勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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という訳でかなり悩みましたが完結までは続ける事にしました


もう評価とかは気にしない事にします
私なりの物語を書き切る事だけに集中したいと思います


それでも宜しければどうぞ?


あといつも誤字訂正ありがとうございます


 決別の時

「カズイ!お前生きてたんだな!

足はあるよな?首はついてるよな?」

 

「落ち着けシン。勿論気持ちは分かるが

それと心配かけたな」

 

「カズイ兄、無事でよかった

…ホントに良かったよぉ」

 

「…すまんマユ」

オーブに到着した私達はオーブの氏族であるサハクの招待を受けた

…正確にはカズイだけだったのだが、護衛としてキラ。私は興味から着いてきた

どうにもアイツがオーブ本土に残してきた家族らしき少年と少女がカズイの身体を調べたり、泣きじゃくりながら抱擁してたりする

 

意外というか、アイツのあんな顔は初めて見た

慈しむ様な、大切な宝物を見る様な優しい顔

 

元々無愛想なんだから、新鮮ってレベルではないわね

それが私に向けられないのはやっぱり寂しいけど、付き合いの長さが違うのだし仕方ないと諦めよう

 

…というか、良い加減にしなさいよ

「うう、どうして?」

 

キラはさっきからこんな状態だし

 

「ふむ、これもまた多様性のなせる事かも知れんな」

なんかミナさんと

 

「…オーブの未来は明るいな」

と瞼を抑えているおじさんがいるんだけど、良いのかしら?

 

 

----

 

「此度の件、君達には本当に迷惑や苦労をかけた

情けなくは思うが、我々に出来るのはただ頭を下げる事しか出来ぬ

…ただ、君達が無事である事だけは嬉しく思う

申し遅れたな。私はコトー・サハク、前サハクの当主だ」

 

「こう言ってはなんだけど、本当にこの国大丈夫なんかね?

凄く不安なんですけど、カズイ・バスカークです。お招きありがとうございます」

 

「フレイ・アルスターです」

 

「キラ・ヤマトです

初めまして」

 

「今更な気がしますけど、シン・アスカです」

 

「マユ・アスカです

いつもお兄ちゃんがお世話になってます」

オーブ国民でありながら大西洋連邦軍に属するナチュラルであるカズイ。オーブのコーディネーターでありながら大西洋連邦軍に属するキラ。オーブ国籍を持ちながら、大西洋連邦にも大きな繋がりを持つフレイ

オーブの市民であるシンとマユ

オーブの氏族でありナチュラルであるコトー

コトーの娘でありコーディネーターであるミナ

 

様々な立場の者が此処に集ったのである

 

 

----

 

「確かにオーブにおいてはコーディネーターとナチュラルの垣根は低いでしょう

今でこそ両者の溝は埋まりつつあるところはあるでしょう

ですが、カズイ・バスカーク

君が産まれた頃は確かに両者の溝は深かったと思うのです

…だからこそ伺いたい

何故君はそんな彼に寄り添えたのか?を」

コトーにとって、息子であり娘であるギナとミナは確かに跡を託すに足る後継者であり、オーブの明日を託すに値する存在だ

 

だが、それでもコーディネーターという『遺伝子レベルでの調整』を行なって生まれてきた存在は決して全面的に受け入れられるものではなかった

 

自分達(ナチュラル)がどれだけ必死になっても届かぬ地平にあっさりと手の届く彼等の存在はどうしても脅威と映ってしまうものだ

 

 

人とは自分と異なるものをどうしても避けようとするものだ

それはある意味では生物的本能にまで刻み込まれたものであろう

 

 

それをどうして目の前の少年はあっさりと乗り越えられたのか?

それを守る為に命すら賭けられたのか?

 

幾らコトーが考えても終ぞ出る事のない疑問だったのだ

 

 

----

 

苦しそうに、切なそうに言葉を口にするコトー氏の姿を見た俺は苦笑が表に出ない様にする事をしなければならなかった

 

それが普通だし、俺だってそう思わない訳ではない

 

ヘリオポリスで

アークエンジェルで

キラやフラガ大尉、まぁ今は少佐だがそれは良いとして

2人が戦っているのを見て、何度自分の無力さややらせなさを感じたか?なんて数えるのも億劫になるくらいあった

 

でも、それはある意味仕方ない事なのだ

 

 

足の速いもの

頭の回転が速いもの

そんな者がいれば、逆に

 

足が遅いものや頭の回転が少し鈍いものがいるのは当たり前なのだ

 

 

我々人間が『画一的規格』の元に生み出されたものならば、『感情という揺らぎ』が与えられていないものならば

或いはそんな物に苦しむ事などなかったのかも知れない

 

だが、俺達はそうやって生まれてこなかった

 

 

なら、俺達に出来る事は『届かぬ地平を嘆き、届く者を恨む事でも排除する事』でもない

 

 

 

あの日、生まれたばかりのシンと出会うまで俺はどこか物語の中にいる傍観者みたいな感じがあった

だが、生まれたばかりのシンに手を握られた時、その温かさに気付かされた

 

誰もが自分の意思を持って生きている

 

そんなごく当たり前の事を

 

 

アスカのおじさんとおばさんは生まれたばかりのシンに言っていた

 

「彼はカズイくんだ

シン、お前にとってお兄ちゃんみたいな人だぞ?」

シンかコーディネーターだったからか、それとも何か他の理由があったのかは知らない

 

…多分シン自身も知らないだろう

 

 

だが、あの時

 

「うー、かずにいちゃ?」

と確かに俺を見て笑ったのだ

 

 

そしてシンは俺に手を伸ばしてきて、俺はそんなシンをおそるおそる抱き上げた

あの時の温もりと、驚きは俺が死ぬまで忘れる事はないだろう

 

 

だから俺は別にコーディネーターとかナチュラルとかでうだうだ言うつもりはない

勿論他の人がそう思うのは仕方ない部分もあるだろう

 

 

…でも、それからしばらく後にマユが生まれて、俺は同じ様な事を体験した

だからこそ、思う

 

コーディネーターが

ナチュラルが

 

ではなく、各々がどう世界と向き合うのか?

それこそが何よりも大切な事ではないか?と

 

 

俺はそうあるべきだと思うし、出来るならばそうあって欲しいと願う

 

 

 

----

 

カズイの言葉に私達は言葉を失った

 

 

そっか、コイツはそうやってコーディネーターというものに対する偏見を無くしていったんだ

 

「いや、俺だってシンに劣等感を抱いた事は山程あるが?」

 

「あっても、カズイは笑ってたよな

『こんな事もある』ってさ?」

 

「カズイお兄ちゃんって、割とそういう事口にしてたよね?

それでもお兄ちゃんに全く当たらないけど」

笑ってカズイは否定する

『俺だってコーディネーターに憧れた事や醜い感情を持った事はある』と

でも、そんなカズイをコーディネーターであるシンくんや妹でナチュラルのマユちゃんは全く気にした様子はない

 

「…いいなぁ」

キラはそんな光景を本当に羨ましそうに見つめている

 

「ある意味オーブの掲げている『コーディネーターとナチュラルの共存』の理想形なのだろうな、これは」

そうミナさんは感慨深そうに呟いている

 

「それはそうとして、何で大西洋連邦の軍人になってんだよ!」

 

「止むに止まれぬ事情がありまして

そこは目溢ししてくれるとカズイさんは嬉しいかなって」

 

「危ない事をしたらダメってカズイお兄ちゃんがいつも言ってたのに、そのカズイお兄ちゃんがしたらダメじゃない!」

 

「…マユ、カズイは俺達にはそう言うのに自分はあっさりブルーコスモス達の眼前に飛び出すんだから今更だろ?」

 

「痛い!愛する弟と妹からの正論がとてつもなく痛いんだが?!」

アスカ兄妹の言葉にカズイは胸を抑えて苦しんでいるわね

 

でも何処か楽しそうにしている様に見えるのは私の気のせいかしら?

 

 

…ホント、変な奴だと呆れるわ

でも、コイツもかなり思い詰めていたんだと思うし、今日のところは見守ってやるべきなのかしらね?

 

私は軽く言い合っているカズイ達を見ながら少し笑った

 

 

----

 

カズイが帰ってきたのは純粋に嬉しいし、生きていてくれた。それだけでも涙が出るくらいの事だろう

けど、やっぱり軍人になっている事は納得出来ない

 

カズイは不器用だし、あまり外見とかにも頓着しないダメな奴だけどそれでも俺やマユにとっては本当に良い兄だと思うし、優しい人だってのは分かるんだ

だからそんなカズイが戦争なんかに出てしまえば、俺やマユの知っている大好きな兄がいなくなってしまうんじゃないかって思えてしまう

 

 

俺にしてもマユにしても、優しく不器用なカズイが居なくなるかも知れない

と言うのは途轍もなく恐ろしい事だ

 

 

確かに俺の同級生やマユの同級生から見たらカズイはあまり良い者ではないみたいだった気はする

…まぁそうなる様に仕向けた事は俺もマユも否定しないけどな?

 

カズイが守れる、守りたいと思える人間なんて少ない方が良いに決まってる

仮にカズイが守りたいものが増えてしまえば、それだけカズイが傷付く可能性は間違いなく上がるんだ

 

 

俺もマユもカズイが俺達を守る為に傷付くなんて望んでない

でもカズイは「俺はお前達の兄なんだ。兄として格好くらいつけさせてくれよ?」と言って聞いてくれない

 

だから俺もマユもあの時から『強くなろう』

そう誓ったんだ。どれだけ理不尽な目にあったとしても、それでも大好きな家族を守れる様に

 

 

カズイが無事だと聞いた時には俺もマユと父さんも母さんも床にへたり込みながら抱き合って喜んださ

でも

 

だからこそ大切な家族(カズイ)にも傷ついて欲しくない。そう願うのが悪い事だと俺には思えない

カズイはこう言っていた

 

「俺もシン、お前も。マユちゃんもおじさんもおばさんも

ウチのダメ親父やお袋だっていつも成長してるもんさ

成長するってのは変わる事でもある。『変化は常に好ましいものであるとは限らない』

俺はそう思っている。でもそれでも良いじゃないか?」

 

「…良いのかよ」

 

「良いんだよ、シン

それがお前やマユの道を新しく拓けるものならば

おじさんやおばさん。勿論俺にだってお前達は未だ手をかけていいんだ」

『迷惑だなんて思ってくれるな。お前もマユちゃんもいつまでも俺やおじさんにおばさんにおんぶに抱っこじゃ格好つかんだろ?

今ならまだお前達は甘えられるんだ。それは今だけの特権なんだからしっかり活用せんとな?』

なんてカズイは言っていた

 

けど

 

「じゃあカズイはどうなんだよ?」

と聞くと

 

「…あー、ウチの両親優秀なんだろうけど

…そのあれだ。特化型に過ぎるからなぁ」

といつも困った様な顔をして笑うんだ

 

…まぁ、カズイの両親は確かに子供の俺から見ても割とアレな人達ではあったと思う

間違いなく技術者としては優秀だと父さんや母さんも言っていたし、モルゲンレーテの同僚も言っていたと聞く

 

なんだけど、その分家庭に必要な能力はそれこそ『カズイに全部渡したんじゃないのか?』と聞きたくなるくらい何も出来ない

家事、買い物その他諸々

 

『バスカークさんとこのお父さん』

なんて冗談半分で言われていた位だからなぁ

 

 

しかも、カズイはカズイで

 

「父さんと母さんも疲れているだろうからゆっくり休んで

…ほら風呂入ってるから入ってきてよ」

なんてのが日常茶飯事だったし、マユも悔しそうな顔しながらカズイに家事を教わっていたりしたからな

 

 

母さんの家事の弟子がカズイで

そのカズイの弟子がマユ

なんて割と意味不明な師弟関係が出来ていたな、そう言えば

 

 

 

俺?

俺は大雑把過ぎて台所に立ち入り禁止食らってるから

 

 

----

 

私にとってカズイお兄ちゃんは『1番身近にいる異性』だ

 

それこそ私やお兄ちゃんが生まれた時からの付き合いな訳で、恥ずかしい話だけど私のおしめを替えた事だってあるらしい

…そこは流石に止めて欲しかったと思うよ、お父さんにお母さん

 

でもそのせいもあってか、どんな悩みだってカズイお兄ちゃんには打ち明けられた

お兄ちゃんと喧嘩した時や、お父さんやお母さんと仲違いした時、学校で困った時など

 

お兄ちゃんもそうだったと思うけど、私達兄妹はコーディネーターとナチュラル。周りから白い目で見られる事もあった

でも、カズイお兄ちゃんはそんな空気をいつも壊してくれた

周りの人達だって『私達とどう接して良いか分からない』からそうしていた人が殆ど

 

そうやってカズイお兄ちゃんはいつも私達と周りを繋いでくれた

 

 

私はカズイお兄ちゃんが『真のコーディネーター』って聞いた時思ったのは

(そうだったら嬉しいな)

って思いだった

 

それと共に

(そんなカズイお兄ちゃん

…ううん、カズイさんを支えたい)

そう思ったの

 

 

----

 

「…あまり君達の前で言うべき事ではないと思うが、今のオーブの国際的信用はかつてない程低下している」

 

「残当でしょうよ?」

 

「それは、仕方ないと思います」

 

「いや紛争地帯でゲリラやってるのがこの国の次期指導者候補ってカズイから聞いて私は本気で大西洋連邦に移り住もうか考えたわよ

…勿論カズイは連れて行くけど」

コトーの絞り出す様な言葉にカズイ、キラ、フレイはそれぞれの反応を見せた

 

「いやいや移住の話なんぞ初めて聞いたが?!」

 

「言ってないもの

別に大丈夫よ?アンタの家族全員連れて行ってあげるわ」

 

「…ま、それなら構わんかな」

フレイの爆弾発言に驚くカズイだったが、よくよく聞けばカズイ的には問題がないとあっさり落ち着いた

 

「待て待て

仮にもオーブの氏族の前でその様な事を言わんでもらいたいものだな

流石に情けなさ過ぎて私も泣きたくなるのだが」

 

「そうは言うけど、ミナさん

今のオーブに私達の居場所ってあるかしら?」

 

「…む」

そんなカズイとフレイをミナが嗜めようとするが、逆にフレイの言葉に言葉を詰まらせる

 

「まぁ確かに大西洋連邦軍所属のオーブ国民とか矛盾があるにも程があるのも事実だわなぁ」

ましてやフレイは良いとしてもキラとカズイは尉官なのだ

 

早々除隊すると言って直ぐに受け入れられるものではないだろう

 

更にキラもカズイも自身の価値を示してしまっている

となれば大西洋連邦軍としても手放す事に早々同意するとは思い難い

 

 

「『行きはよいよい。帰りは怖い』かね

…すまん、キラ」

 

「いいよ、カズイ。僕も自分の意思で決めたんだから」

カズイの謝罪に笑って応えるキラ

 

そこに

 

ルルルルル

一本の電話がかかってきた

 

----

 

「…コトーだが」

 

『いやぁ、お久しぶりですね』

受話器を取ったコトーだったが思わず受話器を置いてやろうか?との思いを抱く事になる

 

「…なにか御用かな?ムルタ・アズラエル国防産業理事殿」

ムルタ・アズラエル。それが電話相手だったから

 

『いえいえ、実は此方から提案がありましてね?』

 

「提案、ですかな?」

 

『ええ。今オーブに居ると思いますが、アークエンジェルのカズイ・バスカーク少尉

勿論ご存じでしょう?彼をオーブ国防軍にお戻ししようと思いまして』

 

「…なんだと?」

 

『ああ、それとキラ・ヤマト少尉にフレイ・アルスター曹長にトール・ケーニヒ二等兵、ミリアリア・ハウ二等兵にサイ・アーガイル二等兵も付けましょう』

 

「どういう事、ですかな?」

 

『いえいえ此方のお願いを一つ聞いてもらいたいのですよ?

もし聞いてもらえるなら、特例措置として貴国に入港しているアークエンジェルの指揮権もつけてさしあげますよ?』

コトーは嫌な予感が強くなっていくのを感じた

 

「…我等に何をせよと?」

 

『決まっているじゃないですか』

アズラエルは笑うと

 

アスハとその支持者の始末ですよ?

そう告げてきた

 

 

----

 

「…という事だ。どうすべきだと思うかね?」

 

「父上、それを彼等に選ばせると言うのは余りにも情がなさ過ぎだと思いますが?」

コトーの言葉にミナは厳しい視線と言葉をぶつける

 

「潰すべきでしょうね」

だが、カズイはあっさりとそう言葉にした

 

「キラ、フレイ

悪いが俺と一緒に地獄まで落ちてくれるか?」

 

「うん」

 

「アンタが行くところなら、そこが地獄だろうと天国だろうと構わないわよ

アンタが力尽きて倒れるその瞬間まで私が側にいてあげるわ」

カズイの言葉にキラとフレイはそれぞれ言葉を返す

 

「カズイ!俺だってアンタの力になりたいんだ

…もう、アンタが傷付くのを眺めていたくないんだ!」

 

「カズ兄、私も行くよ!

ダメって言われても怒られても、嫌われても一緒にいるから!」

 

「…分かった、シンにマユ

すまんな。俺は最低の兄だよ」

 

「アンタがどう思おうと俺とマユにとっては世界一の兄だよ!」

 

「カズ兄に勝てる兄力(あにぢから)がある人なんていないよ!」

 

「…そっか

すまんなぁ。本当にすまん、シン、マユ

カズイはそう震える声でシンとマユ(愛する弟と妹)を抱きしめた

 

 

「すまないっ!

本当にすまないっっ」

 

「…不甲斐ないものだな

ここまで市民にさせねばならんとは」

コトーは涙を流しながら謝り続け、ミナは自身の無力を歯を食いしばりながら耐えた

 

----

 

「オーブ国防軍カズイ・バスカーク一尉か

似合わねぇなぁ」

 

「俺はアンタの護衛だからな、カズイ」

 

「無茶すんなよシン」

 

「僕もいるから、大丈夫だよ。きっと」

 

「白兵戦だ。油断すんなよキラ」

 

「キャリー小隊、全員配置に着きました

…バスカーク一尉」

 

「ありがとうございます。ジャン少尉

この様な事に巻き込んで申し訳なく思います」

 

「…いえ、ままなりませんね」

 

「ですね

総員傾注!これより我々はオーブ行政府へと突入し、現代表ホムラならび前代表ウズミ・ナラ達を捕縛する!

カズイはそう言うと

 

突入!

行政府へと突入して行った

 

 

 

 

----

 

「これはどう言うつもりだ!」

 

「どうもこうもありませんよ、ウズミ・ナラ」

行政府の一室にて会議を行なっていたホムラ達はあっさりと捕縛された。どうにもミナが事前に兵の配置を動かしていたらしいとカズイは気がついた

 

怒号をあげるウズミに対して此処にいる者達は誰一人として臆する事はない

 

 

所詮自分の手で人を殺した事もない癖に理想という甘い毒で国民を振り回した男だ

 

カズイにとっては『平穏な生活を壊した者』

キラにとっては『楽しかったあの日々を奪った者』

シンにとっては『優しい兄にこんな道を選ばせた者』

 

八つ当たりの部分もあるだろうが、けっして許せる相手ではなかった

 

 

「…初めまして、ですね

ウズミ・ナラ。俺はカズイ・バスカーク」

 

「…そのバスカークが何を口にするつもりか?」

 

「アンタは政治家になるべきではなかったんだよウズミ・ナラ

何処ぞの導師の様に自分の理想を何のしがらみもないところで訴えていれば良かった

アンタの理想は正しいのかも知れない

…けどな、人は正しさだけでは生きていけない

アンタの思想は呪いなんだ、ウズミ・ナラ。そうあろうとして何処かで必ず歪んでしまう」

 

「…そうか」

 

「生きる国民よりも、理念を上に置いた時点でアンタは統治者として失格だったんだよ

アンタの妄執の為にオーブ国民に死ね。そう言えるアンタは立派な異常者さ」

 

「…」

 

「アンタは最悪自分の命を捨てても満足なんだろうさ

でもオーブの民がオーブの民として生きられるのはオーブしかない。自分の娘に自由にさせるならそれ相応の自覚を持たせるか覚悟をすべきだった

目を疑ったよ。ヘリオポリスで見たオーブの姫がアフリカでゲリラに混じっていたのを見た時にはね

アンタらが居なくならないとオーブはいつまで経っても変わらない

世界は変わっているのに、オーブだけがそこから取り残される

 

ウズミ・ナラ

貴方は政治家を、統治者をやるには視野が、広過ぎたんだよ」

 

「…そうか」

ウズミらは連行されて行く

 

「一つだけ

カガリを頼む」

 

「恨まれる覚悟はしていますよ」

 

ウズミ・ナラとカズイ・バスカークの一度きりの話はこうして終わった

 

 

 

----

 

「ご苦労だったな」

 

「これからどうなりますかね、この国は」

会議室から出てきたカズイにミナは声をかける

カズイは心底複雑そうに息を吐いた

 

「まずすべきはプラント理事国との関係の修復とプラントに対する態度の表明だろうな

父はセイラン辺りと組んで、国内の掌握に当たらねばならぬ」

 

「面倒なのは軍ですかね」

 

「そうだな。我等サハクに好意的でない者の大半がアスハ支持者だろう

。上手い事収めねばなるまいな」

 

「カガリ・ユラの護衛であるレドニル・キサカの件をしっかり喧伝すべきでしょう

アスハは自国の立場など何一つ考えてなかった、とね?」

カズイの言葉にミナは

 

「徹底的に泥を被せる、か」

 

「仕方ない事かと

どうにもオーブの人間は貴女も含めて地球軍の恐ろしさを理解していない様に思えます

…地球軍はカーペンタリアなどを『更地にした』のですよ?

このオーブでそんな事になればどうなるか?」

 

「…む」

ミナも表情が歪む

 

「そこまでは知らなかったな」

 

「私が小耳に挟んだ話では、カーペンタリアを攻撃した部隊は解散する事なく(・・・・・・・)未だに赤道連合の基地に駐留しているとか

 

…勿論この情報は態と此方に流したのでしょうね」

 

「…恫喝か」

 

「オーブはプラントへの禁輸措置に踏み切ったと聞きます

ですが、それに対して前代表はかなり否定的であったとも

この国では何故か現代表の言葉よりも前代表の言葉に重きを置く傾向があります

となれば、オーブがまたプラントに過度な配慮をするのではないか?

そう疑われたとしても仕方ない話では?」

カズイは大西洋連邦軍人となった事で改めて理解した事がある

 

オーブ(中立国)に対する拭い去り難い不信感

それが兵士達の中にあるという事

 

 

これはどうにも上から抑えつけられている様にも思えたが、寧ろオーブに対する悪感情を持たせる事である程度兵士達の感情を制御しているのではないか?

とカズイには見えた

 

----

 

間違いなく地球各国の足並みを乱しているのはオーブだろう

スカンジナビア王国もそうだろうが、オーブには宇宙への玄関口であるマスドライバーカグヤがある

 

 

既に地上のザフトは虫の息だ

となればプラント攻撃もそろそろ現実的軍事オプションの一つとしてあがるはずだ

 

しかし地上で今なお全力稼働しているのは大西洋連邦のパナマとオーブのカグヤ、それにジャンク屋連合の保有するギガフロート位だろう

 

 

現在ユーラシア連邦や東アジア共和国、南アフリカ統一機構はマスドライバーの建設や再建に取り掛かっているが、それとて一朝一夕とはいかない

既にオーブは中立を許されない立場になっているのだ

 

それでも周辺国との良好な関係が構築されていれば何とか中立を維持できる目もあったかも知れないが、国際的に白眼視されているオーブではそれすら叶わない

 

 

オーブは火種が弾けて仕舞えば間違いなく地球軍によって轢き潰されただろう

そうカズイは確信している

 

だからこそ、こんな自分にとってリスクしかない方法を選ぶしかなかった

仮に防衛戦となって、M1アストレイ(オーブ国産MS)が出てこようものならオーブの国際的な信用は地の底に潜る事になるだろう

 

 

そして間違いなくオーブは落ちる

島嶼国家であり、国土自体そこまで大きくないオーブだ

それこそ『耕されでもしたら』満足な抵抗が出来るとも思えない

 

加えてそうなれば高い確率でウズミがモルゲンレーテやカグヤなどを自爆させる事だろう

国際的な信用もなく、国土は荒廃し、国を再興する為の産業すら無くなったオーブがどうやって再生するというのか?

 

原作において、オーブが火に包まれた訳だがアークエンジェルとクサナギに乗って主人公達は宇宙へとその舞台を移した

 

 

では、彼等が宇宙で戦っている間オーブの民はどうなっていたというのだろうか?

確かにアメノミハシラがあったのかも知れないが、全てが全てそこに逃れられたとも思えない

間違いなくシンの様にプラントへ渡ったものや地球の各国への移住を余儀なくされた者はいただろう

 

続編ではアスハの当て馬的な扱いだったセイランだが、間違いなくそんな窮状にあってオーブを復興させる為に必死の努力をしたのではないだろうか?

僅か2年後にはオーブは大型空母を旗艦とした艦隊や新型可変量産MSであるムラサメすら配備できる状態にまで復興している

 

だがそれは果たして宇宙で戦い続け、終戦まで持っていったカガリ達の努力によるものだろうか?

それはないだろう

 

何せ『三隻同盟』などと言ったところで、その内情は

大西洋連邦軍の脱走兵と強奪した兵器や戦艦

ザフトから強奪した新型戦艦と新型MS

そこにオーブの残党というべき勢力が合わさっただけなのだから

 

 

地球軍にとっても、プラントにとっても三隻同盟は許し難い裏切り者にしか見えなかった筈だ

そんな連中と共にいるオーブに対して間違っても好意的になれる筈などないだろうし、そんな人物がトップを務める国に投資などするとも思えない

 

となれば、セイランを始めとした生き残った氏族達がありとあらゆる手段を使って資金や物資を集めてオーブ再建にこぎつけた

そう考える方が自然ではないだろうか?

 

 

----

 

国土の狭いオーブは国内に踏み込まれて戦闘をするだけで国家として致命的なダメージを受ける

だが、オーブは『その理念』から防衛戦闘しか出来ない

 

 

にも関わらず、他国と親密に結びつこうともしない

そして自国の理念を優先しようとする訳だ

 

どうにもならないのだ

少なくとも、今のオーブの体制では何をしようとも直ぐに袋小路に行き当たるだろう

 

「ホント勘弁してくれよ」

余りにも酷すぎる自国の状況にカズイは思わず弱音を溢す

 

 

そして、ここ迄来てしまった以上カズイは恐らく逃げる事など出来ないだろう

 

「…すまぬとしか言えぬな」

ミナもこれからのオーブの行く末に間違いなく目の前の人物が必要となるだろう事を感じているからこそ弱りきっていた

 

----

 

カズイ自身は一般家庭の出である

だが、その両親はモルゲンレーテにおいてミラージュコロイドシステムの発案者であり、ブリッツの開発に深く携わった技術者だ

 

オーブにおいてある意味有名な『コーディネーターとナチュラルの兄妹』であるアスカ兄妹

大西洋連邦軍に残された唯一のMSストライクを操り、このオーブまでアークエンジェルを守り抜いたキラ・ヤマト

父に大西洋連邦外務次官であるジョージ・アルスターを持ち大西洋連邦において未だに影響力を持っているフレイ・アルスター

 

これだけの人物と親しい間柄にあり、尚且つカズイ自身も

 

大西洋連邦軍新鋭艦アークエンジェルの艦長マリュー・ラミアス、副長ナタル・バジルール、機動部隊隊長ムゥ・ラ・フラガとも良好な関係を築いている

加えて『プラントの歌姫』ラクス・クラインとも面識があり、ユーラシア連邦軍アルテミス要塞司令ガルシアや大西洋連邦軍第八艦隊司令ハルバートンとも言葉を交わした事があるという

 

加えて父コトーの話によれば、あのムルタ・アズラエルも関心を持っているらしい

 

 

オーブのこれからを考えればカズイは何としてもオーブに止め置くべき存在なのだろう

…だが、間違いなく彼のこれからは彼の願う道とは違うものになるだろう

 

結局、アスハを除いたとしてもオーブの危機的状況は何一つ変わっていない

これから悪くなる可能性は低くなったが、それは事態が好転するという訳ではないのだから

 

ミナは苦悩しながら、カズイの背を見送る

 

 

 

----

 

ヤラファス島から海を眺める

 

「…」

その胸中に何をカズイは思うのだろうか?




という訳でカズイは一つの決断をします

なお、オーブ国防軍に編入されたトール達は除隊する機会を得る事が出来ました

物語が進んだので改めて、本作のヒロインは?

  • ナタル
  • マユ
  • フレイ
  • カガリ
  • ラクス
  • シン
  • キラ
  • その他
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