第一部「夢現の狭間」   作:Jyoze628

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「夢現の狭間」その9

目次

第20章「覚醒」

第21章「救い無き扉」

第22章「祈りの弾丸」

あとがき

 

 

第20章「覚醒」

「な…何なんですか…あれ…!」

「分かるわけねぇだろ…あんなの初めて見たぞ…あれじゃまるで…」

「…半魚人みたいっすね。」

彼等は今、何も見えない状態だ…私が彼等を導かなければ大変なことになる…!

「皆さん、取り敢えず私の方へ来て下さい!」

なんて奇妙な…生物なのだろうか。

怪物の目は頭の側面に付いていて、鼻の穴と思われる物は目と目の間にあった。

大きくて丸い口には唇が無く、真っ黒な口の中には大量に鋭い牙が生えている。

頬(ほほ)は異様に骨ばっていて、へこんでいるように見える。

そして、その怪物の首は人間の物とは明らかに違っており、まるで顎(あご)と首が合体しているように見える。

身長は普通の人間よりも少し高く常に猫背で、とても筋肉質な体だった。

腕と脚の筋肉は異様に盛り上がっており、ヒレと水掻きが生えていた。

更に魚のような尻尾も生えており、頭から尻尾の先まで背ビレのような物が生えていた。

身体中には黒い斑点模様が不規則に浮き出ており、鱗はびっしりと敷き詰められるように生えていた。

簡潔に表すなら、正に半魚人といったところか…

「キルィエァアァアアア!!」

くっ…

まるで蛇の威嚇(いかく)とタカの鳴き声を足したような咆哮(ほうこう)を…

「何だ!?」

あの前傾姿勢は…まずいッ!

「右へ避けて下さい!」

「わッ!」

「…ッぶねぇな!!」

怪物が私たち目がけて全力で突進し、飛びかかってきた。

なかなか速い動きができるようだ…

だが、飛びかかった後の隙は大きい!

ダメージが薄いとはいえ、カッターの刃が通るなら…打撃も通るはずだ!

全力で左側頭部に回し蹴りを!

「ふっ!」

「グゥェルェア!?」

今のを受けて倒れないとは…やはりただの生物ではないようだ。

しかし、時間は稼げただろう。

「皆さん、早く出口へ!時間を稼ぎながら私も少しづつ後退します!」

「あぁ、分かった!…おい、早く行くぞ!俺達がここに居てもあいつがやりずれぇだけだ!」

「た…確かにそうですけど…」

「先に行って待つだけっすよ。」

「急いで下さい!怪物が体勢を整える前に!」

「わ…分かりました!」

「おい!こいつはあんたに返しとくぜ!」

彼はそういうと私の足元へカッターを滑らせ、他の2人と共に出口へと走って行った。

「き…気をつけて下さいね!」

よし…これで怪物との戦闘に集中出来る。

リボルバーは…敵性個体の数が分からない以上、なるべく温存しておきたい。

カッターがあるが…切りつけるだけでは鱗に弾かれてしまうだろう。

もう一度相手の攻撃を見切って…首か膝に刃を突き刺して確実に無力化しよう。

「グ…ゥェエアアアァア?」

…目の前にいる私を見つけられていないのか?

暗闇の中ではあまり物が見えないのだろう。

それなら今の私の方が有利だ。

唐突な暗視能力の発現には戸惑ったが…今はこの能力を有効活用するとしよう。

今は出口の方へ後退しながら距離を取って……

「え…?」

音が…後方から…?

今、私の後ろには彼ら以外に誰もいないはず…。

…違う…この音は…?

はっきりと聞こえるのに…遠くで音が鳴っているような感覚が…

床板が軋(きし)む音と…濡れた足音か…

そもそも床板なんてここには…

「…さん…大丈夫でしょうか…」

「今はあいつに任せるしかねぇだろ!そんなこと考えてる暇があったらさっさと出口に向かって走れ!」

「きっと大丈夫っすよ。」

これは……もう約30m程は彼等と距離が離れているというのに…

彼らの靴音さえもはっきりと聞こえる!

じゃあ…さっき聞こえた音は…まさか!

「グッィェエ…キュシュゥエアァアアアアァア!!」

私の身に何が起きているか分からないが、今の音への仮説が正しければ…

「貴方に構っている暇はありません…!」

「キェアシュァアァアアア!!」

また飛びかかって来るつもりか…なら…

「受け止めて差し上げましょう…!」

「ギェアェアアッッ!!…グァッ…クシュア…」

…落下地点を予測して、喉にカッターの刃が突き刺さるように構えるだけだ。

「ゲブァ…」

怪物の血がカッターの刃を伝って腕に流れ落ちてくる。

怪物の吐く血が頭上から雨のように降り注ぎ、カッターの刃が折れると同時に、濡れた怪物の体が音を立てながらタイルの上に落ちた。

カッターは使い物にならなくなってしまったが、この怪物を無力化する事には成功したはずだろう。

しっかりと生死確認をしておきたいが…今はそれどころでは無い。

「早く皆さんに知らせないと…!!」

 

第21章「救い無き扉」

「はぁ…はぁ…ジョゼフィーヌさんは…大丈夫でしょうか…」

「今はあいつに任せるしかねぇだろ!そんなこと考えてる暇があったらさっさと出口に向かって走れ!」

「きっと大丈夫っすよ。」

クッソ…

やっぱり逃げるしかできないのか…

確かに皆で一緒に居ましょうって言ったのは俺だけど…

こんなの予想出来るわけないじゃん!!

相手が人だったら…話し合いでも解決出来るかもしれないし…

まぁ、ちょっと話し合いじゃ解決できなくてもさ…少しは役に立てると思うし…

そりゃあ4対1なんて流石に勝ち目が無いって分かるでしょ…

相手が人間ならね!

何だよ半魚人って!!

強いし、怖いし、キモイ!!!

くそ…

やっぱり…暗闇の中で一般人が戦いを手伝うなんて…

無茶だってわかってたけど…

少しは役に立てるって思ってたのに…俺は……!!

「よし、あともう少しで出口だ!」

ん…?

「今、ジョゼフィーヌさんの声が聞こえませんでしたか!?」

「…………!」

「確かに何か聞こえるな…クソッ…何でここだけ音が聞こえにくいんだ?」

「じゃあ大丈夫だったんすね。」

「こ…ここで待ちませんか?」

「いや…今はあいつの状況が分かんねぇんだ。あいつがあの魚野郎をぶっ殺してくれてりゃ最高だが、もし…あいつがまだ戦ってたり、何かの理由で逃げてきたら俺達が邪魔になるだけだ!」

「じゃあ先にここ出るっすか?」

「あぁ、先ずはここを出て俺たちにできることをやるぞ。」

「な…何をやるんですか?」

「あんたはドアの前であいつのことを待って、ヤバそうなら引っ張ってここから出ろ。」

「OKっす。」

「お前は俺と後ろの方で待機して、俺とお前であいつのサポートだ。分かったか?」

「さ…サポートって…」

「んなもん状況に合わせろ!」

「は…はい!」

「………ドアを……………………さい!!」

「やっぱりジョゼフィーヌさんの声ですよ!!」

「おい…マジかよ。あいつ足速すぎじゃねぇか!?」

「なんて言ってるんすかね。」

「全力でこっちに走って来てるってことは…逃げろっつってんのか?」

「暗くて音も聞こえにくいので…良く分からないですね…」

なんて言ってるか聞こえないけど…

ジョゼフィーヌさんが…生きてて本当に良かった!

「あいつの声が聞こえるようになったってことは、もう近くまで来てるってことだ…だったら出口で詰まらないように先に出た方がいいな。俺の後ろに並んで着いてこい、俺が最初にドアを開けておく、さっき話した通りに動くぞ!」

「ダ…です!ドアに近………いで下さい!!」

「え?」

何で…何であいつが?

「マジかよ…!?」

「キュゥアアアアシャエエエエ!!」

あの叫び声は…ヤバい!

今…星次さんを助けられるのは…

俺しか居ない!

「うぉおおおあああ!!」

大丈夫だ…!

星次さんの脇腹を掴んで全力で右に倒れれば…!

「星次さん!」

「お前…」

間に合え!

「キュアエアアエア!」

間に合え!!

「シュルエアアアア!!!」

間に合え!!!

「うわぁっ…!」

「つッ…!」

あ…

あっぶねぇええ!!

あいつの爪が…あた…頭の左側の方シャーって!

風切る音聞こえたって!

てかタイル痛っ!

「立てッ!散らばるぞ!」

「あ…はい!」

そうだ…

相手は怪物なんだし…待ってくれるわけないんだ。

「おい!」

「は…はい?」

「お前、結構やれんじゃねぇか…助かったぜ。」

「……はい!」

…え?

もしかして俺…今、褒められた…よね?

しかも…ちょっと厳しめの星次さんに!?

今…こんなこと考えてる場合じゃないけど…

めっちゃ…嬉しい!

役に立てて良かった!

こんな俺でも…やろうと思えば…役に立てる!

でも…

「キュア?」

状況は変わってない…

たったの一撃を全力で避けただけだ…!

でも…あいつだって目が良いわけじゃない!

「え!?」

は…春喜さん…

まさか!

「グゥエシャアア!!」

「流石にこれで倒れるっすよね。」

い…医療箱を…

全力で……!

「…流石だな。」

「い…1発で…ノックダウンって…」

「鍛えてて良かったっすね。」

「流石に死にまし…た…よね?」

「いや…念の為にきっちり首をはねて…心臓を潰す。」

うわぁ…えぐいなぁ…

まぁ、必要な事だけど…。

「じゃ…じゃあ…俺が…」

「いや、お前はあんまり力が強くねぇんだ。なぁ、あんたに頼めるか?」

「OKっす。」

「あ…確かに鱗硬いですしね。じゃあ、これどうぞ。」

「借りるっす。」

なんか…呆気(あっけ)なく終わったけど…

何事もなく終わるのが1番!

てか…春喜さん強すぎじゃね?

まぁ、鉄の箱で後ろから頭ぶん殴られたら流石に怪物も倒れるよね…

「それじゃあやるっすよ。」

あ〜…ちょっと目そらそ…

そういえばジョゼフィーヌさんは?

多分…もうここに居てもいいはずだと思うけど…

「シシャエアアアアアア!!」

「春喜ッ、避けろ!!」

は?

何で…?

ダメだ…近すぎる…

避けられるわけない!

助けに行くのも間に合わない!

「は…春喜さん!!」

 

第22章「祈りの弾丸」

「シシャエアアアアアア!!」

マジかよ…!

うつ伏せから仰(の)け反(ぞ)って喉笛(のどぶえ)噛み切りに行くなんざイカサマじゃねぇか…!?

蛇みてぇな動きしやがって!

「春喜ッ、避けろ!!」

「は…春喜さん!!」

クソッ!間に合わねぇ!!

「うわッ!」

「ッんだ今の音!」

「クェアッ…」

さ…魚野郎の頭が弾けやがった!

じゃあ…今のクソでけぇ音は!

「あいつが撃ち殺したのか…!」

「は…春喜さん、大丈夫でしたか?」

「大丈夫っすよ。」

「てか…お前も床にぶつけた所は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です!まぁ、打撲しましたけど…。」

「おい、あんたも大丈夫か?そこに居るんだろ?」

……声が聞こえてねぇのか?

いや、銃声は近くで聞こてたんだ…それはねぇか。

「ジョゼフィーヌさーん!…どうしたんでしょうか?」

「何かあったんすかね。」

「あの光ってたやつも取りに行かないといけねぇんだ…戻ろうぜ。」

「そうっすね。」

「あ…そういえば何か光ってるのがあったの忘れてました…」

「まぁ、あれが何かも分かんねぇし…玄関の鍵じゃなかったら最悪だけどな。」

「た…多分、大丈夫ですって!あの〜…ゲームでもボス倒したら何か…次に進めるアイテムが!…とか…ありますし…」

「はっ!俺達が今ホラゲーの中に居るなら有り得…た…」

何だよこれ……冗談だろ?

 

あとがき

ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!

恐らく、次かその次でエンディングに入ると思いますので、もしかすると次回は一気に連続投稿になるかと思います!

 

 

コメント・感想もお待ちしております!

次回もお楽しみに!

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