貴族メル・ゼナ   作:一般通過龍

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小説を書き続けたらいつか評価バーに色が着くと信じて・・・書き続けています。

毎日更新はやっぱり難しいです。
これからは一週間に一回〜四回のペースで更新すると思います。


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三つの怯えた顔が、台所のテーブルを囲むこれも四つの人外の顔に食い入るような視線を注いでいた。

 

Dとブロージュ伯爵とミランダ公爵夫人と貴族メル・ゼナ――同じテーブルで彼らを迎え討つのは、アデル・ダイアリスひとり。戦力を考えれば、不公平を通り越してシュールとさえいえる布陣だが、奇妙なことに、この四人は彼女と子供たちの敵ではないのだった。マシューとスーは居間に通じる戸口に並んで立ち、その顔は母同様、戦慄と気丈さの入り混じった表情を浮かべているからだ。

 

だが、その奥に奇妙な――憧れめいた色があるのは、彼らの最も近い位置に立つ美しいハンターの力であった。二人とも、彼の名を知っていた。伝説めいたその剣の技も、子供の想像力という強力無比の烙印を得て、精神と脳の深奥に灼きつけられている。だが、それよりも、知らずのうちに、その胸をときめかせる――何という美しさ。

 

妖艶極まりない月光の美女と言えるミランダ公爵夫人でさえも足元に及ばない。桁どころか格が違うのだ。唯一、Dの美貌と渡り合えるのは貴族メル・ゼナの美貌だけだろう。

故にDの美貌と渡り合える貴族メル・ゼナの美貌を例外に醜いものは去れ!と二人の潜在意識だけではなく世界がとろけ歪み望んでいた。

 

だが本人のメル・ゼナ嬢は不満めいた表情していた。わたくしは人間に友好的な貴族でしてよ、だから安心しなさいと事前に言っているのに他二人の貴族よりマシなオーラを纏っているとはいえ貴族だからという理由で怖がられているからだ。

 

これでも人間に優しい美少女貴族として名は通っているはずですけど、Dの安心感には勝てないのですか・・・と謎の敗北感を味わっていた。

 

そして母親のアデルも子どもたちと同じ反応していた。母親の矜持と責務感でどうにか対抗していた。だがDだけではなくメル・ゼナも美貌を持っていたために眼を向ける先をブロージュ伯とミランダに絞ってDとメル・ゼナをいないものとして扱うようにしていた。

 

だが、二つの美貌に抗うのは無理だったようだ。どうしても眼を向けて意識をちょくちょく奪われてしまった。それでも意識を完全に奪われなかったのはミランダと水妖ルシアンとの戦いで起きた余波に巻き込まれたブラウスが傷つき胸が剥き出しになって出来た羞恥心のおかげだろう。

 

恐らく中で話をしようという言ったDとメル・ゼナに対して話が通じるブロージュ伯はともかく典型的な貴族のミランダも素直に従ったのはこの美しさのせいなのではないかと三人は思った。

深夜、彼女と子供たちはブロージュ伯やミランダが交互に話す恐るべき星から帰ってきた貴族の物語を聞いた。

 

 

今、わたくし達は五千年前の話を聞いています。温和な顔をしていたブロージュ伯爵が鬼のような顔をして“絶対貴族“ローレンス・ヴァルキュア大公とそれの暴虐に立ち向かった人間と貴族の話をしているのはあの日の記憶をまだ昨日のように覚えていたのでしょう。わたくしはその時代には生を受けていませんでしたが、本気を出した貴族同士の戦争は恐ろしいですわね、宇宙規模まで発展してこの惑星が壊れる寸前まで来ていたのですから。御神祖様が人類はどんなことでも生き延びて繁栄するとHELLSINGのアーカードみたいに人間を評価している風ですけど吸血鬼ハンターD世界に転生して貴族の力を実感した結果、過大評価なのでは?と思いますわ。

 

しかしDの美貌が気になりますわ。どうしてもチラチラと見てしまうおかげで話に集中できない。菊地作品の美貌は性別関係なく何にでも通じるのを分かっているのに・・・

前世は元男とはいえ同じ男性のDが気になるとは、特別製の鏡でDの美貌に匹敵する自分の美貌はよく見ているから確かに美貌耐性があるはずなのに・・・・・。

 

「当時、ヴァルキュアに前線で対抗していたのは私とこのミランダの夫ハーネス公とギャスケル大将軍とそこのメル・ゼナ嬢の父親だった。だがもうギャスケルは手下に討たれて、宇宙にヴァルキュアを迎撃にでて行ったメル・ゼナ嬢の両親殿はヴァルキュアめに直で討たれたのだろう」

 

え、お父様とお母様がわたくしを置いて宇宙に行ったのはそういう理由でしたの!!あんなに優しかった両親を殺すなんて・・・・・。

仇討ち開始じゃあ!

 

「ヴァルキュアとの戦いは凄惨を極めた。ハーネス公が斃れて我ら全員が滅びを意識したとき勇敢な人間が助けに来たのだ。その人間が助けに来た理由は我らがヴァルキュアに実験体として囚われていた人間を助けた恩返しなのだ。未来を読む力でヴァルキュアの弱点を二本の剣で再現して押し付けたのだ。ヴァルキュアを取り押さえた我々は男の気持ちに報いたい、何なりと願いを申せと伝えた。そのウィンスロー・ダイアリスという男は未来を読める力で御神祖がヴァルキュアを宇宙に追放しますが必ず帰ってきます。と言ってもしも皆様方が存命なら子孫を守ってもらいたいと願ったのだ。そして約定を守る為に我らは勇者の子孫を守りに来たのだ」

 

 

伝奇物語とも言える話を聞いてアデルはピンと来なかった。だがこのままでは子供が危ないぞと言われすぐさま行動を開始した。ヴァルキュア案件とは関係ないアデルの個人的なトラブルも貴族が絡んでややこしくなりかけたが解決した。

 

問題の種をよく運んでくる飲んだくれのはっきり言って人間のクズに入る夫をアデルはナイフで始末したからだ。かつては頼りになる膂力のもち逞しい働き者の優しい夫は十年前に村に出来た卑しい酒場の女に骨抜きにされて誰にでも金をたかる堕落した存在になってしまったのだ。

 

アデルが夫を殺した理由は貴族に殺されるくらいだったら私の手で介錯するという愛だったかもしれない。実際にヴァルキュアと手下達から子供たちを守りきったら後を追うつもりだった。

 

そして今は首切り役人ジュサップの非実在空間の首切り台に催眠でもかかったように自然に誘導されてジュサップの手で早くも夫の後を追う羽目になったがDのおかげで助かった。

 

ジュサップは魔性のごとき男とはいえどんくさい存在だった。明らかに狙うつもりがあるのか?と言いたいくらいに隙を見せて斧を振るうのだからでもそれでDと剣裁を成立させるのだから。そしてジュサップは遂にDを、右肩から左腰に断ち割った。

 

いかに彼でも狙わずに相手を切り裂くという頓珍漢な絶対必中の攻撃には対処が難しかったには違いない。どんくさいと感じる外見と動きから来る初見殺しとも言えよう。

 

「どうだ。俺の実力が分かったか!?」

 

だがジュサップは傷を与えた瞬間、Dの姿を確認するとすぐに別人のような動きをしながら逃げ出した。理由は傷の影響など皆無とばかりのDの姿が瞼に灼きついて信じられないと思ってしまったのだから。

 

しかしジュサップの逃走は失敗してしまった。目の前に貴族メル・ゼナが立ち塞がったのだ。

 

「貴方の攻撃は適当に振り回したらどんな攻撃でも対象に当たる。故にそれを上回る数の暴力とスピードで守りに入らせて攻撃するまでです!」

 

そうメル・ゼナが叫ぶとゴスロリ服の装飾の一部がキュリアと言われる妖物に変化して動き出した。

 

羽と爪と槍のような尻尾、キュリアによる激しい攻勢を喰らいながらもジュサップは闇雲に斧を振り回して必死に対抗していた。一見脅威に見えないのに仮にもDを断ち割れてメル・ゼナのラッシュに真正面から対抗出来るのは”絶対貴族“の七刺客の一人首切り役人ジュサップと呼ばれるだけはある。

 

だがメル・ゼナによってジュサップはどんどんと窮地に追い詰められていく。

 

その時、ジュサップは何をとち狂ったのか自分の首を切り落としたのである。そして残った体からジュサップの犠牲者の干し首コレクションが飛び出してきたのである。ジュサップの魔性の技で加工された生首はキュリアとぶつかりあって残った斧を持った体はメル・ゼナと切りあった。そしてジュサップの首はDが放った白木の針に貫かれながらアデルに迫った。だが届く前にDの剣技で粉々になって、ようやく死んだのだ。

 

ジュサップの首が完全に死んだのと同時に切り離した体と犠牲者の首も動きは止まった。

 

「自分の切り落とした首を操るか。一瞬で切り離された首と体は意識があって少しなら動かすことが出来るが、あのへっぴり腰━━大した玉じゃぞ」

 

Dの左手首から洩れる奇怪な声に、アデルは我に返ったのと同時に灼熱の痛みがその背から胸まで突き抜けた。

ふり向きかけて倒れる身体をDの腕が支え、アデルはナイフを投げる格好で上体を起こした夫を見た。

 

「丈夫だけが取り柄だった――わね」

 

アデルはDの方を向き直った。必死の動きだった。まだしなければならないことがある。マシューとスーを見守ってやらなければならない。筋も道理もない運命から守り抜いて、マシューの嫁をこの眼で見、スーを嫁がせるまでは死んではならないのだ。

 

「D――」

 

「しゃべるな」

 

「夫のところへ――連れて行って」

 

すでに倒れた夫のかたわらまで行き、アデルは隣に下ろしてくれと言った。それが叶えられると、アデルは夫のポケットから金貨の袋を取り出した。アデルはDの腕を掴んで引き寄せた。袋を胸に押しつけた。夫が強盗や火事場泥棒して死体から盗み出した金である。それでも、アデルはそれにすがらねばならなかった。

 

「これで……子供たちを守って……メル・ゼナさんもお願い……私はもう……駄目。……マシューには……赤毛のお嫁さんを……貰ってやって……あの子は働き……者だから……お嫁さんは……怠け者でもいい……明るくて……やさしい子なら……それから……スーは……」

 

Dと駆付けたメル・ゼナは黙って聞いている。死にゆく母をみつめる眼差しは冷厳そのものであったがよく見るとそれだけ感情がその眼差しにはあった。

 

「……あの娘……には……」

 

アデルの手がDの腕を滑り落ちた。その身体をDだけではなくメル・ゼナもキュリアを利用して止めて、

 

「スーには、どんな彼がいい?」

 

とDが訊いた。

 

アデルの眼から、ひとすじの涙が落ちた。

 

「あの娘には……」

 

そして、母親は全身の力を抜いた。

 

 

◆◆◆

 

 

マシューとスーは両親の訃報を吸血鬼ハンターと貴族から聞くと自分達の思い出の農場に死体を埋めようと決心した。

マシューが両親の死体を埋める墓の為の穴を一人で掘り始めてからしばらくすると背後に気配が感じた。Dがいたのだ。替わろうと言ったが

 

「家族一人でも健在なら死に場所を決めるのに人手はいらないから大丈夫だ。」

 

と柔らかく断ると

Dは黙って後ろを向き

 

「ひとりではなさそうだ」

 

と言った。

見るとシャベルを持ったスーがメル・ゼナも連れて手伝いにきたからだ。

 

「守りきれなくてごめんなさい・・・・・」

 

人間と貴族、種族は違えど優しかった両親を無くした繋がりで貴族メル・ゼナに謎のシンパシーを感じたマシューとスーはメル・ゼナと一緒に穴を掘って墓を完成させた。

 

そしてDも一緒にお祈りを捧げた。真面目に葬式のお祈りを聞いたことがなかったマシューが聞いたDとメル・ゼナのお祈りははじめて聞くどこか遠い国の祈りの言葉だった。 

 

人間の行為にあまり興味がない貴族とはいえ二人の貴族は空気を読んで母親と父親に何が起こったか聞かなかった。

そして全員は馬車に乗って中部辺境区のヴァルキュア対策の為に作り上げた要塞に向かった。

 

この先に何が待つにせよ、彼らと“絶対貴族“の刺客たちとが出会うとき、必殺の血飛沫は上がらざるを得まい。それを望むのか、哀しむのか、行く手の闇はなおも濃さを増し、妖風は二台の馬車と、闇の護衛ともいうべき貴族達と吸血鬼ハンターに吹き募るのであった。




貴族メル・ゼナ・・・神祖の実験によって生み出されたDとバイロン男爵と同じ成功作の貴族。実験で龍の血が混じらされて擬人化メル・ゼナみたいなトンデモ貴族になったがOSBと貴族の血を混じらせて作った実験体よりはトンデモ度はマシだろう。
お嬢様語はお嬢様ロールプレイしていたらそのまま染み付いた。だが時々ブレて素が出たりする。
そしてオリ主は男だった感性と自身の美貌のおかげでDの美貌の影響をあまり受けていないが実は着実に惚れている最中かも知れない。そう魔界都市新宿夜叉姫伝の秋せつらに出会って惚れた「姫」みたいに・・・。


誤字脱字、アドバイス等がありましたら報告よろしくお願いします。
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