それは時に人を奮起させ
そしてそれは人を惑わせ、狂わせ、傷付ける
…そう、言葉もまた立派な武器なのだ
知らないという事は時に罪になる
混乱する戦場に若い男の声が響き渡る
『親愛なる蛮勇を愛するザフトの兵士達にご挨拶を申し上げる
ユニウスセブンの悲劇を嘆きながら、民間人のコロニーヘリオポリスを崩壊させた君達の事
…さぞや気分がよかった事と思う』
『君達はこう言うだろう
ヘリオポリスで地球軍の新型が開発されていた。だから我々はそこを攻撃したのだ
…悪いのはヘリオポリスでその様な事をした大西洋連邦とオーブなのだ!』と
「アデス!通信を切れ!!」
「は、はい
やっているのですが
…どうなっている!?」
クルーゼはこの言葉をそのまま聞き続ければ、部隊の士気に多大な影響が及ぶ事を瞬時に理解し、通信切断を命じる
それは艦を預かるアデスも同じであったらしく、急ぎ指示を出そうとするが
「だ、ダメです
この宙域にある全チャンネルでこの言葉が流れています!
それにMS部隊への指示を出す関係上」
オペレーターは悲鳴の様な声を上げる
「っ!
やられた!!」
クルーゼは相手の悪辣さに思わず悪態をつくしかなかったのである
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『それは勿論正しい事だろう
中立国でありながら、どちらかの国に対して明確な肩入れをする
それはその国の中立性を失わせかねないもの。君達ザフトがオーブに対して不満を持つのも致し方ない事だ』
話を聞く際や話をする際に何より大事なのは
興奮した人間というのはどうしても攻撃的になり、短絡的または情動的になってしまう事が多い
ならば、どうするのか?
相手の言い分に対して、肯定すれば良い
そうすれば『自分だけではない』というある種の共感が生まれ、たとえその後否定されたとしてもやり方如何では話を聞く姿勢になってくれる事がままあるもの
故にこそ、先ずこの人物は
『ユニウスセブンの悲劇を知る聡明なプラント、ザフトの者ならば想像が付くのではないだろうか?
コロニーとは、戦闘行為を許せる程に強いものでない事に』
『だからこそ、問いたい
何故市民が避難するのを待てなかった?
ヘリオポリスは軍用のコロニーではない。MSならばいざ知らず、戦闘艦ともなれば出入りできる場所は宇宙港のみ
待ち伏せするのに不足するだろうか?』
「落ち着け!敵の妄言に過ぎないのだ」
ラクスの捜索の為に派遣されたローラシア級ではクルー達の間で動揺が見られ始めていた。艦長を務める者は必死に声を上げて混乱を収めようとするが、それこそがこの言葉の信憑性を高めている事に一役かっている事にまで理解が及んでいなかった事こそが不幸だろう
…というのも、彼等の多くはラクスの歌が好きな若者であり、ユニウスセブンの悲劇について知っているものの、身内がそこにいた訳でもない
言い方を変えるならば、
…そして彼等プラントの人間の多くは最先端の技術や理論には明るくとも、
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『プラントの上層部の者達はこう言っていると聞く
「これはナチュラルと我等コーディネーターの未来を賭けた戦いだ」と』
『おいおい、何だこりゃ?』
「耳を貸すな、ディアッカ!奴等はこうやって時間を稼がねばならない程の状況にある
今奴等は追い詰められているんだ!」
『し、しかしクルーゼ隊長やゼルマン艦長は』
「なら貴様は戻っていろ!」
渋るニコルにイザークは声を荒げた
『さて、プラントの上層部の者達がしきりに言葉にする『血のバレンタイン』その犠牲者は何人だったか?
…そう24万3721人
余りにも非道で悲惨な事だ
ではその報復として行なわれたオペレーション・ウロボロス
それによって生じた『エイプリル・フール・クライシス』
我々ナチュラルよりも優秀で聡明なプラントのコーディネーター達だ。勿論それによる犠牲者数を把握しておられる事と思う
そんな事は不可能だがね』
「な、に」
イザークすら思わず手を止めてしまう
それは一体どういう事か?
コーディネーターの中でも優秀な部分に入るイザークの頭脳をもってしてもその意味が理解出来なかった
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「くっ、これでは」
「イザーク達は何をしている!
早く帰艦させろ!!」
ヴェサリウスではもはや自分の手で負えなくなった状況に歯噛みするクルーゼと必至にクルーの崩れそうな士気を維持しながら未だに帰艦しないイザーク達に怒りを露わにするアデス
ラクス・クラインを届けるはずのアスランですら未だ戻っていないのだ
この状況の混迷の程が少しはお分かりいただけるだろう
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『今は既に『血のバレンタイン』から一年経過しているのは君達の方がよく理解しているだろう
…つまりそれは『エイプリル・フール・クライシス』が起こってからあと2ヶ月程で一年が経つ
という事になるのも理解してもらえるだろう
しかし未だにその犠牲者は増え続けているのだ』
線引きが難しい事もあるが、何よりも被害の範囲が広範過ぎる為に地域によっては被害の具合が判明していない場所もあるのだ
しかもそれをきっかけとしたプラントとの全面的な武力衝突に発展している
となれば、どうしてもその辺の調査を後回しにせざるを得ないところもあるのです
『そしてこれも君達の指導者である最高評議会の面々が期待されている様だから是非答えてもらいたい
地球に落とした大量のNジャマー。それに伴う電力危機や経済などの混乱
さてどうして君達が同胞とする地球にいるコーディネーターが君達に好意を持つと考えるのだろうね?』
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「おうおう、全く伍長の悪辣さは頼りになるぜ!」
『ムゥさん!』
「坊主か!よし、アークエンジェルに戻るぞ!」
『はいっ!』
ストライクの撤退支援に向かったフラガだったが絶え間なく戦場で流れてくるカズイの言葉に心強さと共に
(本当に情けねぇ。なんでこんな子供達にこんな貧乏籤を引かせなきゃならないんだ)
情けなさを改めて感じ
キラに分からないよう、唇を力強く噛み締めた
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『最後になるが老婆心ながらに1つ忠告をしておきたい
…君達プラントの人口推移を見てみると良い。どの様な光景が見れるのか興味深くは思うが』
「…足付き離脱します」
「最後の最後まで完全に手の上で転がされた、か」
「イージス収容しました」
アークエンジェルは砲弾の一つとて放っていない
事実としてザフトの兵士達は誰一人負傷してはいないだろう
「…隊長」
「どうにもならんかもしれんな」
ヴェサリウスの艦橋にも重苦しい空気が漂っている
ザフトでも屈指の指揮統制の高さを誇るクルーゼ隊の旗艦ですらこうなのだ
僚艦であるガモフの状況も酷いと艦長であるゼルマンから報告が届いてある
そして
「友軍艦離脱します!」
何も言わずに、である
仮にもラウ・ル・クルーゼは白服というザフトにおいてもごく少数しかいない立場の人間だ
本来上位者である彼に対してひと言あって然るべきなのだが、先の通信により『ヘリオポリスを襲撃した』クルーゼに対する反発や不信感は恐ろしく高まる事となったのだろう
下手をすれば共同作戦すら行なえない可能性すらある
そう、あれは時間稼ぎであると同時にプラント最高評議会とザフト兵の分断
更にザフト内でのクルーゼ隊の孤立すら狙ったものであったのだ
古来戦闘前に行なわれた
この場合の最適解、とまでは言わないがやってはならないのが戦闘を始めることやそれに対して黙ったままにする事だろう
どちらにせよ『相手の主張を認めた』と敵味方から判断されかねないのだから
故にクルーゼ達が取るべきは相手に対して反論する事だった
しかし、そもそも舌戦などというものは再構成戦争よりも遥かに昔行なわれていたもの
古い、などというレベルのものではない
故に知らなくて当然
だが、プラントのコーディネーターは優秀なのだ
だから
「不便なもんだ
足らずを認める事も出来ず、出来ない事すら出来るで嘯かねばならないってのはさ」
カズイはこの作戦を発案した時、最初にそう
「ハイテクにハイテクで勝負してもなぁ
ハイテクってのは意外とローテクに弱いものだ」
特にシンという優秀なコーディネーター相手に護身の訓練を重ねてきたカズイだからこそ、思いつくものだった
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アークエンジェルは
クルーゼ達はどこへ向かうのか?
なんか書いててカズイの方が悪役に見えてくるのは気のせいだろうか?
まぁ、いいか
しかし何故かこういう話の方が筆が進む進む
やはり書きやすい
本作のヒロインは?
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大天使ナタル
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妹系少女マユ
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フレイ
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猪突猛進娘カガリ
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キラ
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シン
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その他