貴族メル・ゼナ   作:一般通過龍

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最低限一週間に一回は必ず投稿するように心がけているんですが守れない可能性があります。


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構えを見れば力量がわかる。八双に構えたスーラを一瞥して、伯爵は

 

「やるな」

 

と笑顔をつくった。強敵に会えば燃えるのが戦士の性質だ。中段から下段へ、大槍の穂先を下げる。誘いであった。スーラは乗った。一歩出て、伯爵の右頸部へ渾身の一刀を叩きつける。こちらが早い、と伯爵は見切った。すでに槍は敵の切尖を跳ね上げて━━空を切った。鼻を突き合わせそうな顔前にスーラの顔を見た。機械が眼鼻をつけたような特徴のない顔であった。首すじに鋼が食い込んだ。それは伯爵の皮膚も内臓も水のように切り裂いて、背骨に当たるまで許さなかった。

 

「治してやりたいが」

 

とスーラは、奇妙な言葉を口にしてから長剣を引き抜いた。彼は伯爵が倒れる前に心臓を貫いた。

 

 

 

マシューとスーがいる部屋を防衛していたメル・ゼナに近づいてきたのは伯爵と見まごうくらいの巨体だった。長剣の持ち主の巨体はメル・ゼナを確認すると

 

「メル・ゼナか?」

 

と聞いた。

 

「いかにも、わたくしこそが貴族メル・ゼナでありますわ。」

 

メル・ゼナが返答したらすぐに巨体は自己紹介をした。

 

「私はスーラ・・・“ヴァルキュアの七人“の一人だ。いま、ブロージュ伯爵を倒した。」

 

まーたブロージュ伯爵殿が死んでおりますね・・・どうせ蘇ると思いますけど。しかも本体そっくりのアンドロイドが何体もこの砦にいるから死んだのが本物か偽物かどうか紛らわしいですわ。

しかしこれでは吸血鬼すぐ死ぬ・・・・・ではなく、貴族すぐ死ぬですね。

 

そんなことを思いながらメル・ゼナはヴァルキュアの刺客の一人スーラとの戦闘を開始した。

 

戦闘は片方が防戦一方になる展開だった、それもスーラではなくメル・ゼナが防戦一方になったのだ。

実力はメル・ゼナの方が明らかに上でスーラの動きが余裕で見えるのに、彼女がスーラに対して防戦一方になったのはスーラの体に施しているからくりとシグマブーストにあった。

どのような理屈かは分からないがメル・ゼナの攻撃がスーラに届かないのだ。そして光速超えとはいえ彼女が眼で追えて見切れる動きしか出来ないはずのスーラは、自身の攻撃を的確にメル・ゼナに当てる技量を発揮していた。

 

 

光速を超えたスーラの剣による猛攻を多少ダメージを食らっているがそれによって出来る傷を問題ない程度に抑えて捌きながらをかわしたメル・ゼナはスーラに色々な攻撃を仕掛けていた。

 

普通にキュリアをスーラに襲いかからせる、キュリアを圧縮して出来たエネルギー球、レーザー、ブレス、貴族自慢の爪攻撃、翼爪による叩きつけ攻撃、翼を仰いで起こした衝撃波攻撃、三又槍みたいな尻尾による突き等・・・だがどれもスーラには一切合切届かなかったのだ。攻撃が対象に当たる直前にどこかに消えるのだ。体に触れたモノがどこかにいって消える守りのおかげで攻撃している側がどんどん削られているのだ。

メル・ゼナがダメージを負っている部分はスーラが持っている防御能力が一番大きかった。

攻撃は最大の防御と呼ばれるがスーラは防御は最大の攻撃というのを体現してあった。

 

 

貴族としてまだまだ若いヒヨッコとも言える年齢とは言え劣化して消えている部分があるとは言え吸血鬼ハンターDの原作知識を所持している転生者のメル・ゼナはスーラのからくりを見抜いていた。

 

どんな攻撃も虚空に消えた。スーラの体に描いてある円の弧上で。それは耳無し芳一みたいだった。だが、この円は完全なものではない。結ばれるべき線は最後でずれている。

 

もしも、Dの左手がここにいたら、「迷路じゃな」と洩らしたであろう。

 

その目的が、侵入者の方向感覚を奪い、永久の堂々巡りを行わせることにあるならば、〝絶対貴族〟の刺客が、人間ばかりではなく物体をも迷わせる迷路を描き得るとしても、驚くにはあたるまい。

 

そして、物体が迷うとは、この世界から消えてしまうこと━━もうひとつ別の方角へ行ってしまうことに他なるまい。スーラの描いた迷路のみが、それを可能にする。いかなる攻撃も、その線に触れた刹那、無効と化してこの世から完全消滅するのだ。

そしてスーラの迷路にはもう一つの特徴があったのだ。普通の者がスーラが描いた迷路の内側に閉じ込められたら消えないが出ようとした瞬間に迷路の外側におって迷路に触れたモノと同じように消滅するのだ。だが、スーラは迷路の内側から自由自在に動き攻撃を放つことが出来て、迷路から脱出したことが理由なのかそれは脱出した目の前にいる対象を絶命させる必殺の一撃になるのである。

 

 

おそらくスーラの防御を破って撃破出来るのは絶対貴族やD、神祖等の上位陣の吸血鬼達だけだろう、そしてそう言えるほどシグマを取り込んで得たブーストが無くてもヴァルキュアの刺客の中でトップクラスにスーラは強かった。

 

 

 

埒が明かないですわね。最終的には死んだとは言えさすが原作でもスーラさんは最後まで残っていた刺客の一人ですから。

知名度があまりないとはいえスーラさんは一方通行や五条悟を筆頭とした防御系能力者に負けないトップクラスのチート防御能力者とも言えますね

・・・そう言えばこの世界にも似たような防御系能力者がいましたね。どんだけ魔境なんでしょうか?吸血鬼ハンターD世界は。

しかし本気をヴァルキュア大公に見られて対策を取られる可能性がありますがスーラの迷路を破る為には全力を出すしかありませんわねッ!?

 

 

 

キュリアを集合させてエネルギーを取り込んで本気を出そうとしたメル・ゼナの体を突然、大槍が貫いた。大槍の持ち主の正体はヴァルキュア大公によって操られてブーストがかかっていたアンドロイドブロージュ伯爵であった。そして体が灰になりつつあるメル・ゼナは砦の窓から投げ捨てられた。

 

 

投げ捨てられた直後アンドロイドブロージュ伯爵を大槍が貫いて壊した。その大槍の正体は本物のブロージュ伯爵であった。

スーラによって殺されたブロージュ伯爵は偽物であった。それは正常に活動していたアンドロイドの影武者であった。

本物のブロージュ伯爵は同じようにシグマに洗脳されたもう一体の偽ブロージュ伯爵と交戦していったのであった。

 

「メル・ゼナ嬢を助けられなかったか。だが最後のアンドロイドは仕留めたぞ」

 

殺したはずのブロージュ伯爵がいつの間にかいてアンドロイドブロージュ伯爵を貫いている状況を見ても、スーラは驚いた顔をつくらなかった。

 

「よくできたアンドロイドだったが、あなたは本物か?」

 

「安堵せい」

 

と伯爵は凄まじい笑顔になった。

 

「内臓の手応えもわしと同じだが、壊れても塵にはならなんだろう。それは、おまえがなれ」

 

横殴りに襲う長槍の一撃を鮮やかに跳躍してかわし、スーラは、しかし、前例のない窮地に陥ったことを知った。背後に迫る凄愴なる鬼気は━━戻って来たDだ。

 

「“ヴァルキュアの七人“か?」

 

「スーラと申します」

 

と巨漢は答えた。

 

「それはご丁寧に。わしに好印象を抱かせたのを土産に、あの世へ行くがよい」

 

ぐいと構えた長槍から、必殺の気がスーラに絡みつく。Dとブロージュ伯爵━━アンドロイドの伯爵にその一撃を受けさせず、メル・ゼナの攻撃を消滅させた奇怪な技を駆使する魔人といえど、この二人を向うに廻して無事で済むとは思えない。また、ひとりずつ━━などと甘いまねを許す男たちでもない。

それでもスーラは無表情に長剣を八双に構えた。

 

「では━━」

 

と伯爵が言ったとき、空気が変容した。それは、この世にあってはならぬ者が現われたときに生じる現象であった。

 

「これは━━」

 

伯爵の言葉は、断末魔のひと息を吐くように聞こえた。何か途方もない存在が、いま、ここにいる。圧倒的なその存在感に骨がらみ縛りつけられ、押しつぶされて、伯爵はよろめいた。必死で吸い込んだ空気は、酸のように胸を灼いた。その中で、

 

「来たか、ヴァルキュア」

 

何という冷たい声、何という静かな声、そして、何という力強い声か。

 

「二度目だな」

 

何処からともなく、静かな、雷鳴の怒号を秘めた声が響いてきた。

 

「マチューシャ村へ入る前に、忠告したぞ。覚えておるか?」

 

返事はない。Dは虚空の一点を凝視しているばかりだ。

 

「━━よかろう。雑魚だが、面白い雑魚だ。ひとつ、目通りを許してつかわそう。わしと戦え。さもないとこの砦のエネルギー炉を暴走させる。」

 

「望むところだ」

 

と伯爵は自信に満ちた声で言った。Dの声を聞いたとき、“絶対貴族“の呪縛から解放されたのである。

 

D達の頭上の一点にヴァルキュアはいた。逆落としに閃く光流を、ブロージュは避けてDは一刀で受けた。火花はDの影のみを床に灼きつけた。音もなく左右に跳躍し、その位置を変えた三人を、凄まじい殺気の糸がつないだ。Dははじめて“絶対貴族“を見た。身長も体格もほぼ等しい身体を、黄金のマントが覆い、その表面に散らばる硬質の光の粒から見て、金属繊維をより合わせたものらしかった。マントの下には青緑色の装甲が胴と四肢を瘤のように包んでいた。彼の武器は右手に握られた黄金の光であり、それは金属ではなく、化学的な処理を加えたイオンのような物質と思われた。新たな構えも取らず、光を引っ下げたまま、ヴァルキュアは、ブロージュに目をかけず

 

「━━Dよ」

 

と話しかけた。声は黄金の下から出た。顎までかかる前髪が眼も鼻も口も隠し、髪自体は腰まで垂れていた。

 

「よく受けた━━と言いたいところだが、当然という気がせぬでもない。おぬし━━何者だ?」

 

じり、とDの爪先が前へ出た。

 

「ほう━━このヴァルキュアの背すじが冷たい、血が凍る。この世の中に、わしとあいつ以外に、このような男がいたか。殺すには惜しい。Dよ、わしに力を貸さぬか。といっても、それが必要になるのは、裏切り者と二人の子供を始末した後だが。━━おっ!?」

 

ヴァルキュアは右手を上げた。光の剣は、かがやく粒子を跳躍したDに注ぎ、彼は一刀を立ててそれを受けた。光は左右に切れた。立てた一刀━━それはいかなる変化も示さず、その位置からヴァルキュアの頭上へ。ぎん、と火花が上がった。断るという返事というばかりに振り下ろされたDの刀身はヴァルキュアの頭上で防がれていた。直径一メートルほどの真円の楯は、光の剣と等しい黄金のかがやきからできていた。隠し持っていたのではない。ヴァルキュアの能力が無から生み出したものだろう。そこにブロージュの大槍も入った。それもヴァルキュアは防いだ。

光に光が挑んだ。Dとブロージュの攻撃に停滞はなかった。息つぎも許さぬ速度で襲う刀身と大槍を、後じさりしつつ受け、かわし、ヴァルキュアは光の突きで返礼した。それを受けたブロージュの大槍は折れて吹き飛び、Dは攻撃に、一瞬の間が生じた。ぐん、と楯が前進した。風圧に押されるように、Dは後方へ跳んだ。光の刃が追った。Dが弾きとばすと、それは斜め上方へ折れたて砦を壊していった。

 

「ふむ引き上げるとしようか。━━Dよ、おぬしも来ぬか?」

 

これほどの死闘を戦ってなお、Dを取り込もうとする意図は何なのか。

 

 

空気が渦巻いた。ヴァルキュアの気配が去ったのである。スーラの姿もない。伯爵はDの方を見てため息をついた。

 

「末代までの笑いぐさだが━━おぬしは本当に頼りになるな。これからも頼ってもいいか?」

 

身を翻す前に、Dはかすかにうなずいた。砦内のドアに吸い込まれる黒衣の後ろ姿を見て、伯爵はもう一度、ため息をついた。

 

「スーラとか言ったな。奴の技━━解析する必要がありそうだ。そして新しい大槍に切り替えないと行けないな」

 

その後、マシューとスーの様子を見に行ったDによってブロージュは二人が行方不明になっていることを知ってヴァルキュアの領土にマシューとスーを連れた不審な軍勢を見つけて追撃戦に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「置いていかれましたわ・・・すぐにこちらも追いましょう」

 

「意外と気がきかない男達よのう」

 

Dとブロージュ伯爵がいなくなった砦内で灰から再生した貴族メル・ゼナとシグマに空間転移されて行方不明になったミランダ公爵夫人が合流し話しながらD達の後を続くように出発した。




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