守るべき者達
全てを守らんが為に皆が動く
「つまり何か?ウズミの娘がアフリカでレジスタンスと共にザフトに対してゲリラ活動をしていた、と?」
「…はい」
「…呆れてものも言えんな
父はこれを知っているのか?」
「…現在首長会議の席にてウズミ・ナラを弾劾すると」
「遅いな
此方から戦力を出せ。オーブに向かっているであろうアークエンジェルをせめて支援せねばこの国は滅びかねん
…私も出よう。直ぐ準備を」
「はっ!」
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結局虎との話なんて微塵もなく、あっさりとユーラシア連邦領に入ったアークエンジェルに困惑しかないカズイです
え?マジでアフリカで戦闘一つもしてないのに、これで良いんかね?
…というか、アークエンジェルの護衛に付いているユーラシア連邦軍の艦。どれもこれもジンがいますよね?
鹵獲品としても多い、多くないか?
「バスカーク少尉。今の地上ではこんなものだよ」
「…驚きました。自分がヘリオポリスに行く前には此処まで戦況が良かった記憶はないのですが
まぁ、オーブ以外には余り興味がなかったのですけども」
「はは、正直だね。今となっては各軍のコーディネーター部隊が鹵獲したジンを戦力化していると聞いている
一部からは『そろそろ新型が欲しい』とすら言われているそうだが」
「…それはまたすごい皮肉ですね
やはり大西洋連邦軍で新型の開発は?」
俺の割と踏み込んだ質問にジャンさんは
「…既に新型量産機もロールアウトしているだろう
加えて最新鋭の機体もそこまで前線に出てくるのに時間がかかるとは思えないだろう」
…こりゃあ、ザフト終わったな
というか、さっきまで此方を航空支援していたのが氷山空母って何の冗談なんだか
旧世紀の珍兵器のバーゲンセールでも流行ってんのかねぇ?
なお当の本人は更に埃の被った舌戦をした模様
「しかしジャン少尉も大変だったでしょうに」
「それは否定はしないがね
…だが、大変さで言えば君達も大概だったと思うが?」
「耳の痛い話ですよ。もう少し賢しく動けたなら、犠牲も少なくなったのかも知れませんが
俺のこの短い手で守れるものなんて、そこまで多くないですから」
「そうか
…一つ聞いても構わないかな?」
「どうぞ」
「君を兄と慕うコーディネーターの少年がいると聞いた
…怖くはなかったのか?」
「…どうですかね
ジャンさんは赤子を見た事は?」
俺の要領を得ない質問にも
「見た事はあるが」
律儀に答えてくれる。やはり良い人なんだろう
「俺は初めて見たんです
必死で何かを訴えようと、手を伸ばしていて
思わずそれを掴んだんです。…そしたら本当に嬉しそうに笑ったんですよ。その時俺は思ったんです
『ああ、コーディネーターだろうがナチュラルだろうが最初は皆同じなんだ』って
だから先に生まれた俺がこの子を守らなきゃって」
ぶっちゃけると割と恥ずかしい話だからあまり他人にしたくないんだが、今回ばかりは仕方ないと割り切る
「当たり前の事かも知れませんけど、俺はあの時初めてこの世界と向き合えた気がしたんです
だから俺はシンを、弟を…マユを、妹を守ろうと思ったんです
…まぁ、ナチュラルの中でもそこまですごい訳じゃなかったんで2人を守れた代わりに片肺は無くなりましたが
でも俺は後悔してません。たとえ何度あの場に居合わせたとしても、同じ事をするんだと思います。やっぱり兄として弟と妹を守れる兄でいたいじゃないですか」
「…そうか。そうなのだね
ありがとう、話しづらい事だっただろうに」
「いえいえ
しかし、何にもありませんね」
「…ああ、そうだね
少し用事があるので失礼するよ、少尉」
そう言ってジャンさんは足早に格納庫方向に向かっていった
はて?用事があったのなら少し長話をし過ぎたかもしれん
失敗したかもなぁ
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私は溢れる涙を必死で押しとどめるのに精一杯だった
本当に少尉はコーディネーターだろうがナチュラルだろうが平等に接してくれる事が分かったから
片肺を失ったと言った時も、その表情には一切の翳りはなく、寧ろ弟達を守れた自分が誇らしい
と言った満足感と達成感すら垣間見えたのだから
決して聖人君子ではない
アーガイル二等兵の様に仲の悪い相手もいるのだろう
だが、それでも私達にとって彼は間違いなく救いとなったのだ
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「しかしユーラシア連邦はまだ分かるけど、赤道連合も此方に協力的なんて驚いたわ」
「どうにも地上の状況の変化に着いていこうと必死になったと聞いていますが、何にせよ有難い事だと思います」
「…そうね」
アークエンジェルの艦橋にも緩い空気が漂っていた
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「モラシム隊長、足つきです」
「恐らく我々モラシム隊最後の戦闘となるだろう
…覚悟は良いか?」
ボズゴロフ級クストーの艦橋でモラシムは全クルーに確認の視線を送った
誰もがモラシムを見つめ返し、頷いた
モラシム隊はインド洋で敵哨戒部隊に散々追い回され、多くの犠牲を出している
クストーに搭載されていたMSも今となってはモラシムのゾノとグーンとディンそれぞれのみ
しかも補給もほぼ尽きており、寄港のアテすらない現状の彼等に待つのは緩慢な死か降伏のみ
「我等ザフト地上部隊の意地を見せる!
…出撃だ!」
モラシム隊はこうしてアークエンジェルに決死の戦闘を挑む事となった
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「っ!レーダーに感あり!
ボズゴロフ級です!」
「機関最大で振り切れるかしら?」
「出来なくはありませんが、その場合何処かで補給が必要になるかと」
ラミアスの言葉に操舵手であるノイマンが答える
『アークエンジェルへ
接近する敵部隊は我々に任せてもらいたい。貴艦はそのままオーブへと向かわれたし』
護衛についていた赤道連合の輸送機からの通信が入る
『我々は血を流して覚悟を示さねばならん
此処で君達が足を止める理由はない
…行ってくれ、ラミアス艦長』
「…感謝します。ご武運を
機関最大、振り切れ!!」
アークエンジェルは加速し、クストーの速度を上回る
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『に、逃げる気か!足つきっ!』
『お前らの相手は俺たちだ!
さぁ今日こそお前らの最後の日だ!』
『ぬかせ!』
彼等は戦う
己の意地の為に
自分達の未来の為に
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「前方、オーブの艦隊です!」
「…今更になって慌てても遅いんだと思うんだけどねぇ。ホントオーブの政治家ってのは碌なのがいないもんだ」
「オーブ艦隊より通信!」
「繋いで頂戴!
…カズイくん、良いのかしら?」
「今此処にいるのは大西洋連邦軍少尉カズイ・バスカークです
勿論言いたい事は山程ありますが、今はひとまず聞き手に徹しますよ」
「分かった。そのかわり何かあればそれなりの対処をする事になるからな?」
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『此方オーブ国防軍ロンド・ミナ・サハクです
この度は大西洋連邦軍ならび貴官達には途轍もない負担をお掛けした事をまずお詫びしたい』
「本艦の艦長マリュー・ラミアス少佐です
オーブのカガリ・ユラ・アスハ嬢を貴国に引き渡す為、オーブへの寄港を希望します」
『勿論受け入れたく思う
…ところで、元ヘリオポリス住民のクルーがいると連絡を受けている。叶うならば話はできないだろうか?』
腹が立つが、指名となれば無視する訳にもいかない、か
「大西洋連邦軍所属カズイ・バスカーク少尉であります
…お初にお目にかかります。ロンド・ミナ殿」
『…無事であったか。やっとシンに吉報を届けられる』
「これはこれは『一介の市民』ふぜいに随分と拘られますな?
…シンとは、シン・アスカの事ですか?」
思わず自然と声に力が入る
…落ち着かなければならないのはわかっているのだが、もしシンにいらん事をしたというのなら、この女は俺の敵になるだろう
『貴殿が気にする様な事は誓ってしておらぬよ』
まぁそう言うしかねぇだろうよ、だがな?
「無礼を承知で申し上げますが」
『構わんさ。そも貴殿らの人生を狂わせたのは我等の責だ
批判は甘んじて受けねばならまい?』
「では率直に申しますが
私はオーブの氏族が全く信用出来ないのですよ?」
その時アークエンジェルの艦橋の空気が凍った
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『カズイ、落ち着きなさいよ。アンタらしくもない』
『…すまん。悪いなフレイ』
…ふむ?バスカークに声をかける赤髪の少女の出現に私は内心首を傾げた
確かシンからの話によれば、バスカークにはその様な決まった相手はいないとの事だったが
シンの妹であるマユ。そうでなければ、あのじゃじゃ馬娘をあてがえるならば最善と思っていただけに余り歓迎できるものではない
勿論戦場という非常にストレスの溜まる場所に身を置いていた以上、やむを得ない事情もあるだろうが
まぁそこまで期待するのは流石に強欲と言えるだろうな
しかし困ったものだ。余りにもオーブの氏族に対する反感が強い
勿論仕方ない話ではあるのだが
とは言え、先ず余り好ましく思われてない事は念頭に置かねばならんのは間違いないか
「それは仕方のない事だ
我々が国民に信頼されぬ
『…失礼な事を申しました』
やはりシンの兄か
たとえ事実であろうとも、自らの非があれば素直に詫びる事が出来る。中々出来ることではない
「もし時間があるのならば、是非シンを交えて話をしたいと思うのだがどうだろうか?」
『御好意感謝します
此方も何人かの同行をお許し願えるならば、是非に』
キチンと艦長や上官に視線で許可を求める、か
こういう人物こそ、我がオーブの守り手に相応しいのだがな
「しかと承知した
ではオーブ本島にてまた会おう」
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「ミナ様」
「聞いた通りだ。直ぐにアスカ家に連絡を入れてくれ
…あとギナは、おらぬか。では父を同席させるとしよう」
全くもってギナはタイミングが悪い
先ずは拭い去り難いレベルになった我々に対する不信感をどうにかせねばならんか
アスハのやり方に反感を抱いている者は今のオーブにかなり多くなりつつある
そろそろ我々も変わらねばならん時期が来たのかも知れぬな
私は今後の事を考えながら様々な策を検討する事にした
という訳でオーブにやっと戻れました
…まぁこれからが大変なんですけどね(歪んだ笑み)
とりあえずカズイ君は大切な弟分からの鉄拳をしっかり受け入れましょうね?勿論愛する妹からの愛の折檻もね?
本作のヒロインは?
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大天使ナタル
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妹系少女マユ
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フレイ
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猪突猛進娘カガリ
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キラ
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シン
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その他