何かを守る為に何かを傷付けるもの
因果は巡る
被害者が加害者に
加害者が被害者へと
それはまるでウロボロスの様に
終わる事なく回り続ける
今回からいよいよオリジナル要素強めでいきます
予めご了承ください
モントゴメリーが沈んだ
つまりアルスターの父親であるジョージ・アルスターも亡くなった
そういう事だ
勿論アークエンジェルからも援護を出そうとしたのだが、クルーゼ隊に加えて近くの宙域からザフトのローラシア級が3隻とその搭載しているMS隊が参戦しているとあっては多勢に無勢
どうしようもなかったのだ
それをアルスターに伝えたのだが
「…そう。パパは死んじゃったのね
だからってアンタや戦ってくれた人達に何かをしようとは思わないわ」
「…でも
少しだけアンタの胸を貸してくれる?」
恋人であるアーガイルがいるだろ?
とは流石に言えなかった
「…パパ、どうして死んだのよ?
ママもいない私は独りぼっちになっちゃった」
とくぐもった声でアルスターは必死に耐えていた
彼女を慰める資格は俺にはない
だが、それでも彼女の背中をゆっくりとさすっていたのだ
…我ながら反吐の出る話だ
優しくしても、甘くは出来ず
厳しくは出来ても、突き放すことは出来ないのだから
「地獄行き待ったなしだな」
思わずそんな言葉が口にでる
「…大丈夫よ
アンタが死にたくなったら、私がアンタを殺してあげるわ
それで直ぐアンタの後を追ってあげる。私はパパの仇がうてるし、アンタの死にたいって願いも叶う
それでアンタのそばにいたいっていう私の想いも叶うんだから、良いでしょ?」
「…そん時は頼むわ」
「任せておきなさい
…でもね?無理はしないで
簡単に逃げるなんて許さないから」
言葉こそ激しいものだが、俺の胸から顔を上げたアルスターは涙のあとがのこっていたものの、笑顔だった
勿論作り笑顔なのは間違いない
が、それを指摘しようとは思わない
「さ、行ってきなさいよ
まだアンタはやる事があるんでしょう?」
アルスターが俺の背中を押しながら、精一杯の笑顔で送り出してくれたのだ
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『此方は大西洋連邦所属アークエンジェル
現在本艦は人道的配慮からラクス・クライン嬢を保護している
が、これ以上戦闘行為を続けるならば彼女の無事は保証しかねる事を此処に申し上げたい』
「ラクスが!?
…くっ、地球軍!どこまでも卑怯な!!」
『…こちらヴェサリウスだ
各艦各機は速やかに後退せよ』
『けっ、危なくなりゃあ人質をとるってか?』
『ちっ。不愉快だが仕方ない!
ディアッカ、ニコル、アスラン撤退するぞ!』
戦場に響き渡ったのは足つきからの全周波を使った広域通信
ユニウスセブンの慰霊ライブに向かった筈の彼女を足つきが保護し、その彼女を人質にしようというのだ
「キラ!地球軍はこんな事をする連中なんだぞ!
それでもお前は地球軍に味方するのか!!」
俺は親友であるキラに再度呼びかけるが
『君達が何を今更言ってるのさ』
と冷たい声で答えた後、足つきへと帰艦していった
「なんで分かってくれないんだ、キラ」
親友のあまりの頑なさに俺は自分の無力さを痛感した
なお、カズイがこの場にいたならば
「卑怯とか。何ザフトでもブラックジョーク流行ってんの?
このままアークエンジェル沈めたらラクス・クライン死ぬんだけど、それでも良いの?」
と言うだろう
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「申し訳ありません、艦長。少尉」
「いえ、これしかなかったのは間違いないと思うわ」
「確かに褒められた手段ではない
が間違った話でもないのも事実だ。このまま本艦が沈めば彼女も死ぬのだからな」
ままならないもんだ
というか、ネルソン級とドレイク級が2隻もいたのなら、もう少しマシな抵抗ができた筈なんだがなぁ
何せ此方は新造艦とはいえ、主要クルーとなっている者はごく一部を除いて正規に配属された者でない者が多い
階級としても足りていないのが現状
今回の様な場合において、つまり指揮系統を定める場合にそれはかなりの問題となる
それが顕在化したとも言えるだろう
さて、一先ずラクス嬢をプラントに戻す訳だが、これはこれで面倒な事になるんだろうな
…相手にとっては特に
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『それで退いたのか、クルーゼ!』
「援軍に駆けつけた者達はラクス・クラインの捜索も担当していた部隊。となれば強行する訳にもいかぬでしょう」
『それはそうだが
せっかく地球軍の新型を撃破出来る好機だったのだろう?』
「しかし、それで指導部に対する不信感を抱かれてはどうにもなりますまい」
『…やむを得ぬか
分かった。ラクス・クラインについては
アレはプラントの歌姫であり、シーゲルの娘だ
地球軍がマトモな扱いをしたとも思えんからな』
そう相手は一方的に言い立てると通信を切断した
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「ふっ、困ったものだ
…しかしこれで『新人類』と臆面もなく言えるのだから愚かな事だ」
クルーゼは嗤う
己のした事ややりそうな事
だから、相手もやる
そんな考え方の何処に今までの人類と違うところがある?
彼等が嫌悪しているナチュラルと変わる事のない傲慢な考え方
ナチュラルである自分がザフトにいる理由は幾つかある
が、その中でも大きなものとして
プラントの軍事組織であるザフトは
その組織に課せられた役割に対して、余りにも意識の低い者が多過ぎるとクルーゼは判断したから此処にいるのだ
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確かに地球軍でも、その辺が弱い所はあるのだろう
…だが、幾ら地球軍においてブルーコスモスの思想を支持する者が多くとも、それによって全てが動く訳ではない
ザフトやプラントの者達の中には『地球軍は奴等の手駒』などと非常に愚かしく、あり得ない妄想をする者がそれなりの数いるのをクルーゼは知っている
が、オペレーション・ウロボロスの時や地球軍の捕虜を殺す時などにおいて一部の者達は作戦範囲から逸脱した行為を行なっている
地球軍であれば軍法会議により、ほぼ間違いなく極刑に処されるレベルの失態を犯したとしてもザフトでは無罪放免
そればかりか『ナチュラルを倒した』などと一部からは称賛すらされているのだ
それによって、多少なりともザフトやプラントにとって益になる訳でもない。それどころかそれらの行為により、ザフトやプラントは少しずつ追い込まれているのだ
確かに戦術的勝利は重ねているだろう
…だが、既にプラント理事国は地上にある『親プラント国家』に対する
加えて、戦争を終わらせる方法についてもプラント上層部は余りにも無関心に過ぎるとクルーゼは思っている
クルーゼとしては自身の望みの為にはそれが好ましくあるのだが、余りにも稚拙極まるやり方に
「これでどうにかなると本気で考えているなら、最高評議会のメンバーは全て即刻首をすげ替えるべきだろうな」
と思わずにはいられない
最高評議会などと大層な名前の集団だが、その中身はと言えば各部門の専門的知識を持つ者の集まり
…そこに何故政治や外交などの専門家がいないのか、クルーゼには到底理解しようがなかったのだが
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しかも彼等の中には自身の率いる部隊に子供を送りつけておいて、平然と戦争へと突き進んでいる
ラスティ・マッケンジーの父親であるジェレミー・マクスウェルなどは自身の息子の戦死を聞き
「やはりナチュラルの存在は我等にとって危険なものだ!」
などと憤慨していた
が、クルーゼからすれば今更の話だ
どうにも最高評議会の面々の頭の中は中々アップデートされていないらしいが、地上への侵攻作戦であった『ビクトリア侵攻作戦』においてザフトは多大な犠牲を出している
圧倒的な勝利を飾った世界樹やグリマルディでもザフト側にも被害は出ているのだ
兵士を送り出しておいて、自分の身内が死ねば怒りを露わにする
これこそ低俗な人間がする事ではないのか?とクルーゼは口にこそ出さないが内心呆れかえっていた
犠牲の出ない戦争などあり得ず、そもそも戦争と定義しているのはプラント側であって、地球側や各政府は一貫して『武力衝突』としている
…つまり彼等はプラントを正式な組織として認めていない
と言う事だろう
などと言っている割には、その小娘1人の命で右往左往している様は控え目に言っても滑稽でしかない
「ザフトの方が自由に出来ると考えていたが、よもや地球軍に属していた方が良かったのかも知れんな」
クルーゼは別に今更自分の命が惜しい訳ではない
が流石に情けない者達の為に命を張って戦うのは勘弁願いたいとも感じていた
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「…という訳でラクス嬢にはプラントへとお帰り願おうと」
「まぁ、それは嬉しいのですが
大丈夫なのですか?」
「でも、このまま居たら軍や政府に利用されるだけ
…そういう事だよね?カズイ」
「その通りなんだよなぁ
…まぁそれとグダグダいつまでも言われるのが鬱陶しい
そんな理由もありますねぇ」
クルーゼが密かに苦悩していた頃、アークエンジェルではラクス・クライン返還の為の打ち合わせがカズイ主導の元で行われていた
お前伍長やんか!越権行為も大概にしろ!!と他ならぬカズイ自身思わなくもないが、
カズイはザフトの人間の倫理観や善性など殆どあてにしていない
彼等に期待しているのは『利益や思惑による判断』のみ
『話せば分かる!』
と言ったところで、何処ぞの国の様に
『問答無用!』
と銃弾が返ってくるのは明らかなのだから
だが、そうであるからと全てを切り捨てるのではそれは最早人ではない
獣であろう
そうカズイは思っている。だからこそ、そうするのだ
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「あと、キラ
お前が不安なのは分かるし、どうにかしたいとも思っている」
ラクスさんを送り届ける為に彼女にはパイロットスーツを着てもらわなければならない
勿論、流石にカズイもそんな事をする訳にはいかない為にバジルール少尉がそれを担当している
僕とカズイは更衣室の前で待機していた
そんな時、カズイは不意に口を開いたんだ
「う、うん。ありがとう」
「恐らくお前は『甘えるのが苦手』なんだろう?」
カズイの言葉を聞いて、本当にカズイは凄いと思う
実は母さんに甘えるのに違和感が昔からあったんだ
まるで本当の母親でない様な気がして
そんな事はない。そう思うんだけど、いつまで経ってもこの疑問は僕の中に強く根付いている
カズイとアークエンジェルで接して思ったのが
『もしも僕に兄がいたら、カズイみたいな人だったのかな?』
という事だ
トールには
ミリアリアにも勿論
サイにも
当然、フレイにも
カズイには血こそ繋がっていないけど、本当に大切に思い合っている弟さんと妹さんがいるって聞いた
その時僕は思ってしまったんだ
寂しい、と
だから事あるごとに僕に親身になってくれるカズイに対して過剰とも言える事をしてしまったのだろう
「カズイ、その、ごめん」
「謝るな。おおかたそんな所だろうとは思っていたさ」
カズイは微妙な顔をして僕に言う
「どうしても軍隊には古来からそういう文化というか風習みたいなものがあってな?
バジルール少尉は仕方ないが、フラガ大尉は分かってあのリアクションを取ったんだろうよ
…今度絶対
カズイは不穏な空気を纏っている
(ムゥさん。頑張ってください)
僕は後で苦労するであろうムゥさんに内心エールを送っておいた
…止めないのか?ともし誰かに聞かれたら僕は躊躇う事なくこう返すだろう
「やめてよね。(怒りのあまり)本気になったカズイに僕が勝てる訳無いじゃないか」
と
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僕も不本意ながら尉官である以上、艦内で何かあった場合対処に当たらねばならない事がある。そうムゥさんは言っていた
その為、時間を見て護身訓練をする事になった事がある
「なんで俺まで参加するんですかねぇ?」
「いやほら、艦長をあっさり抑えつけた伍長ならあてに出来ると思ってな?」
「…まぁ少尉からも参加する様に言われましたし、構いませんけど」
と口では言ったものの、明らかに不機嫌そうなカズイもそこにいた
そして
「いててて、伍長お前本当に民間人か?
俺も自信があったんだがなぁ」
「経験が違いますよ、大尉」
「…いやお前俺より年下だろう」
とまだ痛みを感じているらしく顔を顰めるムゥさんと平然としているカズイの姿がそこにはあったんだ
となると当然
「うわぁぁぁっ!」
「…お前なぁ」
ムゥさんの後にカズイに挑んだ僕は見事に空中を舞っていた
ムゥさんは呆れていたみたいだけど、僕からすればそれどころじゃなかったんだ
「身体的能力の違いが戦力の決定的な違いではない事を教えてやるわ!」
と何処か僕を投げ飛ばしたカズイは満足そうに笑っていたけどね
何で普通に僕の動きについてこれるの!?
と聞いたところ
「視線、足捌き、雰囲気、何となく
どれがいい?」
って満面の笑みで言われた時の僕の恐怖は多分同じ目にあったムゥさんにしか分からないと思う
後から聞いた話だと
「あの時はむしゃくしゃしてやった。後悔も反省もしていないけどすまなかった」
と真顔で言われた時は流石に顔が引き攣ったよ
何でも、バジルール少尉と休憩時間が被った時だったらしく、何もなければ少尉と本の話をする予定だったとか
トールとミリアリアに話したら
「ああ、確かにカズイならそういう時割と怖いからなぁ」
「カトウ教授も何度かされていたわよね、確かに」
と遠い目をしていた
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なのでこういう時のカズイに対しては放置一択なんだ
「お待たせしました」
「ヤマト准尉。伍長からも聞いているとは思うが、もしザフト側が強硬策に出た場合は構うな
直ぐに撤退しろ。その後の事は私達の仕事だ」
ラクスさんとバジルール少尉が更衣室から出てくると僕達に声をかけてくる
「はい」
「フラガ大尉にもゼロで待機して貰う
ラクス嬢には悪いがその辺は納得して貰うしかない」
「…ええ、それは仕方のない事だと思います
寧ろ此処まで気を遣って下さりありがとうございます、皆様」
「ま、精々あるかどうかも分からん新人類サマの良心とやらに期待するとしますか」
カズイの強烈な皮肉にラクスさんは苦笑いをするだけだった
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「…ありがとうございます、キラ様」
「いえ、別に」
ストライクでラクスさんをこちら側が指定したポイントに連れて行く途中、彼女は僕に話しかけてきた
『ハロ、ラクスゲンキ!』
「まぁピンクちゃん。少し静かにして下さいね?」
と彼女が持っている丸い桃色のロボット?に声をかける
「実は私の婚約者がこれを作ってくれたのです」
どうやら僕の怪訝な表情を見て察してくれたらしい
なお、更衣室にハロも入って行った為に半ば本気で
「あれ、壊してもいいんじゃない?」
と考えていたカズイがいたとか何とか
「僕も自室に鳥型のペットロボットがいます」
「まぁ、一度見てみたかったですわね」
「アスラン以外にも器用な方がおられるなんて、やはり世界は広いのですね」
「…え?」
今この子なんて
「アスラン・ザラ。私の婚約者の名前ですわ」
「…僕の幼馴染です。彼は」
そっか、こんな所でも縁があるんだね。アスラン
その後気まずい沈黙がコクピットを支配した
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『こちらザフト軍のアスラン・ザラだ
彼女を返して貰う!』
「コクピットを開けて武装解除して貰う
それから彼女を其方に返す」
イージスのコクピットを開けたのを確認した僕はラクスさんをイージスの方に押し出した
『本人を確認した』
これで終わったかと思ったんだけど
『准尉!直ぐその宙域から離脱しろ!
ザフトのMSが急速接近中だ!!』
「っ!分かりました!!」
『待て、キラ!!』
アスランが何か言っている様だが、構っている余裕はない
全速力でアークエンジェルに戻らないと
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「隊長!」
「盛りの付いた犬ばかりの様だな、アデス」
「…はい」
クルーゼは不愉快そうにため息をつくと
「各機発進!
ただし目標はストライクではない
ストライクに襲いかかるジンを狙え」
と厳命した
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『はぁ!?なんだそりゃ
味方殺ししろっていうのかよ!』
「…エルスマン、口を慎め
地球軍はラクス嬢を解放した。しかもストライク単機でやってきてな
それに対して我等は何をするつもりだ?」
『いや落とせる絶好の機会なんだから、落とすんじゃない?』
「…若造が。知った様な口を叩くな
戦争にはルールがある。そのルールを我等が守らねば何れ我等も同じ目にあうことすら分からんか」
クルーゼの命令に反発するディアッカ
それに対して重々しく言葉を紡ぐのはガモフの艦長であるゼルマン
「…分かった貴様達はそれで良いと思うのだな?
デュエルとバスター、ブリッツは直ぐに帰艦しろ」
『何故ですか!ゼルマン艦長
今ならばストライクを容易く』
ゼルマンの指示に対してイザークも反発する
そこに
『親愛なる蛮勇を愛するザフトの兵士達にご挨拶を申し上げる
ユニウスセブンの悲劇を嘆きながら、民間人のコロニーヘリオポリスを崩壊させた君達だ
…さぞや気分がよかった事と思う』
激毒が流し込まれる事となる
本作のアデスやゼルマンは前線指揮官として経験をしっかり積んでいるので、『ザフトの中では』良心的な方です
クルーゼとしても、あまり想定外の要素を増やしたくないのと、命令なのでそれを無視した者に対して容赦しません
これから先はオリジナル展開マシマシでいきますよー
本作のヒロインは?
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大天使ナタル
-
妹系少女マユ
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フレイ
-
猪突猛進娘カガリ
-
キラ
-
シン
-
その他