驕れる者久しからず
盛者必衰
そんなお話
『…やはり彼等は自重しなかった様だな』
「まぁさして期待もしていなかったと思いますが?」
「そうですな。もし彼等に此処で踏みとどまれるだけの理性や倫理があるならば、リーアム氏を追いやる事はなかったでしょう」
『…戦争を生み出す要因は排除せねばならん
国家や組織に従う事を良しとせず、自分達の意思のみで引き金を引ける者達の存在は許容してはならん
…直ぐに各国首脳にホットラインを入れ、各軍の出撃を命じるとしよう』
大西洋連邦大統領ジョセフ・コープランドは重々しく頷くと速やかに動き始める
世界はまた大きく動き出そうとしていた
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「では一族とやらの構成員達の拠点を一斉に潰します
既に各国政府からの了承は得ております」
『こちらとしても異論はない
…しかし彼等は馬鹿なのかね?態々隠れる様に拠点を作るなど』
『…やれやれだ。王国の件もある
忙しいのでね。早々に手早く片付けたいものだ』
コープランドは速やかにユーラシア、東アジアの首脳と電話会談を執り行なっていた
我等は決して認めない
命というかけがえの無い温もりも知らぬ者がそれを弄ぶ事を
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「ーーーでは万事抜かりなく」
『漸く連中に引導が渡せますなぁ
はっきり言えば、いつ迄待てば良いのかと内心不満ではありましたが』
『先の戦争では中途半端な形で終わるしかありませんでしたからな。我等は平和の為の重石であり、平時においては置き物程度の価値しか無くて良いのですが』
『世界を一つにしようとする理由は恒久的な平和を作り出す為のもの
…そう信じたい。…いえ、そう信じさせる事が必要なのでしょう』
『連合軍としても、其方が対応出来ない部分を担当させて貰うとしましょう。如何に不満があったとしても、無為に命を失うべきでは無い』
太平洋連邦軍、ユーラシア連邦軍、東アジア共和国軍にアフリカ統一機構軍。そして地球連合軍の各軍の総参謀長が通信で最後のやり取りを行なう
我々は剣の重さを知らぬ者が
他者の振るう剣でしか
その重みも痛みも顧みぬ者達が語る未来など必要としない
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『世界は進み続ける』
『何かを選び続けねばならぬのが人生』
『だがそれは一人一人が悩み、そして選ぶべきもの』
『他者が人の人生を定めるならば』
『その対価を何れ払わねばならぬ』
『影に潜みし者達よ。その覚悟あっての暗躍なればその定めもまた甘受するのだ』
ロゴスメンバー達はそう自分達の
物の価値を知らぬ者よ
命の価値を忘れた者よ
ならば、その価値を自らの命を持って知るがいい
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「…何だ、あれは?」
「輸送機?こんな所にか?」
とある屋敷の警備にあたっていた者達は空の向こうから近づいてくる輸送機に気が付いた
此処は社会的な身分のある者達が集まっている屋敷
近くに軍の拠点など無いとは言え、輸送機が自分達を目標としているなどとは彼等は思うはずも無い
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「各員装備の最終点検!」
「此処に戦争を引き起こそうとしている奴等がいるんだ」
「…沢山の人が死んだのに、まだ戦争をしたいのか」
「ならそいつらに教えてやる
撃たれた痛みを」
輸送機の内部では武装した者達が其々の思いを口にしながら、
彼等は軍属でもなければ、同じ組織に属している者達ですらない
ただ一つの共通の思いの元に集った同志とでも言える者達だった
二度とあんな戦争が起きない様に
そんな切なる思いだけが彼等、彼女達を繋ぐものだった
ある者はエイプリルフールクライシスで親族を失い、軍に志願するも入隊出来なかった
ある者はあの戦争で恋人を亡くした
ある者は戦争に巻き込まれて子供を喪った
ある者はコーディネーターでありながら、地球軍に属して戦いそして戦場の中で散った友人の為に
誰もが願った
もう
と
プラントと戦った。皆命をかけて
なのに齎されたものは、玉虫色の決着
賠償もなく、勝者も敗者も定かではない
何の為に多くの者が命を賭したのか?
戦争を肯定する者というのは往々にして、自分達が傷付かない。或いは利益を享受出来る。そして、現実に絶望した者であろう
だが、戦争によって解決された問題というのは非常に少ない
何故か?皆殺しに出来ない以上、必ず敗戦国側にも不満は残るのだから
それ故に、戦勝国は敗戦国の指導者達を徹底的に貶める
「お前達の指導者が悪かったから戦争が起きた」
そう刷り込む事で不満を外ではなく内側、そして最早どうしようもない過去に向かわせるのだ
少なくとも、戦勝国側とて敗戦国に対して無関心では居られない
だが、一族は戦争を起こして悲劇を生み出す事で幸福を実感させようとしている
戦争はあくまでも手段でしかないのだ
しかし、彼等は常に安全な所から眺めているだけ
彼等を集めた者達はこの襲撃により自分達が命を落とす事もある
そう言っていた
だが、誰一人として輸送機に乗る事を躊躇する者はいなかった
『目標地点に到達!
各員降下せよ!』
そして、彼等彼女達は倒すべき敵を討ち倒すべくその身を空へと踊らせた
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「漸く動くそうですね」
「…しかし、大丈夫なのでしょうか?
大半はジン。しかも数もそこまで揃えられていないとの事ですが」
「ジャンク屋も予定より集まらなかったと」
「傭兵はどうなのだ?」
「サーペントテールが動かなかった以上、他の傭兵も動けますまい」
この場にいる者達の表情は暗い
何せ新たな戦乱を引き起こす引き金とするには余りにも小さく、頼りない規模になると予想されていたのだから
ジャンク屋も順調にジンをヘリオポリスⅡへと供給していたが、ヘリオポリスⅡへと向かう途中のジャンク屋所有の輸送艦がアフリカ統一機構宇宙軍に捕捉されてしまった
統一機構宇宙軍は創設されて間もない軍。当然実績もなく、他の宇宙軍に比べると練度も低い。だが、先の戦争における一貫した親理事国の姿勢が高く評価されて軍縮の流れの中で唯一戦力の増強を認められている
故にこそ、彼等は何が何でも自分達の立場を確固たるものとしなくてはならぬと哨戒任務も厳に行なっていた
結果、不審船を捕捉。速やかに臨検を行ない、それがジャンク屋組合所属のものであり、しかも搭載されているジンを発見
直ちに司令部に連絡
その結果、連合軍司令部と連合事務総長からジャンク屋組合に対しての抗議と問い合わせが続けて飛び込む事となる
組合はこれに対して、ジャンク屋個人の判断としたのだが臨時に召集された連合総会において、ジャンク屋組合に対する組合が保有しているマスドライバーの使用履歴の開示請求を採択
これに応じない場合、或いはその内容に虚偽があった場合ジャンク屋組合の解体と各種管理の剥奪を行なうとの通告も合わせて行なわれた
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結果、ジャンク屋側はヘリオポリスⅡへの輸送など行なう余裕も無くなることとなり、必死で生き残りの道を模索する事となる
ジャンク屋の英雄、ロウ・ギュールや前代表リーアム・ガーフィールドに対して助力を求めたが、両者はそれを即座に拒否
ジャンク屋の権利を守る為にジャンク屋達の戦力をメガフロートに集結させる事とし、その戦力を以て連合側に反意を求めようとする
まぁ、言うまでもなくそれこそが連合各国政府達の望んだものであり、速やかに『ジャンク屋組合本拠地ギガフロート』に対する攻撃を連合本会議に提出
即日全会一致で可決されたのだが
ヘリオポリスⅡに対してのMS供給はジャンク屋達の保有するMSの減少に繋がっており、加えてジャンク屋組合の保有するMSは申告されている
その為、ヘリオポリスⅡに送られたMS数とギガフロート防衛の為に集められたMS数の合計が一致しない事を各国政府は各メディアに対して伝えた
『条約違反』
と
ジャンク屋に対する過剰とも言える連合や各国政府の動きに対して批判や否定的な論陣を展開していた各メディア
しかし、戦時中のジャンク屋によるMSの譲渡やそれによって引き起こされた事件や被害を政府が公表すると、逆に各メディアやしたり顔でジャンク屋組合などを擁護していた
更に一部のジャンク屋がザフトの超兵器ジェネシスを再生利用としていた事も公開。勿論ジェネシスがどの様な目的で改造され、それによって引き起こされかねなかった被害も公開した
これによりジャンク屋やジャンク屋組合に対する世間の評価は一転。ジャンク屋組合に対する制裁も已む無しとの世論を形成する事となったのである
これに対して焦ったのはジャンク屋やジャンク屋組合だけではなかった
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「どうにかならぬのか!?」
「…申し訳ありません。しかし、既に各国間での調整も終わっている様でして」
現在大規模な王都付近の開発と、密かに軍備を整えるべく動いているファウンデーション王国
ジャンク屋に対する制裁はファウンデーションにとっても決して他人事ではなかった
何せ急激な開発に対して近隣地域から疑惑の目を向けられているのだから
勿論国民の為と主張しているが、ファウンデーション王国の内情を少なからず知る者達からすれば些か以上に急進的と思える動きに見えてしまう。しかも女王アウラは
先帝時代からの若返りと旧態依然とした国家からの脱却を掲げているファウンデーションであるが、国家の中枢を担う者達は何れも若年層と言っても過言ではない者達ばかり
先帝時代に国政に携わっていた者達の姿はそこにはなく、如何に先帝の養子であるアウラ女王であろうとも、急激な政体変化に対して国内から反発が聞こえてこないのは不自然極まりなかった
その為、ファウンデーション近隣国家はファウンデーションの行く先の
実力主義社会を掲げているファウンデーションだったが、その姿はプラントに通じるものがあり、しかも外交関係構築に対しては消極的ともいえる姿勢を取っていた
…と言うよりも、外交を任せる人物として適当な人物が用意出来なかったという深刻な理由があったのだが
結果、ファウンデーションが発展するのに必要な物資や資源が集まりにくい状況となってしまっていた
戦後の混乱も最低限に抑えた事により、ファウンデーションが技術や物資などを極秘に集める機会が尽く潰されてしまっていたとも言えるだろう
そんな中でジャンク屋の存在はありがたいものであった。…あとアフリカ共同体からの支援もだが
しかし、共同体としてもあまり公にするにはリスクが高いとの事から(元々ファウンデーションに対する支援は最小限に止めるべきとの政府内の意見も強かった為)、必然的にジャンク屋経由の取り引きは大きな割合を占める事となっていた
それが今回の件で無くなろうとしているのだ。アウラとしても何とかしなければならないと慌てるのも無理はない
オルフェとしても、何とか出来るならばしたい所だ。が、国を動かしている者達は基本的に絶対的な能力主義であり、アウラを崇拝している者達ばかり
この様な者達が外交官を務め、他国と良好な関係を築けるか?
と聞かれると流石の彼も即答できない
自分達はコーディネーターよりも優れたもの
その意識が相手に伝わればマトモな交渉など望めまい。国内であれば立場を使ってどうにか出来るだろうが
「…上手くいかぬの」
「申し訳ありません」
敬愛する女王の言葉にオルフェは頭を下げる事しか出来なかった
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「…上手くいかぬの」
思わず口から愚痴が出た
「申し訳ありません」
オルフェが頭を下げたが、流石の妾もこの状況がどれだけオルフェ達が努力を重ねた結果であるのか理解はしてあるつもりだ
何せこのファウンデーション王国は他国と比べて何もかもが遅れておった。養父や養父に仕えていた者達は決して有能とは言えぬもの
それ等を一新してこの国を良くしようと思っているが、妾が思う以上に連合により作り上げられた体制は強固なものだった
隙はある様に見えていた。先帝の養子となった妾からすれば
何故この程度も出来ぬのか!?
と何度も思ったものだ
が、実際に女王となり国を差配する様な立場となって初めて理解する。如何に個々人の能力が高かろうとも、出来る事には限界がある、と言う事を
それでも女王に即位して暫くの間は何とかなると思ったものだ
能力のない者達を徹底的に除き、能力のある者達をこの国へと招き入れた。それで上手くいくと
何も問題はない
そう思っておったのじゃ
「残念だが、断言しよう
君達の作ろうとしている理想国家は作れない。…もし仮に作れたとしても早々に瓦解するだろう」
オーブで声をかけたデュランダルめはそう言っていたそうだ
プラントから逃げ出した。理想から目を背けた者の戯言とあの時は一蹴したが、今となっては不本意ながら頷かねばならない部分があると認めねばなるまい
オルフェの伴侶たるラクス・クラインが見つかればまだやりようはあるのかも知れぬが、何処へ行ったのか全く足取りが掴めない
調べたところ、オーブ攻撃の直前に大西洋連邦に渡った事までは掴めておるがそこから先については全く分からぬ
同じ
が、流石に数が多すぎる上にあまり動き回れば此方の動きを察知されてしまう
ヘリオポリスⅡに居るとは思えぬ
あそこは旧プラント本国市民の中でも危機意識の低い者達が集められた場所
仮に居たとすれば、まず間違いなく生きてはおらぬじゃろう
それ以外となると候補が多過ぎる上に範囲が広過ぎてどうにもならぬ
ラクスの信奉者がいると聞くが、それ等とは引き離されておるだろうし
これに加えて頭が痛くなるのが、MS開発の遅れ
確かにザフトのジンは良い兵器なのじゃろうが、ザフト最初期に作られたMSであるが故に粗もまた多い
特に防御面に関しての軽視が酷く、シールドすら標準装備されておらぬとの事
火力面もやはり地球側のそれに比べると脆弱であり、言ってしまえば格下相手には強いが、対MS戦となると厳しくなる
現在これを基本設計として発展させているそうじゃが、果たしてどの程度の性能になるのやら不安しかない
勿論妾はMSに対する知識や知見など殆ど持ってはおらぬが、技術とは積み重ねである事くらいは理解してある
仮に何らかの方法で飛躍的に技術力を向上させたとしても、必ず何処かに歪みが出てくる事も
シュラは未だに復調せぬ
聞けば
「…何がコーディネーターを超えると言うのだ
ナチュラルにも勝てぬ自分が一体何故アウラ様のお力になれると」
と完全に心が折れておったとの事
イングリットにケアを任せてあるが、難しいやも知れぬ
当のイングリットとて、あまり調子が良さそうにも見えぬからの
…勝てぬやも知れぬ
妾の頭の片隅でその様な言葉が常にある
我がファウンデーションにとって最優先なのはユーラシア連邦軍との力関係を破壊する事だ
さすれば我等に付く者も現れるじゃろう
が、問題は今のユーラシア連邦軍を我らが打ち倒せるか?という話がとなろう
元よりユーラシア連邦地上軍の主力は航空機。MSはあくまでも補助戦力に過ぎぬ
対空陣地などを新設するとなると、各国からの厳しい視線が向く事となるやも知れん
アコードというコーディネーターをも上回る
アウラはオルフェの報告を聞きながら、そんな事を考えていた
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血が流れていた
「…が」
それは暗がりの中に幾つかの影が倒れ伏していた
「…あ、助け」
それらは『幸せを定義する為に誰かを不幸にしようとした』者達
誰もが、手を伸ばす
だが、もうそこには誰も居ない
彼等を襲撃した者達は、室内に向けて機関銃などを一斉掃射し、室内にいた者達の命を奪った
理不尽に
残酷に
そして、辛うじて息のある者達がいる事などお構いなくその場を足早に立ち去った
「…お前達の言う不幸と幸福
思う存分最後の時まで味わえ」
襲撃者の言葉を残して
室内にいた者はとりわけ自分を鍛えていた訳でも、何かしらの防護服を纏っていた訳ではない
自分達が殺されるなど、ほんの少し前まで想像すらしていなかった
彼等が今まで踏み躙ってきた多くの者達と同じ様に
「……いやだ、私はまだ死」
必死に虚空に手を伸ばした其の瞬間
彼等は爆炎の中へと消えていった
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『こちらゼーヴェーワンよりコロラドコントロールへ
目標地点の完全破壊を確認した。基地へと帰投する。損害なし』
『コロラドコントロールよりゼーヴェーワン
了解した。速やかに撤収せよ』
『了解』
空を駆ける巨大な影達はその翼を翻すと、何処へと去っていった
そして、それはありふれたものとして後世の記録に残るのだろう
火種を撒く者達は消えた
世界は回る
歯車に挟まった異物を巻き込みながら
という訳で一族さん達はマシンガンで蜂の巣にされてから、爆撃でミンチにされました
命の重みも
血の温度も知らない彼等
逃げられない様にする為に念入りに処分しないとね?
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
-
いる
-
いらん
-
それより本編でしょう?
-
ifstory補完しろよ