それこそが戦争なのだ
という訳で初のプラントサイドのお話
「…どうにもならんな」
「…はい」
プラント本国に帰還したクルーゼ隊であったが、
懐疑、憎悪、嫉妬などと言った視線であった
ラクス返還の為、足つきとの戦闘を中断した事に対する
『ナチュラル如きと交渉した』事に対する怒り
そもそも、ラクスが危険な場所であるユニウスセブンへと殆ど護衛をつけなかった事に対する『パトリック派に属するクルーゼ』への疑念
足つきを落とせる決定的な好機をむざむざと失ったばかりか、マトモに戦闘一つする事なく撤退したクルーゼの能力への疑問
ラクスを救助したという名誉を持ったクルーゼへの理不尽な妬み
それらが帰還したクルーゼ達に浴びせられたのだ
流石のクルーゼやアデスも嫌になるというものだろう
更に勝手な行動をした友軍に迎合したとして、イザークとディアッカは現在のデュエルとバスターへの搭乗を禁じている
これに対し、イザークの母親エザリア・ジュールは大層不快な表情を隠そうともしなかった
「クルーゼ隊長
イザーク・ジュールの実力は『赤服に相応しい』ものの筈
何故そんな者がその様な処分を受けねばならないのですか?」
とも言ってきた
それに対し、ディアッカの父ダッド・エルスマンは
「クルーゼ隊での話は聞いているよ
クルーゼ隊長がその様な判断をしたという事はそれなりの理由あっての事だと思う
…なら、私はそれに対して何かを言うつもりはない」
と言っている
(困ったものだ
戦争をしていると言う自覚がどうにも足らんと見える)
クルーゼは内心余りにも頼りない
「…アデス艦長、クルーゼ隊長
レイ・ユウキ隊長が来られています」
そこに特務隊
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「まず、ラクス・クラインの
彼女を失うのは余りにも好ましくないものだ」
クルーゼはユウキの言葉に内心辟易する
(
まぁ、自分達こそ新たな人類であり、新たな可能性を拓くものと事あるごとに発信する彼等にとって明らかに不都合な事なのは理解出来る
…したいなどとは欠片程にも思っていないが
体裁を重んじるがあまり、本質を見失う
彼等が見下しているナチュラルと何処が違うと言うのか?
あまりの醜悪とすらいえる彼等のやり方に
(…ふ、もしも私の寿命がどうにかなるのならばレイとギルバートと共に地球なりオーブなりにでも移住したいとすら思えるな)
何せクルーゼが予定している計画が既に崩壊の兆しを見せている
確かに東アジアのカオシュンは攻略したし、つい先日行なわれた『第二次ビクトリア攻略戦』もザフトの勝利に終わった
そう最高評議会はプラントの市民に宣言している
…だが、それをクルーゼは勝利などと呼びたくなかった
カオシュンはそこまでの被害はなかった
しかし、ビクトリアにおけるザフトの受けた被害
…特に人的被害の詳細を見たクルーゼやアデスは最高評議会の正気すら疑った
負傷者4000人以上
戦死者500人以上
喪失MS15機
と言うものだったのだから
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既に地上におけるザフトの勢いは開戦直後の勢いなどなく、ジンやジン・オーカー程度ならばあっさりと地上の栄養に還されてしまう
空中の覇者として期待されていた飛行MSディンだが、最近になって地球軍の投入してきた新型機によってその優位性どころか命すら危うくなっていると言うではないか
そして、地球軍は制空権を確保すると旧世紀における『対戦車キラー』の異名を持つA-10のコンセプトを踏襲した『地上攻撃機』や『地上
如何にMSが強力であったとしても、空を駆けるものに対しての備えは不足している
それを補う為のディンが排除されれば彼等もまた獲物に成り下がる
地を走るバクゥとて、対空戦においての能力は然程高くない
彼等もまた足の速い程度の差でしかなかったのである
更に地球軍は『戦略爆撃機』というザフトやプラントのもの達からすれば正しく『旧世代の遺物』とすらいえるものを生産し投入し始める
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ビクトリア基地を制圧したザフトだったが、彼らにとって初めての激戦となった者も多かった
…その為、休息を取る者は多く、それをベテラン達も仕方ないとしていた
それこそが、地球軍が待ち望んでいた絶好の機会となる事とも知らずに
「ビクトリア基地は敵の手に落ちたのだ
…ならば元々失ったものにこだわる必要もない
…構わん、捕虜すら取らぬ連中に配慮する必要など認めぬ。『全てを更地とせよ』」
ビクトリアへの攻撃を指揮していた男は部下達にそう檄を飛ばした
『第一戦略爆撃師団』
戦略爆撃機24機からなる対地攻撃能力ならば大西洋連邦最強とも言われる部隊だ
戦略爆撃機一機から投下される質量は7.2t。搭載されている爆弾は300kgだ。つまり弾数は24
それが24機もの大編隊で絨毯爆撃を行なうのだ
しかも、其の投下する爆弾はすべて徹甲弾を転用したもの
貫通力が非常に高く、地下施設だろうがザフトご自慢の陸上戦艦だろうが問答無用で頭上から穿ち抜くもの
正に『プラントの者達に死をとどける
なおこの作戦案を提示したのは大西洋連邦軍に所属するコーディネーターであり
「謙虚さや慎重さと無縁な奴等なら必ずこの罠にかかるでしょう
奴等を此処で殺さねば、また多くの者が犠牲となります」
と怒りを押し殺した声で其の人物はこの作戦の実行許可を求めた
…実は既に地球の各地においてNジャマーの研究が急ピッチで進められており、其の形が朧げながらに出来上がりつつある
別にプラントなど核ミサイルを使うまでもなく、崩壊させるのは容易い。外壁に少しでも孔を開ければそれで済むのだから
故に地上における原子力発電の復活が主旨となっている
一部の
「あの勘違いどもをこの世界から抹殺しない限り、永遠に平和は訪れない」
とプラント殲滅を主張していたりする
これにはブルーコスモス過激派すら
「…え?」
と困惑し、ドン引きしている程
大西洋連邦期待の量産型MSのOSやプログラミングについて、彼等地球側のコーディネーターは良く働き、既に実用化の目処がある程度出来ていた
「人を殺された痛みを知っている筈の連中がへらへらと他人の命を踏み躙る
…なら、自分もそうなる事を覚悟している。そういう事でしょう?
それすら分からぬと言うのならば、其のつまらないプライドと共に滅べば良い」
コーディネーター排斥を訴えるブルーコスモス過激派ですら思わず呆然とする様な事を地球のコーディネーター達は平然と口にする
それほどまでに彼等は身勝手極まるプラントのコーディネーター達に憎悪を抱いているのだ
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クルーゼはそこまで知らないものの、ビクトリアにおける被害の詳細を知ると言いしれようのない感覚に襲われた
(…恐らくこれは間違いではないだろうが、正しくもないのだろう)
クルーゼはその
能力至上主義であった筈のプラント
だが、いつの間にか肥大化した
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「ふむ、それは嬉しいものだ
特務隊隊長直々に称賛されるなど殆どない事だろうからな
…だが、私もユウキ隊長もそこまで暇ではないだろう?
何か不測の事態が起きた。私はそう見るが?」
クルーゼの言葉にユウキは明らかに顔を強張らせると
「此処だけの話ですが
…今後の戦略全ての見直しが必要となる事態が発生したのだ
オーブからの食糧輸入が全面的に停止。さらに南アメリカ合衆国からの撤退を既に指示している」
と口にする
「…それはまた」
クルーゼも言葉を紡げない
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オーブにおいて、ヘリオポリスの一件は余りにも大き過ぎるものとなった
大西洋連邦の新型開発への協力。それ自体はさして問題ではない
問題は、それを何故
特にオーブの外交面を長く支えてきた人物がこの件に激怒し、
ヘリオポリスにはオーブ国防軍や防衛の為の戦力は存在せず、新型機と新造艦の持ち主となる大西洋連邦にすらそれらが用意されていなかった事が明るみになると
「無抵抗のまま、自国民を踏み躙られる可能性に思い至らなかったのか?」
「中立である事といざという時の備えを放棄するのは全く違う事
それすら分からぬ者が国の未来を論じるとは何事か!」
「そもそも、彼等五大氏族によるオーブの事実上の独裁こそがこの様な事態を招いたのではないか!」
と言った声がオーブの議会より噴出
現代表ホムラに対して
『前代表ウズミ・ナラに対する全ての権限の剥奪とコトー・サハクとウズミ・ナラへの取り調べを行う事』を議会は決議した
更に
ヘリオポリス崩壊の原因であるプラントに対する食糧などの取り引きの凍結と、プラントに支援を行なっている国家による支援物資の輸送の一切の停止を可決
ホムラとしては、指導者としてのウズミ・ナラにある程度の役割を期待していた為に、前者については保留とし、後者について
つまりプラントに対する禁輸措置については即日実施を決断する事となる
オーブの保有するマスドライバー『カグヤ』
これは親プラント国家がプラントに対して大量の支援物資を届ける為に必要とされていたもの
マスドライバーが無ければ打ち上げられる量は限られており、しかも莫大なコストがかかる
少なくとも、プラント理事国から厳しい目を向けられている彼等にとって、それを受け入れるのは好ましいものではなかった
それにより、プラントの食糧事情はプラント市民が気付かないところで少しずつ、だが確実に破滅へと向かいつつあったのだ
「……」
クルーゼもこれには言葉が出ない
親プラント国家
そう言えば聞こえは良いが、彼等はプラントのザフトの技術力や軍事力により現在の状況を打破しようとしている者達
つまり、彼等のみではプラント理事国に抗う事が困難な者達と言い換えられる
既に彼等の中にはプラントの命運が尽きたとして、極秘にプラント理事国側に対して交渉を行なっている国家もある
「彼等は踏み越えてはならない一線を越えてしまった
残念だが、彼等に明日を語る事は出来まい」
親プラント国家とて好んでプラント理事国側に頭を下げたいとは思っていない
…だが、国を無くした国民や『地球の裏切り者』とされた自国民が果たして生きられる場所が有るだろうか?
友好関係にあるプラントは『コーディネーターの組織』ナチュラルが大半を占める自国民を受け入れるとは考え難い
地球の何処に行こうとも間違いなく、周りからの視線は厳しくなる
ならばありもしない希望に纏って国を滅ぼす位なら、自分達の首をかけてでもこの状況を打開しなければならないのだ
そう判断した
彼等ザフトやプラントが旧世紀の歴史に詳しいならば、ある程度予測は出来ただろう
『中立国に刃を突き立てれば、相手は敵としてその者達を認識する』
事に
生命工学など先進的な知識を持っていようがプラント最高評議会の者達は政治や外交の素人の集団
実働部隊であるザフトは能力こそ高いが『自分達の掲げる正義』とやらを自分達で踏み躙っている事にすら思い至らない者がいるというのにそれをどうにも出来ない者達
『何で戦争して勝てると思ったんですか?』(全ギレ)
と後の識者がプラントやザフトの正気を疑ったとしても不思議ではないだろう
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ラクスは悩んでいた
アークエンジェルでカズイと話した事は彼女にとって今のプラントの事を真剣に考えるきっかけとなったのだから
そして彼の言う通りにラクスは色々調べて
それが絶望へと向かうものと知らなかったから
戦死者数
一万人以上
行方不明者数
三万人以上
たった一年だ
僅か一年、しかもプラントが圧倒的有利とされている現状ですらこれだけの被害が出ている
しかもこの殆どが成人男性からアスラン達くらいの年齢の男性
ラクスは震える手でプラントの年齢別のデータを取得
グラフは歪なものだった
10代から40代の成人男性の人口が明らかに他の年齢と比べて少ないのだから
プラントにおいて結婚する際、遺伝子調査をされる事がある
コーディネーターはその生まれの特異性から子供が産まれない事もあるからだ
つまりそれは、今プラントに残っている者達全てが子を授かれない可能性が高いという事
それにも関わらず、プラント最高評議会やザフトは『戦争勝利の為』更なるザフトへの増員を予定している事もラクスは知った
『あなた方が思う以上に地球軍は冷酷な目であなた達を見つめている
彼等はあなた方が思っているよりも遥かに怖い相手ですよ?』
カズイはラクスにそう言っている
事実、多数のコーディネーターを擁する地球軍は、プラントの人口推移が彼等にとって好ましくない方向へと向かっている事を知って、戦略の大きな見直しを行なっている
「人口のバランスとは国家の維持に不可欠なもの
それが崩壊しつつあると言うならば、それを我等も助けてやると言うのがせめてもの慈悲だろう」
その方針に従って、既存の被害が大きい兵器については各国が無人化やそれに近いシステムの構築を開始している
これには某理事も
「なるほど。そういう事なら私達も全面的に支援できますね
既存の兵器の生産ラインはそのまま、無人機のラインとして存続させ、MSの生産ラインを新設する
戦場も親プラント国の領内に限定出来れば言うことなしですね」
とご満悦だったそうだ
一部の地球軍に入隊したコーディネーター達から不満の声も出たが
「我々は君達
気持ちは理解出来なくもないが、わかって欲しい」
との説得により落ち着く事となる
地球軍は重力の底で、彼等と彼等の未来を磨り潰すつもりなのだ
それを知らぬ彼等の未来はどうなるか?
今プラントは暗闇の中にあった
本作における盟主王やブルーコスモス過激派もドン引きする地球のコーディネーター
彼等に容赦も慈悲もない
あるのはプラントそのものすら破壊せんとする漆黒の意思のみ
なので最近のブルーコスモスは『先鋭化する地球のコーディネーター達をどうにかして暴走させない事』に注力しています
末端は相変わらずですが
、
本作のヒロインは?
-
大天使ナタル
-
妹系少女マユ
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フレイ
-
猪突猛進娘カガリ
-
キラ
-
シン
-
その他