勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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お気に入り登録や評価が一昨日と昨日増えすぎて、投稿が怖くなった鞍馬です

まぁそれはそれとして投稿はしますし、投降したくもあります

難産でした
相変わらずの拙いものではありますが、どうぞ


 覚悟

「…と言う訳でして、少しクライン嬢の話し相手をするべきかと」

 

『……まぁ構わないが

先程此方に友軍艦隊が向かっているとの連絡もあった

暫く伍長も休む暇がなかったのも確かだ。雑談に興じるのも構わないだろう

…私の本音としてはゆっくり休んで欲しいところだがな』

 

「ありがとうございます、少尉

では何かありましたら」

 

『ああ、その時は連絡する。一応彼女の所から出る時連絡を頼むぞ?』

 

「了解です」

とりあえず少尉に報告を兼ねた連絡をする

 

どんな世の中になったとしても『報告、連絡、相談』は必要不可欠だからね!

相変わらず眉間に少し皺のある表情でしたが、それはそれでアリだと思う

 

…まぁいつかは少尉の

いや、ナタルさんの普段通りの(かんばせ)を見てみたいと思うが

 

 

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「お待たせしました

上司からの許可も出たので、少しばかりお話に付き合うことが出来る事となりましたよ」

 

「ありがとうございます

私、地球の方とお話したいと思っておりましたの

でも中々叶わなかったので」

そりゃそうだろうよ?

プラントの平和の象徴として支持されている人物だ。危険から遠ざけたいと思うのが普通だろうよ?

 

…どちらかと言えば、『籠の中の鳥』いやカナリアかね?

綺麗な歌声で周囲を癒やしては欲しい

 

だが、それ以外の事については知る必要を認めないから、何も教える事はない

そんなところだろうさ

 

 

 

さて、何を聞く?ラクス・クライン

 

「何故この戦争は終わらないと思いますか?」

 

「終わらせる気がないからでしょう

プラントの指導部の考え方は知りませんが、此方からすれば『地球人類を滅ぼそうとしている』のがザフトやプラントなのです」

 

「ユニウスセブンでの事はご存じかと思いますが」

それを口にするか。いやプラントの人間ならそうだろうな

 

「知っていますよ?当時かなり衝撃的なニュース(・・・・)として何度もTVなどで取り上げられましたからね

ですが、それから2ヶ月もしないうちにそうも言ってられなくなりましたが」

 

「…それは、何故ですか?」

良かったな、ラクス・クライン。もし此処に居たのがエイプリル・フール・クライシスで近しい人間を喪った人間じゃなくてよ?

そんな無神経な質問ぶつけたら下手すりゃ血を見るぞ?

 

「おや?ご存じないのですか

『血のバレンタイン』に対する報復として、貴女のお父上達がした事でしょうに」

夢を見せるのがアイドルの仕事だろう?

だがどれだけ素晴らしい、美しい夢だろうと

 

いつかは覚めるもの

 

 

あいにくだが、甘い夢に浸れる程俺達も暇じゃないんでな?

…ついこの前までは暇だったのに、なんでこうなったのやら

 

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私の父がした事

そう目の前の方は言われます

 

でもお父様は地球側との早期停戦(・・・・)を求めて何とか交渉の糸口を探しておられた

そう私は聞いているのですが

 

「…まさかとは思いますが、あれだけの事をしておいてあっさり戦争を終わらせられるとお思いで?

…1億以上もの人間が死んだのですよ?」

 

 

これすら控え目な数字とすら言えるだろう

エイプリル・フール・クライシスに伴う電力の供給停止

それによる死者がこの数字である

 

工場や企業の活動停止、それに伴う経済や社会の混乱。その際に起きた暴動

実のところ、今でもその犠牲者の数は増え続けているのだろう

 

 

「あなた方にとって『血のバレンタイン』は忘れられない悲劇なのでしょうね

ですがその報復として行なわれたものは今なお地球の者達を苦しめている事をどうにもあなた方は理解しておられないのではありませんか?」

 

「それは」

言葉が出ない

今でもまだ犠牲者が増え続けているなんて全く思っていなかったのだから

 

「昨今の政治家や指導者は何か考え違いをしている様に私には思えるのですよ?ラクス・クライン嬢」

 

「どういう事でしょうか?」

 

「志が高いのは素晴らしい事かと私も思います

ですが、『届かない未来(理想)』を語るならば、それに向かってどの様な事が出来るか?或いはどの様にしてゆくか?

それが出来ないならば私はその様な人物に国を任せたいとはどうしても思えないのです」

私はその真剣な目に少しだけこの方に興味を持ったのです

 

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思想家、理想家、宗教家

言葉は色々とあるがカズイにとってそれらはさほどに意味として変わるものではない

そう思っている

 

何故か?

 

彼らはそれに対して責任を持たなくても良いからだ

 

 

 

己が夢を

希望を描く

それが実現可能であるかどうかなどさして問題にする事なく

 

別にそれ自体は構わないとカズイは考える

主義思想は自由であるべきなのだから

 

 

 

 

 

…だが、それを権力者がするとなると全く別の話となるのではないだろうか?

 

 

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私の愛しくも忌まわしき祖国では、コーディネーターとナチュラルの共存社会が出来上がりつつありました

 

しかしそれは国のトップだけの功績ではなく、国民1人1人の意識やそもそも移民により誕生した国家であるという経緯も少なからずあったのだと思います

 

私はナチュラルです。しかし、コーディネーターでありながら、こんな私を兄として慕ってくれる強く優しい弟がいます

その縁から本土のコーディネーターとも多少の関わる事もありました

 

彼等はあの惨劇から意識が変わった

…いや、変わらざるを得なかったと一様に口にします

 

何故だと思いますか?

 

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その問いに答えを出すにはあまりにも今の私が持っている情報だけでは足りないのだと私は何となくですが理解しました

 

…ですが、この方は

カズイさんと仰られる方は

(プラントのコーディネーター)にも誠実に話をしてくれようとしているのだけは間違いないと感じたのです

 

 

「せっかくの質問ですが、すみません

今の私ではそれに対する答えは出せないと思うのです」

 

「そうですね

失礼を承知で言わせてもらうならば、今のラクスさんは目も耳も塞がれている様なものかと思います」

私の答えにもなっていない返答にこの方は全く動揺しておられない様に思えます

 

 

「ザフトの報復として地球各地に投下したNジャマー

それにより地球各地は地獄と化したのですよ

どうしても気候条件などが管理されているコロニーに住んでいると忘れがちになりますが

…想像出来ますか?

寒さに震えながら、最期は意識を手放し二度と目覚める事のない眠りにつくという事が?

死んでほしくない親しい人を助けられない無念さが

 

それらを生み出したのですよ?

あなた方の指導者やザフトは」

 

想像すらしていなかった

父は良く

 

「何故地球にいる同胞達はプラントへ来ないのか?」

と口にしていたが、そうだとすれば来るはずもなかったのだろう

 

「勿論彼等とて苦労がなかったという事はなかったでしょう

インフルエンザなどの時からコーディネーターに対する不満はあった。…時に理不尽な事もあったのでしょう

それでも彼等が地球にいるだけの理由があったのですから」

…そうだとすれば、プラントが期待する様な事はないのでしょうね?

 

 

「どれだけ素晴らしい考えを持とうが、血に塗れた道の先にそれがある。と言われてついて行く人がいるでしょうか?

今のプラントや一部の環境保護団体の主張するものはそういう事だと私は思いますが」

 

…待ってください。先程からカズイさんは一度として大西洋連邦の事を自分の祖国とは言っていません

では、この人の故郷は?

 

「…一つお伺いしても構いませんか?」

 

「答えられるものであれば、何なりと」

 

「…貴方はもしかしてオーブの方、なのでしょうか?」

もしも、そうだとすると

 

私の質問に彼は

「ええ、そうですよ。先程貴女を此処に案内した准尉もそうですね

彼はオーブに住むコーディネーターですよ?」

私達のしている事

それがよく言われている様に正義とは私には思えなかったのです

 

----

 

私が慰問の為にプラントを離れ、ユニウスセブンに向かう少し前に中立国であるオーブのコロニー、ヘリオポリスが崩壊した事を耳にしました

 

 

 

父と父の側近であるカナーバ議員が沈んだ表情で話をしていたからです

 

「これで、オーブに和平の仲介を頼む選択肢もなくなったか」

 

「ザラ国防委員長の主張も理解できなくはありませんが、これでは私達のしている事に対して賛同者や共感を覚える者が増えるとも思えません。しかもプラントにおける人口は決して無視できないレベルで減少しているのですよ」

 

 

此処プラントにおける結婚とは『想いあった人達の終着点』ではなく『未来にコーディネーターという種を残す為の手段』だ

私も婚約者がいます

父の盟友であるパトリック・ザラ国防委員長の息子であるアスラン

 

幸いにして私とアスランの仲は良い方だと思っています

アスランは私の歌を好きだと言ってくれますし、どうしても独りになる事が多い私の為にハロというロボットを作ってくれました

 

…そのアスランも今ではザフトの一員になって戦争をしているのですが

 

 

恐らく想いあっていた恋人であっても、プラントでは結ばれない

そんな話もあるのでしょう

 

そこまでしても、なおプラントの人口が劇的に増える事がなかったと聞きます

だからこそ、父やプラント最高評議会の方々は地球にいるコーディネーター(仲間達)の移住を期待していたのでしょう

 

 

勿論、父とカナーバ議員の話の中に決定的なものはありませんでしたが、少し調べればわかる事です

 

プラント最高評議会はこれについて

 

「地球軍による新兵器の開発が行なわれていたのであれば、その国やその地域が戦闘に巻き込まれたとしても仕方のない事(・・・・・・)だ」

と国内に対して主張

事実地球軍のMS開発は脅威なのかも知れません

 

この衝撃的な事象に対してのプラント市民の反応はとても鈍かったのです

驚くべき事に

 

 

私達はユニウスセブンで起きた事にはあれだけ激烈な反応をしたのに

 

 

私は恐ろしくて仕方ありませんでした

ヘリオポリスで理不尽な目にあった方々の怒りが、無念がどこに向くのかが

 

----

 

「私達を恨んでおられるのでしょうか?」

なにを頓珍漢な事言ってるのかね、この桃色は

恨んでいない訳がない

憎んでいない訳もない

 

だが

「今の私は大西洋連邦軍の一員です

たとえどの様な感情を持っていたとしても、それを根拠に誰かを殺そうとはしませんよ

守りたいものがいるから、だから私はこの道を選んだのです」

お前たちと一緒にするなよ

感情のままに力を振るって、その後の事については後から考える?

 

それが大人の

一つの組織の一員としてやる事ではない

 

したいのならば、ナイフでも持って1人1人殺していけばいい

それならば、その責任はそいつだけのものだからな

 

----

 

その後、私は色々な事をカズイさんに尋ねました

 

…恐らくこの方にとって、私はとても面倒な相手だと感じたと思います

 

 

ですが

 

「さて、そろそろ私も仕事に戻らねばなりません

申し訳ないとは思いますが」

 

「いえ、初対面のしかも敵である私のわがままを聞いて下さりありがとうございました」

 

「民間人を敵とは言いませんよ

…まぁ、もし貴女がその手に剣を持ったのであれば話は変わってくるでしょうが」

カズイさんはそう苦笑すると部屋を出て行こうとし

 

「ああ、忘れていましたが一つ注意してほしい事があります」

 

「なんでしょうか?」

私に言いました

 

「民間人である貴女に用のある者はいません

なのでくれぐれも誰が何を言おうとこの扉を開けないで頂きたい(・・・・・・・・・・・・・)

 

「分かりましたわ」

 

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ラクス・クラインのいる部屋を出た俺はその足である所へと向かった

 

 

 

「…で、何をしている?

フレイ・アルスター」

そしてそいつに声をかけたのだ

 

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「何をしてるって、キラを探しているのよ」

いきなり高圧的に声をかけてきたカズイに私は不愉快そうな事を隠そうともせず答えたら

 

「はて、何を言っているのかわからんな

お前はただの民間人で、キラは大西洋連邦軍人だ。そして此処は大西洋連邦所属の戦闘艦の中

お前が勝手に出歩いて良い場所ではない。直ぐに戻れ」

 

「なによ、アンタ」

 

「生憎だが、民間人のわがままを一つ一つ聞いている程余裕はなくてな。要望があるなら、また今度聞く機会を設けるが?」

 

「今じゃなきゃ駄目なのよ」

 

「何故」

 

「サイから聞いたわ。キラが兵器に乗って戦ってるって

だから、パパを守ってもらおうと」

私の言葉を聞いたカズイの目つきが明らかに険しいものになる

 

「…誰からその話を聞いたのか、それについては後で詳しく聞かせてもらうとして

ヤマト准尉にせよ、フラガ大尉にせよそこまで余裕がある訳ではない。それに自由に艦内を歩き回ってもらっては何かあった時、困る。今なら見なかった事にするからとっとと戻れ」

 

「会わせてくれるくらい良いじゃない!」

 

「…確かお前の父親は大西洋連邦の政府関係者だったか

だが、ひとたび戦場に出てくるのなら等しく生も死も与えられる

それでもなお、行きたいと言うのなら

知人を殺しかねない選択をすると言うのなら」

カズイは懐から短いナイフを取り出し

 

「これで俺を刺せ

それで俺が死ぬかどうかは知らんが、少なくともこれからお前がしようとしている事は間違いなくそれ以上の事」

なに、言ってるの?

 

恐ろしい事を言っているはずなのに、カズイはいつもよりも更に無表情に見える

「今はそれで良いのかもしれんが、いずれフレイ・アルスター。お前も後悔する事になる

一度人を殺す事をしてしまった者は、一線を超えてしまった者は

二度とそれを知らなかった時には戻れない

…さぁ、選べ

フレイ・アルスター。お前は何処に向かいたい?」

震える私の手にカズイはナイフを握らせて、少し離れた

 

 

----

 

動けなかった。手に握らされたナイフがやけに重く感じる

 

「どうした?俺をどうにかしないとキラに何かを伝える事は出来ないぞ。それでも良いのか?」

カズイは私に挑発する様な事を言っているが、地面に腰を下ろしたまま動けない

 

「…ふむ、流石に生粋のお嬢様であるアルスターには刺激が強かったか?

どうしたものか」

 

「なんで、アンタそこまでするのよ?」

能天気に独り言を呟くカズイ(バカ)に私は訊ねる

 

「キラは友人で、お前は知人だ。俺にとっては

だが、だからといってお前が自分から底なし沼に沈んでいこうとしているのだ。それを放置するのは余りにも気分が宜しくない」

 

「そうなんだ

アンタ、お人好しなのね」

 

「さてな、俺自身は救いようも無い臆病者だと自覚しているが」

あれだけ頭の中がぐちゃぐちゃしていたのに、何だかスッキリした気がする

 

「パパが死んだら、私アンタを恨むわ」

 

「おう。好きにしろや

なんならそのナイフ持っとけ。…いつかこの船を降りて、連邦軍人でなくなったその時お前がそれで俺を殺せる様にな?」

 

「…うん」

多分こいつはどうしようも無い位のお人好しなんだろう

でもそれをこいつが認める日は来ないのかも知れない

 

「…ねぇ」

 

「なんぞ?」

 

「腰が抜けちゃったから、部屋まで送ってよ」

私の言葉に大きくため息をつくと

 

 

マジかよ、お前

と天井を仰いだ

 

 

----

 

「…ねぇカズイ」

 

「あまり話しかけるな、(魅惑の桑島ボイスが耳元でするから)バランスが崩れる」

 

「そう。それでなんだけど」

 

「お前なぁ、俺の話聞いてた?」

私はカズイに背負われながら、部屋に戻っていた

話しかけても素っ気無いけど、気にしない

 

こうして話をしていると、何だか落ち着いてくるのだから不思議

 

「怖くないの?死ぬかもしれないのに」

 

「冗談。怖いに決まってるだろ?毎日ベッドの中で震えながら寝てるわ」

笑って言ってるけど、多分本当なんだろう

 

「…カズイ」

 

「なんだ?」

 

「ありがとう」

この不器用な人の私は力になりたい

そう初めて思った

 

 

 

 

 




理想を見るのは良いけど、現実もみよう!な話と

誰かを守って(傷付けて)欲しいんなら、自分も同じ様な事をしようね!(マジキチスマイル)というお話でした



反応が怖い

 本作のヒロインは?

  • 大天使ナタル
  • 妹系少女マユ
  • フレイ
  • 猪突猛進娘カガリ
  • キラ
  • シン
  • その他
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