斃れた者から何かを受け取り、また歩き出す
そうやって歴史は紡がれてゆくのだろうか?
ヘリオポリスⅡにて武装蜂起が発生していた頃、ファウンデーション王国は国軍に対して臨戦体制を指示
加えて、自国に不当な介入を行なった地球連合を声明で非難した
これは宰相オルフェなりに現在の地球圏の体制に対して不満を持っているだろう国家の動きを誘発し、ファウンデーションに対する軍事的圧力を軽減するのが目的だ
もっとも、オルフェ自身これがどの程度の効果が見込めるのか予想すら出来ていなかったが
何せファウンデーション王国の外交というものは辛うじてアフリカ共同体とのMSの取引に使われる程度だったのだから
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臨戦体制に入ったシュラを始めとしたアコード達
彼等の搭乗するのはジン(ファウンデーション王国仕様)とでも言うべき代物であり、基本スペックにおいては機動力を高める事で後発機であるシグーに比するものとなっていた
が、その分機体重量は軽減せざるを得ず全機にシールドを装備する事により防御面の不足を補う仕様である
武装面においては強化されており、特に近接武器である重斬刀ではなくそれよりも強度の高くかつ間合いの長いロングソードやランスを採用。中・遠距離武器については既存のマシンガンを改良し、貫通力を高めた物を運用している
正史における機体と比べると、何とも心許ないものではあるがMSの開発が遅々として進まなかった事もあり、国防長官であるシュラも
「…不足は否めないが、仕方ない」
と苦い表情をしながら生産を認める他なかった訳である
元々ファウンデーション王国としては、あと数年軍備を整えてからユーラシア連邦に対してアクションを起こすつもりだった
そして国内にユーラシア連邦軍を誘引し、そこで主力部隊をもって撃滅。それにより王国周辺国のユーラシア連邦に対する支配を挫く事としていた
しかし、NジャマーがあるからとMSによる近接戦闘などを想定している王国側の都合に相手が付き合う理由など欠片もない
…王国は世界すら動かし得る主要3カ国の恐ろしさを身をもって理解する事となる
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『列車砲、各ブロック準備が完了した!』
『味方戦爆連合王国到達まで約2時間!』
『『ベルリン』より通信!
準備は完了セリ!』
ユーラシア連邦軍総司令部では既に戦闘準備が整えられて、時を待っていた
今回ユーラシア連邦軍は空の悪魔ことcrazyや列車砲を投入する事としている
とは言え、先のギガフロート攻撃にもcrazyは参加しており、数の上ではユーラシア連邦軍の全力には程遠いが
現在は既に全機解体されている砲撃機や急降下爆撃機
彼等が挙げた戦果が今まさにファウンデーション王国に牙を剥く
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少し時間は遡る
『世界の皆さん
私は大西洋連邦大統領、ジョセフ・コープランドです
今回、残念な報告を皆さんにせねばなりません
…先の武力衝突により新たに出来た兵器
これは我が大西洋連邦や友邦であるユーラシア連邦、東アジア共和国やアフリカ統一機構などにおいて導入されたものであります
…しかしながら、この兵器を作り上げたのはプラントなのです
先の武力衝突により世界各地で戦闘が起き、夥しい数の尊い人命が失われました
世界各地での戦闘において、MSはその猛威を振るい結果的には世界中にMSが拡散してしまいました
これに対し、我々は『MS拡散防止に関わる条約』を制定しMSの所在地を明らかとし、保有する国家や組織による厳重な管理を求める事と致しました
皆さんの中には見かけた方も多いのではないでしょうか?
大規模な建設現場や大規模な農地などで
かつて
…しかし!
残念な事に一部の組織や国家は自国の益の為にMSを保有し!それによる武力行使を目論んでいるのです
私は大西洋連邦大統領として此処に
MSの不法所有をし、地球連合の勧告を無視するファウンデーション王国に対して宣戦を布告するものであります
平和な未来の為に!』
先の武力衝突においてはけっしてなされるのなかった物
宣戦布告
それはファウンデーション王国を敵として完膚なきまで叩き潰すという意思だった
僅か1時間の間に主要3カ国のトップがそれぞれの言葉でファウンデーション王国に対する宣戦布告を発し、此処にファウンデーション王国との間に戦端が開かれる事となった
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その布告がなされて僅か10分後
『全列車砲、目標に向けて射撃始め!』
スカンジナビアを威圧し続けていた巨砲群が遂にその目を覚ます事となる
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『こ、此方対空陣地!
げ、現在猛烈な砲撃を受けています!
し、至急援護を!!
…う、うわああっっ!!』
バンッ!!
「卑怯な真似を!!」
シュラは憤る
ファウンデーション王国内にある対空陣地
これらは王宮を守る様にして配置されている。その全てが攻撃を受けているのだ
しかも明らかに遠距離から
彼は理解していなかった
能力においてコーディネーターや彼等アコードに劣るからこそ、この様な戦術を取るのではない
この程度の戦いで兵士達の命をかける必要などない
と判断されたがゆえの戦術だった事を
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プラントとの武力衝突により、地球において多くの人命が喪われた
それ故に政府や軍としては『平和への脅威』を除きたいと考えていたが、官僚達から異論が噴出
…勘違いしないでもらいたいが、彼等官僚としても禍根や不穏分子を残す事が良い事とは微塵も思っていない
ただ、人的被害を最小限にとどめる為の戦略を求めたのだ
特にユーラシア連邦軍は宇宙艦隊が壊滅するという未曾有の被害を受けている(とは言え、当時非情ではあったがそれが最善であったと認識されておりガルシア達の名誉は守られたが)
既に武力衝突からそれなりに経っているにも関わらず、ユーラシア連邦軍宇宙艦隊の再建は遅々として進んでいない(一応、新造戦艦建造により大西洋連邦や東アジアからある程度の宇宙艦艇の供与はあったものの、まだ練成途中であり将来的に外宇宙や内宇宙へ進出する際支障が出るとされている)
その為、本来ならば戦費の増大を良しとしない筈の財務官僚ですらも今回の様なある意味では非効率極まる作戦を認めている程
「…やるなら徹底的にやれ!
中途半端が1番よくないだろうが!!」
そうユーラシア連邦財務大臣は軍や政府に発言している
軍としてもこのファウンデーション王国との戦争はある意味旧世紀の兵器群との別れの時と考えており、ある空軍士官などは
「……もうこいつで大地を耕す(意味深)事は出来なくなるのか
…………楽しかったなぁ。俺達を劣等種と見下した連中を大地に還すのは」
と口にしている程
(味方の人的被害を)徹底的に抑制する戦い方
それは超長射程の兵器によるアウトレンジ攻撃であり、邪魔なものを押し潰すやり方であった
奇しくもそれはMS戦によって事態を打開せんとするファウンデーションの戦略と真逆なもの
戦争が齎す被害を
犠牲を
嘆きを知らぬシュラ達には到底考えつかない方法なのだ
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「何処から!?
…っく」
イングリットは攻撃を受けている対空陣地へと急行するが、当然敵の姿などあろうはずもなかった
しかし、敵からの砲撃が止む事はなく続いている
既に王宮を守る対空陣地はほぼ壊滅
仮にザフト地上軍の関係者がこの場にいたのならば、彼等は即座に撤退を選択しただろう
ユーラシア連邦軍との戦闘において、制空権を握られるという事は
「…何、あれは?」
彼女のMSのセンサーが異常とも言えるものを感知し、彼女もまた異常を視認するだろう
彼女の視線の先には
空を埋め尽くさんばかりの航空機の編隊があったのだから
命を失う事と同義なのだ
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無慈悲な鉄の雨を降らせる事に定評のあるユーラシア連邦軍地上部隊最強戦力crazy
だが、その殆どは民間にて旅客機などとなっており、再度戦闘に駆り出されるのかすら定かではなかった
その為、crazyの代名詞とも言える地上掃射用のユニットはそこまで多くなかった
何せ軍の編成表には無いものなのだから
それでもある程度の数は用意していたのだが、それらはギガフロートを耕す為に運用されている
なのでcrazyは大西洋連邦軍のライバルともいえる凶鳥を参考に
高高度からの絨毯爆撃を行なう事とした
曲がりなりにも、ファウンデーション王国にはMSがある事は判明しているのだ
万が一にも被害を受ける
そしてファウンデーション王国側にとって最悪な事に
王宮周辺のみが発展している
絨毯爆撃を行なう要件として、これ以上ない状況であると言えた
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「…あ
かはっ!」
ファウンデーション王国女王アウラは瓦礫の中で目を覚ます
彼女は自身の
そして
…だが、何だこれは?
養父である先帝の跡を継ぎ、発展させ
いつかこの手に世界すら掴もうとしていたというのに
彼女の視界に映るのは瓦礫の山と立ち昇る煙に至る所で発生している炎
彼女自身も決して軽くない傷を負っているらしく、先程から頭痛や眩暈がその存在を声高に主張している
世界すら見下ろしていた筈の自分が、今となっては地に這いつくばり空を見上げている
(何を、間違えたのか?)
世界は優秀な者達の手によって動かされねばならない
そう彼女は信じていた
ユーレンも
ギルバートも
あの女も
その可能性が手にありながら、それを活かせなかった
自分は違う
そう思っていたのに
「アウラ様!」
誰かの声が聞こえた気がしたが、彼女はそのまま闇の中へ意識を落とす
『傲慢だな、アウラ』
そう誰かの声が聞こえた気がした
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「…う」
イングリットは痛みに顔を顰めながら、目を覚ました
「…やっと起きたのね、イングリット」
彼女のそばには友人であるリリーがいた
「リリー!
状況は?」
彼女はMSに乗っていた筈なのに、何故か外にいた
「一応緊急脱出装置が起動したみたいね
…だから言ったでしょう?傲慢で他者を顧みない貴女達に世界は優しくないって」
「っ!
リリー!!」
彼女はリリーの腹部からおびただしい出血がある事にようやく気がつくと彼女に駆け寄る
「気にしなくて良いわ
…やっと、私もアイツに会えるんだもの」
しかし、明らかに致命傷とも思える傷を負っている筈の友人は何処か晴れやかな顔をしていた
「…ねぇ、イングリット
アンタのお仲間達は私達やナチュラルを見下していたけどね。……別に変わらないのよ、私達コーディネーターやアンタ達アコードとやらと」
「…リリー」
そしてリリーは彼女に語る
自分はコーディネーターとして生を受けたが、何ひとつ守ることも出来なかった事
近しい者、愛する者を失い、その復讐の対象すら失い此処へきた事を
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イングリットは愕然とした
いつも少し不機嫌そうにしていた友人の抱えていたものに
最早座る事すら億劫なのか、地に横たわり途中何度も咳き込み、吐血するした友人を助けようとしたが
「良いの、イングリット
…もうこれで終わって良いのよ私は」
そう穏やかな顔でリリーは言うのだ
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イングリット・トラドールにとってシェスター・リリーとは初めて出来た友人
…だとイングリットは思っている
コーディネーターの中でも勤勉で常に上を目指そうとしていた彼女の姿はある意味ではイングリットの理想の姿となっていた
そして何よりも、自分が間違っているとしても、彼女はそれを正してくれる
「…死なないで。リリー」
「…ごめん
でも、もう私は疲れたのよ
アイツの居ない世界。私だけがそこに居る
…それに何かを憎み続けるのも、ね?」
イングリットの涙まじりの懇願をリリーは拒否する
「…最後に見る空が青空じゃないのだけが心残り、かな?」
リリーは目を細めるとそう呟き
「…イングリット。あなたはまだ生きるのよ
女王やシュラ達だけが世界じゃない。あなたはまだ世界の事を知らなさ過ぎるんだから」
「」
イングリットは涙を流しながら頭を左右に振るだろう。まるで幼子のように
だが、それをリリーがもう見る事は叶わない
『逃げんなよ、リリー!
お前の勝ち逃げなんて俺は絶対認めない!』
『帰ってきたら、一緒になろう。リリー』
あの時とは違う
私がアンタを追いかける立場になったわね
…こんな私でも貴方は私を愛してくれる?
そう最期に思い、シェスター・リリーはその生涯を終えたのである
本作における1番書きたかった所がようやく書けたので満足
なお、当初の予定ではリリーはヘリオポリスⅡに出す予定だったのが、あまりにも原作イングリットが報われなかったのでこうなった模様
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
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いる
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いらん
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それより本編でしょう?
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ifstory補完しろよ