」
「補足としてお前はメイジにはなれない。魔法が使えるのは遺伝だからな。」
黄色い肌を持つ奴らは基本的には魔法は使えない…メイジであるお祖母様の血を継いでいる親父や叔父貴にしてもドットかラインの下程度だ。例外なのは俺(全てトライアングル)くらいのものだ。
「マジで?」
「だから貴族ならばメイジなんだよ。ルイズが特別なだけだ。」
もっともルイズの失敗は不発でなく爆発に終わるからさらに特別になるんだが…それはいう必要はねえだろ。
「ふーん…」
「次にトライアングルの説明だが、これはメイジのクラスの一つだ。ドット、ライン、トライアングル、スクエア…スクエアに行くほど魔法の威力も上がってくるがその分使用者も少なくなってくる。その理由はスクエアは努力だけでなく先天的な素質…遺伝が絡んでくるからだ。」
詳しくは知らないが説明をするにはこのくらいが一番いいだろう…
「遺伝!?」
「そうだ…だから王族なんかは皆魔法に長けた奴らが多い。これも例外があるが…それは次の機会だ。」
例えばガリアの無能王ジョゼフとかいい例だ。魔法が使える=凄いという偏見のせいであいつは評判を落としてしまっているのも事実だ…魔法抜きに見ればとんでもないほど有能な王だ。歴代の王がまとめてかかってもジョゼフの頭脳に敵うかどうか怪しいくらいだ…
「次の機会って…」
「平民はメイジには勝てない…それが当たり前だ。魔法を対処する術がないんだからな…だから6000年以上も貴族の歴史がある。」
「6000年!?俺のいたところでも2000年しか歴史はないぜ…」
「だが魔法を使えないお祖父様はそのメイジを相手に勝っている…何故だかわかるか?」
「…力技?」
「似たようなもんだ…お祖父様の前では抵抗すらも許されない。もしも会おうと考えるならばお祖父様から逃げ切れるだけの力が必要だ。」
「う…わかった。」
「それよりもルイズのところに行っておけ…お前の主人なんだろ?カンカンに怒ったら手をつけられないぞ。」
「…すまないルフィーナ、マサムネ!」
サイトはそう言って俺達と別れた。
俺もこんな場所にいてもつまらないので他の場所に行こうとすると後ろから袖を引っ張られたので気になり…振り向くとそこにいたのは青髪のメガネ幼女…タバサだった。
「おはようタバサ。」
俺は挨拶をしてタバサの顔を見た。
「ん…」
「珍しいな。お前から俺のところに来るとは…」
「キュルケがうるさいから…」
「キュルケ…?」
確かツェルプストーのところの嬢ちゃんだったな。一度ツェルプストーの依頼で引き受けたから互いに知っている。
「は~い、マサムネ元気?」
そう言ってキュルケはひょこっと顔出してきた。
「相変わらずだな…キュルケ。」
俺はキュルケの様子を見て身体以外何一つ変わらないと思った。
「…どういう関係?」
タバサは首を傾げキュルケに尋ねた。
「私と彼は恋人よ。」
「てめえ、何言ってやがる!」
キュルケがありえないことを言ったので俺は思わず怒鳴った。
「…ひどい。私にあんなことやこんなことをしたのに…」
そう言ってタバサはわざとらしく泣き崩れた。
「タバサ、貴様!」
俺はタバサに性的に襲ったこともなければ襲われたこともない。むしろ俺はガードマンだ。
「「責任とってくれる?」」
二人が上目遣いで俺に迫ってきた。ここでYesと答えたらまずこの学院の男子生徒を敵に回しかねないし、ハーレムは俺の趣味じゃない。俺は一途だ。一人の女を愛し、尽くす。ストーカーにならないように俺は振られたら二度と恋人を作らないつもりだ。
「てめえら仲良いな!?コンチクショー!!!」
俺はその二人のやりとりは冗談じみたものだったので食堂に逃げた。三十六計逃げるに如かずってな…