とある特異点で異常な魔力反応が検出された。
それを観測後レイシフトの人員収集にかかったが、次に観測した際、魔力反応の消失と共に、レイシフトの抵抗値が跳ねあがっていた。
その結果、特異点先に生存しているサーヴァントの元の肉体へ精神だけを移す方法でなければ戦力を送れなくなった。
そんな状況で白羽の矢が立ったのは雑賀孫一だった。
藤丸立香と雑賀孫一の二人で、閉鎖された微小特異点へと向かう。

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蛍と微小特異点で……

――1982年6月11日京都にある町の一角

 

 俺――藤丸立香はそこで旅の行商人をしていた。

 そこへ通行人の一人が興味深そうに声を掛けてくる。

「見ない顔だね。夫婦の行商人かい?」

「あ、えーっと」

 一瞬戸惑い、商品を整理している白髪の少女、蛍の方へ視線だけを動かす。

「はい。そうなんですよ。ここには来たばかりで」

 だがすぐに切り替えて、怪しまれる前に彼の勘違いを飲み込む。

 素直に話すわけにもいかないし、兄妹というのには無理がある。彼がそう納得しているなら、肯定したほうが怪しまれないはずだ。

「そうかそうか。大変な時に来たなあ」

「そうなんですか?」

 そうは聞いたものの、この時代この場所で何が起こっているのかは知っていた。

「今京都は彼の信長公を討ち取った明智光秀公が統治しているからな」

 

――ノウム・カルデア

 

「アナウンスの通り、微小特異点が見つかった」

 そう告げるダヴィンチちゃんの前には、俺と蛍の二人がいた。

「時代は1982年6月の京都。ああ、その通り。かの本能寺の変の後さ」

 いつものように状況説明を進める彼女だったが、突如として眉をハの時にする。

「実はこの時この場所だけレイシフトに制限がかかっているようなんだよ」

「制限?」

「ああ、藤丸くんは問題ないんだが、サーヴァントの方がちょっとね」

 そう言い、端の方に佇んでいた沖田さんとノッブへと目を向ける。

「初めに観測したときは普通だったんだけど、人員を集めて改めてレイシフトしようとしたら、ダメでねえ。まあ、そもそもサーヴァントはレイシフト適性が低いからね」

「そもそも儂が死んだばかりの場所に行くというのがおかしい話なわけじゃな」

「それを言ったらおしまいでしょう。今更ですって今更」

 元々一緒に行く予定だったサーヴァントはこの二人だったようだ。

「それで、どうして私?」

「この特異点、どうやらレイシフトの制限をかなり上げたみたいでね。この時代、この場所にいる人物でもなければサーヴァントは無理そうなんだ」

「なるほど、それで私。任せて、あなたは雑賀が守る」

 自信満々に胸に手を当てて、こちらを見上げる。確かにそれならば彼女は適任だろう。

「まあ、そういうわけなんだが、ここでも一つ問題がある」

「問題だらけですね」

「そうなんだよ。別に微小特異点だし、最悪放置でも良かったんだけどね」

 微小特異点は人類史自体の流れを変えることはない。変わるのはせいぜい一人か二人ぐらいだ。それでも解決しに行くのには、魔力リソース確保という目的もある。

「今回のレイシフトだが、さっきも言った通り本来のその場所で生きている雑賀孫一がいるわけだ。だからその場所へレイシフトさせようとすると、その生きている君の元へ記憶と能力が移されるということになる。まあ、疑似サーヴァントのようなものだと考えてもらえればいい」

「何か問題でもある?」

「ある程度精神に引っ張られて数年程度は前後するが、肉体はその当時のものになる。それもあってすでに晩年に近い千利休やその当時の姿がわからない果心居士には断られてしまってね。これはサーヴァントととしてではなく、ほとんど現地の英雄に力を借りるのと一緒の事になるんだ」

「つまり、肉体を持つってことですね」

 それは基本的に俺と同じように食事も睡眠も必要になることを意味する。もちろん、ダメージを受ければ本当に死んでしまう。

「そうなるね。だからレイシフトしてからはそのことを留意しておいてくれたまえ」

「わかった。着替えを用意しなくちゃいけない」

「なるほど、確かにそうか」

「なに、興味ある?」

「あ、いや、まあ」

 彼女は羽織る赤い外套をなかなか脱ぎたがらない。着替えについて言及したときも、ゴーグルを付けただけだった。そんなことがあったため、少しだけ興味がある。

 しかし、サーヴァントであれば問題ないことも、汚れるとなったらそうも言っていられないようだ。

「そう言うわけだから、万が一にでも手の負えないような事態になったら素直に逃げてくれ。元々無視してても人類史には影響のない範囲だ。まあ、たまの休暇だとでも思ってくれ」

 彼女はそう言うと、いつも通りの飄々とした態度で離れていく。

「それに最初感知した魔力の塊は、介入の制限と共に消えてしまったし、今の異常ってそれなんだよなぁ」

 

――

 

「しかし、あの明智光秀公が謀反するとはねえ」

「ああ、前々から恨みを溜めこんでたらしいぞ」

 男の知り合いだろうか。さっきの発言で人が集まってきた。今も昔も人は不祥事に敏感である。情報が欲しいこちらからしたら好都合だ。

「いや、俺は足利家の根回しと聞いたぞ」

「そういえば、最近人の出入りは多かったしな」

 俺は町人の会話を適当な相槌で応えながら、情報収集を続ける。

 ふと蛍の方が気になり、様子を見てみる。

「それじゃあ、これをくださいな」

「十一文になる」

 男が支払いのため、一枚づつ蛍の掌にお金を置いていく。

「六つ、七つ、八つ」

 ふと男の手の動きが止まる。

「あれ、今何時だっけ?」

「九つだね」

「十、十一、これで全部だね」

「うん、ありがと」

 そう言って見送ろうとする蛍をよそに、急いで男の手を掴む。

「ん、どうかしたの?」

「いや、足りてないからね」

「っち」

 不思議そうにする蛍をよそに、男は舌打ちと共に残りの一文を払い、去っていく。

 なんというか、こうも騙されやすい彼女を見ていると、目を離せなくなる。

「持っているお金数えてみて。時間を聞かれたときに数がズレてるから」

「なるほど。……また騙された」

 受け取ったお金をしょぼくれている彼女へと渡す。

「面目ない」

「いや、俺が気付いたから平気だよ」

 気が付くと、話していた町人はまとまって離れて行っていた。

「お金も手に入ったし、お昼でも食べに行こうか」

「ご飯は大切。荷物をまとめるから少し待って」

「いや、一緒にまとめるから。ほらそこの茶屋にでも行こう」

「わかった」

 そう頷くと、広げた品物をまとめていく。

 

 近くの茶屋でお昼ご飯を買い、縁台に二人で座る。

「なんというか、本当においしそうに食べるね」

「もぐもぐ。おいしい」

 リスのようにもちもちとした頬を膨らませながら、こちらを見上げてくる。それは今までの魔力補給ではなく、人として生きて行くために必要なことで、俺と同じ存在だというのを認識させてくれる。

 こんな少女と仲睦ましく食を共にするのは、正直なかった。特に彼女は少し特別だった。

 本人に言えば嫌がるだろうが、騙されやすいという部分は数多くいる英雄たちにない特徴で、俺という存在が明確に助けてあげられる要素だ。それがまた、俺の気を休ませてくれる。

「そういえば、通信はできないんだっけ?」

「そうだね。ここに来てからカルデアとは通信が出来なくなってる」

 お茶を飲み終え、一息ついた蛍が心配そうに見上げる。

 この状況はレイシフトする前にダヴィンチちゃんが懸念していた通りだった。とはいえ、俺からしたら初めてのことではない。そもそもサーヴァントのレイシフトが難しいのだ。外部からの接触は元々期待できなかった。

「そしたら、本当にしばらくは私たちだけなんだね」

「そうだね。まあ、ダヴィンチちゃんの言っていた通り、たまにの休暇かな」

 異変がどういったものかもわからないし、

「お昼寝、してもいい?」

「ああ、そうだね、どうぞ」

「ん」

 食べて眠くなったのか、目をこすりながら聞いてきた蛍に許可を出す。

 すると空いていた俺の太ももに彼女の頭が乗る。

「あ」

「すうすう」

 何かを言う前に彼女の寝息が聞こえてきた。

「まあ、いいか」

 やることのなくなった俺は彼女のくせっけの白髪を堪能するように撫でる。

 

 その日の夜、俺たち二人は宿屋に泊まることにした。

「あなたは、こういうの慣れてるんだね……」

「え、あ、これは」

 そう言われて初めて気づいた。男女の一つの部屋で一晩を過ごすという特殊な状況、それに対して彼女は言葉を零したのだ。

 俺自身は今まで何度か似たようなことはあった。だがそれのどれもがサーヴァントや英雄が相手で、そんな男女を意識するようなこと自体はなかった。

「普段みんな霊体化するからあんまり意識してなかった」

「先輩とは?」

「マシュのこと?」

 こくりと頷く。

 蛍はマシュの事を先輩と呼んで慕う。そしてそれは本人も満更では無さそうだった。つまり、蛍は間接的に後輩? いや、そもそもこれがカルデアへの加入順なら、マシュは俺の先輩にあたるわけで、……ん?

 まあ、この事はあまり深く考えなくていいだろう。カルデアにはもっとおかしなことが多い。蛍は蛍だ。

 それより今は彼女の疑問に答えなくては行けない。

「マシュは、カルデア全員の子供みたいなものだからね。娘……、妹みたいなものだよ。だからなんというか、そういうのじゃないかな」

「そうなんだ」

「だから、そういう意識が抜けてて」

 彼女の声と気配を横で感じながら、俺は天井に目を向ける。

「なんなら今からでも」

「もう一部屋で取ってしまった。そもそもお金もそんなに無い。別れるのは護衛の意味的にも得策とは言えない」

「う」

 彼女にその意思はないのだろうが、部屋を変えるという選択肢を直前で潰されてしまった。

 しかし困った。自分の不注意だったのだが、完全に逃げ場を失った。何もせずにも心臓の鼓動が高まっているのを感じる。

「それじゃあ俺は寝るよ」

「……わかった」

 心配を与えないように平静を装いながら、すぐに対となる布団を背にするように横になる。

 だが、当然ながらすぐに眠れるわけではなく、無理やり閉じた視界の代わりに聴覚が鋭敏になる。

――カサ、カサ

――パサッ

 布切れの音が背後から聞こえてくる。蛍が外套を脱いで楽な服装へと着替えているようだ。否が応でもその姿を想像してしまう。

 それを振り解こうと瞼と歯茎にこもる力が強くなる。何か、別のことを考えよう。

 ……そういえばこんな風に特異点修正の危機感もなく、サーヴァントたちの目もないのはひどく久しぶりじゃないだろうか。

 自然と目の周りが熱くなっていく。

 彼ら英雄たちが悪いわけじゃないが、どうやったって完璧無欠な存在を前にして普通になんてしていられなかった。しかも、彼らの主として世界を救うなんていう恐れ多いことをさせられる。

 いや、『させられる』なんてさえ思わせてはくれない。自ら『しなければ』ならない。だって、人類最後のマスターで、みんなの期待を背負っているから。

「う、うぐ」

 喉の奥から不快感が押し寄せ、嘔吐く。

 今となっては押し殺すという意識すらなくなった本心が、急激に膨張しだす。

 なんで俺がこんな目に。世界を救えば、元の日常に戻れる? いや、多分もう元の生活には戻れない。人理を救い、世界が白紙がする前のたった五日間、それが俺の行く末を表していた。世界を救ったところで、俺自身が救われることはない。

 

――俺は、何をしているんだ……?

 

――何をすればいいんだ?

 

「大丈夫?」

 その声と共に、涙が拭われる。

 目を開けるとぼやける視界の先に蛍の姿を捉えた。

「あなたは寝ようとしていたところ、だよ?」

 困ったように眉を顰め、こちらを見つめる彼女の言葉で気づいた。さっきの言葉、口に出ていた。

「……ごめん」

 立ち上がろうと手を顔のあたりまで持ってきて、やめる。

 さっきまでのほんの一瞬、人が、彼女がいることを忘れていた。だけど、今更人類最後のマスターになるのは無理だった。

「ごめん……、ごめん……」

 どこの誰へ向けたものかもわからない謝罪が、口から垂れ流される。

 正直、人理修復までは自分の中にある柱だけで立つことが出来た。人を救う、人類を救うという使命感の柱で。

 だけど、世界を、有り得たかもしれない世界の人たちを自分の手で消した時、それは崩れた。人を救おうと、人類を救おうとして、人を、人類を、神を殺した。

 それでもやらなきゃいけない。

「強くなきゃ、強くなきゃ」

 自身の行動に疑問を抱く度に、崩れかけた柱へと棒きれを刺して支える。そうして俺は世界を消していった。

「そうか、俺はもう、普通じゃない……」

 もう元には戻れない。平凡な生活を知っていたから思ってしまうこの喪失感。最初から普通など知らなければ、何も知らない一般人でなければ、こんなに苦しまずに済んだのかもしれない。

「ぁ……」

 手を上から包まれるように強く握られ、意識が地の底から帰ってくる。

 そうして段々と目の焦点がその手の主を捉える。

「私にとって、貴方は特別な存在」

「強さはわからないけど、私はあなたの優しさに救われた」

「ありがとう」

 そういい、少女は微笑む。

「……そっか」

 その言葉はすんなりと胸の内へと降りてきた。

 蛍は俺の成してきたことを直接は知らない。だからこそ変な猜疑心を抱く必要がなかった。人類最後のマスターにではなく、藤丸立香、俺自身へと向けられたものなんだと受け入れられた。

「休むといい」

 何か安心したように表情が緩んだ彼女によって髪を撫でられる。

 それがどこか心地よく感じ、されるがままに目を閉じる。

 もう、ドロドロとした黒い感情はなくなっていた。

 

 

――6月12日

 

 宿屋から出た俺たちは、隣町を目指して道を進んでいた。

「平気?」

「え、ああ、うん。一度吐き出したらすっきりしたよ」

 心配そうに袖をつかむ彼女に平常運転に戻った笑顔で応える。

「それはよかった。あなたのあんなところ、初めて見たから」

「あはは。他のみんなには見せられないよ。蛍も今回のことは秘密にしておいて欲しい」

 自分自身もああなるとは思っていなかった。普段カルデアにいるみんなの前では絶対になることのない状態。それが英雄やカルデアのみんなのいないこの場所だからこそ陥った。

「秘密? 多分私より悩み事に適した人はいると思うけど」

「いや、多分蛍の前だからこそのだから。それにもう大丈夫、あ」

 目の前には荷車の車輪がぬかるみ嵌り、立ち尽くす男性の姿があった。

 俺は考えるよりも先に駆け出す。

「大丈夫ですか?」

 

「いやあ、君ありがとね」

「いえ、困った時はお互い様ですから」

 伏見城の城下町で行商人をしながら人助けをしていた。今は置き引きを捕まえ、持ち主へと荷物を帰したところだった。

「そういえば蛍はもうカルデアには慣れた?」

「問題ない。けど、この前あなたの部屋に尋ねたら別の人が出てきた」

「ああ」

 今回のアナウンスの際、彼女は俺を呼びに部屋に行ったらしい。多分その時の話だ。

「まあ、それどころか寝ているベッドに入り込んでこられたり、勝手に恋人や夫扱いされたりっていうのが日常だからね」

「それは、大変そう」

「あはは、まあ、それがみんなからの好意だからね」

 

 その日も夕食を食べてから宿屋へと入る。初めは昨日のことを考えて二部屋取ろうとしたが、部屋が一つしか空いていなかった。

 しかも、目の前には布団が一つしかない。

「いっ」

「俺は床でいいよ」

 そこまで言って蛍が何かを言おうとしていたことに気付き、口を止める。

「私はあなたを守るために来た」

「だけど今は蛍も俺の変わらない人間でしょ。俺は床で寝るのも慣れてるし」

 流石に少女を床に寝かせて自分が布団で寝るなんてことはできない。だからこそ彼女の提案を跳ね退ける。

「……」

「え?」

 突如として蛍に腕を掴まれ、布団の上に押し倒される。

「ねえ、あなたは私の事どう思っているの?」

 むっとした表情をする可愛らしい少女の顔がそこにはあった。

「私は子供じゃない」

「うん」

 背を気にしていたり、子どもじゃないといったり、そう言うことを気にしている節はあった。

「昨日、夫婦と言われて否定しなかった。甘えても許してくれた。だけど夜になって部屋で一緒になると何故か避けてくる」

「それは……」

 実際昨日も今日も部屋に入ってからは彼女法を見ていない。だけど、それには理由がある。

「私はあなたのことが好き。なんなら契約、その結婚という方に更新してもいい。大丈夫、最初の時のすることは変わらない」

 頬を染めながらも淡々と告げる彼女の目に迷いはなかった。彼女がここまで自信を持てるようになったのは、自身の雑賀を見つけることができたからだ。そうしてそれは俺のおかげ、なんだろう。俺のしたことで確実に変わった、救われた相手が、彼女だ。

 それに加え、騙されやすいところは健在。多分それが決め手だった。他のサーヴァントは俺がいなくたって問題なく輝ける。歴史に名を刻んできた英雄たちなのだから当然のことだ。だけど彼女なら傍にいても平気、いやむしろいないと不安を感じてしまう。

 俺自身が唯一自覚できる強みで救われてくれて、認めてくれた。俺でも傍にいる意味がある。求められ、そして俺が求めることのできる存在が蛍なんだろう。だからこそ昨日は本心が湧いて出てしまった。

「……拒絶された時は、せめてこの体で既成事実を」

「え、ちょ、まって」

 自分の心に整理をつけるため、しばらく黙っていたのを不安に感じたようだ。彼女は怯えたような表情を浮かべて、服を脱ぎだす。

 残り一枚のところで、彼女の肩を掴む。

「大丈夫だから。むしろ、その、避けてたのとかは、意識、して、だから」

 勢いで喋り出したが、自分の情けない行動の説明をするのが恥ずかしくて、段々と声量がしぼんでいく。

 そしてそれに反比例するように蛍の表情は明るくなる。

「俺も、好きだよ」

「よかった!」

 勢いよく抱き着かれ、身体が密着する。押し当てられた胸部に鼓動を加速させられ、戸惑いながらもなんとか彼女の背中に手を回す。

 すると心地の良い香りと共に、彼女の鼓動の速さも伝わってくる。

 次に彼女は俺の顔に手を添え、その顔を近づけてくる。ここから先に何をするのかはわかっていた。

「ん」

 唇が触れ合う。

「蛍」

「大丈夫、私も初めて」

 指を絡ませ合い、身体を重ねる。

 そして夜は更けていく。

 

――翌日

 

 俺たちは城下町から西へいったところで魔獣数匹を討伐した。おそらく今回の異変の原因はこいつらの発生だったのだろう。

「これで、終わりかな」

「楽勝」

 自信満々に鼻を鳴らして彼女はくっついてくる。

 元々死にまで傍にいるといってはいたが、より距離が近くなっている気がする。

「そういえば、もしかしてだけど最初から昨日のこと考えてた?」

「丁度いい機会だった」

 にやりと笑みを向けてくる。

 案外彼女は行動力が高いし、知略を謀ることもできるんだな。それでも騙されやすいところは変わらないから、もうそこは天性のものなんだろう。もう何でも愛おしく感じる。

『あ、ようやくつながった』

「もう帰りみたいだね」

「帰ったら契約更新の書類をつくろう!」

「ああ、そうだな」

 彼女が自身のしたいことに対してまっすぐなように、俺も自分のしたいこと、自分自身のためにこれからを生きて行こうと思った。具体的には彼女のために世界を救おう。それなら、誰か大切な他人のためならもう折れることはない。




・特異点の背景:明智光秀の謀反理由の説の一つ、足利の関与を元に作りました。明智必秀が秀吉に負けず、足利の世が再興するという特異点です。
これは足利のものが聖杯に類似する強大な魔力を入手した結果発生。しかしカルデアの観測でその存在を感知、そのまま使用しても妨害に合うことに気づく。そのため魔力を隠蔽に割くことにする。結果として、特異点内への侵入を阻止しつつ、中で起きたことを特異点が消えても正史へ影響を与える様に変更を加えた。
しかし、その結果として山崎の戦いで大した介入が出来ず本末転倒した、というのが黒幕側の事情となります。魔獣は戦国の人たちなら普通に倒せるでしょ。

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