勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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カズイ君は基本面倒ごとは嫌いです

そして、割と何処か抜けています(超重要)


 崩れる日常

コロニー内に鳴り響く緊急事態を知らせるアラート

 

この手のものは誰にでもわかりやすくする為に、独特の音を出す事が多いと聞く。誤認されては困るからだろう

 

さて、キラはどうやら一応止めたのだが、その道を歩くらしい

 

 

とにかく今は避難が第一だろう

少なくとも、建物の中にいたとあってはザフト(軍隊擬き)の連中が何を仕出かすかわかったものではない

 

「先ずは避難用のポッドに行こう

話はその後でも出来るだろうよ」

 

「だけど!」

喧しいなサイは

良いとこのお坊ちゃんで別に悪い人物でもないんだが、要所要所で感情的になるきらいがある

 

「そうだよな。カズイ、何処が一番近い?」

 

「…悪い、そこまで把握してないわ」

いやまさか仮にも中立を表明しているオーブの民間コロニーに攻撃してくるとは、ザフトのいや、戦争の狂気を俺も甘く見ていたらしい

 

「端末は、ダメ。使えないみたいよ」

ミリアリアはPCを使ってヘリオポリスのシステムネットワークにアクセスしようとしたらしい

なんだかんだでミリアリアは頼りになる

溜め込んで爆発したらえらい事になるのは仕方ないだろうし

 

「とにかく逃げるぞ!

下手すりゃ文字通り『お星様』になっちまう」

 

さて、命懸けの逃走劇か

 

俺達はカレッジを飛び出した

 

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「無茶苦茶だ!こんなOSで機体を動かそうなんて!」

 

「ま、まだ最終調整が終わってないのよ」

 

そんなものをヘリオポリスに持って来ないで欲しい

キラはそう口から出そうになる言葉を必死に押し留めた

 

「…ああっ!」

倒れた機体の近くにはトール達がいた

 

----

 

「っく、無事かみんな!」

 

「う、うん。ありがとうカズイ」

 

「悪いカズイ、大丈夫か!?」

 

「ああ、何とかな」

倒れてくるストライクから危うく潰されそうになったミリアリアとトールを助けられたのは本当に運が良かった

 

俺達は必死に避難用のポッドに向かって着いたと思えば何処もそこも収容人数の限界だった

先程までコロニー内で必死に避難を呼びかけていた避難通信も途絶えている

 

…恐らくあの人達は生きていないのだろう

 

原作ではイザーク達がそれぞれデュエル、バスター、ブリッツを

アスランは友人であるラスティが地球軍の人間に撃たれた事でイージスの奪取任務を一時的に中断

その軍人の無力化に動いて、負傷したマリュー・ラミアス大尉が何とかストライクを確保。そこに居合わせたキラをストライクに避難させた

 

だが、その一方でザフトのMSジンもヘリオポリス内に侵入

 

 

多分今頃、外でも地球軍とクルーゼ隊による戦闘が行われているのだろう

 

しかしまぁ、キラの決意の理由である俺達がまさか此処まで動いてもその原因になるとは

 

クソが

思わず他の奴らに聞こえない小声で悪態をつく

 

 

こうなってしまうとなんだかんだ優しいキラは戦う事を選んでしまうだろう

…いや、俺達の行動がキラの選択の自由を奪ったのだ

 

 

立ち上がったストライクの動きは先程までのそれとは明らかに違う

(悪い、キラ。お前に重過ぎる選択をさせちまった

…なら俺も覚悟を決めるしかねぇわな)

 

 

何が出来るのかは分からない

だが、心優しい友人達はキラだけを戦わせたいとは思うまい

 

逃げたいという気持ちはあるし、シンやマユちゃん達の事も気がかりだ

 

 

とりあえずウズミ・ナラは会ったら問答無用で殴り倒すし、カガリ・ユラは面倒事を起こすならどんな手を使ってでも止めるとしよう

 

 

…畜生、逃れられない運命っていうつもりかよ

 

 

覚悟を決めた

などと格好つけても出来る事は限られてしまう

 

 

だが、傍観者でいる訳にはいかないだろう

 

 

俺は怒りを込めた目で崩れ落ちるジンを見つめた

 

 

 

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襲ってくる相手を倒してトール達と合流した僕に気絶していた女の軍人は銃を片手にとんでもない事を言ってきた

僕やトール達は軍の機密を見たから地球軍に拘束されると言うんだ

 

「軍の機密って」

耳を疑った

確かに僕はこの機体に乗ったし、それを使って敵を倒した

 

でも、それは

 

「ちっと待ってくれるかい?軍人さん」

それまで口を開こうともしなかったカズイは心底不愉快そうな顔をしながら軍人さんに声をかけた

 

 

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おーおー、まぁ好き勝手に理屈を捏ねて下さる事よ

マリュー・ラミアス女史の理屈

いや、軍の理屈を聞き流しながら俺は内心ため息をついた

 

そりゃ自分達は命懸けで戦争してるのに、中立国だからと平和を当たり前に享受してるとなりゃ気分は悪いわな

…が、んな事知った事ではない

 

 

マリュー・ラミアスがどの様な動機で地球軍に志願したのかなんて話は此方に関係のない話だし、地球軍とプラントによる戦争に我等が表向き(・・・)中立を保っているオーブが巻き込まれる謂れはない

それに不満がプラントも地球軍もあるだろうが、その辺は一軍人の領分ではない

政治の問題だ

 

「随分好き勝手な理屈を仰られる

貴女にこの景色が見えませんか?

つい先程まで平和な日常を過ごしていた場所があっさりと崩れ去った。他ならぬ貴女方地球軍とザフトのせいでね」

 

「…くっ」

 

「あと一つ言わせてもらいたい

銃口を向けるというならば、穏便な解決など出来ないのですけどね?」

俺はそう話すと同時にマリューに飛び掛かった

 

生憎と武器を向けられたままの話し合いなぞありえん

それは脅しというのだ

 

 

勿論これでアークエンジェルになった場合、俺の立場は悪くなるだろうが知った事ではない

 

命をかける覚悟もない人間が兵器を動かすなど恐怖以外の何者でもないのだから

 

 

 

あと、軍の理屈を振りかざせば全部其方の言い分が罷り通る

などと思われるのは今後の為にもならないだろう

 

 

…まぁ倫理観や常識的思考が割と死んでいる感のあるこの世界でどれだけの事が出来るかは分からないけどな!

 

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カズイ・バスカークはナチュラルであり、オーブの民間人だ

当然軍事的調練を受けた事などある訳もなく、トール達は運動についてそこまでカズイが積極的でなかった事から寧ろ『運動は苦手』だろうと思っていた

 

だが、カズイはオーブ本土にいた頃にはシンに頼み込んで護身程度には動ける様に体の動かし方を学んでいる

 

というのも、シンやマユそして2人の両親はインフルエンザの件以降地球全土で高まりつつある『コーディネーター排斥』のターゲットにされる可能性があった

…勿論カズイ自身もシン(コーディネーター)と親しくしている為に襲われる可能性もあったりする

 

故にカズイは弟分であるシンに自分を鍛える手伝いをして欲しい

そう頼み込んだ

 

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「なんで、なんでアンタがそこまでしなくちゃいけないんだよ!」

その話をカズイから聞いたシンは時には両親や妹よりも口煩いが頼りになる兄の選択に怒りを露わにする

 

(コーディネーター)のせいなのか?

 

そうシンは思ったが

 

「違うっての

こんなご時世だ。いつ何が起きるか分からんだろ?

お前は近くにいたら俺を守ってくれるんだろ?俺もそうしたいと思うのがそこまでおかしいか?」

と苦笑を浮かべながらいつもの様に頭を軽く叩いてくる

 

人は不安を感じると、親しい人間の温もりを感じる事でそれを和らげる事があるという

シンにとってカズイは家族と同じくらい

…いや流石にマユ程ではないが

大切な存在なのだ

 

「でもアンタって運動できたっけ?

どちらかと言うと苦手だった様な気がするけど」

 

「そこはほれ。シン教官が上手くやってくれると俺は思っているからな!」

(まったく)

相変わらず出来る出来ないの判断が早すぎる兄に内心シンは苦笑する

 

いつもこうだ

自分やマユが落ち込んでいる時、ふらりと顔を出してはあっさりそれを見抜いて何とかしようとする

此方は素直に感謝したいのに、どこか抜けた様な事をするからそれを口に出さない

 

自分やマユは少しばかり周囲から孤立していた事があったのだが、カズイは話を聞いてくれる

いつの間にか周囲と少しずつ打ち解けられる様になった時マユと自分はカズイに感謝した

 

…なんだけど

「俺は2人の愚痴を聞いただけ

何もしてないが?」

と全く取り合おうとしない

 

 

そんなカズイが他の誰でもない自分を頼ってくれたのだ

嬉しくない筈がない

 

だから

 

「…わかったよ。でもしっかりと鍛えてもらうからな?」

 

「お、お手柔らかに頼みたいかなって」

いつも飄々としているカズイだけど、明らかにやる気の俺を見て身構えている

 

父さんも母さんもマユも

勿論俺だってアンタの事好ましく思っているんだ。だから

 

 

…だから強くなってマユを守れる男になって欲しい

…頼んだよ、兄さん(・・・)

 

 

因みにカズイが割と息子と娘にとって親しい人物であり、癖こそ強いが善良な人柄である事からアスカ夫妻は娘の恋を応援している

シン(筋金入りのシスコン)

 

「…まぁ、カズイなら」

と妹の想いを知ってからは渋々ながら(内心大喜びで)応援する事にしている

 

 

 

シンはカズイとの護身訓練の少しずつハードルを上げており、実のところ標準的なコーディネーター相手ならばそこそこ良い勝負になるくらいにはカズイを鍛えていた

 

 

 

まぁ、この際は勝てる勝てないではなく、割と感情に任せてマリューにその力を振るっていたりするのだが

 

 

-----

 

「カズイ!?」

トールは驚いた

基本的に体裁を気にしたり、感情を表に出そうとしないカズイが目の前で女性の軍人を組み伏せているのだから

 

「は、放しなさい!」

 

「こちらを脅す様なやり方をした人間の意見を聞く理由はない!!」

 

「お、おい」

サイは慌てているし、ミリィも目を丸くしている

自分だって何が何だか分かっていない

 

キラはキラで

 

「え?

あ、あれ?」

と見るからに狼狽している

 

カズイはとても冷たい目で組み伏せた地球軍の女性を見ているが、それに多分気付いていないのだろう

普段の無感動さなんて全く分からない

 

殺してやりたい

とでも言わんばかりの視線を向けているのだから

 

 

----

 

結局俺達はキラに戦闘を任せっきりのままにアークエンジェルに乗艦する事となった

んだがねぇ

 

「…お前さん、コーディネーターだろう?」

いやホント地球軍の士官教育ってゴミ以下なの?

 

コーディネーターだから何だと言うのやら

『プラントにいる』コーディネーターがアンタらの敵だろうに

 

それで一斉にキラへ銃を向けるんだから、ブルーコスモス的には最高の教育をしているんだろうなぁ

 

「…此処は地球軍、いや大西洋連合軍の戦闘艦の中だと思いましたが違うのでしょうか?」

 

俺の明らかな侮蔑の籠った言葉に兵士達の険しい視線が向く

が、知るかと

 

「昨今ブルーコスモス(環境保護団体という名のテロ組織)が地上では流行っていると聞きますが驚きましたよ

まさか正規軍の中にすらその支持者がこんなにも居るとは」

軍人としての自覚もない連中に対して此方が何を気にしようものかよ

 

----

 

(やっちまったか、くそっ)

俺はおかっぱ頭の少年の攻撃的な言葉に自分の失敗を悟った

 

話を続ける為のものだったが、思っていたよりも周りの連中の反応が悪かった事もそうだが、何よりも

(手厳しい事言ってくれるじゃないか、この坊主はさ)

彼はこう言っているのだ

 

『お前らは軍人か?それともテロ組織の一員なのか?』

 

「カ、カズイ」

ストライクを動かしたであろう少年やその少年を庇おうとしたのだろう少年達すら驚いている

 

「あなた方大西洋連合軍が何を考えて中立国のコロニーで新型機を開発していたか、なんて知った事ではない

確かにこの艦の中は大西洋連合軍のルールが通るんだろう

でも、ヘリオポリスは、アンタらが戦闘していた場所はオーブなんだよな。オーブではコーディネーターだろうが、ナチュラルだろうがその程度(・・・・)の事を気にする奴ばかりじゃない」

 

「アンタらの

軍人のルールで戦争したいなら、民間人を巻き込まない所でやってくれない?」

そこには冷ややかな感情が込められていた

 

 

----

 

「…君の言う事は理解できる

だが、それだけではどうにもならない事がある事もまた理解すべきだろう」

…どうやら面倒な奴として扱われるらしい

ま、残当だが

 

あの後トール達も加わって(いや加わらんでも良かったのだが)キラに対する無駄なしこりはなくなった。と思いたい

 

艦内で騒ぎを起こしたって事で少し営倉入りするらしい

んで、俺に対しての感情が割とフラットなバジルール少尉が自ら案内してくれる様だ

 

桑島さんキタコレ!

と内心ウキウキではあるが、勿論そんな事はおくびにも出さない

 

…アルスター?

ああ、そう言えばそうだっけ?(無関心)

 

いやだってアイツ面倒そうだし(偏見)

 

 

正直な話として軍人としてのあり方に殉じたキャラってナタルさんくらいではなかろうか?(超偏見)

 

「…ラミアス大尉、いや艦長からも話は聞いている

どうにも君はあまり軍に対して良い感情を持っていない様だが」

 

「いや、軍隊にいる人達に対する感謝は人並みにはありますよ、流石に。でも『軍のルールが何よりも優先される』みたいな事されたら、腹立ちませんか?

…まぁ、ウチのオーブ軍もやり方がアレだと思いますけどね」

 

「…そうだな。確かにそうかも知れない

どうにも軍の中にいるとそれが当たり前になってしまう事を忘れてしまう様だ。そこに関してはすまなかった」

 

「いーえ

別に其方の言う事が全く間違っている訳でもないでしょう

…ただ相容れないとは思いますが

ところでキラはどうなりますか?」

雑談も良いけど、先ずキラのこれからについて聞かないとヤバいからなぁ

 

「…情け無い限りだが、ヤマト少年の作ったOSはフラガ大尉すら扱えないらしい」

 

「で、キラに戦えと?」

いやまぁ、ナタルさんの表情を見るに明らかに自分達の無力さを痛感しているだろうってのは分かる

悪辣だとは思うが、そこはしっかりデカすぎる釘を刺させてもらうとしよう。『人は慣れる』からな。良くも悪くも

 

「そうなるだろう」

キラもそれを選ぶんだろうなぁ

…ならどうしようもないか

 

「…バジルール少尉」

死にたくはないんだがなぁ

 

 

----

 

ラミアス艦長やフラガ大尉に格納庫にいた者達とやり合っていた少年を私は今営倉入りさせるべく連れて来ている

 

軍属でない以上、これすら問題になりかねないのだが不思議とこの少年はそれについて口を開こうとしない

…ある程度の話は聞いたが、私達軍人からすると当たり前の話。だが、彼等は明日を当たり前に迎えられていた筈の民間人。しかもオーブ(他国)

 

横暴だと言われたとしても言い返せるものではない

 

こうした言葉を交わす限り、ある程度理解はしているのだろう

だが『言わないとやってられない』といったところだろうか

まだマシな方なのだろう、恐らくは

 

 

何も言わず不満を溜め込んだ挙句、何処かで爆発されるよりは元々不満があると示してくれていた方が幾らかはマシというものだ

 

どうやらヤマト少年の事をかなり気にかけているらしい

彼を連れて行く時、少し騒ぎになりそうになった事を思い返す

 

 

----

 

「なぁ、カズイをどうするんだよ」

 

「まぁまぁ落ち着けってトール」

 

「なんで連れていかれる側のカズイがトールを宥めているのよ」

 

「いやまぁ仕方ねぇのよミリアリア

…キラもあんま気にするな。サイは顔を引き攣らせるな」

 

「でも、僕を庇ったせいで」

カズイ少年を連れて行こうとの話になったのだが、いざ彼を連れて行こうとすると少年達は動揺を見せた

…何故連れていかれる本人が一番落ち着いていたのかは私にも理解できない話だったが

 

特に庇われたヤマト少年は気に病んでいたらしく落ち込んでいたのだが

 

「つうてもなぁ

キラが助けてくれなきゃ、多分俺ら今頃化けて出る側だっただろうし。と言ってもあんまりキラに負担をかけたいとも思わんが」

 

「…カズイ」

 

「んな微妙に感動した様な顔せんでもろて

別に俺はコーディネーターだろうが気にしねぇっての」

 

「…そうなのか?」

眼鏡をかけた少年、確かアーガイル少年だったと思う人物が不思議そうな声をあげていたな

 

「こちとらオノゴロから出た事ない引き篭もりですよ?

近所に生まれた時から付き合いのあるコーディネーターの兄とナチュラルの妹がいたんでね。今更よ」

 

「?でもヘリオポリスに来たわよね?」

 

「…全部親の都合なんすわ

しかも、今は本国に一時的に戻ってるというね?

マジ両親許せねぇよ」

ハウ少女の言葉に怒りを滲ませていたな、確か

 

 

結局何故か彼が彼等を説得するというよく分からない状況になったのだが

 

この少年なりに彼らの事を気にしていた。そういう事なのだろう

 

 

そんな少年が私の名前を呼び

 

「大西洋連合軍に臨時仕官出来ますかね?」

思いがけない言葉を放ってきた

 




正論を吐きながらも、それが叶わぬものとも知っている

友人が命を賭ける
それでも逃げ続ける事は臆病者であるカズイにも出来ない










現在の友好度(参考程度)
カズイに対して(0がフラット.50で友人.70越えで親友)

キラ 32

トール 59

ミリアリア 50

サイ 41

マリュー 13

フラガ 30

ナタル 45

マユ 83

シン ??
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