勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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何が足りないのでしょうねぇ?


 欠けしもの

アスラン・ザラこと、アレックス・ディノはヘリオポリスⅡの中を走り回っていた

 

何せアスランことアレックスはコロニー内で孤立しており、殆ど他者と関わる事をしていなかった

勿論仕事はプログラミングをしていたが、能力はさておきアレックスの経歴(地球帰り)が社内でも反感を買う事となり『仕事はさせるがそれ以上の事には関わらないし、関わらせない』という立場となってしまっていた

 

幸か不幸か、アスランの容姿については旧プラントにおいて然程注目されていなかった為にまだ比較的マシであった事を彼は知らない

 

 

何せアスランの婚約者であるラクス・クラインはプラントを見捨てて逃げた裏切り者という認識。加えて『プラントの歌姫』としてなまじ人気があった事。更には彼女の父親であるシーゲル・クライン等の『愚かな戦争指揮』により、敗色濃厚となった

そればかりかエザリア・ジュール渾身の一手であった『ユニウスセブン落とし』をあろう事か阻止したのである

 

ラクスに対するヘリオポリスⅡ市民の感情は悪いなどと言うものでは到底言い表せるものではなかった

 

 

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言うまでもなく、仮にユニウスセブン落としが成功したとすれば、ユニウスセブン破壊に従事していた東アジア宇宙艦隊。初動が遅れてしまった為に結果としてユニウス破壊に殆ど貢献できなかった大西洋連邦宇宙艦隊

これに加えてイズモ、クサナギもプラント本国に対する無制限攻撃を行なう公算は非常に高いものであった

 

アーヴィングを始めとした当時のユーラシア連邦大統領、東アジア共和国首相は辞表と共に『プラント本国への攻撃許可』の各種手続きを密かに完了させていた

勿論大統領令や首相の専任事項として如何なる批判があろうとも『地球の敵』としてプラント本国を全て塵とする覚悟も決めていたのである

 

 

「たとえ市民や世間、後世から大量虐殺者として言われたとしても、これは我等がやらねばならない事だ」

そうユニウスセブン落としの報を受けて閣議を開いた東アジア首相は閣僚達を前にして発言している

 

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勿論エザリアがユニウスセブン落としを企図した訳ではなく、寧ろエザリアからプラントの指導権を奪おうとしたクーデター派の最期の悪足掻きであった訳だが

 

 

アレックスが地球帰りと知るまでは彼もその能力と少し陰のある態度から人気もあったのだ。アレックスの直接の上司は地球帰りと知っても彼への評価や態度を変える事はなかった。が、それに不快感を持った会社経営陣によりその上司は解雇。その後釜に座った人物はプラントのコーディネーター至上主義者

当然地球帰りというザフトの、プラントのコーディネーターの恥晒しであるアレックスに対しては不快感を隠そうともせず、寧ろそれまでは社内でも一部の者しか知らなかったアレックスの経歴。これをアレックスに対する嫌味として、社内のオフィス内で発言したのだ

 

 

そしてその嫌味に対してアレックスが明確に反論しなかった事もあり、アレックスが地球帰りの元ザフトとして急速にヘリオポリスⅡ内へと知れ渡る事になった

 

 

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「…くそっ!」

その為アレックスは何処へ行こうとも、マトモに相手をされる事はない。旧ザフト関係者はいなくも無いが、彼等は地球に降りる事なく終戦を迎えたばかりか、それこそ安全なプラント本国からヤキンにすら出た事のない者ばかり

クルーゼやアデス、ゼルマンやサトー達に対して無駄な反感を抱いて燻っていた者

 

常に机上でしか物を考えず、いつまでも世界樹攻防戦やグリマルディの様な圧倒的戦力差(キルスコア)があるものと考えていた者達ばかりなのだから

 

 

真にプラント市民が忌むべき存在は民衆の中に紛れ、詳細はどうあれ命をかけて戦ったアレックスが市民からの怨嗟や憎悪を受ける

この歪さこそが、何より問題視するべきものだったのだが

 

 

不幸な事にアレックスがそれを知る事はなかった

 

 

 

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「ジンばかりか

何とかゲイツは作れないのか?」

 

「流石にパーツが足りませんし、となれば動力(ジェネレーター)自体も変える事になります

…一応、アレ(・・)が漸く手に入ったので来年には量産体制を整えられると」

 

アレックスがコロニー内を駆け回っていた頃、ヘリオポリスⅡのとある秘密区画では並んだジンを横目に作業を行なっている人物と、明らかに不機嫌そうな男が会話をしていた

その内容は物騒なものであり、それこそ外部に万が一にも洩れたとなればその瞬間にヘリオポリスⅡは過去のものとなるだろうが

 

M1アストレイ(中立国の玩具)か」

 

「そうは言いますが、耐久性以外ではジンよりも高性能かジンに拮抗する性能ですよ?」

(面倒な奴だな)

不機嫌そうな男の言葉を訂正する人物であったが、余りの現実を見ない態度に流石に不快感を内心抱いている

 

「…まぁ、そのおもちゃとやらの存在すら掴めてなかった上にその性能を個人の技量でどうにか出来ると嘯く方が多かったと聞きますが、ね?」

 

「…なんだと?」

男は自分が馬鹿にされた事に気付いたらしく怒気を強めるが

 

「怒ったところで何が変わる訳でも無いでしょうに

…また明日データ取りなどをしますので」

と作業していた人物は道具やPCなどを手早く片付け始める

 

 

「では、失礼します」

 

「…ふん」

そう声をかけるとその場を立ち去った

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な奴だ

あれで地球軍に勝てると本気で思っているのだから救い様がないな」

自宅へと戻った人物はブランデーを片手にそう呟く

 

「そもそも、本当に決起して誰もが同調すると本気で考えているのだからどうしようも無いな」

 

ヘリオポリスⅡ自治政府首脳は地球からの搾取に対して戦力が整い次第武装蜂起する事を既に決めていた

極秘に南アメリカ合衆国や大洋州連合、アフリカ共同体にエザリア・ジュールの避難先とも連絡をつけており、武装蜂起に合わせて連携して事にあたると話をつけている

 

が、この人物はそれに対して懐疑的だった

彼は技術者であり、その為ジンと比べてM1アストレイが如何に優れた機体であるのかを理解している

そのM1アストレイですら、地球軍の量産機であるストライクダガーには到底及ばないとも

 

機械は嘘をつかない

 

それが彼の信条であり、その為自治政府首脳や頭の沸いた連中などよりも遥かに地球軍の戦力に対して危機感を持っている

彼とてプラント本国から此方に移住してきた当時は地球軍に対して不満を持ち、叶うならば打倒すべきとも考えてはいた

 

が、実際にヘリオポリスⅡというコロニーを短期間で用意し、コロニー内の各種インフラをも過不足なく整備した旧理事国の恐ろしさに少し経ってから気が付いた

飯の種として、今までは付き合ってきたが流石に今日の事で愛想が尽きたと言える

 

 

 

なお、自治政府首脳があてにしている合衆国らは一貫して

 

「武装蜂起に合わせて動く」

という言葉を崩していない

 

自治政府側はこれを自分達に味方するものと解釈したが

 

 

 

 

勿論そんな訳はない

正確には

「武装蜂起に合わせて(そちらを叩く為に)動く」

という事であった

 

 

合衆国の交渉にあたった人物は

「嘘は言っておらん。彼等が勝手に自分達の都合よく解釈しただけの事

だ。…しかしまぁ、言葉とは怖いものだな」

と笑ったとされる

 

 

なお、彼等の背後にはある組織が動いており、今回の件での協力により各勢力に対して規制緩和などの見返りが用意されているが、勿論自治政府側は一切それを知る事はない

 

 

「新興組織、しかもかつて自分達のした事を忘れたかの様に振る舞うものにかける慈悲はない

精々我々が生き残る為の()となってもらうとしよう」

と大洋州連合のある人物は笑っていた

 

 




という訳で既に始まる前から詰んでいるヘリオポリスⅡでした

展開に悩んだので、靴占いをした結果少し路線変更となるみたいです

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

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  • いらん
  • それより本編でしょう?
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