勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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戦後のゴタゴタ回




 それぞれの剣

「大統領!今回のユーラシア連邦軍の新型戦艦について一言!」

 

「世界が軍縮に向かう中のこれは世界秩序に対する挑戦状ではありませんか?」

 

「これにより各国の軍縮の流れが変化するとの話もありますが!」

 

押し寄せる記者達(ハイエナ)護衛官達(シークレット・サービス)が押し退け、無言のまま男は車に乗り込んだ

 

 

 

 

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「やれやれ、喉元過ぎれば熱さを忘れると言うそうだが、僅か3年前の事すら彼等の頭にはないのか?と偶に聞きたくなるな

…その辺についてどう思うかな、ハルバートン」

 

「彼等に主義思想や倫理観を期待するだけ無駄でしょうな

数字さえ稼げればそれだけで満足する手合いですから」

大西洋連邦大統領ジョセフ・コープランドは車の中で助手席に座っているハルバートンへと声をかけ、ハルバートンは心底どうでも良さそうに返す

 

記者達が口にしていたのは、ユーラシア連邦軍が来月建造の終わった新型の宇宙艦艇を宇宙へと上げる。その事が連邦軍広報官の口から発表された件であった

 

これに対して大西洋連邦、東アジア共和国、アフリカ統一機構を始めとした各国首脳は明確なメッセージを出さず

 

『これにより地球圏の安定と平和が保たれるものと確信している』との地球連合総会における各国代表連名の発言にとどまる事となった

 

 

一部軍事評論家やコメンテーターはテレビなどで

「現在明確な脅威が存在しない現状において、ユーラシア連邦軍の取った行動は国際秩序を乱し、新たな対立や軍拡を生み出しかねないもの」

と批判

 

一部市民団体(・・・・・・)はこの暴挙に対して何の対応もしない政府に対して、速やかな対処を求めてデモを行なう騒ぎとなっている

 

 

「これで各国宇宙艦隊の中核だけでも新造艦になりました

懸念事項が解決次第、武力衝突により凍結されていた宇宙開発を再開したいと考えております」

 

「…うむ。足元がぐらついていては天に手を伸ばしたとしても届くどころか足元から崩れ落ちかねんからな

…ユーラシアには泥を被ってもらう事になったが」

 

「彼等からの申し入れでしたからな

恐らく戦後、前大統領と共和国前首相の辞任に合わせられなかった事に対するものかと」

プトレマイオスにおける終戦宣言の後、大西洋連邦大統領とユーラシア連邦大統領。そして東アジア共和国首相はタイミングを合わせて辞任する事により、世界が新たなステージへ向かった事をアピールする予定だった

 

ところがユニウスセブン落としによるゴタゴタでとてもではないが、ユーラシア連邦は政治的空白を作る訳にはいかなくなり、ユーラシア連邦大統領は両名より遅れる事半年後に辞任している

勿論コープランドを始めとする各国の次期トップとなる人物にも余計な混乱などを防ぐ為にこの話はされていた。故に現ユーラシア連邦大統領はこの時の政府高官や軍総司令部関係者に責任を取らせる今回の方法を選んだのだ

 

加えてファウンデーション王国に対する対処は本来ユーラシア連邦が主導して行なわねばならない事

しかし現実には大西洋連邦からの連絡を受けてファウンデーションの暗躍を知った

つまり二重の意味でユーラシア連邦は大西洋連邦に借りを作ってしまったと言えるだろう

 

 

如何に国際協力をしているとは言え、本来ユーラシアと大西洋は世界の主導権を取り合うライバルとも言える存在

大統領としてはそんな事は些細な事であり、何よりも散っていった者達の犠牲によりようやく掴んだ平和を守るべきと考えている

 

が、メンツを完全に無視してしまえば国内からの反発も予想され、それがファウンデーションの付け入る隙になり得ると判断

別の組織に対しても可能な限り隙を見せるべきではないとの事から、今回の判断に踏み切っている

 

 

元々大西洋連邦軍のアークエンジェル級が2隻あり、現在は両艦ともドック入りしているのだが、それでは大西洋連邦軍のみ軍事的に先行してしまう形となるとして封印している

 

オーブもクサナギとイズモがアメノミハシラにあるが、それに関してもオーブ国防軍暫定最高司令ロンド・ギナは周辺空域のパトロール任務に従事させている

M1アストレイを搭載しているが、それの運用についてはかなり厳格な規定を設けて軽はずみな行動がない様に管理体制を強めていた

 

 

人は善にも悪にも容易く振れるもの

となれば、善性によって動くのは危険であろうからな

 

とはオーブ代表を昨年退いたロンド・ミナの言葉だ

 

 

 

今回ユーラシア連邦軍が建造した新鋭戦艦の数は7隻

うちユーラシア宇宙艦隊に振り分けられるのは2隻のみ。大西洋連邦軍と東アジア共和国軍にそれぞれ2隻

そして新設されたアフリカ統一機構宇宙艦隊の旗艦として残りの1隻が加えられる事になっている

 

そのかわりに大西洋連邦軍と東アジア共和国軍は宇宙艦艇の一部をユーラシア宇宙艦隊に移譲する事になっていた

ユニウスセブン落としによってユーラシア宇宙艦隊は壊滅的被害を受けており、残る残存艦艇の一部はユーラシア連邦首都モスクワの戦争博物館にて戦争について市民が考える教材として活用

 

大西洋連邦や東アジア共和国においても、戦争博物館を設置。戦争の記憶を風化させない様に努めている

 

 

更に一部の当時の戦闘映像の解禁も決定

市民に対して、武力の安易な行使がどの様な悲劇を生み出すのかを徹底的に理解させるべく動いている

 

その上で、戦争を望まない事と武力を完全に放棄する事は別であると周知させる事としているのだが、これについては中々上手くいっていない

のが実情だ

 

 

 

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「地球の問題が粗方片付けば、旧プラント本国にも手を入れる

宇宙開発の最前線基地として機能させる事になるだろう」

 

「軍としても賛成できるでしょう

少しずつ人類の生存圏を増やしていく。それもまた我等の務めかと」

 

「…やれやれ、やはりあの時手を挙げるべきではなかったか

ジブリールめの甘言にあっさりと乗った当時の自分を今の私が見たら、思わず叩きのめすだろうな」

 

「…ご愁傷様です」

コープランドの言葉にハルバートンは曖昧な笑みを浮かべるしかなかった

 

(やれやれ、あれだけ以前嫌っていた政治と深く関わる事になるとは。今更ながらにサザーランドの苦労が分かる気がする)

 

 

 

 

 

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ジョセフ・コープランドは元々プラント本国攻略を自身の切り札で果たしたジブリールが大西洋連邦、地球連合において確固たる影響力を持つ為に擁立しようとした者であった

 

如何にジブリールがアズラエルを追い落としたとして、ブルーコスモス盟主やロゴスの主導権を握ったとしても、残念ながらアズラエル程の影響力を持てるのか?

そう考えたからだ

 

故に大西洋連邦大統領を自身が後援する事で自身の勢力基盤を盤石としたい。その為に選ばれたのがコープランドだった

 

 

まぁ、その本人が他ならぬロゴスの他のメンバー達によって消された(お疲れ、じゃあ君用済みなんで)訳だが

 

しかしこの時点でアーヴィングの次に名乗りをあげていたコープランドは困る事になった訳だ

何せ自身を後援する(支える)筈のジブリールは亡く、寧ろジブリールの手駒となろうとした自分がどの様な目でロゴスから見られているかわかったものではなかったのだから

 

 

そんなコープランドに手を差し伸べたのがアーヴィングだった

当時は蜘蛛の糸(最後の希望)と思い、それに縋ったが今思えば何とも愚かな事だったと自嘲するばかりだ

 

アーヴィングは自身の補佐官の1人としてコープランドを徹底的に鍛え、その馬鹿な考え方(・・・・・・)の矯正を行なった

元々従軍経験もあったアーヴィングによる教育プランは過酷そのものであり、嫌でもコープランドは変わらざるを得なかった

加えて退陣時の演説

 

これを聞いたコープランドは

 

(あ、これアカンやつや)

と思わず内心天を仰ぐ事となったのは秘密である

 

 

 

 

いざ大統領になったコープランドだが、やる事が多い上に自分を見つめる者達の視線が厳しいなどという程度のものではない事に気がついた

何せ、プラントとの問題を解決したアーヴィングに対する国内、国際的評価は低いものでは無くアーヴィングを首班とした長期政権を与党は企図していた。軍としても最高指揮権を持つ人物として慎重過ぎる、そしてアズラエル等との適切な関係を是とするアーヴィングの在り方は好ましいものだった

一方でオーブを焼け野原をする判断を下したアーヴィングに不信感や危機感を抱いている野党や与党内の反アーヴィング勢力。彼等も後任となったコープランドに対して厳しい視線を向けない訳がなかった

 

針の筵

正にコープランドの置かれていた状況はそう言っても過言ではなかったのだ

 

 

故に彼は必死に平和を守る為の秩序構築に邁進する事となった

 

腐っている場合じゃない!

 

体育系となった(身体を動かす事を日課とした)コープランドは精力的に動く事となる

コープランドの経緯をサザーランドから聞いていたハルバートンはそれ故に彼を労った訳だ

 

 

 

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「奴等は狂ったか?」

開口一番あんまりな物言いからロゴスメンバー達による話し合いが始まる事となった

 

「どうやら彼等も目覚めた様でしてな

パンジャンドラムの大量購入を打診してきました

…まぁ応じるつもりなど欠片もありませんがな」

 

「…うむ

しかし今のそれは」

 

「農耕重機或いは建設用重機ですな」

…ああ、もう

 

声にならない嘆きが室内を支配する

 

「つまり、何かね?

戦力としては全く機能しないものを彼等は切り札として欲している

…そういう事か?」

 

「ええ

なので請われた者達には、交渉を出来るだけ引き伸ばした上で断る様に指示を出していますな

彼等からすればさぞ強力な兵器と見えるでしょうから」

楽しそうに笑うのは『パンキチ(パンジャン狂)』とメンバー内から先の一件で言われる様になった人物

 

「…任せて構わんのだな?」

 

「お任せを

交渉を無駄に引き伸ばす。複雑にして煙に巻く

影に潜むしか脳の無い連中相手というのは少々不満ではあります

…が、あらゆる手段を用いて彼等に紳士たる所以を教えてやるとしましょう」

…うわぁ

元々交渉術についてはロゴス内においても定評のあった人物である

 

その人物が虚実併せ持つ事となった物を手に全力で動くと言うのだから、碌な事にならないと皆ドン引きである

 

「…MSの生産については?」

 

「目の前にあるお宝にご執心の様で」

 

「…なるほど。しかし霞の向こうにある宝箱

その中身を見せるつもりはない、と?」

その質問にパンキチと密かに呼ばれている人物は紅茶で喉を潤すと

 

「人は誰しも期待するものです

自身の苦労に見合った。かけた時間や労力に相応しき対価を

前任者のしてくれた事も手伝って面白い見せ物になってくれるでしょうな。交渉担当も代わる様に指示をしております」

 

「…それだけの案件と見せる訳か」

 

「彼等はこれからMSを凌駕する超兵器を手に入れるべく奮励努力する事でしょう

何なら現物を見せて、更に惑わすのもアリかと考えております」

 

えげつねぇ

そう誰しも思ったが、よくよく考えれば別に現体制を破壊しようとする連中

どうでも良いと皆一様に思考を切り替える

 

「ならば任せたい

勿論必要ならば協力は惜しまん」

 

 

こうしてその日の会議は終わった

 




ファウンデーションという新たな脅威が出てきた事により、一族に対する締め付けが加速する模様

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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